序章「変わった英雄譚」

邪教の儀式は血に染まって幕を閉じた。どこか見覚えのある一つ目の瞳、唐突に訪れた魔女の口づけ……運命が開いた扉は、ひどく懐かしい感触がした。
CARACTER
登場人物
| キャラ名 | 概要 |
|---|---|
![]() | MAJOに所属する魔女。組織が超常現象の真実を隠していることに不信感を抱き、望遠教会事件の真相を世間へ公開しようとする。主人公を事件の重要な目撃者として連れ出そうとする。 |
![]() | 眼鏡をかけたMAJOの観測者。魔女ジーナとリンクして行動する。非常に臆病な性格だが、危険を前にしても「逃げたら現実になっちゃう」とその場に留まろうとする。 |
![]() | ユーエンとリンクする魔女。幻影を作り、姿を隠す能力を持つ。気が強く、正義感も強いが、非常に攻撃的な物言いをする。 |
![]() | ネットワークや映像を介して出現する異形。ネット上の概念になぞらえて人間を裁き、標的を執拗に追跡する。 |
MAJO
| キャラ名 | 概要 |
|---|---|
![]() | MAJOに所属する黒髪の魔女。口が悪く粗暴だが、危機に陥った主人公を見捨てず行動する。実戦能力が高く、シェンジの指示を受けながら超常現象への対応にあたる。 |
![]() | 紫髪のメイド姿の魔女。礼儀やマナーを極端なほど重視し、無礼な相手には容赦がない。刀を扱う高い戦闘能力を持つ。 |
![]() | 金髪の魔女。穏やかで包容力のある物腰だが、「誰かに必要とされること」への強い執着を見せる。自身が傷つけられることさえ受け入れる独特な価値観を持つ。 |
STORY
暗闇の中、巨大な一つ目と歯が浮かび上がる。自分を「愛しい弟」と呼ぶ声がする。頭の中に、過去を思わせる断片的な光景が現れる。俺は「殺人鬼ホー・ヤンエンの息子」と罵られ、兄が俺を庇ってくれた。だが、その兄はやがて血に濡れた姿で叫ぶ。
「逃げろ! じゃないと、俺はお前まで殺さなきゃいけなくなる!」
記憶なのか幻なのかも分からない光景の果てに、その兄の声は俺の“目”を借りた礼として、俺のために書き上げた『物語』を見せると告げ、忽然と消える。
激しい頭痛の中、脳裏に青く光る注射器が浮かぶ。
「ブルーレディ……」

光の中に、花冠と白いドレスの女性が現れ、その青い薬の名を告げる。MAJOが管理するブルーレディの洗礼を生き延びた者だけが、入信の資格を得られるという。
だが俺は信徒になるために来たのではない。目的は、ただ友人を助けることだ。そうだったはずだ。
やがて視界が歪んだかと思うと、俺はなぜか、大勢の見知らぬ女性たちと体を重ね合っている。彼女たちは俺を「アオサギ」と呼んでいる。
果てしない欲望に溺れていきながら、突如俺は、また闇の中に落とされる。
「さっきのは……夢か……?」
そう思った瞬間、またあの白いドレスの女性が現れる。そして俺に、「どうか、生き延びて」と告げるのだった。
俺が目を覚ますと、そこはMAJOの施設内だった。目の前にタイラと名乗る魔女が現れ、俺が多数の死者を出した「望遠教会事件」の重要な目撃者だと告げ、施設から連れ出そうとする。

だが、そこへ黒髪の魔女シンジが現れ、タイラを拘束する。タイラはMAJOが怪物の存在と事件の真相を隠していると訴え、何としてでも真実を世間に知らせようとしていた。
その最中、俺の身体に再び異変が起きる。大量の血を流し、声さえまともに出なくなる。
痛い。苦しい。
そんな俺を見下ろし、シンジは吐き捨てる。
「自分だけが地獄のような人生を歩まされてるとでも思ってるのか?」
そして、死ぬならせめて一度くらい主人公みたいに生きてみろ、と俺を叱りつけ、シンジは俺に突然口づけをするのだった。

シンジの柔らかい唇が触れたその瞬間、突然俺の瞳が青白く輝いた。
俺の周囲に黒い渦と亀裂が広がり、星空のような暗い空間に青白い亀裂が走る。
「こ、これは……ブラックホールアイ!? 」
シンジは叫ぶ。
「シェンジ──! 校正してくれ──! 早く!」
俺の力はただ暴走し、気が付けば俺は、異形の姿となって、シンジ、シェンジ、そしてメイココという魔女たちと戦っている。

シェンジは敵に向かって、俺がまだ知らないはずの名前を呼ぶ。
「……アオサギ、実は……」
だがメイココが、その言葉を遮った。
「言わなくていいわ。とっくに分かっていたことよ」
俺は、圧倒的な赤黒い力を解き放ち、三人の魔女にその力を浴びせるのだった。
気がつけば、俺は再びMAJOの施設内にいた。
さっきまで全身を襲っていた痛みは消え、代わりに体の奥から、今まで感じたことのない力が湧いてくる。
シンジから聞かされたのは、さらに理解しがたい話だった。
望遠教会事件で生き残ったのは、俺と友人の二人だけ。
だが、その友人は警察に、俺が大量のブルーレディを打たれて発狂し、皆を殺したと証言しているという。
さらにシンジは、殺人鬼と呼ばれる俺の父ホー・ヤンエンや、十五年前の「起源事件」にまで話を広げる。
だが、俺にはその記憶はない。本当に何も覚えていないのだ。
一方、タイラは俺のブラックホールアイを記録した映像をネットへ公開する。
これで世界中がMAJOの欺瞞を知る。
そう勝ち誇るタイラに、シンジは冷たく告げた。
「シェンジが時間を校正した」
公開されたはずの映像は崩れ、ネット上には「何も見えない」「再生数稼ぎ」といった反応だけが残る。
そして、タイラの端末から黒い煙が立ち上った。

その煙の中から、突如黒い触手が伸び、ノイズを身にまとった巨大な黒い人影が現れる。
現れたのは、「審判の使徒」と呼ばれる異形だった。
「有罪」
そいつは、ネット上の概念そのものを判決へ変えるように人間を裁き、タイラへ襲いかかる。
「ああっ!熱い!焼かないで!もうやめて!」
黒赤い触手状のものがタイラの体を、真っ赤なノイズの中へ引きずりこんでいく。

俺とシンジは、その場から逃げ出した。
逃走の途中、俺たちは観測者ユーエンと、彼とリンクする魔女ジーナに助けられる。
二人は俺たちを逃がすため、その場に残った。
だが審判の使徒は、容赦なく彼らにも迫る。
「有罪」
ユーエンは、「強制ログアウト」され、ジーナも「有罪」の判定とともに、デジタルノイズの中へ消えていく。

さらに逃げ続ける俺とシンジは、二人の魔女、友萌とペーシェットと出会い、合流する。
常識では測れない力。そして、それ以上に理解しがたい価値観。
俺は、MAJOという組織が自分の知っている世界とはまるで違う場所なのだと思い知らされていく。
だが、審判の使徒の追跡は終わらない。
「判決確定。全員有罪……死刑」
赤黒い触手が一斉に広がり、俺たちを包囲する。
俺は、友萌、ペーシェット、そして、シンジと共に、迫り来る「審判の使徒」に立ち向かうのだった。

Metaphysical Anomalies Joint Oversight――国際超常現象連合監督機構。
加盟国の承認を受けた「MAJO特別法」によって運用され、その権限は各国の主権や法律をも凌駕する。
世界中から「魔女」を集め、そのナラティブ力を利用し、あらゆる超常現象へ対処する巨大組織。
館内に、指導魔女シェンジの声が響く。
「方針の修正を行いました。警戒を解除します。魔女の皆さん、引き続き任務にあたって下さい」
俺を「アオサギ」と呼ぶ白いドレスの女は誰なのか。
兄の見せようとした「物語」とは何なのか。
数々の謎を残したまま、俺はMAJOと「魔女」たちの世界へと足を踏み入れていくのだった。
BOSS









