【白猫】こねくりだんじょん Story
story1 親子喧嘩
――遥か昔、武器に形を変える精霊の一族がいた。
いつしか<最強の武器>と呼ばれるようになった彼らは、今でもダンジョンの奥深くに眠っているという――
冒険家たちは追い求める。果て無いロマンを――
…………
……
やい、コルネ!この武器はいくらだ!
10ゴールドだよ!
そんなに安いわけあるか!もっかい聞くぞ!いくらだ!
1ゴールドだよ!
店を潰す気か!借金あんだぞ!
じゃあ100万ゴールドで売ってやるよ!
そんなんで売れるか!
どうしてお前は、こうもひねくれる!
物心ついたときから、来る日も来る日も目利き目利きうるさいからだよ!
うちは武器屋だ!跡継ぎが必要なんだよ!
お店のことは大切だけど、やり方ってもんがあるでしょ!
お前がやる気を出さねえからだ!その気になりゃあ、見る目があるくせに!
知らないよ!
じゃあ、どうすりゃいいんだよ!
今の時代、ふつうの武器なんか売れないよ。
んなこたぁわかってる。冒険家たちは強くなる一方。最強の武器でもなけりゃ食いつかねえ。
けど、だからって、俺は武器を見捨てねえ!俺は武器を愛してるんだ!
そのせいで、母さんは愛想尽かして出てったんだけど。
お、俺だって悪いとは思ってるさ!
けど!だけど!けれども!わかるだろ!
もじゃもじゃ言って、ごまかさないでよ。
そうだけど、けど、でも、まあでも。な?
は?
お、大人をこれ以上追い込むなよ!父さんだってな……父さんだって……
いろいろあるんだよおおおっ!!!
――ウ”ッ――
え?
<ドサッ>
だいじょうぶ……?
こりゃあれだ……日頃の疲れとストレスで、ぶっ倒れちまったみてえだ……
ガチ?
ガチ。頭が割れそうだ。
命に別状はねえが、しばらく仕事は無理そうだ……
じゃあその間、お店は……?
頼んだぞ、コルネ。
ひょえー。
story2 真に受ける少女
<――インディ諸島。その片隅で、ひっそりと武器屋を営む親子がいた。
突如、父が倒れ、店を任されることになった一人娘のコルネだったが……>
100万ゴールドになります。
え?この槍ってヘヴィスピアだよね?高すぎないかい……?
穂の部分のトゲトゲに洗濯物を干せません?
だとしてもだねぇ……
まーた、ひねくれた目利きしやがって。売れるわけねえっつーの。
というか、お店の真ん中で布団敷いて寝ないでよ。営業妨害なんだけど。
お前がちゃんと店番できるかチェックしてんだよ。
お、おい!?揺らすな!病人だぞ、一応!
私じゃないし。
コルネちゃーん!
リリア?
パパさん、大丈夫ですか!?ネギを買ってきたので、首に巻きましょう!
コルネちゃんいわく、これで大抵なんでも治るらしいです!
それで治るのは風邪だけだよ!でも、せっかくだから食べるよ!
パパさんが倒れるなんて、お店ピンチだね……
そんなことない。ほっといても、どうせ潰れるし。
潰れるの!?じゃあ、うちにおいでよ!ログハウスだよ!
ダメーーー!!!
冗談だって。
そっかー!あせったー!
……相変わらずリリアちゃんはコルネの言うことを真に受けるんだね。
こんなひねくれ者を、どうしてそこまで……
コルネちゃんは命の恩人ですから!
あたしがダンジョンで魔物に襲われてるところを助けてくれたんです!
あ、あれは……
そういや二人とも、ガキの頃から目を離すとすーぐダンジョンに潜ってたな。
その度に俺が武器を目利きして選び、リリアちゃんのパパとママが助けにいく……
おかげで武器屋と武器使いの、切っても切れない絆が生まれたってわけだが。
その節は、大変お世話になりました!
パパとママは元気かい?
はい!未だにダンジョンに眠る最強の武器を探して、世界中を旅しています!
大変だろうが、あの二人の腕なら心配ねえか。
そんなことより、出てって。仕事の邪魔だから。
そうだな。ちょっくら、二階で休んでるわ。
……さて……
お仕事だね!あたしも手伝うー!
そんなに張り切らんでも……
てへへ。つい、なつかしくなっちゃって。
コルネちゃん、覚えてる?武器屋ごっこ!
あ、あれね……
見て見て、この剣!今でも大切にしてるんだよ!
「私の目利きによれば、これは伝説の剣スサノスティングに違いない……」
「コルネちゃん、すっごーい!」
「これ、リリアにあげる。」
「いいの!?せっかくコルネちゃんが、ダンジョンから拾ってきたのに……」
「リリア、いつも退屈そうだったから……」
「ありがとう!このスサノスティングで、コルネちゃんを守ってあげるね!」
ふふふ。いい思い出だね。
いつも思うけど、リリアちゃんよく木の棒で戦えるよね?
ギクッ!?
木の棒じゃありません!これは伝説の剣スサノスティングです!
おっきなドラゴンも、一撃で倒せるんですよ~♪
へ、へぇ……
(……リリアがそう信じてるなら、いいよね……)
ところで、常連客だから言わせてもらうけど。あんな目利きを続けていたらお店がもたないよ。
売り上げが欲しいなら、高価な武器を適正価格で売らないと。
そんな一発逆転できる武器なんてうちに……
……あ、倉庫にならあるかも。
…………
……
「…………」
story3 武器の精霊
武器に形を変える精霊の一族スピリヴァチュラ。
彼らは世界中で、数々の伝説を残す。
父の名は<破塵の斧>ガイアント。
その一振りは大地を裂き、海を割り、火山に棲むドラゴンをマグマごと両断したという。
母の名は<愛覆の杖>エルモアール。
その一振りはあらゆる傷を癒やし、嵐をも防壁で押し返したという。
<巌甲拳>ファルコイト、<空穿哨>サイクロニギス、<乱撃の弓>ニードレイ。
彼らの子供たちもまた、それぞれ伝説を残す。
そして、彼らの末っ子にして最終兵器――
<剛剣>ルグノス。
その一振りはあまりに強大で、空間さえも切り裂くことができる。
はずだったが――
なんでここにおんねーん!
倉庫っておかしいやろ!俺ッチを誰やと思ってんねん!泣く子も黙る最強の剣やぞ!
にもかかわらず、こないなとこでホコリ塗れなんも、ぜーんぶ、あのガキのせいや……!
ルグノスたけが、伝説を残せずにいた。
倉庫なんて、久々に来る気がする……
このまま店が潰れたら寝覚め悪いし、一肌脱いでやるとしますか。
高く売れそうな武器はあるかな?
こねくりだんじょん
~剛剣ルグノスの章~