【黒ウィズ】アルティメットガールズ Story3
最終話 絶級〈魔杖〉、降臨
というレナの提案を受け、君たちはエターナル・ロア探しに出た。
既に日が落ちていて、いつの間にか大きな月が見えている。
依然、街の人々は賑わっているようで、歩くのは結構大変だ。
リルムの杖、エターナル・ロアを見つけてあげたいという気持ちはあるが、
これでは探すことすら困難だ。
リルムは困ったような顔で、周囲をぐるぐると見回している。
ただ……今から数百年前に生まれ落ちた魔杖は、人々に恐怖と絶望を与えたという話よ。
そんな危険な杖が、この異界には存在している。
エリスの境遇を思うと、その魔杖もどうにか封印したいところだが……。
縦に。
レナがアリエッタに微笑みかける。
エリスは静かに目を閉じ、集中力を高める。
――“箱”に魔力が集まっていく。
君は頷いて、アリエッタたちとともに声が聞こえたほうへ走りだした。
***
逃げ惑う人々。崩れ落ちた建造物。
大会の熱狂とはかけ離れた、ある種の絶望的な空気感が、そこにはあった。
アリエッタが指さしたところに、君も見たあの杖……エターナル・ロアが“いた”。
もしかして……とエリスは小さく呟く。
見たことのない男性が、杖を握りしめている。
小娘と出会って以降、投げられ、売り飛ばされ、精神的苦痛を味わわされてきた。
落としてくれたことは、我にとって幸運だったと言うべきだろう。
小娘!これまでの恨み、まとめて晴らしてくれるわ!
だが真実に気づいたエリスは震えが止まらなかった。怖いからではない、もちろんない。
激昂するエリスの魔力が爆発する。
我を手にした人間は運がなかった。見ろ、こうして乗っ取らせてもら――。
話の途中でアリエッタが魔法を叩き込み、
それを皮切りにしてリルムが続き、面白半分にレナが加わる。
ちょ、待て!待てというに!ぐッ、貴様ら……親を呼ぶぞ!!
エターナル・ロアから膨大な魔力が溢れているが、なんだか拍子抜けしてしまう。
少々、物足りなかったがな!
あれがエリスの言っていた魔杖なら……。
……なんとかして杖を引き剥がさなければ。
***
BOSS
***
みんなの魔法が、エターナル・ロアに向かって放たれる。
しかし、君たちの魔法エターナル・ロアが倒れることはなかった。
強力で、強大な魔杖……。
そうか――と君は思い当たる。
エターナル・ロアの強烈な魔法を防ぐために、あの本を取り出したに違いない!
鈍器!
尋常ではない速度で飛ばされた巨大な本が、エターナル・ロアに直撃した。
箱の中から飛び出てきた”ソレ”は、言葉にはできない異形の何かだった。
皆が口々に驚愕の声を上げる。
音を立て、依り代になった人とエターナル・ロアが分かたれるのが見える。
そして数秒と経たず……杖がカラン、と音を立てて落ちた。
さすがの魔道士たちも、困惑を隠し切れない。君もまたそのひとりだった。
明らかに“引いている”ことに、エリスは気づいていない。
たぶん、と君は口にする。
……本当に終わったのかは、君にはわからなかった。
***
街の外れに来た君たちは、そこで一息つくことにした。
アリエッタは大きく伸びをして、息をつく。
君は、そんなことないよ、と言う。
みんなの頑張りのおかげだよ、と付け加えた。
幸い、エターナル・ロアに乗っ取られた人に怪我はなかった。
ただ、魔杖が離れた瞬間にまるで別人に戻っていったのには驚いた。
呪いのような形で体を奪い取り、顔も体も……。全部が全部、別人になったようだ。
君は、エターナル・ロアを封印しなくてもよかったの?と問いかけた。
リルムとエターナル・ロアが「あばばばば……」といって倒れたのは言うまでもないが、
今後、このようなことがないようにする、と約束してくれたようだ。
優勝は逃したけど、まあ仕方ない!ごめんね、エリス!
エリスがアリエッタの頭を撫でる。
気づけば大会は終わっていたし、優勝者はどこかの魔道士に決まっていた。
エターナル・ロアを止めるため動いていた君たちは、いつの間にか失格扱いになっていた。
だが皆――アリエッタなんかは特に、晴れやかな表情を浮かべている。
やることは無茶苦茶だけど、わからなくはない、と君は言う。
そういえば魔道障壁を作ったのも彼女だと言っていたのを思い出す。
君は考えたあと、それなら少しだけ、と返答した。
その言葉どおり、君たちが帰ることができたのは、お祭り騒ぎに巻き込まれ、
”封印された魔道士”との戦いを経てからのことだった。