【黒ウィズ】アルティメットガールズ Story2
目次
story3 大魔道士との戦い
助けてくれた女の子に、君はありがとう、と伝える。
あいたぁっ!
エリスが杖でアリエッタを小突いた。
エリスは、ソフィとリルムのほうを向き、短く挨拶をする。
魔道の中でも封印は特殊だから、今でも名前ぐらいは知られてるよ。
ソフィが言うには、限定的ではあるものの、「封印」を使うことによって、
魔道士の行動を制限させることができるらしい。
悪い魔道士や魔物などを封印することが可能だからか、畏怖の対象になっているのだとか。
――もしかすると、この近くに封印されているという、凶悪な魔道士も、
エリスのような封印を生業とするものが閉じ込めたのかもしれない。
隕石を防いでくれたとき聞こえてきた声は、この杖だったのか、と君は思う。
とソフィが耳打ちしてくれた。
エリスが声を荒らげ、ぶんぶんと杖を振り回す。
それで家は全壊。当時住んでいた国を追い出されて、今は細々と暮らしていましたとさ。
わはは!
縦に。
ソフィちゃん、私たちもそれを見つけたら、エリスさんに教えてあげよう!
レナの視線を受け流し、エターナル・ロアは言う。
エリスが顔を上げ、君たちに問う。
考えてみれば、君とエリスを含め、魔道士が6人。
……バトルロイヤル形式のこの大会で、戦わない理由はない。
先陣を切り、声を上げたのはレナだった。
レナが放つ極大の魔力にあてられ、君は一歩後ずさる。
君は少しだけ考えたあとで、戦う、と口にした。
無理をするわけではない。
勢いと力強さと、華々しい魔法の撃ち合いに、君自身も自分の力を試したくなっていた。
君はアリエッタに手を引かれ、数多くの魔道士たちが戦い合う街中へ突撃することになった。
***
アリエッタにまるで連れ去られるようなカタチになった君は、
確かに魔進士のような人に激突したような気がしていた。
アリエッタは、“ヘーきへーき!”と言っていたけれど……。
先ほど、君の手を掴んだアリエッタは、立てかけられていた棒にまたがり、空を飛んだ。
ソフィほどの“上手さ”はなく、それどころか勢いに任せた動きのせいか、乗り心地は悪い。
屋根伝いに追ってくるレナが、詠唱を防いでいる。
いきなりそんなことを任されても……と言おうとしたところで、
何かが頬を掠めた。
めっちゃなんか!めっちゃなんか飛んできた!
それは刃物のように鋭い“風”だった。
一切の手加減をすることなく、魔法をぶつけてくる。
君はカードに魔力を込めて、対抗することにした。
動いているせいで狙いをつけにくいが、君は運良くレナの足をもつれさせることができた。
さすがもなにも、ここで魔法を使ったのは初めてのことだ。
バランスを整えたレナが、再び君たちに焦点を合わせる。
君は思わず、はい!と口にして、レナの魔法に対峙する。
うぉぉぉぉぉ!リルム式ロロット砲!
君が背後に意識を向けたとき、狙いすましたかのようにリルムが前方から姿を見せた。
苦渋の決断……とでも言いたげな声で、アリエッタがどこからか本を取り出した。
それは特大で分厚い、壁と見紛うほどの一冊の本だった。
story
前方から姿を現したリルムは、直進する君たちに向けて、魔法を放った。
アリエッタが取り出したのは、壁と見紛うほどの分厚い本だった。
どんな魔法なのか……
アリエッタは本を自分の前に立てて――
リルムの魔法を防いでしまった。
盾……いや、盾!?魔道障壁や、魔法による打ち消しではなく、本の盾……!?
グレェェートーー!!
ザッーー。
…………。
うわあ!杖がない!
どこかでエターナル・ロアを紛失したらしい。
リルムは追ってこなかった。
今ごろ、大事な杖を探しているのかもしれない。
すっかり目を回してしまったらしいウィズが、そんなことを呟いた。
君もまた、地に足をつけた瞬間、安堵の表情を浮かべてしまっていた。
初めて会ったときも言っていたけど、どうして優勝したいの?と君は問いかける。
鍵の杖とか、毎日磨いてるし!あはは!
優勝者には、賞金と魔術書が賞品として与えられるらしい。
どれほど役立つものなのか、この異界のことを君はまだ理解できていない。
――あんな魔法を撃っていたら、えらい人とやらも怒るだろう、と君は思う。
あっけらかん、と言い放つアリエッタ。
それは困るよ、と君は言う。
このタイミングで魔法を撃ち合ったら、また街が大変なことになる。
曲がり角から、ソフィが顔を覗かせていた。
見つかってしまった、と思い君は身構える。
奇妙な声を上げて、アリエッタが倒れた。
アリエッタが、よろよろと立ち上がる。
手に持ったあの“箱”から何か出てきたようにも見えたが……。
それを訊く前に、エリスが切り出した。
***
『我だ。我を拾うのだ――』
そんな声がどこからか聞こえてきた気がして、君はあたりを見回した。
しかし、そんな声を発するものはどこにもない。
……エリスが話を始める寸前に、強そうな武器を持った魔道士が襲ってきたが、
一気に撃退してしまった。
キミは、ちょっと申し訳ないことをしたと思ったけれど、これはれっきとした大会だ。
本来なら、魔道障壁がその魔力を取り込み、より強固になるの……。
エリスが事情を説明している。
明らかに吹きなれていない口笛を鳴らしながら、アリエッタが目を背ける。
君は、えっ!?と声を上げる。
失礼なことかもしれないが、レナの言うとおり、
超一流の破壊力だけを持っているのだと思っていたからだ。
魔道障壁は、街を守るため――そして、古の悪い魔道士を封印するため、機能している。
しかし、それを作り上げたアリエッタが、見事に破壊して回っているという……。
エリスが言うところによると、それが続いてしまうと、封印した魔道士が出てきて、
とてつもなくまずいことになるらしい。
エリスがため息混じりに口にする。
アリエッタの腕を掴み、エリスが歩き出す。
エリスが君にそう言葉を投げかけたときだった。
レナとリルムが駆け足で近寄ってくるのが見えた。
と、ソフィが教えてくれる。
アリエッタが“箱”の餌食になった。
でかい!
とりあえず魔じょ――じゃなくて、杖探しに行ってみる?一時休戦ってことにして。