【黒ウィズ】アルティメットワーキングガールズ! Story4
story
先立ってCランクマドーワーカーに昇格したソフィ、エリス、イーニアに続けとばかりに、君たちは試験に臨んでいた。
社会性が上がったと言えども、使える魔力は知れている。
一撃外したら終わり――そんな極限状態、本来であれば滅多にないことだが、マドーワークではそれが日常だ。
ここは、使い慣れたカードで勝負する。
君は限られた魔力を有効活用するため、教官の動きに気を配りつつもカードとじっくり対話する。
徐々に魔力を込める。精霊の鼓動を指先で感じる。精神がどこまでも研ぎ澄まされていく。
何度も真名を答え、慣れ親しんできた精霊。今、改めて、その名をしっかり確かめるように詠ずる。
力を示せ……超越の金剛龍――インフェルナグ!
雄々しき雷撃が唸りを上げ、教官を飲み込んだ。
やっぱインフェルナグいいわぁと君は思った。
既に合格を決めているリルム、レナとハイタッチをかわす。
NO!君はきっぱりと断る。
アリエッタは「わはは」と笑うこともなく、試験会場の中心へと静かに歩いていく。
それは決して緊張などではなく、尋常ならざる集中であった。
***
アリエッタの動きは洗練されていた。
魔力の総量はやりたい放題時代と比べればガクンと落ちるが――
魔法の威力自体は遜色ない。魔力の伝え方に無駄がないのだろう。
最後のひとりとなった教官が、謎光線を放ちながらアリエッタに接近する。
アリエッタは光線を必要最低限の動きでかわす。
そして、力任せに角材をぶんぶん振り回すことなく――
間合いをはかって一閃。敵が完全に倒れるまで、集中を切らさない。
やがて、どさりと音を立てて教官が倒れた。
会場の魔道ビジョンが明滅し、アリエッタの合格を伝えた。
先ほどまでの真剣な表情はどこへやら。破顔したアリエッタが駆け寄ってきて、君たちに飛びつく。
君は合格の喜びを分かち合いつつも、空恐ろしさを感じていた。
アリエッタの戦闘に対する嗅覚は、間違いなく鋭くなっている。
そして、勝利に慢心することもない。
学び、成長する怪獣というわけだ。
あるいはここマドーワークでの出来事が、アリエッタの魔法に大きな影響を与えることになるのかもしれない。
story
順調に昇格試験をクリアしていき、君たちはついにBランクマドーワーカーになった。
君はありがたく社会パンを頂戴する。
社会パンとは、オーガニックだかフェアトレードだかの、社会的な穀物が使われたいい感じのパンである。
1個500ソーシャルと少々お高めだが、これを食べると社会性が1000上がる。
なので理論上は社会パンを食べ続ければ無限に社会性を上げられるが、1個で結構おなかにたまるのでそんなに食べられなかった。
うん、社会の味がするね。
そんな社会的な会話を、朝の座学ルームでかわしていると――
筋肉と社会性を誇示するように鬼教官がやってきた。
見た目と言葉遣いはアレだが、ソフィ並の社会性を誇る人格者である。
鬼教官はマナーブックを君たちに投げつけ、去っていった。
でも、よくわからない罵倒は反応に困るからやめてほしい。
story
ついにAランク昇格試験、鬼教官との戦いが始まる。
試験会場で戦闘準備を終えると、じわりと社会性が上がる。
そして、部下を従えた鬼教官が会場に姿を見せる――
レナとリルムがぴたりと同じ角度でお辞儀をする。
かくいう君も、同じ角度で頭を下げている。この日のために何度も練習したのだ。
君たちの社会性がみるみる上昇していく。
全員まとめてかかってきやがれ。ただし、俺も手加減なしでいくぞコラァ!
試験はチーム戦。ならばソフィさんここはひとつお願いします――という顔をしている者は、誰ひとりいなかった。
積んできた訓練と今の社会性に自信と衿持を持っているのだ。
アリエッタが弾かれたように動き出し、教官目がけて突っ込んでい<。
御社と叫ぶたびにアリエッタの社会性が上がっていく。
敵陣深くで角材一閃。
無駄なく込められた魔力、その威力は絶大。5人の教官をまとめて場外にふっ飛ばした。
鬼教官の後ろに控えていた教官たちの口から謎光線が放たれる。
リルムは弊社連呼で社会性を上げ――
巧みな杖さばきで光線を弾いていく。
エターナル・ロアは傷ひとつついていない。弊社連呼がなければ、今頃粉々になっていただろう。
投げ放たれたエターナル・ロアが地面に刺さった衝撃で、幾人もの教官が吹き飛ぶ。
マナーってこういうことだっけなと思いつつ、君もカードに魔力を込めながら、勉強したマナーを詠唱する。
拝啓――貴社益々ご清栄のこととお慶び申し上げます!
story
貴社の発展を祈るかの如き爆炎が上がり、一般教官はほぼ壊滅した。
答えられたらてめえらの社会性がアップする、間違えたら社会性がダウンする。マナーの地力が問われるってわけだ。
鬼教官が問題を出そうとした瞬間、レナの魔法が爆ぜた。
なるほど!と思ったが、爆炎の向こう側で出題が続いているような――
不運にも誤答してしまったようだ。エリスの社会性が著しく下がった。
鬼教官はアリエッタの角材をかわしながら、すらすらと問題を出す。さすがソフィ並の社会性を持つ存在だ。
そしてアホ面としか言われていないのに解答者が自分だと思うリルムである。
レナとリルムの社会性が著しく下がった。
アリエッタは角材を振りながら解答する。
相変わらずの妙な罵倒のせいで、君の頭の中は泥まみれのシャケフレークを提供するレストランでいっぱいになる。
イーニアは解答するなり攻撃魔法を放つ。先ほどよりも威力が増している。どうやら正解のようだ。
ソフィが答えた瞬間に社会性が上がり、放った攻撃魔法は鬼教官の顔を歪ませた。
へえ、自分のハンカチ使っちゃいけないんだーと君は思った。
これみんなも知らなかったんじゃないのと周りを見回すが、へえーという顔をしているのは君だけだった。
リルムは知らなかったよね?
アリエッタは知らないでしょ!?君はすがる思いでアリエッタに尋ねる。
解答者でもないのに君の社会性が下がった。社会性以上に、なんかこう、気分が沈んだ。
その後もなんだかしゃらくさい問題を出され、君たちの社会性は上がったり下がったりした。
そこで改めて痛感したのは、チーム戦は足し算ではないということだ。
鬼教官と正面からやり合える社会性を持っているのは、ソフィだけ。
社会性を高い水準で保っているエリスやイーニアですら、苦戦を強いられる。
ソフィはそんな仲間たちを守りながら戦っているため、本領を発揮しきれていないのだ。
このままではジリ貧。鍛え直して再試験かと思いかけたとき――
君たちはきょとんとした。が、すぐにソフィを信じてうなずく。
相手より低くだと思う人は魔道ビジョン側に、高くだと思う人は入退場ゲート側に行ってくださーい!
この問題はわざと間違えなければならない。名刺交換のとき、自分の名刺は相手より――
高い位置で渡す。
君は魔道ビジョン側に駆けていこうとするアリエッタの腕をつかんで、入退場ゲート側に向かった。
君たちは入退場ゲート側に集まった。魔道ビジョン側には、鬼教官がいる。
まあこのレベルの問題じゃ、大して社会性が上がりもしねえし、下がりもしねえが。
鬼教官の言う通りで、君たちの社会性はわずかに下がった――
その直後、突如として君たちの社会性が上がり始める。
なにが起きたのかわからないが、社会性が上がったのは事実。君たちは鬼教官に総攻撃を仕掛ける!
***
君たちの猛攻を受け、ついに鬼教官が倒れた。
ソフィたちは下座に位置取ることによって、社会性を上げたの。
なるほど、そういうことだったのか。……という顔をしつつも、君は〝シモザ〟という概念がよくわからなかった。
アリエッタもわかってない感じだったので、少し安心した。やっぱり仲間がいるってのはいいものだ。
喜ぶアリエッタの横で、ソフィが悲しげに瞼を伏せる。
ゆったりとした足取りで、サネーが近づいてくる。
……もっとも、私はまだあなたの本気を見ていませんがね。アポが気になるなら、ビジネスモードになったらいかがですか?
君たちの中で圧倒的な社会性を誇っていたソフィは、本気じゃなかった!?
でも、ここから出してもらえないってことなら、そうも言ってられないね。
ソフィの社会性が――爆発的に上がった。
君は立っていることすらできない。うずくまって吹き飛ばされないようにこらえるのが精一杯だ。
ソフィの社会性を計測しただけで、鬼教官は失神した。
あのアリエッタが怯えあがり、君にすがりついている。それほどまでにソフィの力は凄まじかった。
しかし――更なる衝撃が君を襲う。
社会性5兆のCEOソフィと相対しても、サネーは顔色ひとつ変えないのだ。
ソフィが放った衝撃と同等――いや、それ以上の衝撃波が君たちを襲う。
ソフィさんが地上の巨人であるとしたら、私は天の神なのです。どれだけ社会性を高めようと、私には勝てないのですよ。
サネーは優雅とさえ言っていい動きでソフィに近づき、君たちに見せつける。
社会性5兆の巨人が、あっさりと腕を捻られる様を。
リルムが投げ放ったエターナル・ロアをサネーは虫でも払うかのように弾く。
エターナル・ロアは場外へと吹き飛ばされた。
君もカードに魔力を込めながらサネーヘと詰め寄る。黙って見ているわけにはいかない!
たった一瞬の閃光。気づいたときには、試験会場の壁に叩きつけられていた。
圧倒的な余裕の笑みを浮かべたサネーは、投げ飛ばしたソフィに回復魔法をかけた。
外の世界では着々と計画が進行しています。先生たちの時代は……もうすぐ終わるのです。
story
mこれは……国際的魔道犯罪……!
真相に辿り着いたミツボシは愕然としていた。
先日の発表で、魔道界と経済界に激震が走った。ソフィ・バーネットが異端告発されたのだ。
ハーネット商会内部からの告発だった。CEOのソフィ・バーネットは禁忌に触れる異端魔道実験を行っている。
さらに実験によって得た異端の力を、魔道士協会筆頭理事エリス=マギア・シャルムに不正譲渡していると。
m誰かが……ソフィさんとエリスさんを陥れようとしています……。
いえ……魔道士協会とハーネット商会を乗っ取るつもりです……!
ミツボシには異端疑惑が誤解である――いや、証拠裡造であるとわかっていた。
mソフィさんが行っていた〝空間a〟に関する魔道実験は異端じゃありません……。
あまり力になれなかったとはいえ、ミツポシ自身が空間aに関する実験の一環である四次元魔道解析に協力している。
ハーネット商会が提出した証拠は、空間aに関する実験内容を改竄して、異端信仰と結びつけたものになっていた。
mしかもエリスさんへの譲渡記録なんて……胃薬の購入記録を改竄したものです!
それに関して衝撃だったのは、魔道士協会内部からの証言も加わったことだ。
何人かの理事が、エリスの異端を認める証言をしている。
m異端はまずい……まともな手順を踏まずに問答無用(クラシックスタイル)で裁かれてしまいます。
このタイミングで、ソフィ、エリス、イーニアがマドーワークから帰ってこないのは、決して偶然ではないだろう。
マドーワークが新設された島は、小国の王族より魔道士評議会に譲渡されたものだった。
単なる島ではない。太古の昔に異端の魔道士ゲゼルが封印された地なのだ。
m土地ならいくらでもあるのに、わざわざそんな島を選ぶなんて……。絶対になにかあります。
黒幕はおそらく魔道士評議会でしょう……。ですが、敵は評議会だけではありません。
魔道士協会とバーネット商会の内部に裏切者がいますし、魔道士機構の動きも怪しいです……。
ミツボシは力なくその場にくずおれる。
mこんなの……わたくしひとりでは……どうしようもありません……。
そんなミツボシの心の中で、イーニアが昔かけてくれた言葉がふっとよみがえった。
mあ、違いました……こっちじゃない。
m先生……わたくし……やってみせます!
まずはエリスを異端だと証言した理事連中のスケジュールを調べ上げる。
近々、ハーネット商会役員と魔道士評議会幹部を中心とした会合があるようだ。その他団体も含め、出席者は合わせて15人。
m15人の魔道士が相手だなんて。……まるで先生の逸話みたいです。
〝ストラマー〟のように華麗に戦う――そんな甘い幻想は、すぐに捨てる。
m……わたくしにはわたくしの戦い方があります。政治的な問題でもありますし、ここを叩くためには、後ろ盾が必要です!
今回の騒動に関して、魔道士連盟は少なくとも積極的には動いていない。
m協会内部の裏切り者を洗い出しつつ、連盟に共闘を持ちかけます。
あとは先生の人脈をフル活用して力になっていただける人を見つければ……。
本当にうまくいくのだろうか?
m……大丈夫。うまく立ち回れます。わたくしはグリモワールグランプリの優勝者。
・アリエッタさんにも負けない〝最強〟の魔道士!
先立ってCランクマドーワーカーに昇格したソフィ、エリス、イーニアに続けとばかりに、君たちは試験に臨んでいた。
社会性が上がったと言えども、使える魔力は知れている。
一撃外したら終わり――そんな極限状態、本来であれば滅多にないことだが、マドーワークではそれが日常だ。
ここは、使い慣れたカードで勝負する。
君は限られた魔力を有効活用するため、教官の動きに気を配りつつもカードとじっくり対話する。
徐々に魔力を込める。精霊の鼓動を指先で感じる。精神がどこまでも研ぎ澄まされていく。
何度も真名を答え、慣れ親しんできた精霊。今、改めて、その名をしっかり確かめるように詠ずる。
力を示せ……超越の金剛龍――インフェルナグ!
雄々しき雷撃が唸りを上げ、教官を飲み込んだ。
やっぱインフェルナグいいわぁと君は思った。
既に合格を決めているリルム、レナとハイタッチをかわす。
NO!君はきっぱりと断る。
アリエッタは「わはは」と笑うこともなく、試験会場の中心へと静かに歩いていく。
それは決して緊張などではなく、尋常ならざる集中であった。
***
アリエッタの動きは洗練されていた。
魔力の総量はやりたい放題時代と比べればガクンと落ちるが――
魔法の威力自体は遜色ない。魔力の伝え方に無駄がないのだろう。
最後のひとりとなった教官が、謎光線を放ちながらアリエッタに接近する。
アリエッタは光線を必要最低限の動きでかわす。
そして、力任せに角材をぶんぶん振り回すことなく――
間合いをはかって一閃。敵が完全に倒れるまで、集中を切らさない。
やがて、どさりと音を立てて教官が倒れた。
会場の魔道ビジョンが明滅し、アリエッタの合格を伝えた。
先ほどまでの真剣な表情はどこへやら。破顔したアリエッタが駆け寄ってきて、君たちに飛びつく。
君は合格の喜びを分かち合いつつも、空恐ろしさを感じていた。
アリエッタの戦闘に対する嗅覚は、間違いなく鋭くなっている。
そして、勝利に慢心することもない。
学び、成長する怪獣というわけだ。
あるいはここマドーワークでの出来事が、アリエッタの魔法に大きな影響を与えることになるのかもしれない。
story
順調に昇格試験をクリアしていき、君たちはついにBランクマドーワーカーになった。
君はありがたく社会パンを頂戴する。
社会パンとは、オーガニックだかフェアトレードだかの、社会的な穀物が使われたいい感じのパンである。
1個500ソーシャルと少々お高めだが、これを食べると社会性が1000上がる。
なので理論上は社会パンを食べ続ければ無限に社会性を上げられるが、1個で結構おなかにたまるのでそんなに食べられなかった。
うん、社会の味がするね。
そんな社会的な会話を、朝の座学ルームでかわしていると――
筋肉と社会性を誇示するように鬼教官がやってきた。
見た目と言葉遣いはアレだが、ソフィ並の社会性を誇る人格者である。
鬼教官はマナーブックを君たちに投げつけ、去っていった。
でも、よくわからない罵倒は反応に困るからやめてほしい。
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ついにAランク昇格試験、鬼教官との戦いが始まる。
試験会場で戦闘準備を終えると、じわりと社会性が上がる。
そして、部下を従えた鬼教官が会場に姿を見せる――
レナとリルムがぴたりと同じ角度でお辞儀をする。
かくいう君も、同じ角度で頭を下げている。この日のために何度も練習したのだ。
君たちの社会性がみるみる上昇していく。
全員まとめてかかってきやがれ。ただし、俺も手加減なしでいくぞコラァ!
試験はチーム戦。ならばソフィさんここはひとつお願いします――という顔をしている者は、誰ひとりいなかった。
積んできた訓練と今の社会性に自信と衿持を持っているのだ。
アリエッタが弾かれたように動き出し、教官目がけて突っ込んでい<。
御社と叫ぶたびにアリエッタの社会性が上がっていく。
敵陣深くで角材一閃。
無駄なく込められた魔力、その威力は絶大。5人の教官をまとめて場外にふっ飛ばした。
鬼教官の後ろに控えていた教官たちの口から謎光線が放たれる。
リルムは弊社連呼で社会性を上げ――
巧みな杖さぱきで光線を弾いていく。
エターナル・ロアは傷ひとつついていない。弊社連呼がなければ、今頃粉々になっていただろう。
投げ放たれたエターナル・ロアが地面に刺さった衝撃で、幾人もの教官が吹き飛ぶ。
マナーってこういうことだっけなと思いつつ、君もカードに魔力を込めながら、勉強したマナーを詠唱する。
拝啓――貴社益々ご清栄のこととお慶び申し上げます!
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貴社の発展を祈るかの如き爆炎が上がり、一般教官はほぼ壊滅した。
答えられたらてめえらの社会性がアップする、間違えたら社会性がダウンする。マナーの地力が問われるってわけだ。
鬼教官が問題を出そうとした瞬間、レナの魔法が爆ぜた。
なるほど!と思ったが、爆炎の向こう側で出題が続いているような――
不運にも誤答してしまったようだ。エリスの社会性が著しく下がった。
鬼教官はアリエッタの角材をかわしながら、すらすらと問題を出す。さすがソフィ並の社会性を持つ存在だ。
そしてアホ面としか言われていないのに解答者が自分だと思うリルムである。
レナとリルムの社会性が著しく下がった。
アリエッタは角材を振りながら解答する。
相変わらずの妙な罵倒のせいで、君の頭の中は泥まみれのシャケフレークを提供するレストランでいっぱいになる。
イーニアは解答するなり攻撃魔法を放つ。先ほどよりも威力が増している。どうやら正解のようだ。
ソフィが答えた瞬間に社会性が上がり、放った攻撃魔法は鬼教官の顔を歪ませた。
へえ、自分のハンカチ使っちゃいけないんだーと君は思った。
これみんなも知らなかったんじゃないのと周りを見回すが、へえーという顔をしているのは君だけだった。
リルムは知らなかったよね?
アリエッタは知らないでしょ!?君はすがる思いでアリエッタに尋ねる。
解答者でもないのに君の社会性が下がった。社会性以上に、なんかこう、気分が沈んだ。
その後もなんだかしゃらくさい問題を出され、君たちの社会性は上がったり下がったりした。
そこで改めて痛感したのは、チーム戦は足し算ではないということだ。
鬼教官と正面からやり合える社会性を持っているのは、ソフィだけ。
社会性を高い水準で保っているエリスやイーニアですら、苦戦を強いられる。
ソフィはそんな仲間たちを守りながら戦っているため、本領を発揮しきれていないのだ。
このままではジリ貧。鍛え直して再試験かと思いかけたとき――
君たちはきょとんとした。が、すぐにソフィを信じてうなずく。
相手より低くだと思う人は魔道ビジョン側に、高くだと思う人は入退場ゲート側に行ってくださーい!
この問題はわざと間違えなければならない。名刺交換のとき、自分の名刺は相手より――
高い位置で渡す。
君は魔道ビジョン側に駆けていこうとするアリエッタの腕をつかんで、入退場ゲート側に向かった。
君たちは入退場ゲート側に集まった。魔道ビジョン側には、鬼教官がいる。
まあこのレベルの問題じゃ、大して社会性が上がりもしねえし、下がりもしねえが。
鬼教官の言う通りで、君たちの社会性はわずかに下がった――
その直後、突如として君たちの社会性が上がり始める。
なにが起きたのかわからないが、社会性が上がったのは事実。君たちは鬼教官に総攻撃を仕掛ける!
***
君たちの猛攻を受け、ついに鬼教官が倒れた。
ソフィたちは下座に位置取ることによって、社会性を上げたの。
なるほど、そういうことだったのか。……という顔をしつつも、君は〝シモザ〟という概念がよくわからなかった。
アリエッタもわかってない感じだったので、少し安心した。やっぱり仲間がいるってのはいいものだ。
喜ぶアリエッタの横で、ソフィが悲しげに瞼を伏せる。
ゆったりとした足取りで、サネーが近づいてくる。
……もっとも、私はまだあなたの本気を見ていませんがね。アポが気になるなら、ビジネスモードになったらいかがですか?
君たちの中で圧倒的な社会性を誇っていたソフィは、本気じゃなかった!?
でも、ここから出してもらえないってことなら、そうも言ってられないね。
ソフィの社会性が――爆発的に上がった。
君は立っていることすらできない。うずくまって吹き飛ばされないようにこらえるのが精一杯だ。
ソフィの社会性を計測しただけで、鬼教官は失神した。
あのアリエッタが怯えあがり、君にすがりついている。それほどまでにソフィの力は凄まじかった。
しかし――更なる衝撃が君を襲う。
社会性5兆のCEOソフィと相対しても、サネーは顔色ひとつ変えないのだ。
ソフィが放った衝撃と同等――いや、それ以上の衝撃波が君たちを襲う。
ソフィさんが地上の巨人であるとしたら、私は天の神なのです。どれだけ社会性を高めようと、私には勝てないのですよ。
サネーは優雅とさえ言っていい動きでソフィに近づき、君たちに見せつける。
社会性5兆の巨人が、あっさりと腕を捻られる様を。
リルムが投げ放ったエターナル・ロアをサネーは虫でも払うかのように弾く。
エターナル・ロアは場外へと吹き飛ばされた。
君もカードに魔力を込めながらサネーヘと詰め寄る。黙って見ているわけにはいかない!
たった一瞬の閃光。気づいたときには、試験会場の壁に叩きつけられていた。
圧倒的な余裕の笑みを浮かべたサネーは、投げ飛ばしたソフィに回復魔法をかけた。
外の世界では着々と計画が進行しています。先生たちの時代は……もうすぐ終わるのです。
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アリエッタは向上心がなくなり、無気力人間と化していた。
いくら頑張ってもサネーより強くなれないマドーワークの仕組みに失望したのだ。
こんなろくでもない社会で、やってみたい仕事があるとすれば……。
一拍の間を置いてから、ソフィの目の色が変わった。
ソフィは座学ルーム内でほうきにまたがり、爆速でどこかへ飛んでいった。
アリエッタは………………出馬した。
アリエッタの演説を聞いたマドーワーカーたちが集まってくる。無断で始めた演説だが、教官はぼけっと立ったまま注意もしない。
結構、権力とか持ってる感じの人がそう言ってるので、かなり確かな評判でございます。
えー公約とかも、お送りするので、がっつり盛りだくさんでこうご期待です!
政治家やれともサネーに勝てるとも言われてないが、ソフィのテンション感的には言われたも同然だとアリエッタは思っていた。
はい、エリスもなんか言って!
魔道メガホンを渡されたエリスは戸惑いながらも応援演説を始める。
……ああ、ダメねこれ。メガホン持つと全然うまく喋れないわ。
やらかしが目に余ることもありますが、ここマドーワークに来てからというもの、心を入れ替えて、真面目にやってます。
エリスはしばし考え込んでから、演説を再開する。
私自身、魔道士協会筆頭理事の座に就いてからというもの、多くのことを学び、成長することができたと自負しております。
稀代の天才と呼ばれるこのアリエッタが、正しく成長できたとしたら、社会はどんなに良くなることでしょうか!」
これ……なんか喋ってるうちに気持ちよくなってくるわね。
エリスはぐっと拳を握りしめ、演説を続ける。
それは幸福な社会のためであり、アリエッタの幸福のためでもあります!」
エリスの演説が熱を帯びてくる。集まったマドーワーカーたちも、熱心な演説にすっかり聞き入っている。
それがエリス=マギア・シャルムの夢であり、誉れであります!そのためなら胃など惜しくありません!」
アリエッタが胃だと思っているその器官は、心であった。
アリエッタ・トワに!私が胃を痛めて育てたアリエッタ・トワに清き1票をお願いいたします!」
そんな歓声が、至るところで上がっている。しかし場の盛り上がりに反して、アリエッタは悲痛な表情を浮かべていた。
アリエッタはたまらずエリスから魔道メガホンを取り上げる。
胃だと思っている器官が、じくじくと痛んでいた。
政治家ってこういうノリで嘘ついてるのかしら。
社会性のない押し問答を繰り返していると、砂ぼこりを巻き上げながらソフィがほうきで飛んできた。