【黒ウィズ】アルティメットワーキングガールズ! Story5
story
作戦決行の日は、晴れであった。
皆さんこんにちは。リルム・ロロットのグレェェート・ジャァァアナリズムの時間です。
サネー・ウェスト氏が定める社会性に不正疑惑が持ち上がっています。実社会で通用しない可能性が出てきました。
今日は、とある団体で要職を務めているEさんにインタビュゥゥウです。
私は社会性を不当に低くされました。社会貢献につながる封印魔法を使うたびに、えげつないほど社会性を下げられたのです。
EさんはABBを使うたびに社会性が下げられていました。
しかし実社会のEさんは魔道士協会の筆頭理事を務めるすごい人です。
とある団体の実名出しちゃってるぞ。
そして我々がつかんだ情報によりますと、かってサネー氏はEさんとの出世競争に敗れたという経緯があります。
それだけじゃありません。マドーワークの訓練カリキュラムにもおかしな点があります。
職業訓練でレースクイーンをやったのですが、マドーワークではレースが開催されていないんです。
これらについて、専門家はどう見ているのでしょうか。偉い人に来てもらいました。
実社会と乖離した社会性の基準、杜撰な訓練カリキュラム。
さらには、気に入らない者は卒業させないという著しく公平性を欠く決定も日常的に行われています。
サネー氏に支配され続けていたら、真の社会性を手に入れられないどころか、一生マドーワーク暮らしということもありえます、
「マドーワーカーよ、今こそ立ち上がれー!」
わー、驚きの偶然です。なんとサネー氏による支配からの脱却を訴える政治家の人がいました。
魔道炊き出しもあるぞー!
魔道炊き出しもあるそうです。カレーとシチューとうどんの匂いがしています。ちょっとインタビュゥゥウしてみましょう。
どうも、魔道の明日を担う次世代のりーダー、アリエッタ・トワです。
カレー、シチュー、うどんとありますが、シチューうどんはありますか?
あったらいいなを実現するのがアリエッタの流儀。ゆえに、シチューうどんはある!
というわけでですね、さっそく、シチューうどんのほう、いただいてみましょう。
政治家インタビューからの食レポってやんちゃな構成だな。
……おおっ、これは、実際に食べないと魅力がわからないやつです。
食をレポしろ。
というわけで、サネー氏の支配に抗議しながらシチューうどんが食べられるのは治安最悪区域の暴動フェス会場だけです。
マドーワーカー諸君!わたしと一緒に暴れよう!きっと楽しい思い出になるよ!
意外にも暴動フェス会場にはたくさんのマドーワーカーが集まった。みんな日頃から暴れたいと思っていたのだ。
一部のマドーワーカーたちは早くも魔道火炎ビンを建物に向かって投げている。
私たちもソフィちゃんの指示通り、派手に暴れないとね!
おいおめえら、なにやってんだ!
騒ぎを聞きつけた教官が群れをなしてやってきた。
先ほどまで活き活きと火炎ビンを投げていたマドーワーカーたちは、アリエッタの後ろに隠れる。
「マドーワーカーたちよ、怯えるな!我が魔道選挙カーに搭載された主砲は強力だ!」
もはや選挙要素ゼロだな。
魔道砲、発射ぁあああああああ!
閃光。爆音。魔道砲が直撃した教官の外側が燃え上がり、内側が逃げ出していく。
それじゃあ私たちも予定通りいくとしますか!
暴動の指揮を執るのはレナだ。破壊衝動と理性を絶妙なバランスで併せ持つ、希少な人材である。
エリス、鼓舞をお願い!
エリスは力強くうなずくと、マドーワーカーたちの輪の中に入っていき、レースクイーンの旗を高く掲げる。
私たちが起こすのは単なる暴動ではありません!不当な支配への抗議です!マドーワーカーたちよ!この旗のもとに集え!
エリス率いる遊撃隊は裏路地を駆けながら街を破壊していく。
アリエッタは砲撃と演説でマドーワーカーの暴動を後押し!
「マドーワーカー諸君!教官如き恐るるに足らず!甘美なる革命の音を聞けえええい!」
魔道砲の轟音が響き渡り、マドーワーカーたちが沸いた。
暴徒を引き連れ、魔道選挙カーは職業訓練街の中心部へと向かっていく。
これは一体なんの騒ぎですの?マドーワーカーたちはどれほど愚かなのかしら。
教官たちでは収拾がつかないと判断したのか、ついにサネーが職業訓練街に現れる。
ふふっ……しかし、すぐに鎮圧できるでしょう。こんな野蛮なことをしていたら社会性はガタ落ち、魔力はすぐに底をつく。
サネーの言う通りだった。暴れたら暴れただけ社会性が下がってしまう。
しかしサネーよ。職業訓練街に出向いてきたお前の負けだ。
イーニアは静かにひとりごち、笑った。
この暴動は……陽動に過ぎない。
***
こっちだよ、黒猫さん!
君とソフィはマドーワーク上層内部を移動していた。
たどり着いたのは、複数ある座学ルームのうちのひと部屋。
ここに〈社会性=魔力〉の結界があるのかにゃ?これといっておかしな気配は感じないにゃ。
ここに入口があるはず。大気中に残留している魔力を四次元魔道解析したの。
四次元……魔道……解析?聞き慣れない言葉に固まっていると、ソフィが説明してくれる。
空気中に残ってる魔力の性質を調べて、その場所で過去にどんな魔法が使われたかを調べる技術だよ。
さすがソフィだね。結局よくわからないが、さすがソフィだなあと思ったので、君はそう言った。
このあたりかな……えいっ!
ソフィの指先から放たれた鋭い一条の雷が、床へと降り注ぐ。
床の下には、階段があった。
みんな今頃暴れまくってるはずにゃ。もう、社会性が尽きてるかもしれないにゃ……。
サネーさんはソフィたちの命を狙ってるわけじゃないと思う。命が狙いなら、ソフィたちはもうやられてるはずだもん。
生かしておいて、何かに利用するつもりなのかも。
とはいえ、安心もできない。君がそうつぶやくと、ソフィは重々しくうなずく。
絶対に生かしておきたいわけじゃなくて、なるべく生かしておきたい程度の存在かもしれないからね……。
君たちは逸る気持ちで薄暗い通路を駆けていく。
アリエッタちゃんたちは暴れたら暴れただけ魔力が落ちる。早くしないとサネーさんにやられちゃう。
だけど……アリエッタちゃんたちの暴動は、ただの陽動じゃない。
ソフィたちが魔法陣を描き換えた瞬間に最強になる……〝革命〟なの!
story
いけっ、魔道ひよこたちよ!
イーニアがひよこを路上にばらまく。すると立ち向かってくる教官たちの足が止まる。
マドーワーカーはガンガンぶちのめせるけど、ひよこを蹴散らすのはちょっとなァ。
すごい悪いことしてる気分になるよね。なんかシンパシーも感じるし。
そんなやりとりをしている教官たちを、レナが容赦なく燃やしていく。
魔道ホースの先から炎を噴射する、いかれた消防士である。
よし!この戦術いい感じ!やっぱひよこ強いわ。
しかしひよこ戦術を知った教官たちは、接近せずに遠距離から謎光線を放つようになる。
底辺らしいしょっぼい暴動ですねえ。どんどん威勢が弱くなってますよー。これのどこが革命なんですかー?
サネーは自ら手を下すことなく、教官隊によって蹂躙されるマドーワーカーたちを愉悦の表情で眺めている。
暴動によって社会性が下がり、徐々に疲弊していく暴徒たちを、じっくり観察でもするかのように。
しかし暴動/陽動組の目的は時間稼ぎだ。サネーを下層に留めておけさえすればよい。
先生は気づいてました?サネーがこれだけヤバいやつだって。
レナとイーニアは魔道選挙カーの陰に隠れて教官隊の攻撃をやり過ごしていた。
少々プライドが高い魔道士だとは思っていたが、まさか私たちをマドーワークに閉じ込めて何かを企むような奴だとは思っていなかった。
完全に一線、超えちゃってますもんね。
そこへきてレナは、確かに悪ノリが過ぎるが、扱いやすい優等生だ。
扱いやすい優等生と言われたレナはわざとらしく口をゆがめる。
そういうこと言われると、悪ノリ派はへそ曲げるんですよ。
レナは素早く駆け出すと、不満をぶつけるかのように魔道火炎ビンを教官隊に放り投げ、再び魔道選挙カーの陰に隠れる。
私は優等生のお前に感謝しているのだ。アリエッタやリルムの手本として、よくやってくれている。
そういうつもりはあんまりなかったですけど。
いきなりエリスやソフィのような聞きわけのいい優等生になれと言っても、あの子らには無理だ。
だが、レナ程度の優等生なら、ギリなんとかいけるかもしれない。
……それ褒めてるんですか?
今度はイーニアが魔道選挙カーの陰から飛び出し、魔道手榴弾(パイナップル)を教官隊に放り投げる。
……私は自分の魔道を歩んでいる。だが、まさに今。私はお前たちと同じ道の上で、暴れている。
……これがなかなかどうして、悪くない時間なのだ。ずっと暴れていたいとさえ思う。
とはいえ、これだけの破壊行為に及んだのだ。暴動/陽動組の社会性は最底辺にまで下がり、魔法らしい魔法も使えない状態にあった。
それに勘づいているであろうサネーが、煽り立ててくる。
いいことを教えて差し上げます。皆さんが革命ごっこをしている間に、外の世界では本物の革命が進んでいるんですよ。
魔道士協会は魔道士評議会の傀儡となり、ハーネット商会は資金源に。あなたたちの時代は終わってしまうのです。
……それが私たちをここに閉じ込めた理由、か。向こうも革命が成るまでの時間稼ぎをしていたわけだ。
思ってた以上にヤバいですね。かといって焦ったところでしょうがないし……。
……おっとこれはこれは。隠れている臆病者の暴徒さん!お仲間が捕らえられたようですよー!
サネーの足元で倒れているのは、遊撃隊を鼓舞していたエリスだった。
この■■■■■■を磔にして、火あぶりにでもしてあげましょうか。
エリスぅううううううううううう!
そのとき、マドーワーク上層部から凄まじい爆発音が響いた。
なっ、なにが起きた!?あああああっ!?上層部が!
もうもうと煙を上げる浮島のような上層部が、浮力を失ったのか降下している。
ソフィ……やったのか!?
結界を破壊するのは危ないから効果を書き換えるってソフィちゃんは言ってたのに……。
この爆発は……大丈夫……なのか?
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暗闇の中で、巨大な魔法陣に流れる魔力だけが煌々と光っていた。
すごく……邪悪な魔力にゃ……。
四次元廃道解析によると、この魔力はサネーさんのものじゃない。
この島に昔からあったもの。たぶん、封印された古代の魔道士の力を利用しているんだと思う。
これは〈社会性=魔力〉の結界でもあるけど、同時に古代の魔道士を封印するものでもあるの。封印しつつ、その魔力を利用する結界。
漏れ出る魔力だけでもこの邪悪さだ。もし結界を壊したら大変なことになる。
思った通り、術式の構造自体は難しくない。これなら描き換えられる。ただ……。
問題は、流れている魔力。魔法陣を描き換えるには、流れている魔力を一時的に逃がさないと。
そのために、君はソフィのお供に指名されたのだ。
たとえ黒猫さんの実力をもってしても、すごく危険なことだと思う。本当に……力を貸してくれるの?
任せて。君は静かに、しかし力強く答えた。
確かに社会性はないかもしれない。それでも魔道には自信がある。
厄介な敵と戦ってきた。強力な精霊の力を使いこなしてきた。経験に基づいた器用さがあると自負している。
社会性がなんだ。自分は魔道バカ一代だ!
それじゃあ……始めるよ、黒猫さん。頑張って!
ソフィがホウキの柄で、魔法陣の一端を突く。そこから漏れ出る魔力を、君は左手で受け止める。
禍々しい療気じみた魔力が全身を駆け巡る。思っていた以上にきつい。次第に精神が侵蝕されていく。
キミ、目がうつろにゃ!
黒猫さん!しっかり!
ウィズとソフィの声で意識をつなぎとめる。大丈夫、ソフィは魔法陣の描き換えに集中して。君はそう伝えて、カードを手にする。
この膨大な魔力を、カードに込める。一時的な魔力の貯蔵場所としてカードを使うのだ。
使うカードは、強力なものでなければならない。なにせこれだけの魔力なのだ。
君は究極(・・)のカードに、魔力を込めていく。
アリエッタ。
ソフィ。
レナ。
エリス。
イーニア。
リルム。
究極の少女たち(アルティメットガールズ)は、膨大な魔力を易々と蓄えていく。
そして、妙に懐かしい気持ちになってくる。
いろいろあった。というかいろいろ遭った。でも、なんだかんだで楽しかった……。
あとはこの定義を組み込むための……って黒猫さん!?今際の際の幻見てるっぽい顔だけど大丈夫!?
危ないところだった。とめどなく君の身体へと流れてくる魔力をカードに込めていかねば。
あと少しだから頑張ってソフィも頑張るから!
しかし、一度に扱えるカードの限界枚数を既に超えていた。
それでも、やるしかない。君はさらに3枚のカードを手にして瘴気じみた魔力を込める。
そして、ついに――
やった!魔法陣、描き換えられたよ!
安堵から、ふっと力が抜け――
その拍子に、追加で魔力を込めた3枚のカードが暴発する。
あ。(がおーっ!消し炭にしてくれる!!!)
ああ……。(キャッチ&ボンバーーー!!)
あああああああああああああああ!(超マジカルグレェェートリルム!いっくよーー!)
えげつない大爆発。
しかし、不幸中の幸いで魔法陣は無事だ。
かと思ったら、地面が揺れだした。そして地の底に沈んでいくような感覚。
これ、浮島になってた上層が沈んでるにゃ……?
いきなり反社会的行為に及ぶなんて、さすが黒猫さんだね!
〈社会性=魔力〉の魔法陣を〈反社会性=魔力〉に描き換えてすぐ、マドーワークの上層を壊しちゃうんだもん。
黒猫さんの反社会性、すっごく上がってる!
確かに、君の魔力がぐんと跳ね上がった。
さ、黒猫さん。みんなのところにいって、一緒に暴れちゃおう!
story
リルム式ニュース速報です!先ほど、ソフィちゃんと黒猫の人による革命が起きました!
今までとはあべこべです!これからは〈反社会性=魔力〉です!
速報を聞いたマドーワーカーたちが我先にと暴れだす。
教官どもはなにをしているのです!こうなってしまった以上、街を破壊して反社会性を高めなさい!
マドーワーカーと教官が入り乱れて、互いを攻撃し合いながら街を破壊していく。
地獄絵図であった。
中でもひと際地獄じみているのは、アリエッタとエリスだ。
アリエッタ!好きなだけ壊していいのは後にも先にもこの街だけよ!今のうちに楽しみなさい!
うおおおおお!街を壊せば壊すほど魔力がみなぎるうううう!
アリエッタが魔道選挙カーで砲撃しながら、建物を潰していく。
私も散々な目に遭った分、暴れさせてもらうわ!
エリスが教官たちを手当たり次第にあばばしていく。
すごい……あばばを使えば使うほど反社会性が高まっていく!
これずっとやり続けたくなるやつだわやめどきがないやつだわ!
家屋が倒壊する音と、教官のあばばという悲鳴が君の耳にこびりつく。
やめて、こないで!あっちいって!
君が地獄に圧倒されている隙に、いつの間にかソフィが教官に絡まれている。
しまった。ソフィは社会性が高いから、革命が起きた今となっては非力な少女でしかない。
君がにらみをきかせてカードを構えた瞬間、ソフィに絡んでいた教官がばたりと倒れた。
すごい……黒猫さん。〝圧〟だけで敵を倒しちゃうなんて。
地獄の中にあっても、マドーワーク上層を破壊した君の反社会性は飛びぬけているようだ。
おお、お前たち!よくやってくれたな!
君たちはイーニアたちと合流する。今まで暴動を起こしていた彼女たちは既に反社会性が高まっている。
はい、ソフィちゃん!石だよ!これで窓を割って!
早く反社会性を上げて、サネー倒しにいこう!
じゃあ、この魔道スーパーに投げてみる!
ソフィはぎこちない動作で投石し、魔道スーパーの窓ガラスを割る。
すると――ソフィの反社会性が急上昇した。たった1枚のガラスを割るだけで、上がる魔力はけた違いだ。
どうしてこんなに反社会性が上がるの!?
それはソフィが社会的地位のある人物だからだ。
言いつつ、イーニアも魔道スーパーに投石する。こちらもまた、反社会性の上がり方がすごい。
一介の魔道チンピラが悪事を働くより、ハーネット商会のC
Oが悪事を働いたほうが、社会に与える影響が大きいからね。
君たちは反社会的行為を繰り返しながら、サネーの元へと進んでいく。
***
反社会的な行為をしながら進む君たちに対し――反社会的な行為をしながら撤退するサネーたち。
互いに魔力を高めた状態で、ついに直接ぶつかり合う。
覚悟しろサネー!お前は完全に包囲されているぞー!
顔をしかめたサネーは、君たちに立ち向かおうとしている教官隊を自らの手で倒していった。
あれは……上官想いの部下を容赦なく殴ることで自分の反社会性を高めているのか!
教官が悲鳴を上げて倒れていくたび、サネーの反社会性が上がっていく。
ひどい……。組織のトップが部下を裏切るなんて!
サネー!諦めて降伏しなさい!私たちは暴動によって反社会性が高まっている。あなたに勝ち目はないわ!
ギリギリと歯ぎしりをするサネーを見て、君たちは一連の騒動の終結を感じた。
はずなのに。
なんの前触れもなく、サネーの反社会性が上がった。
……これは……なるほど。ははははっ……そうでしたわ!私はクッソ悪いことをしていたのです!
今になって私の反社会性が急上昇しているということは!汚い手を使った革命が!外の世界で進んでいるということ!
適当な効果に書き換えておけばいいものを!〈反社会性=魔力〉にしたのが運のつき!ぬかりましたね!この■!
サネーは巨悪と呼ぶにふさわしい、圧倒的な反社会性を放っている。
形勢は逆転してしまった。
みんな魔道選挙カーに乗って!撤退撤退!……あーやっぱりちょっと待って!
撤退を指示しかけたアリエッタがサネーを指さす。
サネーの魔力が……今度は下がってる!……ん?あれ、また上がった!?
サネーの魔力は小刻みに上がったり下がったりを繰り返している。
まさか……外の世界で革命を阻止しようとしている者がいるというのか!?
まるで社会性と反社会性が一進一退の攻防を繰り広げているかのようだ。
まだこっちが劣勢だけど……目がないわけじゃない!戦い方次第で勝てるかもしれない!
勝てる戦い方って、反社会的な戦い方?被害を最大限に広げる感じのやつ?
そういうの得意ー。
我も我もー。存在自体が反社会的だし。
確かに、ヘンタイって反社会的だもんね!
いや精神を乗っ取る魔杖的な意味でね!?
先生たちは、そういう戦い方できる?
臨機応変は魔道士の基本だ。
平気よ!私にはあばばがあるから!
ソフィもソフィなりの反社会性を見せます!
黒猫の魔法使いさんは……聞くまでもないよね!
黒猫のひとのローブの裏側には、いろんな国の言葉で「喧嘩上等」って刺繍が入ってるらしい。
入ってないから!
……いや。君は反社会性を意識して入ってるよと言い直す。見たらタダじゃおかないからね?
ひゅー!おっかなーい!
君たちは魔道選挙カーから飛び降りて、再びサネーと対峙する。
ええい!不安定だろうと私の反社会性のほうが高い!
サネーは教官もマドーワーカーも一緒くたに倒し、更に反社会性を上げる。
皆さまは革命を成したあとに奴隷としてかわいがって差し上げる予定でしたが……。
この場で■■■■■■■■■■■■■■■■■!
***
■■■■!この■■■!■■■■■■■■■!
サネーの発する言葉は、もはやピヨピヨ暴言ばかりになっている。それぐらい、気持ちに余裕がないということだ。
あと少し。あと少し君たちに反社会性があれば、勝てる!なにか打開策は――
交代交代で反社会性チャージをしよう!誰かが反社会性をチャージしてるときは、他の誰かがサネーを止める!
みんなでつなげよう、反社会性の輪!これがわたしの選挙スローガン!
さすが、魔道の明日を担う次世代のリーダーだ。アリエッタのスローガンで、君たちはひとつになった。
まず反社会性を調達するのはイーニアだ。
もらった名刺を片っ端から折ってやる。折り紙みたいに何かを作ろうとして……結局何にもならないまま途中でやめてやる!
イーニアの周りにくちゃくちゃの名刺が投げ捨てられる。
社会的地位のある彼女が、こんな幼稚なことをしているのだ。魔力は瞬く間に上昇する。
これが私の名刺代わりだ……ストラマーの名を、お前の身体に教えてやる!
ぐぅううう!■■■■!
イーニア渾身の攻撃魔法を食らったサネーはうめき声とピヨピヨ暴言を吐く。
次は私が行かせてもらうね!アリエッタ!メガホン借りるよ!
レナはメガホンを手にして,魔道選挙カーの上に登る。
えーご戦闘中の皆さま、突然ですが、私、レナ・イラプションの人生における爆発ベスト100を発表したいと思います。
みんながまったく興味ないことを、大音量で発表する。これは社会性がない。
まずは第100位からの発表です!ずごごごぉおおおおおおん!
しかもエピソードトーク等はなく擬音のみの発表。これはあまりに反社会的だ。
続いて、第99位!どぅおおおおおごごごごおん
サネーと戦いながらもきっついなと思った君は、もう十分じゃないかとレナに声をかける。
そうだね!じゃあ全部すっ飛ばして第1位の発表!1位の音は生で聞かせてあげるッ!
君たちがサネーから離れ、地面に伏せた直後、反社会性をチャージしたレナの魔法が爆ぜた。
うん!1位にふさわしい爆発!
私もリポーターとして反社会的な行為をするぞー!
と言ったきり、リルムは黙り込んでしまった。
小娘!?なにゃってるんだ!?なにも喋らないのか!?
…………。……………………。…………………………………………。
ハッ……これは……放送事故!なんという大罪!
よし!反社会性チャージおっけー!ヘンタイの人!杖貸して!
エターナル・ロア(魔道キャメラマン)がエターナル・ロア(杖)を投げた。
いっくよー!リルム式放送事故ザッパー!
生放送でお送りしておりまああああす!
サネーに工ターナル・ロアが直撃し、反社会的な魔力がほとばしった。
今がチャンスだ!お前たち、反社会的行為に走れ!
サネーはイーニア、レナ、リルムに任せ、君たちは反社会的チャージをする。
自作した半額シールを魔道スーパーのお惣菜に貼りつけてやるわ!
甘い甘い!魔道選挙カーで店に突っ込んで根こそぎかっさらえー!
いいわね!盗んだ商品は倍の値段で転売しましょう!
アリエッタとエリスはコンビプレーで反社会性を高める。
ふたりで魔道スーパーの中を駆ける姿はほほえましいが、やってることはゴリゴリの犯罪である。
君も負けていられない。
魔道自販機に蹴りを入れて破壊し、タダでジュースを飲みまくる。
まだまだいけるはずだ。ウィズ、なにか社会性のないこと言って!君は社会性が連動しているウィズにお願いする。
ぶっちゃけさっさと帰りたいにゃ!
みんなで強敵に打ち勝とうとしている最中に、帰りたい宣言。
なんて社会性がないのだろう。さすが師匠だ。君の魔力が爆発的に跳ね上がった。
そんな中、ソフィはといえば、1枚の紙切れを手にしている。
にゃ……ソフィが持ってるその紙はなんにゃ?
これはね、高級住宅の購入申込書だよ。
ソフィはさらさらとペンを走らせ、書類にサインを終えた。
ソフィ、会社のお金で自分の家を買うの♪
ソフィがそう言った瞬間、ソフィの反社会性が迸り――
君は〝圧〟だけでふっ飛ばされた。
社会性5兆のときよりも、確実に強い。会社のお金で高級住宅を買うということは、それだけ悪いことのようだ。
ソフィと黒猫さんの力は、安全のためにとっておいたほうがいいかも。
君たちの元に、反社会的な何かが近づいている。
それは魔道選挙カーに乗ったアリエッタとエリスだった。
一体お惣菜をどう売りつけたのか。ソフィに負けないくらいの反社会性をたたえている。
エリス……わたしは全力を出す。もしもわたしが暴走してしまったら、ひと思いにあばばしてほしい。
アリエッタの顔からは、並々ならぬ決意がうかがえた。
わかった。ひと思いにあばばするわ。
……やっぱなるべくやさしくして!
大丈夫。あなたならきっと力を使いこなせるわ。さあ、サネーを討つのよ!
わたしはこのマドーワークでいっぱい学んだ。そのすべてを、この一撃に込める!
アリエッタは魔道空間から魔法書を取りだし、詠ずる。
新魔法書――36万頁!凶!哭!災!滅!獄!……が全部入りのやべえ玉!
アリエッタは、どう見ても悪い奴が放ちそうな魔力の塊をぶん投げた。
黒猫さん!防御魔法をお願い!アリエッタちゃんの攻撃からみんなを守って!
君とソフィは二重の防御障壁を展開してみんなが巻き添えを食らわないように守る。
アリエッタのやべえ玉はおぞましい瘴気を放ちながらサネーヘと向かっていき――
■■■■■■■■■■■■■■■■■!
この世の終わりを思わせる魔力を迸らせた。
自分たちはマドーワークで一体何を学んだんだろう。君は白目を剥きながらそう思った。
***
いやー、今回も大変だったにゃ……ってキミ、いつまでマドーワークの制服を着てるにゃ?
君はうっかりマドーワークの制服を借りパクしてしまった。
暴動という名のマドーワーク卒業は、あまり卒業したという感じがせず、制服を脱ぐタイミングを逸してしまったのだ。
やはり卒業には式典が必要なのだなあと思った。
それにしても、ミツボシには驚きだったにゃ。
あのあと、君たちは外の世界の革命を止めるべくマドーワークを脱出した。
サネー、革命の協力者は誰なの!?おとなしく吐きなさい!
あはは!革命が成れば皆さまの負けです私は死んでも吐きませんよ!
もう一度、わたしのやべえ玉を食らいたいようだな。
アリエッタが魔法書を取り出し、再びこの世の終わりみたいな光景が広がろうとしたその時――
m皆さん!ご無事だったのですね!
ミツボシが君たちの前に現れた。
メリィ!大変なことが起きたのだ!魔道士協会とハーネット商会が、乗っ取られようとしている!
mあ、その件でしたら既に解決済みです。関係者総勢83名、すべて捕まえました。
え……マジですの……?
m魔道士評議会を中心とした連中の悪事は白日のもとにさらされました。
内通者がいる腐敗した協会も、きれいさっぱり生まれ変わりました。
その場にいる全員が、ミツボシの手際の良さに呆然としていた。
m今回の一件を知ったときはどうなるかと思いましたが、案外どうにかなるものですね。
……メリィ、もうお前が筆頭理事やれ。
……私もそう思う。私のことは顎で使ってくれていいわ。
そんな感じでミツボシが魔道士協会の新たな筆頭理事になった。
でも、それ以上に驚いたのは――
サネーを魔道留置所にぶちこんだ後、君たちはエリスの家でマドーワーク卒業記念パーティーをやっていた。
わはは!みんな集まると狭い!
じゃあ、お花見でもいく?
お花見でガッツリ魔道バーベキューしたいね!
mあの、わたくしも卒業パーティーにご一緒してよろしかったのでしょうか。
なに言ってるの。ミツボシが革命を阻止してくれなかったら、私たちはマドーワークから出られなかったのよ?
うむ。筆頭理事就任のパーティーはもっと盛大にやるから、楽しみにしておけ。なにか欲しいものはあるか?
m欲しいものというか……。わたくし、黒猫の魔法使いさんと戦ってみたいです。
グリモワールグランプリではあまり戦えなかったので。自分の実力を試してみたいんです。
お安い御用だ。好きなだけ戦っていいぞ。
えっ。
mよろしくお願いいたします。胸を借りるつもりでいかせていただきます!
このあとミツボシと戦ってえらい目に遭うのだがそれはまた別の話である。
驚いたのは、そのまたあとのことだ。
明日の魔道バーベキューに備えてみんな寝静まっている中、君はひとり夜の街に出る。
別れの時が近づいていることを悟つたのだ。
誰にも見られずにこの異界から離れるその瞬間を――
黒猫さん、どこ行くの?
なぜか、ソフィがついてきたようだ。君は咄嵯に言い訳を考える。ちょっと眠れなくて、夜風に――
黒猫さん、この世界の人じゃないでしょ?
息が止まった。
にゃ……どうしてそれを……。
黒猫さんって悪い人じゃないのに、黙っていなくなっちゃうでしょ?
なにか理由があるんじゃないかと思っていろいろ調べたの。そのために、四次元魔道解析の研究にも本腰を入れたんだ。
四次元魔道解析はマドーワークの結界の場所を探すときに使われた技術だ。
黒猫さんがソフィたちの前に現れたとき、それからいなくなったとき。
残留している魔力を解析してわかったんだけど、魔道空間に似た何かが発生しているの。
ソフィはそれを〝空間a〟と名付けた。空間aはこの世界と魔力の連続性が断たれたどこかに通じてる。
ソフィがものすごい精度で異界の歪みについて研究している。君の背中が汗でじっとりと濡れていく。
そこで気づいたの。前にリルムちゃんとミツボシさんから聞いた不思議な話に似てるなって。
突然現れる謎の空間を通って、こことは違う世界にいっちゃうんだって。
魔道の探求に心血を注ぐこの異界だ。異界の歪みについて教えたら、当然解明しようと躍起になるだろう。
しかし異界の歪みは謎も多く、危険なものだ。いくら究極的な彼女たちでも、安全が保証されるわけじゃない。
どう説明したものか――君が焦っていると、なぜかソフィも焦りだす。
つまり、なにが言いたいかっていうとね、黒猫さんはソフィたちのことが嫌いだから黙っていなくなる――わけじゃないんでしょ!?
そんなはずないって信じてるけど……もしかしたらって思うと……。
嫌いだからいなくなってるわけじゃないと、君は即座にソフィの懸念を打ち消す。事情を説明できないことが歯がゆかった。
よかった。それが聞けて安心した。
ソフィはそう漏らしたきり、空間a=異界の歪みについて聞いてこなかった。
……黒猫さんが隠したがってたことだから、本当はこんな研究するべきじゃなかったのかもしれない。
勝手に調べてごめんなさい。ソフィ、わからないことがあると知りたくなっちゃうの。
でも、安心して。これ以上黒猫さんの嫌がることをするつもりはないから。
こっちこそ、隠し事してごめん。事情を酌んでくれて、ありがとう。
そう謝った君の身体が、淡い光に包まれる。
これが……そうなんだね。ソフィ、あっち向いてたほうがいい?
見ていても大丈夫にゃ。ソフィ、恩に着るにゃ。
黒猫さん、ウィズちゃん……元気でね!
またいつか、と言って君はソフィと別れる。
この異界を知って久しいが、きちんとお別れをしたのはこれが初めてだった。
社会性が、少し上がったような気がした。`
職・超魔道列伝
アルティメットワーキングガールズ
~END~