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幻魔特区スザク2 Story3

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん


タイプは高度戦略用拡張型ガーディアンインターフェース。

Advanced Strategic Augmented Guardianlnterface……ASAGIとお呼び下さいね。

現在、マスプロダクション型ガーディアンのアトヤ・ハクザンと暫定的に連携中です。

スザクロッド地下施設保守業務担当をしております。以後お見知り置きを。

 アトヤの横にちょこんと立って、アサギは君たちに深々と一礼する。

……んで、こっちが……?

はい。これは、なまえが、ミュールです。

ミュールは、さいきんになっての、うまれてましたので、このばしょのこと、あまりしらずです。

ちしきは、いま、すくなめのなので、げんざい、あつめたりますけれど、むずかしいのか……。

みんながたは、さまざまことを、おしえたりください。ミュールはきっとよろこぶです!

Kワン!

えヘヘ、これはとても、かわいければ!

 たどたどしい言葉で話しながら、ミュールはクロを抱えてにっこりと笑う。

うーむ。ずいぶんとまた……。

濃い二人にゃ……。

 怪我の応急処置を終えたトキオは、ウィズと並んで二人を眺めている。

どうやら、先ほどのアトヤとの会話が、彼の気持ちを多少楽にしたようだった。

アトヤ・ハクザン。あらためてお聞きしますが、この方々はあなたのお友達なのですか?

ですです、彼らも俺と同じ、ロッドをなくしたガーディアンなんすよ。

……こちらの、ミュール……といいましたか。

この方は、色々とガーディアンの指定規格と違うようですけれど。どういう方なのです?

 少し不安げな表情をしながら、アサギはアトヤに聞いた。

Yあー……そうすね。なんかツノ生えてますし、なんだろう。

エンブレムも無ければ、ガーディアンアバターもいない。それにこのツノ……。

ヤチヨ・カスガ。あなたのガーディアンは知覚に優れています。ミュールを調べて頂けませんか?

えっ、あ、はい。――シキ、お願い。

はいな!

 デバイス形態のシキから、緑色の光線がチラチラとミュールに向かって照射される。

つま先から頭の天辺までその光がゆっくりと動くと、ヤチヨはうーん、と首をかしげた。

Zいかがでしたか、ヤチヨ・カスガ。何か変わったところはありましたか?

うーん……いや、見た目に反して、完全に人間のそれですね。体温はちょっと高いですけど。

頭のツノに見える部分も、角質層の発達したものみたいですし、特に変わったところは……。

んー……私みたいに作られた子なのかなぁ……。ねえアサギさん、その可能性はないの?

それならば、あなたのロッカのような、ガーディアンアバターがいないのは何故でしょう?

わ、わかんない……。ねえミュール、こういうの、あなたにはいないの?

むむ……?そのしろいふくろみたいなのは、これでよきかたちですか?

 ロッカを見ながらそう言うと、ミュールは指先から、小さな機械のような球体を生み出す。

その球体は、くるくると彼女の周辺を黒いガスのような翼で飛び回った。

わぁ、かわいーい!ねえ、この子の名前はなんていうの?

それの、なまえでありましてか?うーん……ないのでありまし。

えー、もったいないよ!つけよう!

かわいいやつがいいよね。えーと……。

 ……楽しげにそうやって話す女子たちを見ていると、まるで昔の皆が戻ってきたようだった。

ふと、君に向かってアトヤが手招きをする。君はそっと立ち上がると、彼の方へと歩いて行った。

……今、キワムから聞いたんだけどよ。

師匠の腰のエンブレム……あれと同じようなやつを、「収穫者」って奴らは持ってるらしいな。

 君はその言葉にうなずく。

同時に、収穫者が居る場所には、時々落ちていることがあるとも伝えた。

……話がある。付き合え。

 アトヤの背後には、キワムとスミオの姿がある。君は、彼らについていくことにした。


 ***


ここに来て、数度聞いた奇妙な音が響く。それを耳にして、アトヤは顔をしかめて立ち止まった。

……さて、このへんでいいか。

 アサギ達の居た場所から、かなりの時間歩いた後。

アトヤはそう言って、椅子ほどの大きさの石に腰掛けた。

お前らも座れ。大事な話だ。スミオもいい加減、俺を信用しろ、アサギは収穫者じゃない。

……信じられるか、そんなもん。

アサギが腰から下げてたやつは、奴らが持ってたコインと同じマークだっただろ。

 ……そう、君もあのコインやエンブレムについていたマークには見覚えがあった。

だが、スミオの言うとおり、あれを最初に見たのは、収穫者たちと戦っている時だ。

……あのコインはいったい何にゃ?アトヤ、知っているなら教えてほしいにゃ。

それは俺も知りたい。あれには何が隠されてるんだ?

 真剣な皆の様子に、アトヤはパツが悪そうに頭をかく。

それからぽつぽつと、つぶやくように彼は話し始めた。

師匠はおそらく、最も初期型のガーディアンだ。このロッドが――

いや、この場所が出来た頃から、この場所をずっと守ってる、すごい人なんだよ。

……はは、おい。ちょっと待ってくれよ。

確かヤチヨが「1000年以上前の建物」言ってたぞ?ホントかよ。

Yだってだからそう言ってんじゃねえか。あの人はそれより前からここに居るんだ。

で、だ。あのエンブレムの横様は、カムラナ技研工業って会社のマークなんだよ。

このロッドと、俺達ガーディアンを作った――言わば、この世界の産みの親のな。

 ……そういえば、この世界に来る直前、フォナーから流れた音声を君は思い出した。

『カムラナ技研工業より特殊認証コードを受信しました。ご返答をお願い致します。』

 あの時はなんのことかわからなかったが、つまりこういうことだろうか。

『この世界を作った「誰か」が、君を必要としていた』。


それに、アサギは64年に1度の施設外一斉点検でしか外に出ねえ。

だからな、結局お前らのロッドを折ったりだとかはできねえんだよ。わかったか?

……じゃあ、結局あのコインとか、エンブレムは何なんだよ。

 アサギの腰の……スミオがそう訊いた瞬間、アトヤはふっ、と一瞬だけ悲しげな顔をした。

あのエンブレムには……

「見つけたァ!!」

 聞きなれない声に、君はハッとして振り返る。

アァーーーートォーーーーヤァーーーー……!!

 そこには、憤怒の表情で、アトヤの名を呼ぶ小柄な女性の姿があった。

手には禍々しい弓を携えていて、その矢の切っ先はピタリと彼に向いている。

……コベニ?いや、まさかそんな……

え、誰?

ああ、ええと……俺の昔の仲間。430号ロッドの……。

にゃ!?じゃあ、あの子も……?

ええ、ガーディアンよ……アトヤ、あんたね、こんなところに200年近く引きこもって……!!

やっと、やっとよ。やっとここに入れたわ。今日は絶対に、絶対に……!!

あんたを、ここから引きずり出してやるから!!

 叫びながら、コベニは弓を引き絞る。青白い矢が光り、君たちに狙いを定めた!


 ***


やーーーーだーーーーアトヤが来てくんないとやーーーーだーーーー!!

うるせぇーーッ!!なんなんだよおめェはよ、急に来て暴れて騒いで!

だってさみしかったんだもん!!

ちょっと喧嘩して私がほんの少しあの廃墟出ていったらアトヤいなくなってるし!!

お前のほんの少しは半年もかかんのか!あ!?長すぎんだろバーカ!

そんなもん、あんたが引き篭もってたこの2年に比べればほんの少しでしょ!?

言っときますけど200年じゃないですー、193年だから200年じゃありませんー!

なにこそれ腹立つぅ~!ほんっとあんたいい加減に――

……してほしいのはこっちなんだけどな?

 完全な痴話げんかの様相を呈していた二人の会話に、スミオはため息混じりに割って入る。

それで落ち着くことが出来たのか、ふたりは地面に座り込んだ。

……お前、どうやってここに入ってきたんだよ。普通は入れねえんだよここは。

入れてもらった。

いや、だから普通は入れないんだって。誰に入れてもらったんだよ。

……いいじゃん別にそんなの言わなくてもさ。私だって言いたくないことの一つやふた――

もし、変な奴らが悪いことを企んだりしたら、大変なことが起きるんだよ。

ここは色々大事な場所なんだ。頼むから教えてくれ……お願いだ、コベニ。

 真剣な表情のアトヤの言葉に、コベニはなぜか顔を赤くしてうつむく。

そして、少しだけ彼を睨むと、ポケットの中からある物を取り出した。

わかんないの。名前は教えてくれなかったし……。

でも、これ渡された。なんか……危ない時は使えってさ。別に、私には必要ないけど。

 そう言いながら、彼女が地面に放り投げたそれは、高い金属音を立てて地面を転がる。

……ッ、こいつは……!

……。

 そのコインは、まさに先ほどまで彼らが話していた、収穫者たちの持ち物だった。


 ***


遅かったですね。……あら、また新しいお客様ですか?

 コベニを連れ、隠れ家に戻ってきた君たちを見て、アサギはそう声をかけてきた。

ああ、お師匠さん。コイツの他に、やべえお客様もいらっしゃってるみたいで。

やべえお客様?なんなのです、それは。

……収穫者っていう、スザクロッドを折ろうとしてる奴らです。

なんだって……!?

 アトヤの声を聞いて、奥のベッドで寝ていたトキオは勢い良く立ち上がる。

トキオさん、まだ寝てないとダメです!傷がまだ……!

ふざけるな!収穫者が来たんだろう、じっとしてられるか……!

でも……!

二人共、黙れ。

にゃっ……!?

 低く、強烈な殺気を含んだ声が響き、その場にいる全員の背筋が凍りついた。

アトヤ・ハクザン。収穫者とは何だ。報告せよ。

 彼女の纏っていた穏やかで静かな雰囲気は一切消えている。

アサギは、不気味に鋭く冷たい目を持つ、小さな怪物に変貌していた。

収穫者は……キワムたちのロッドを人為的に折った者達です。

お師匠の持つ「エンブレム」と同様の機能をもつ「コイン」を使い……

また、この「地下施設」を――「スザクロッド下層C資源」を侵す可能性があります。

……えっ、「スザクロッド最下層」……?

どういうことにゃ、ここはスザクロッドと何か関係があるにゃ?

当たり前だ。ここが落ちればスザクロッドは機能を停止する。

同時に、C資源……「カリュプス」が復活すれば、この世界は終わりだ。



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