幻魔特区スザク2 Story3
Advanced Strategic Augmented Guardianlnterface……ASAGIとお呼び下さいね。
現在、マスプロダクション型ガーディアンのアトヤ・ハクザンと暫定的に連携中です。
スザクロッド地下施設保守業務担当をしております。以後お見知り置きを。
アトヤの横にちょこんと立って、アサギは君たちに深々と一礼する。
ミュールは、さいきんになっての、うまれてましたので、このばしょのこと、あまりしらずです。
ちしきは、いま、すくなめのなので、げんざい、あつめたりますけれど、むずかしいのか……。
みんながたは、さまざまことを、おしえたりください。ミュールはきっとよろこぶです!
Kワン!
たどたどしい言葉で話しながら、ミュールはクロを抱えてにっこりと笑う。
怪我の応急処置を終えたトキオは、ウィズと並んで二人を眺めている。
どうやら、先ほどのアトヤとの会話が、彼の気持ちを多少楽にしたようだった。
この方は、色々とガーディアンの指定規格と違うようですけれど。どういう方なのです?
少し不安げな表情をしながら、アサギはアトヤに聞いた。
Yあー……そうすね。なんかツノ生えてますし、なんだろう。
ヤチヨ・カスガ。あなたのガーディアンは知覚に優れています。ミュールを調べて頂けませんか?
デバイス形態のシキから、緑色の光線がチラチラとミュールに向かって照射される。
つま先から頭の天辺までその光がゆっくりと動くと、ヤチヨはうーん、と首をかしげた。
Zいかがでしたか、ヤチヨ・カスガ。何か変わったところはありましたか?
頭のツノに見える部分も、角質層の発達したものみたいですし、特に変わったところは……。
ロッカを見ながらそう言うと、ミュールは指先から、小さな機械のような球体を生み出す。
その球体は、くるくると彼女の周辺を黒いガスのような翼で飛び回った。
……楽しげにそうやって話す女子たちを見ていると、まるで昔の皆が戻ってきたようだった。
ふと、君に向かってアトヤが手招きをする。君はそっと立ち上がると、彼の方へと歩いて行った。
師匠の腰のエンブレム……あれと同じようなやつを、「収穫者」って奴らは持ってるらしいな。
君はその言葉にうなずく。
同時に、収穫者が居る場所には、時々落ちていることがあるとも伝えた。
アトヤの背後には、キワムとスミオの姿がある。君は、彼らについていくことにした。
***
ここに来て、数度聞いた奇妙な音が響く。それを耳にして、アトヤは顔をしかめて立ち止まった。
アサギ達の居た場所から、かなりの時間歩いた後。
アトヤはそう言って、椅子ほどの大きさの石に腰掛けた。
アサギが腰から下げてたやつは、奴らが持ってたコインと同じマークだっただろ。
……そう、君もあのコインやエンブレムについていたマークには見覚えがあった。
だが、スミオの言うとおり、あれを最初に見たのは、収穫者たちと戦っている時だ。
真剣な皆の様子に、アトヤはパツが悪そうに頭をかく。
それからぽつぽつと、つぶやくように彼は話し始めた。
いや、この場所が出来た頃から、この場所をずっと守ってる、すごい人なんだよ。
確かヤチヨが「1000年以上前の建物」言ってたぞ?ホントかよ。
Yだってだからそう言ってんじゃねえか。あの人はそれより前からここに居るんだ。
で、だ。あのエンブレムの横様は、カムラナ技研工業って会社のマークなんだよ。
このロッドと、俺達ガーディアンを作った――言わば、この世界の産みの親のな。
……そういえば、この世界に来る直前、フォナーから流れた音声を君は思い出した。
『カムラナ技研工業より特殊認証コードを受信しました。ご返答をお願い致します。』
あの時はなんのことかわからなかったが、つまりこういうことだろうか。
『この世界を作った「誰か」が、君を必要としていた』。
だからな、結局お前らのロッドを折ったりだとかはできねえんだよ。わかったか?
アサギの腰の……スミオがそう訊いた瞬間、アトヤはふっ、と一瞬だけ悲しげな顔をした。
「見つけたァ!!」
聞きなれない声に、君はハッとして振り返る。
そこには、憤怒の表情で、アトヤの名を呼ぶ小柄な女性の姿があった。
手には禍々しい弓を携えていて、その矢の切っ先はピタリと彼に向いている。
やっと、やっとよ。やっとここに入れたわ。今日は絶対に、絶対に……!!
あんたを、ここから引きずり出してやるから!!
叫びながら、コベニは弓を引き絞る。青白い矢が光り、君たちに狙いを定めた!
***
ちょっと喧嘩して私がほんの少しあの廃墟出ていったらアトヤいなくなってるし!!
完全な痴話げんかの様相を呈していた二人の会話に、スミオはため息混じりに割って入る。
それで落ち着くことが出来たのか、ふたりは地面に座り込んだ。
ここは色々大事な場所なんだ。頼むから教えてくれ……お願いだ、コベニ。
真剣な表情のアトヤの言葉に、コベニはなぜか顔を赤くしてうつむく。
そして、少しだけ彼を睨むと、ポケットの中からある物を取り出した。
でも、これ渡された。なんか……危ない時は使えってさ。別に、私には必要ないけど。
そう言いながら、彼女が地面に放り投げたそれは、高い金属音を立てて地面を転がる。
そのコインは、まさに先ほどまで彼らが話していた、収穫者たちの持ち物だった。
***
コベニを連れ、隠れ家に戻ってきた君たちを見て、アサギはそう声をかけてきた。
アトヤの声を聞いて、奥のベッドで寝ていたトキオは勢い良く立ち上がる。
低く、強烈な殺気を含んだ声が響き、その場にいる全員の背筋が凍りついた。
彼女の纏っていた穏やかで静かな雰囲気は一切消えている。
アサギは、不気味に鋭く冷たい目を持つ、小さな怪物に変貌していた。
お師匠の持つ「エンブレム」と同様の機能をもつ「コイン」を使い……
また、この「地下施設」を――「スザクロッド下層C資源」を侵す可能性があります。
どういうことにゃ、ここはスザクロッドと何か関係があるにゃ?
同時に、C資源……「カリュプス」が復活すれば、この世界は終わりだ。