【黒ウィズ】リルム編(ゴールデンアワード2018)Story
ゴールデンアワード2018 リルム編 |
開催期間:2018/08/31 |
目次
登場人物
story1
どうも。こんにちは。リルムです。
私はいま、宇宙に来ています。宇宙というのは、あれでそれで、つまりでっかい空です。
杖の人とアリエッタも一緒です。そもそも、どうしてこういうことになったかというと……。
我がハーネット商会と魔道士協会は、人類の進歩と発展のため、魔道の探求を、新たな舞台へ広げようと考えました。
これは少し前に、ソフィちゃんがいっぱい人を集めて、話したことです。
その舞台というのは、宇宙です。我々、ハーネット商会は未知の世界、宇宙での、人類の可能性を探る計画を立案しました。
その第1弾が、魔道史上初の有人魔法ロケットほうきの開発と打ち上げです。
そこにはエリスさんもいました。
栄えある乗組員には、我が魔道士協会から推薦する2名の魔道士が選抜されました。
リルム・ロロットとアリエッタ・トワ。あとついでに魔杖エターナル・ロアです。
我々はこの計画を、グレェェーートギャラクシー計画と名付けました。
というわけです。ぞなもし。
***
おーい、リルム。けつが浮く、けつが。ふははは。
宇宙ではけつが浮きます。
アリエッタはそれが面白くて、たまらん状態にはまって、帰って来れなくなっていました。
何を遊んでいるんだ、お前たち。さっさとロケットほうきを直さないと元の星に帰れないんだぞ。
と、杖の人が言うように、その時の私たちはピンチでした。
でも、元々は杖の人が壊したじゃん。
それは……違うぞ。
じゃあ、何?
お前たちが我を忘れたからだぞ。
だからって、追いかけてきて、動力炉に突き刺さることないじゃん。
いや、それはお前たちが……いや、いい。
私たちが何?
杖の人も反省しているようで、いつもの生意気な口の利き方が少し控えめでした。
杖の人は本当にすごく生意気な時があるからすごく困ります。
投げるなとか置き忘れるなとか乗るなとか、いつも生意気なことを言います。とかとか。
うえええ……。
どうしたの、アリエッタ?
けつが浮きすぎて、気持ち悪くなってきた……。
アリエッタ、けつを下げて、けつを。
よ、ほ。とう!くあああ!
おー、下がってきた、下がってきた。
何度も言いますが、宇宙ではけつが浮きます。けつが浮くと色んなことが出来なくなります。
人は無力だなあ、と思いました。
なので、人にとって大事なことは、やる気でも、思いやりでも、お金でもありません。
けつを下げることです。
けつさえ下がっていれば、なんとかなります。下がってなかったら、なんともなりません。ぞなもし。
※注
リルム・ロロットのけつを下げるは地に足をつけるとほぼ同義である。
ほおおおお、とう!見さらせ。
おお、下がった下がった。
ようし。次は動力炉の修理だな。
アリエッタのけつが下がり切ったので、私たちは船外に出て、船を修理することにしました。
ですが、宇宙は空気がないという話です。
宇宙空間では呼吸が出来ない。その魔道宇宙服を着用するんだ。
なんで、宇宙って空気ないの?
うーん。そういうものだとしか言えんな。
宇宙ってさー、おけつを浮かしたり、空気なかったり、じょーしきないよねー。
いや、自然のやることだからな……。常識の話ではないぞ。宇宙もお前の常識を押し付けられても困るだろ。
そうかー、五十歩百歩か。
うーん……。五十歩百歩は使い方が違うなー。
五十歩八十歩?
ああー、小娘、数の問題じゃないぞ。そこじゃない。
ふーん。
杖の人、また生意気だなー、と思いながら、私は魔道宇宙服を着ました。
ふと、窓の外を見ると。
生身のアリエッタが、宇宙で泳いでいました。
story2
どうも。こんにちは。リルムです。
いま私たちは、杖の人がぶつかったせいで壊れたロケットほうきを修理するため、船外活動を行っています。
本当は魔道宇宙服を着ないといけないのですが、アリエッタは生身で大丈夫みたいでした。
リルム、タコ見つけた、タコ。いるー?
おお、タコだ。どこで見つけたの?
あっち。
と、言って、アリエッタはずっとずっと何もないが広がる宇宙の『あっち』を指差しました。
宇宙は本当に何もないです。何もなくて、つまらないところです。
でも、タコがいるから、完全に『何もない』ではないです。ぞなもし。
アリエッタ、そのタコどうするの?
食べる。リルムも食べるか?
うん。食べる。
けってーい。ふははは、貴様を食べてやるぞー。
アリエッタが喜びながら、タコを振り回していると、不思議な声が聞こえました。
お待ちなさい。愚かな原始の旅人よ。わたくしはトラル・アマナー・ケアン・オプー星人です。
あなた方はいま愚かな決断を下そうとしています。我々、オプー星人は崇高な宇宙意思の体現者です。
それを野蛮にもあなた方は食べようとしている。まずはその考えをお捨てなさい。
その声はタコから聞こえてきました。タコは食べるのをやめてほしい、と訴えてきました。
いやだ。
ノー。
でも、そっこーで断りました。
愚かな。本当のことを言いましょう。
わたくしはあなた方の星へ、我々と共に宇宙意思に従うよう勧告しに来たのです。
我々はあなた方よりも優れた文明を持っています。我々が本気を出せば、あなた方を支配するのはワンパンです。
もし、いまわたくしを見逃すというのであれば、あなた方を星の支配者にしてあげましょう。
タコは、私とアリエッタを偉い人にしてあげるといいました。食べないかわりにです。
いやだ。
ノー。
でも、断りました。
一番話の通じない奴らに捕まってしまったな、お前も。
お待ちなさい。原始の旅人よ。本気で待ちなさい。わたくしのような知的な存在をあなたたちは食べるいうのですか?
うん。
あなた方は本物のアホです。死すら生ぬるい!この場で殺してやろうか!
タコの人は段々、乱暴な言葉使いになってきました。
じつは私もアリエッタもタコが喋った時から、食べる気はありませんでした。
喋る人を食べるのは良くないと思ったからです。喋った時からこのタコはタコの人になったからです。
でも、このタコの人はなんとなく偉そうな雰囲気がありました。
ねえ、タコの人。あなたたちは私たちと友達になろうとしてるの?
友達?あなた方のような野蛮な存在と友達になれるわけがありません。
あなた方は我々の支配下で、主に我々の住居である壷を洗う仕事に従事して頂きます。
壷を洗うだけじゃつまらないよ。楽しくないじゃん。
楽しいか楽しくないかなど必要ではありません。
どうせ、あなた方はアホなので、宇宙はけつが浮くとか言って遊んでいたのでしょう?
図星でした。
その程度の脳を楽しませるなど、宇宙的には無意味です。
随分、壮大な思考だな。
私はタコの人の話を聞いて、難しいなあ、と思いました。
宇宙で面白いことなんて、おけつが浮くくらいしかないのに、この人はそれを下らないと言った。
アホ、カス、ぼだら、朴念仁、ぺちゃこ、バカ、バカ。
私たちはタコの人に長い間、悪口を言われました。
タコの人は私たちをドレイにするとも言いました。
(数頁抹消)
※注
上記の一文を境に、タコの人についての記述はない。
だが我々はいまだタコの人の壷を洗っていない。
おそらくアリエッタ・トワ、あるいはリルム・ロロットが侵略を阻止してくれたと考えるべきだろう。
魔道ロケットほうきの動力炉を修理していると、アリエッタが何か思いついたみたいで、熱心に動力炉の改造に取り組み始めました。
リルム、これどう思う?魔道次元巡行装置なんだけど、理論上辻棲があわん。
もっと、大きくすればいいんじゃない?その、ぐにゃってしてるやつを。
そうか。その手があったか。
お前たちの中で、何が了解されたんだ……。
たまにアリエッタにどう思うか尋ねられたので、その場で思ったことを答えました。
アリエッタ、そこおかしくない?
これは、あれだ。……あれ。
ああ、なるほど。そういうことか。
言ってないよな!いまのは完全に、何も言ってないよな!小娘なぜ、理解した。
むしろ、なんて杖の人はわからないの?
あれだ。杖は難しいからな~。
ちゃんとした第三者がいたら、絶対お前たちの方がおかしいからな!
いちいち説明させんでくんさい。大人の悪い所ですたい。
それ以外の時は、私は宇宙でふわふわしながら、自分が来た星を見ていました。
星は青くて、近くのぴかーとした星の光を浴びて、きらきらしていました。
真っ暗な宇宙の中に、それだけがぽつんと美しい宝石のように浮かんでいました。
宇宙は色んなものがないし、じょーしきがないと思うけど、こういう景色を見せてくれるなら、許してもいいと思いました。
しんとした場所。言葉も何もない場所。でも青くてきれいな星がある。おけつをぷかぷかさせる私がそれを見ている。
あんまり、じょーしきがなさ過ぎて、いろんなことがちっぽけに思えてきました。
星が?私が?宇宙が?何がちっぽけなんだろう?
よくわからないけど、気がついたら泣いていました。
悲しくもなく、怖いわけでもなく、怒っているわけでもない。
じょーしきがない涙でした。ぞなもし。
story3
どうも。こんにちは。リルムです。
でけた。でけてもた。
今日はとうとうアリエッタと一緒に作っていた魔道次元巡行装置が完成しました。
で、これを使って元の星に帰るわけか。
ううん、帰らないよ。
なに?
魔道次元巡行装置というのは、簡単に説明すると、もの凄く短時間で宇宙を移動できる装置です。
この装置が完成する直前に、完成したらどうするか~的なことをアリエッタと話し合いました。
せっかくだから、いろんなところに行きたい、というのが私たちの結論でした。
正直なところ、宇宙で唯一出会ったタコの人が、すごく感じが悪かったので、嫌だったのです。
なので、もっといろんな人と出会いたい、と思ったのです。ぎゃらくてか。
アリエッタ、宇宙の果てってどうなってると思う?
果てかー、果てはなー。あれじゃないかなー。
だよねー。私もそうだと思う。
その意味のない会話をするくらいなら、もう黙っていてくれないか、お前たち。
貴様を宇宙の藻屑にしてやろうか?
唐突に、明確な殺意を打ち出すな……。
宇宙は広いです。そしていろんな人がいます。
アベコベの星の、アベコベ星人たちは、何もかもアベコベなので、私もアリエッタもキモイ、キモイと連呼されました。
杖の人は杖、杖と呼ぱれていました。杖のアベコベは杖なんだと知りました。
宇宙一みにくい星の、みにくい星人たちは、本当にみにくかったですが、とても優しくて、とてもいい人たちでした。
人は見た目では判断できません。
(読解不能)
(読解不能)
(読解不能)
※注
以後の膨大な記述はリルム・ロロットが現地で覚えた言語での記述が続く。
多くの文字や文法が混在していることから、かなりの数の星を巡ったと思われる。
今日は、バカの星に来た。ここに住むバカ星人は本当にバカでした。
リルム。バカ星人から底のない壷をもらったぞ!
底がなかったら、壷じゃないじゃん。
まあ、あいつらバカだから……。
バカだなー。
アリエッタ、バカ星人からズボン型のシャツをもらったよ。
どうやって着るんだ?
珍しい着かたなんだ。ほら、こうやって、ズボンみたいに履くんだって。
それ、ズボンだろ。
まあ、あいつらバカだから……。
バカ星人は本当にバカでした。
この幸せくじって、買ったら絶対にお金が当たるんだって。
妙なくじだな。いくらするんだ?
ここのバカ金貨で4枚だよ。
で、賞金はいくらなんだ?さすがに大金というわけにはいかんだろうなあ……。
バカ金貨2枚。
バカだなー。
他にもバカ星人のバカなところは沢山あります。
バカ星人はバカなので、肌の色や髪の色、生まれた場所とかの、つまらないことで、しょっちゅうケンカしました。
バカなので、この星の一番偉い人に、この星で一番のバカを選んで、みんなでパカバカ言い合いました。
そのせいで、この星の暮らしは全然よくなかったです。
私たちはそういうのよくないよ、とバカ星人に言いました。
でも、バカ星人はバカなので、ケンカやバカにしあうことをやめませんでした。
アリエッタは、
消し飛ばそう。
と、この星のバカ星人たちを、星ごと消し去ってしまおうと言いました。
だめ。
なんとなく、それはよくないなーという気がしたので、やめておきました。
私たちは、『この星のことはこの星の人たちに任せるべきだ。』という杖の人の生意気な意見を取り入れました。
杖の人の生意気もたまには役に立ちます。
バカの星を離れて、しばらくたった時、私たちはバカの星をロケットほうきの窓から見ました。
あ。
燃えとる。
バカの星が燃えていました。
燃えとるな。
燃えとるぞ。
たぶん、バカの星のバカ星人はバカだから、ケンカの加減がわからなくなって、とうとう自分の星を燃やしたんだと思います。
死んでバカが治れば、御の字だな。
杖の人が生意気を言いました。
私は炎を見ていると、とてもドキドキしました。うれしいドキドキではなく、悲しいドキドキです。
燃えとる。燃えとるぞ。燃えとる燃えとる。星が燃えとる。
アリエッタもいつもの明るい感じではなかったです。
星が燃えているのを見て、私もアリエッタも自分の星に帰りたくなりました。
ぞなもし。
※注
この時の経験は、ふたりの後年の活動に大きく影響を及ぼしていると考えられている。
特に、リルム・ロロットは『世界グレェェート童話集』の中の一編――
『星の玉子様』を、この時の体験を元にして創作している。
でけた。でけてもた。
星に帰るために、魔道次元遡行装置をアリエッタと作りました。
時間はなあ……つまり、ズレとるんです。
うん。ズレとるな。なんとなく気づいてた。
えーと、そのズレとやらが、時間差となって、我々が帰る頃には、星に残した者との差になるのか?
私たちの宇宙旅行では、時間の流れがエリスさんやソフィちゃんとズレてしまいました。
もし、私たちが普通にソフィちゃんたちの所に帰ると、ソフィちゃんたちは大人になっていると、アリエッタが言いました。
それは嫌なので、そういうことにならない装置を作りました。
そして、私たちは星に帰りました。ぞなもし。
***
飛んでいった……。リルムちゃん、アリエッタちゃん、無事に帰って来てね。
あのふたりなら、死んでも死なない。なんとか帰ってくるだろう。
そうですね。そのために選ばれたふたりですからね。
?え!?あ、アリエッタ!!
……なんで、いるの!?
どうも。こんにちは。リルムです。
さっき、ロケットほうきが打ち上げられたばかりよね?
これにはまあ、それなりの訳があってな。ちょっと過去に巻き戻って帰ってきたのだ。
ぶーいぶーい。
ぶーいぶーい。
私とアリエッタは、時間を巻き戻すように、私たちの打ち上げの少し前に帰って来ました。
打ち上げ前の自分に会うのは気まずいので、少し隠れていました。
mイーニア先生!さっき、控室を見たら、リルムさんがまたエターナル・ロアを忘れていったみたいなんです。
まったく、忘れるなとあれほど口酸っぱく言ったのに……。
ま、我、宇宙に興味ないからいいけどな。……って、え?
え?我?現時点で我2本になってない?存在、増えてない?これ、完全にダメなやつじゃない!
ちょ!怖ッ!我そっくりの杖がある!?声までそっくり!
あー、そう言えば、来る時、杖忘れて行ったんだ。
小娘、これ、我はどうすればいいんだ!存在がふたつあったら、だめだろ。
……あ、思い出した。このせいだ。
ちょっとした手違いで、杖の人が2本になってしまいました。
このままだと生意気が2倍になるので、私は1本いらないと思いました。
よーし、じゃあ、行きますか。
ちょ、ちょ、ちょッ!小娘、いきなり我を担いでどうするつもりだ!
投げる。以上。
グレェェェーート!ザッパーー!!
ですよねーーーーーー!
我、宇宙へ……。
よーし、これで解決かな?
よか。
我ながら、我のことが不欄で仕方ないぞ、我は。
エピローグ
我だ。魔杖エターナル・ロアだ。我はまだ小娘と旅をしている。
もう!杖の人、なんて動力炉にぶつかってくるの!?
色々あったんだ。どうせ理解はしてもらえんだろうから、聞くな。我も理解してない。
どうやら、今度は宇宙のようである。
その他