【白猫】Original Horizon Story4
目次
登場人物
story11 今でも、森は
陽動は十分成果を上げているようだった。
あれから、これといった襲撃者とも出くわさず――
俺たちは、クロカの元へと順調に歩みを進めていた。
…………
順調?魔物を扇動し、魔物にさせられた子供たちを利用して?
……同じだ。いや、クロカよりも、俺の手の方が――
汚れているのかもしれない。
…………
……でも……
もう、引き返せない。
何があろうと……今は……
先へ、進むしか――
シロー編
――ここは……
……モリモリしてんな。
…………
…………
好きだったもんなあ、お前、森。
今でも好きっスよ。
クロカも森、好きでした。
…………
俺も動物、好きだし。
ガキの頃は……クロカが俺なのか、俺がクロカなのか……
ごっちゃになるくらい、似てると思ってましたけどね……
……そうだな……
…………
ここからの進路は?
作戦では、町へ入ります。
同時に<種>が、周辺に襲撃を。逆に手薄になるはずです。
そうか。
住民はまだ残っているだろう。
でしょうね。師匠、大丈夫スか?
顔見知りばっかでしょ?
俺のことはいい。お前はどうだ。
……<再誕>の力が、ドミティア島の全域に及んでいるのだとしたら――
――創り直された別人です。俺の記憶の中の人と、似ていたとしても。
あの二人と同じで。話し合いは通じない。クロカの言いなりです。
……俺がもうー度、<再誕>させるまで……
それまでは…………敵だ。
……辛いだろうが、同情はするな。
お前の進んでいる道は正しい。いや、その道だけが、唯ーの希望なのだからな。
予言の<希望の火種>は、お前がこれから行う<再誕>の力のことに違いない。
それさえ潰えなければ。最後にまた、元通りになるさ。
……そう信じるしかあるまい。
……ですね。
行きましょう。
story12 運搬車
陽動が始まっているようです。
俺とイズネで先行し、進路を確保する。
シロー、お前は後方から来い。誰にも見られるなよ。
いくぞ、イズネ。
はい、センセイ。
…………
…………
おとうさん……おかあさん……?
逃げ遅れたのか……
…………
――ちっ!
おい。
!?
ここは危険だ。家の中へ戻れ。
で、でも……
大丈夫だ。君の両親もアテル・ラナのー員だろう。簡単に魔物にはやられん。
(……どの口がっ……)
だけど……心細いよぉ……
わかったから――
!?
うわああああああああん!
こ、このお兄ちゃん、怖いよおおお!
なにを……安心しろ大丈夫だから!
あああああああーーーーん!!!
どうした!?
しまっ……!
あんたは、シロー!?
待て、聞いてくれ――!?
くっ……!?
てめえ!この裏切り者!
恩を仇で返しやがって!魔物を連れてさっさと帰れ!いや――
――ここで始末してやる!
くそっ……!
クロカ様の手をわずらわせるまでもない!応援を!
任せて!
待て!
くっ!?
甘く見るな。わしらとて組織のー員。
年季が違うわぁっ!!!
やめろ!あなたたちを傷つけるつもりはない!
クロカ様を狙ってんだろが!?
一緒に育っておきながら……恥を知れ、シローっ!
間違っているのはクロカだ!すぐにそれがわかる!だから道を開けてくれ!
だれがそんなことをっ!
行きたきゃおれたちを殺してみろよっ!
……っ……!
貴様ぁっ!
本性を現しやがったな!?
違う!これは俺では――
じゃあ誰がやるんだよ!?
――っ……!
(誰がやったことでも同じだ……
こっちの大将は……俺……)
ちくしょう!町まで好きにさせねえぞ!
……どけ。
!!
死にたくなければ道を開けろ!
story13 魔王
説得は不可能。そういう風に、創り直されているのだから。
似ている別人。自分で言ったことだ。そう考えるのが正しいはずだ。
……心を痛める必要はない。
あとでまた、<再誕>させればいいのだから――!
…………
……くくく……
過ちに気づくことなく、眠りにつけるなんてずいぶんシアワセっスねぇ……?
罪悪感とかなんもなしに、誰かが全部元に戻すのを待ってりゃいいだけなんだから。
俺もそっちの方が、良かったぐらいだわ……!
――!!
誰あんた?レディ・キラーじゃなかったよな?
成程。貴様に棺は上等すぎるようだ。
は?
魔王の真似事は楽しいか?
なんだそのエスプリ。そーゆーノリは時代遅れだぜ?
時代で移ろわぬ物もある。俺にとってそれは――
――我が友との絆だ――
このまま貴様を野放しにすれば、いずれ帝国へも害為すのは明白。
共闘の義理だけではない。我が友がため、ここで安息を与えてやろう。
帝国のヒットマンってとこか。その腕は?
戦開中に嘲るのが流行りなのか?
ならば古臭くてかなわん!
くっ……!
民衆共よ!この男の始末はこの俺が引き受けた!
ウォオオオオー……ン!!!
……
存外優しいようで。
……正気か?情報では貴様の故郷だと。
なあに、後からやり直せばいいだけさ。
時間を巻き戻すことはできない。
そんな魔法もありそうだけど?
たとえあったとて――
――人の子の所業ではない!
シロー!?
師匠、イズネ!俺に力を!
はいっ!
よし、これで……!
何をしようと無駄だ。人類の敵となる道を歩み始めた小僧よ。
貴様を噛み砕き、背後で糸を操る道化を引きずり出してやる!
ガルルゥァアアアアッ!!!
story14 切り替え
――ガルルアアアアッ!!!
くっ……!
この力は……!?
……神獣の……!?
神獣って……!?
……いや。それだけではない。
え?他に何が?
わからん。だが、そのどちらも、……使いこなせてはいない。
理性が梱となっているのだ。
貴様のような存在は、幾度も目にしてきた……
ある者は己が野望のため。またある者は抑圧された衝動がため……
またある者は純然たる欲望のため……分不相応な力を振りかざし、他者を蹂躙していた……
だが……許されざる者どもも、たとえ己の目にしか映らないものであろうと、たしかに見据えていた。
屍を踏み越えた先にある、理想とする世界を!
倒してきた奴を並べて自慢?ヨソでやってくんない?
……貴様はそのどれとも違う……
――思想なき魔王よ!貴様の道は、どこへも至ることはない!
眠れ!せめて敗北の名誉とともに!
大袈裟だなっ……!そういうわけには――
――いかねえんだよっ!!!
わあっ!
(この距離……巻き添えに――)
はああああああっーー!!!
ガアアアアアアッ……!
……あんたの負けだ。
…………
……永い……生だった……
終わりとは……こんなものか……
ただの暴徒に……やられる……とは……な……
…………
――友よ――
…………
アピス、イズネ。助かった。
いい具合に人も散ったな。行くぞ。
story15 あとからの奴が
芝居がかった口調ってのは――
――芝居がかってる。当たり前か。言いたいのは、つまり……
『芝居』と思えば、平気になる。
自分の振る舞いが。
……魔王……魔王ね……のんきな方じゃなくて、いわゆる悪の大魔王、か。
別にいいよ。笑けるけど。
魔王も本人からすれば善。よく言われるそれを、地でやってみるってことだ。
やってわかったこともある。
先に魔王をやったクロカは、今は逆に英雄ってことらしい。つまり、そういうことだ。
あとから貧乏くじを引いた奴が、魔王と呼ばれるだけだ――
人目を避けつつ、町を抜ける?
現実的じゃない。
散らした方が早い。
犠牲が出ても――いいって言ってたよなあ?
……フ……フフ……
ハハハハハハハハッ……!
――さあ、先へ急ごう。
シロー、お前……
アピス。急げば急ぐだけ、有利に事が運ぶ。
必要な会話以外慎め。
…………
(……不安定ね……)
もうすぐ、本陣へ届きます。……さすがに守備は厚いでしょう。
問題ない。伝令から始末する。
……三人だけでは、手が回りません。
なら魔物で囲え。それで十分時間は稼げる。
……待て、シロー。
本気で言っているのか?
本気か、だと?
魔物で時間稼ぎ?そんな方法をお前は選ぶのか?
……アピス。
甘いことを言っている場合ではない。最悪なのは<再誕>が成されない場合だ。
既に出た犠牲も全て、迅速に<鍵>を手に入れるためのもの。
手段を選び、失敗しては元も子もない。
…………
らしくないことを言うな。それとも俺が、好きで魔物を利用しているとでも?
いや、そうは思っていない。すまなかった――
ま、多少愉快だけどな。
!?
嘘だよ。
…………
…………
俺は、『魔王』だそうだ。
さあ……罵声を浴びに行こう。
もう少しの辛抱だ。創り直せばみんな正気に戻る。
シンドイ思いをするのは、俺だけでいいっしょ。
……
…………
……センセイ……
…………
……<再誕>の力は、そこまで強力なのですか?
まるで時を戻すように、失った者も蘇ると?
……サニオは、どう言っていた?
え?
研究していたのだろう?何も聞いていなかったか?
断片的にしか…………そうですね、たしか……
――それまであったものを活かしつつ……やり直す力……
そんな言い方だったかと。
……わからんな。
ええ、それだけでは……
<再誕>の力の真実を知っている者はいないのだから、仕方のないことだが。
もしも、望む結果が得られなかったとしたら……
俺たちのしたことは、全て――
…………
……行くぞ。シローの言うように、時間は惜しいからな。
…………
story16 決定的
ホントにここまで来ちゃいましたね……
オレに想定外って言葉はない。
よく言いますね?
真実さ。途中で舵を切った。多少他ンとこに無理をさせてでも――
――ここでシローを取ればー発逆転よ!
ティナちゃん!
はい!最初っから、全開でいきます!
――はああああああっ!!!
ペンタ、ビビんなよ!?
任せてよっ!子供だからって、容赦はしないぞ!
ジョニー?
はあ……仕方ないですね。負けたら元も子もないですし。やればいいんでしょう。
つーわけだ。オメーの狙いは<再誕>返しってトコ、なんだろうけどよ?
そんなこたぁさせねえぜ。不安が蔓延した世の中なんて、想像するだけで気が滅入っちまう。
オズマさん、それは違う!あなたたちは、創り直されたからそう思うだけだ!
おかしいのは今の方だ!こんな風にしたクロカなんだ!
証拠でもあんの?
証拠はっ……
言ってることオカシイぜお前?魔物を利用する連中が、正義なわきゃあねーだろーよ。
違うんだ、それはっ……
子供を犠牲にしてよ……!許せねえぜ、お前らのことはっ……!
っ!!
違う、そうじゃない……!犠牲を払ってまでやっているのはクロカの方で……!
調子狂うぜ……!最低だよ、てめえらのやり方は!
被害者ヅラして同情引いて、躊躇した隙を狙いやがって!
違うそれは違うんだオズマさん!頼むから、話を聞いてくれ!
そうやって手を止めたオレの仲間たちを、何人食い殺してきた!?
っ……!
シロー。もう無駄だ。
アピス。見損なったぜ。シローを止めてやるのがオメーの役目じゃねえのかよ。
…………
クロカがどんな気持ちでお前を待ってると思ってんだよ?
お前ならきっとシローを、って……祈っていた弟子の気持ちを想像もできねえのかよ!?
……っ……!
師匠はっ……!
口では勝てません。サニオに似ている。
どのみち戦闘は避けられません。
わかっているっ……!
――いくぜ!
やれやれ。
やあああああああっ!!!
story17 そっちでしょうよ
はあっ!
……くっ……!
……やりますね……!……だけどっ……!
私には、もうーつ――!
!?この力は――!!
***
――くうっ……!
口だけか……がっかりだよ、法王サマ!
可能性を捨ててねえだけさ。オレらの勝率なんて、5パーを割ってっかんな。
なに?
それを100にしようってハナシだよ!
なら、その前に!
ぐふっ……!
!?どうしてよけない!?
……オレが、よけそうな、ヤツだからだよ……!
うおおおおおっ!
があっ!?
シロー様!
燃えちゃえええええっ!!!
うぁあああああああああっ……!
……オズマ様……
……ンな顔すんな……ようやく、言わなくっても…………
オレの策……わかるように、なったじゃねえか……
あと、頼んだぜ………
……っ……!
……はぁっ……はぁっ……!
……手ごたえはバッチリだったんですがね……!
う……うぅぅぅ……!
上司を犬死にさせちゃあ、部下がすたるってもんですからね!
……クロカに……会って……
――創り直すまではっ!
……ぁぁぁぁっ……!!!
(うわ……情けな……
すいません……ボス……)
…………
……ぁぁ……ぁぁぁぁぁぁっ!!!
***
――ぐはっ……!
センセイっ!!
……っ!?オズマさんたちは……!?
俺が殺した。
っ!!!
オズマさんたちだけじゃない……ここに来るまで何人も、何人も――
――お前もそのー人だっ!!
……許せないっ……!
……なら、どうする?
あなたは正気じゃない……!
この細腕でぶっ叩いて……!悪いものを全て、彼方へと消し去る!
仇、いいの?取らなくて?
……っ……!!
……やめろ……シロー……
その子と……戦う必要は……
師匠。見えます?俺の姿?
やられたんですよ。こいつの、仲間たちに……!
カワイソーたあ思いませんかぁ!?
……少しでも……犠牲を……
払わなくて……いいのなら……
はぁあああああああああ!?
……可哀そうな人。
…………
出た。正義の味方特有の、超絶上から目線。
やめろ……シロー……!
センセイ、無理しないで!できるだけ治療しますから!
あなたは不安なのね。不安で不安で、どうしようもなくて……
これからどうなるかもわからず、全てに敵意を向けている……
じゃああんたわかるんスか?これからの展開?
……いいえ、だけど……!
どんなときだって……!あきらめるわけにはいかない!
間違っている人がいるのなら、力づくでもそれを止める!
お母さんも、お父さんも、おじさんもファルファラさんもヴィンセントさんも……
私がそれをしなかったら、がっかりしてしまうから!
ずいぶん個人的な理由だな。
理由なんかなんだっていい!私があなたを止める!
耳を賃して!今からだって遅くはない!
間違いに気づいて!
…………
……あ~……超ハラ立つ……!
よせ……シロー……!
ずっと耳を貸さなかったのは、そっちの方でしょうよ。
――言っても伝わらないから――
殺すしかないんだろうがっ!!
story18 最後の説得
……最後の壁は破った。さあ――
クロカに会いに行こう。
――――
――――
何をぼさっとしている。行くぞ。
…………
……オル……エン……
……ご主人……
アピス、いつまで休んでいる?もう戦える程度には回復しただろう?
俺も手傷を負った。のんびりしている暇は――
なぜ、やめなかった。
……は?
あの子は……あの子になら、説得が通じたかもしれないのに。
なぜ自ら、その道を閉ざした?
……師匠。その話、今します?
必要だ。
敵だったんです。オズマさんたちも、みんな。俺の命を奪いにきました。
じゃあやり返すしかないですよね?それとも、ああする以外に何かありました?
…………
シロー。お前はここに、何をしに来た?
クロカの間違いを正すためだろう?
必要以上に命を奪ってどうする。
<再誕>すりゃあいいじゃないっすか。
シロー!!
怖いですって師匠。だって、同じじゃないですか。
正しい世界に戻れば、みんな、また笑って暮らしますよ。何もなかったみたいにね。
万がー、戻らなかったら?
…………
俺の手は――血に染まりました。
だから……前よりも…………やれることが増えた……!
お前っ……!
目的は変わりません。弱者が強者に搾取されない世界を願っています。
……犠牲は既に出たんだ。
一も百も同じだっ!!!
ペルマナは帰ってこない!
お前、本気でっ……!魔王の道を歩むと言うのか!?
仮にの話だったんじゃないですか?もしも<再誕>しなかったら、って話でしたよね?
……覚悟を語ったつもりだ。非難されるいわれはない。
…………
変わっちまったな、シロー。
…………
今のお前に、創り直すって言われても――
――正しい世界になるとは、到底信じられん!
センセイ……!
イズネは?
…………
センセイを信じます。
責任転嫁。
違います。昔よりも私は、ソウルをまざまざと感じられる。
あなたのそれは……邪悪に染まっている!
邪悪ってナニ?
クロカでしょ?
後から正そうとしてる俺を――
悪者にしてんじゃねえよ!!!
くぅっ……!
見損なったぞ、シロー!
またそうやって、俺の心を削る……
あんたも結局、クロカの昧方なんだなぁ!?
違う!クロカも止める!
嘘つけよ!!!
センセイッ!
……俺の目の前に立つのは、みーんな敵だ……
違うぞシロー!目を覚ませ!
なんで、どいつもこいつも――
自分が正しい前提でしゃべりやがるんだよっ!!
シローォオオオオオ!!!
story19 再会
……一人か。
……ああ。
こっちもだよ。つえーなシローよ。とっときの駒、みんなお前にやられたよ。
……?師匠は?
…………
……いらなくね?
俺とお前の問題に、そーいや、他に誰も、混ざる権利とかなかったんじゃね?
……っ……!シロー……!さてはお前……!
殺したな!?
精霊って、殺すとか、言うの?
てめぇえええええっ!
は?なにキレてんだよ?クロカ、俺たちのこと始末する気だったんだろ?
最悪の場合だ!何考えてんだ、シロー!?師匠を、師匠をっ……!
……お前もかよ。……やめろよ、ずりぃよ。
自分の方が正しいみたいに言うのやめろよっ!!!
考えなきゃ駄目だろうが……世界を、創り直すんだぞ……?
考えて考えて、辛いこと堪えて、批判くらっても我慢して、嫌われても受け入れて……
どんなに自分の手が汚れても、それでも、人々のために、考えて、そうしなきゃ――
――正しい世界になんかならないだろう!?
驕るなっ!理性が全てだと考えるのは人間のエゴだ!
感情を否定するな!だから世界はややこしくなる!
弱い者は喰われる!大自然の掟だ!
シンプルでいい!
ピラウが戻ってきたら嬉しいだろーが!?
っ!!
それが、感情だよ。
…………
……嘘つくなよ、クロカ。お前だって、自分の感情がわかんないままやってるだろ。
…………
そのまま行ってどうなんだよ!?どうやったらペルマナが戻ってくんだよ!?
全然つながってねーだろがよっ!!
だからそう考えるのが頭でっかちだって言ってんだよ!
……こんな日が来るなんて、思ってもなかったぜ……!
ああ、私もだ。
こんなにお前が憎くなるとは。
俺たちが殺し合うだなんて――
夢にも思わなかったよ!!!
返してもらうぜ、<鍵>を。
心配すんな、すぐに<再誕>する。痛いのはー瞬だ。
お前、いつからそんな言い方するようになったんだよ……?
あれか?ヒールヘの憧れか?ホンットガキだな、お前は!
いくつになっても変わんねーな!?
お前も、昔から、そうな。自分が陽だって、当然のように思ってやがる。
俺だって別に陰が好きじゃあねえってのによっ……!
――魔王って呼ばれたんだぞ!?
ピッタリだよ、今のシローに。
クロカァアアアアアアッ!!!
story20 初耳
頭脳はそっちでも強さはウチだ!忘れたわけじゃねーだろ!?
しかもそんなボロボロで!勝てるわけねーだろが!?
……いっつもそうだ…………ずっとそうやって……!
自分が上みたいによぉ!?
事実だろうが!
気に入らねえんだよぉおおお!!!
……シロー……
っ!?
……くふっ……!
お前……!?なんで、どうして……!?
わからん……よ……急に……
よける気……なくした……
……クロカっ……!
……ふぅ……ふぅ……ぁぁっ……!
……初耳……だったぞ……
……なにが……?
<再誕>て……二回も…………できんの……?
二回っていうか……お前がやったのは、不完全だったんだよ……
……そー……なのか……
……先、言えよ…………もっかいやり直せるなら……
……その方が……ぜったいもっと……よくなるよ……
決まってるよ……
知らなかったのか?
……ふぅ……ふぅ……んぅぅぅ……
わけ……わかんねえ……
なんだよこの……運命……
この……役割……
間違ってんたろ……
間違ってる……?
そうだ……シロー…………ゴフッ!
クロカ!
間違ってたんだ……ウチらは……
何がかは……わからんが……
もしかしたら……あんとき……
…………
……クロカ……?
おい……クロカ……クロカっ……!
クロカーーーーーーーーーー……!
――お見事です、シロー様。
ついに、<その時>がきました。
……!?お前たちはっ……!?
さあ、創り直しましょう。
弱者主体の世界へと。
story21 この道は何度でも
お前たち、なぜここに……?
ご覧ください。
限界まで振り絞ったクロカのソウルから、<鍵>が生まれようとしています。
……っ……!!
さあ、シロー様。<鍵>を手にし、真の<再誕>をもたらすのです。
……真の<再誕>……?
シロー様には、ようくおわかりのはずです。
未来に希望はない。人は皆、不安でー杯。
それを下手に否定すると、暴力性へ変わったり――
――疑念に変わり、裏切ったりもする。
…………
まずは、皆で認めること。そこから始まる何かが、きっとあるはず。
……ル=グイン。お前も、同じ世界が望みなのか?
予言など妄言と同じなのです。
未来が不安だから、すがる何かを求めたがる。
新たな世界となれば。予言など不要になることでしょう。
未来樹もただの木となるでしょう。いずれ枯れゆく、ただの木に、ね。
……生に疲れた、ということか。
さて……どうでしょう。全くないとは申しませんが。
ではお願いします。シロー様。
…………
お前たちには誤算がある。
?
俺が、そんな世界を望まないということだ。
俺がやり直したいのは――
……フ……
……フフフ……
ハハハハハ……!
……なにがおかしい。
いえ、すみません。
お気にさわったのなら謝ります。
……?
どうぞ、シロー様の思うままに、やり直しを行ってください。僕らは――
――気が変わるまで、言い続けるだけです。
何度でも、ね……
……負け惜しみを。<鍵>を握っているのは俺だ。
貴様らがどう誘導しようと、俺の意思に介入はできん。
――<鍵>よ。<再誕>の扉を開け――
この世界の過ちを正せ――!
避けられない、
未来……なのか……!?