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【白猫】絶海の侵略者4 Story2

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん



目次


Story6 悪夢

Story7 作戦開始

Story8 海の底から

Story9 完全な存在

Story10 浮上

Story11 決断せよ

Story12 海底の光




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story6 悪夢



終わりの日を見定める――

その日が来ればすべての命を吸収し、永遠に生き続ける方舟。

いつか命の種を撒いて、世界を再生するのです……

終わりの日を見定めることが、ノアの……方舟の使者の、役目なのです……



…………

ここは、どこなのです?

Mウルマで廃棄された研究施設を改修し、再び使えるようにしたところだ。

あなたは、誰なのです?

Mマスヴィダル。皆(みな)からは将軍と。好きなほうで呼んでくれていい。

方舟のことを、知っているのですか?

M知っているとも。

方舟は希望だ。

方舟が浮上すれば世界を終わらせてしまうのです。

すべての命を吸い取るまで、止まらないのです。

……この世界にとってはまだ、希望には、なりえないのです。

Mいいや、希望だよ。

何を考えているのですか?

M人はくだらない生き物だ。裏切り、憎しみ、誰が権力を握るかなんて政(まつりごと)で頭がいっぱいになる。

ノアには難しい話なのです。

Mははは、そうか。私にも難しい。

難しいということは完全ではない。物事はとてもシンプルなんだ。誰にでも理解でさることが真実なのだよ。

あなたは、真実を知っているのですか?

M真実を追求したいと考えている。

だからシンプルにしたい。人は愚かで救いようがない。だから皆殺しにしたいんだ。

させないのです。ネモがあなたを、許さないのです。

Mはははは!

たしかに!だからあいつを選んだ。

あの男のような人間ばかりなら、世界が滅ぶ必要はないだろう。

……ネモのことをよくご存知なのです。

M忠実な男だ。きっと犠牲になってくれると思っていた。

あなたは、まさか。

Mウルマ島の虐殺は私が仕組んだ。あの男のおかげでスムーズに事が運んだよ。

…………

Mおいおい、睨まないでくれよ。

ネモが来るのです。あなたの目論見は、きっと失敗するのです。

Mどうかな?私の切り札は方舟だ。そして人質は方舟の使者だ。

だから、なんなのです?

M方舟を壊せば、方舟の化身たるお前も死ぬ。あの男に、お前は殺せない。

中に入れ。もう話すことはない。

ネモは死ぬ。お前を殺せないからだ。それだけ伝えたかったんだ。

……この装置はなんなのですか?

M<終焉の箱>。

悪夢を見せてあげよう。



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story7 作戦開始



ここがウルマ島。

バレたら命はない。艦の隠蔽は問題ないだろうな?

僕の部下は優秀だ。命令があるまで姿は現さないし。ドレッドノートを気取られることはないよ。

……ふん。

捕虜なのに偉そうですね。

おたくの艦長の寛大な措置のおかげでな。

手錠はついてるし武器も取られた。おかげで自由の身だと錯覚してしまったよ。

調査を進めましょう。

現在のウルマ島は無人島です。虐殺後は放置された島だと情報にはあります。

その信憑性を確かめるために僕たちは来た。

見ろ。

廃棄された港ですね。砲撃を受けたままになっているように見えます。

いや、巧妙に隠蔽されているが、桟橋は修理されている。いや、巧妙に隠蔽されているが、桟橋は修理されている。

よく気づさましたね。

あるいは最初から知っていたか。

島には古代遺跡を改修した実験施設がある島には古代遺跡を改修した実験施設がある。そこへ向かう。

だが敵も馬鹿じゃない。警戒しているだろう。

ならどうする?

別の出入り口を使う。囮もな。

囮ですか?

将軍は俺が来ることはわかっている。正面から入って陽動する。

そのすきにお前達が施設を探れ。

どこから侵入すればいい。

地下施設だ。どこかに通気ダクトがあるはず。利用しろ。

艦長、信じるんですか?

いや、信じない。

僕と彼が行く。中尉がダクトを探してくれ。

……いいだろう。

了解しました。

作戦開始だ。


…………

……


ここが地下施設の入り口だ。

この島にこんなところがあったなんて……

派手に暴れるぞ。拘束を解け。

裏切る可能性がある。

だったら今頃、敵兵に囲まれてるだろ。

ああ、だろうね。

ひとつ聞く。どうして命を懸ける。

正義のためか?それとも自分のためか?

…………

何が君を動かす?

悪に容赦はしない。だがもっと単純だ――

俺が俺であるためだ。

アルゴノートⅡ、戦闘モードに移行。

戦闘モード、起勤します。

内火艇ガルポート・ドレッド、起動!

z来たな、将軍の仰るとおりだ。

z終わりだ侵略者!防御障壁展開!

zこれで袋のネズミだ!死ねぇ!!

だそうだ。

問題ない。突破する。……遅れるなよ。

照準、セット。

こちらのセリフだ。

「「沈め!」」

z211層の魔法障壁と――943個の防御ルーンを!!貫通たとぉ!!

侵略する!

追撃する!



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story8 海の底から


ううっ……!

いや……!いや、なのです……!

<苦しそうな声が響く。

ノアは半透明のカプセルにその身を閉じ込められていた。>


M女性の苦しむ声を聞くのはどうもよくないな。

男だったらまったく気にならないんだが。

といっても、聞こえていないか。

ははは。どんな悪夢を見ている?方舟の使者よ。


…………

……


ゆらり……

…………

悲しい顔、しているのです。

俺に言ってるのか?

悲しい時は、海でゆらゆらするといいのです。

海は嫌いだ。

だったら、どうしてずっと海を見ていたのです?

お前が大事だからだ。

ノアもなのです。

だからネモが溺れそうになったら、助けてあげたいのです。

だが方舟はすべてを壊す。

……違うのです。方舟は……

黙れ!

……ネモ?

お前さえいなければ俺は苦しまなかった。

お前のせいで、生き方を縛られた。

どうしてしまったのですか?ネモらしくないのです。

溺れる、と言ったな。

だったらお前が溺れろ……!


がぼっ……!ネモ……!やめて……!

(泣いているのです……ネモが……)


……がはっ。

ネモ?どうして……何が……!

ううっ……!

いや……!いや、なのです!

ネモ、だめなのです!目を開けて!

ぁあ……いや……こんなの……

いやぁああああ!!!


 ***


<世界の終わりを告げる舟が――

浮上を始める――>


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story9 完全な存在



艦長たちが派手に暴れているみたいですね。

<終焉の箱>……それにこれは……

強力なジャミング装置……?見たことない技術ですが、おそらくこれがあの船を――

――ひとつ貸しですね。


はぁ!!

ふっ!

背中くらい自分で守れ。

はっ!

そのつもりだよ。……どうやら君も、連邦の敵であるらしいからね。

連邦の仕業じゃない。将軍の独断専行だろう。

最悪に変わりはない。方舟か復活すればどうなるんたい?

世界が滅ぶ。

だが君が懸命な理由はそれだけじゃない。

…………

裏切り者の名を雪ぎたいのか?

くだらん。

だろうね。

この先だ。どうやら、隠すつもりもないらしい。

そのようだね。裏をかかれるくらいなら、招待するつもりみたいだ。


…………


ノア!!

Mおいおい、持てよネモ。

……マスヴィダル。

M私はお前が好きだ。

強靭な意思に、揺るがぬ精神力。……気に入っていた。最高の部下だった。

だがお前は裏切った。俺にすべてを押し付けて。

「ウルマの防衛を頼む。頼れるのはお前だけだ艦長。

援軍を送る。それまで縦深防御を徹底せよ。」

「了解です、将軍。」

「帝国の横暴を許すな。」

「はっ!」


援軍は送られなかった。代わりに送られたのは砲弾の雨だ。

島は友軍に破壊され、守っていたはずのものは焦土に変えられた。

すべて俺の仕業だということにされてな。



貴様は腐ったあの国の中でもまともな奴だと思っていた。

Mまともな奴さ、私も、お前も。

ノアを離せ。そうすれば苦しませない。

Mドーキン医師は苦しんだぞ。お前か沈めた男だ。

……あの医師か。

Mネモ!お前は孤高だ。

羨ましかったよ。お前のように、生きることができるやつが。

人は誰でも自分がー番大事なのさ。だが、己だけの信念は脆い。

世界を見て、己を見る。弱く愚かな民衆には歩めぬ道だ。

それができる人間は限られる。

かもな。

Mそれでは世界の平穏は成就されないんだよ。

その結果がこれか?正しいのかい?その行いは。

M正しいものなど存在しない。

あるのは事実だ。人は等しく愚かで、救いようがないというな。

だから完全な存在に、世界を預けようじゃないか。

そいつは誰だ?

M知る必要はない。どうせその世界に私も、お前も存在しない。

来るぞ。

言われるまでもない。

M苦しむ顔を見せてくれ。名もなき男よ。



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story10 浮上



っ……!

ノア!!

……ネモ?

ネモ!ネモなのです!よかった……!よかったのです!

ネモ、許してください。ノアは……目覚めさせてしまいました。

目覚めさせた?

方舟を、目覚めさせてしまったのです!

Mくくく、はははは!!

何が可笑しいんだい?

M何も。ただ……がはっ……

ふふ、聞こえるのさ。そいつが愉快でね……

幻聴でも聞こえるのか。

Mいいや、私は正常だ。

さっきから何を――

持て!

<遠くから微かに響く音――

それは恐怖に彩られた――>

zぎゃあああああ!!!

z来るな!来るな来るなぁああ!!

M終焉の音だ。

あれが方舟……

ノアの、せいなのです……

お前のせいじゃない!

ネモ?

離れるな。絶対に、俺のそばから!

…………

Mいい表情だぞ。

貴様……!

M方舟はすべての命を吸い尽くす。

ウルマ島にある動植物、魔獣、人。すべてだ。

この島の命をすべて吸った後は、近くの島に移り、そこでも命を吸い尽くすだろう。

果てはこの世界のすべての命が果てるまでな。

馬鹿なことを。何がしたいんだ!

M言っただろう。完全な世界を作るのだ。

…………

Mその顔が見たかった。

そうだ。その顔だ。絶望するお前が、見たかったんだ。

お前を憎悪した。お前は理想の軍人だった。

だがほとんどの人間は愚かだ。この世界の人間はお前のようにはなれない。

理想さえ見えなければ、私も愚かでいられたのにな……

マスヴィダル……!

M弱く愚かな人間など、救う価値はないんだよ、ネモ。

先に行っているぞ。方舟は止まらない。

そしてお前は方舟を止めることができない。

方舟を破壊することもできず、そして世界を救うこともできず、絶望の海底で溺れ苦しめ。

くくく……!はははは……!



自ら方舟に身を捧げたのか……!

あの方舟は、止められないのです。

zうわああああ……

zいやだぁあああ!!!

ここは危険だ!脱出する!

……ネモ、ノアは……

行くぞノア。

…………

今は来い!頼む、ノア!



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story11 決断せよ



ダメだ!道がふさがってる!

艦長!こちらです!

中尉!

搬入用のドックがありました!ドレッドノート号が待機してます。

ありがとう!よし、行こう!

君たちも早く乗れ!!



助かったよ、中尉。

島から十分に距離を取りました。方舟もここまでは追ってこないでしょう。

だが方舟は命を求める。より多くの命が集まる場所へ向かうはずだ。

w方舟、移動中。夕刻には虹の海に属する列島に到着する速度です。

止めなければ次の島で虐殺が起こる。

艦長、私をウルマ島に戻してください。

脱出のためにやむを得ませんでしたがあの施設には方舟に関する資料と機材が集まってます。

方舟に対抗する手段を作れるかもしれません。

何か策があるのかい?

私は人魚です。不死の因子のことをお忘れですか?

方舟が無限に命を吸うのならば、永還の命があれば、あるいは。

わかった。頼むよ。

俺たちもおろしてくれ。

……いいだろう。

素直だな。

今重要なのは、方舟をどうするかだ。君の件は後に回す。

あいにく、捕虜をどうにかする時間も余裕もないからね。

いずれは捕まえる。罪人に変わりはない。

…………

w艦長、指示を!

島に引き返す!中尉と捕虜を解放後、全速力で方舟を追う!

w了解!


…………

……


…………

ネモ……

喋るな、今は。

君は――

いや、いい。海の底の悪意に向き合うのは向き合う覚悟がある者だけだ。

貴様に言われるとはな。

やられっぱなしは嫌いなものでね。

方舟は古代兵器です。無茶はしないでください。

努力するよ。

――方舟を追撃する!

施設を出る際に強力なジャミング信号を発生させる装置を見つけました。

恐らくあなたの艦が拿捕された原因でしょう。破壊しておきましたので、潜水艦は動かせるはずです。

なぜそんなことをする?

直感というやつでしょうか。

……というのは冗談で、方舟を止める戦力が多いに越したことはない。

たとえ方舟を破壊することになったとしても。

そのとおりなのです。とめないと、いけないのです。

奇跡を祈ります。できればあなた達が立ちはだかる敵として現れないことを。

リスクを承知の上か。

研究施設のデータを見ました。私達だけでは、方舟は止まらない。あなた方の力がなければ。

人々の命を守るために最善を尽くすだけです。


ふたりになってしまったのです。

……大丈夫か?

ノアはもう平気なのです。ネモは、平気ですか?

…………

俺は、どうすればいい?



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story12 海底の光



ゆらり。

……何をしている。

思い出すのです。私たちはここで出会ったのです。

そうだったか?

泣きそうな顔をしているのです。

…………

悲しい時は、海でゆらゆらするといいのです。

海は……嫌いだ。

だったら、どうしてずっと海を見ていたのです?

お前を……

失いたくないからだ。

ノアもなのです。ネモを失いたくないのです。

だから、ノアは決めたのです。

方舟を止めなくてはならないのです。

方舟を破壊しろと?

それしか方法がないなら、そうするべきなのです。

わかってるのか?

方舟を壊せば、お前も……!

お前もいなくなってしまうんだぞ!

えい。

何をする。

ゆらゆらするのです。

…………

…………

……………………!

ぶはっ……!

前にもあったな。こんなことが。

そうだったのです?

覚えてないか?

嘘です。覚えているのです。

……ネモは、侵略者なのです。

ネモは何のために戦っているのです?

この世界が好きなのです。

みんなで遊んだり、ドーナッツをつくったり、学校にも行ったのです。バンドも楽しかったのです。

そしてこの世界にはあなたがいるのです。

ノアはこの世界を終わりにしたくないのです。守りたいのです。

……ノア。

信じてほしいのです。自分の心に従ってほしいのです。

ネモはいつも、そうするのです。

……ああ、わかった。

ありがとう、ノア。

深海の闇の中も果てなき深淵も、恐れはしない。前へ進む。

――お前という光が道を照らしてくれるからだ。

ネモのためなら、いつでも光るのです。

アルゴノートⅡ!

艦長、指示を。

……艦をここに呼べるか?

モウ、キテルッチュ!

ホシュ、セイビ、バンゼンッチュ!

行きましょう、ネモ。

ああ。

どんなことにも終わりはある――

俺たちにとって、ひとつの終わりが、今だったということだけだ。

……だが、この手にはまだ残っているものがある。

もう失うわけにはいかない。誰にも奪わせはしない。

だから俺は――侵略する!

侵略するのです!

アルゴノート、発進する!




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