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【白猫】討滅士ガルガ Story2

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作成者: にゃん
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討滅士ガルガ

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story10 彼方



瘴気で覆われているって……

待って、そんなところに人が住んでるっていうの?

みなさんにとっては、疑問ですよね……無理もありません。

どうして、そんなことに……?

瘴気の汚染が始まった理由は不明です。

大きな戦いの後遺症だとか。赤天のもたらした試練だとか。

確かなことはわからんが、大昔からずっとこうだ。

そんな環境に適応した人間がいたなんて、信じられないわね。

私達があの海で生き抜くことができたのは、技術があったからですが……

……海を汚染したのも、その技術かもしれません。

技術力を発展させても、使い方が悪ければ、そうなるでしょうね。

私達は瘴気結晶がどうして発生したかを確かめたいんです。

だから素性を明かして、協力を仰いだのね。

でもそれは――あなた達が、ここまで来た理由じゃない。

それについても、いずれ明かそう。


…………

……


眠れたか。

――捜索にいくのだろう。

行くぞ。


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story




元気なのは魔物だけかよ……

……バイパーさんがいっていた。

連邦は、技術を駆使して魔物を作り出していたと。

聞いてるぜ。

そうした魔物は、最初から、病んでいる状態だった。

細胞が最初から異常な成長をするように仕込まれていた……

だから、普通のソウルよりも瘴気がお好みってんだろ。

島で暴れてんのは、そういう魔物ってわけか。

弟のくせに先回りするな!

それくらいわかっていいだろ。弟なんだからよ!

お二人は仲がよろしいんですね。

どこか!

そういうところが、です♪

あっ……またあの結晶だわ。

<すこし遠くの岩山に瘴気結晶が生えている……>

ちょうどいいですね、サンプルをとっておきましょう。

そうだな。

あっ、近づかないでください、キャトラ先輩。

大丈夫。そもそも今回、瘴気のせいでアイリスのそばを離れられないしね。

私の魔法で、キャトラを守ってるからね。

それでは……と。

待て。

えっ?

隠れろ。

瘴気結晶を守ってる……?

手出しをされたくないようだな……!

何考えてんのよ……!

瘴気を使う兵器があるそうだが、だとしたら……

兵器にするための実験を?

連中にみつかると面倒だな。

もとより面倒なのはわかってましたけど、こうも露骨ですか……


…………

……


それじゃあ、話の続きを聞かせて!

私には、兄がいました。名前はラルフといいます。


…………

……



lガルガ、やつらの匂いは。

六時の方角。かなり大きな群れだ。

l船団を襲った連中か?

おそらくな。

lでは、弔い合戦だ。

Rはっ!

l全軍、黙祷せよ。

諸君らに問う!諸君らは何者か!

R討滅士なり!

l討滅士とは何か!

R身命を賭して、我らの敵を討つものなり!

l我らの敵とは何か!!

R人類の敵!!命滅獣なり!!

l我が軍の兵士の死は、脅威の完全排除をもって報いられるだろう。

目を開けよ!

討滅器を構えよ!我らの誇りを!

全軍、突撃!!



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story



……討滅士……?

まず、そこからか。

戦う人ってことはなんとなく伝わったけどさ。

その……討滅士って人たち、瘴気が平気なんですか?

そうだ。瘴気を吸収し、武器とする。それが討滅士だ。

にわかには信じがたいけど……

瘴気を食らう男がいると聞いたが?

ええ、そうよ。だから頭から否定はしない。

でも彼は、特殊な生まれなの。あなた達はどうやって瘴気に耐えてるの?

生まれは普通だ。いくぶん瘴気に強いとはいえな……

私でも、この島の浜辺で感じたくらいの瘴気なら、耐えられますね。

寒い国の人が寒さに強いみたいなやつね……

違うような……

生まれということは……その後、特殊な訓練でも?

いや、討滅士は後天的な処理を施されている。

処理、ね……それで――

何なの、命滅獣って。

お察しの通り、樟気を食らって生きる生命体です。

食らうだけではなく、瘴気を吐き出して武器にすることもありますね。

ぐへえ……

命滅獣は赤い海の生態系の頂点です。

人類が生き残った理由はーつ。命滅獣にとっての敵や獲物は、同じ命滅獣だからです。

人間は奴らに対抗するために、討滅士を創り出しました。

えっ、創った?

多大な犠牲を払って捕らえたー匹の命滅獣の生体組織を調べあげ――

人間に組織を移植し、同等の力をもたせたのです。


……

…………



はああああ!!

腹には刃が通る!怯むな!

R我らに赤天の加護あり!!

l……ふむ。こいつら、増えてるぞ。

厄介だな。

l集合フェロモンを発して仲間を呼ぶタイプらしい。

なら、どうする。

lまとめて叩くのなら、ちょうどいいじゃないか。

呑気なことを!

lよし、逃げるぞ!


…………

……


lよし、うまく地雪原につっこんでくれたようだな。

やれやれ……

lなんだその表情は。今回はわりと作戦通りだっただろ?

わりと、だと!?

lでは、凱旋といこうか。副隊長。



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story



<フェイは、同僚と命滅獣の細胞を使った実験を行っていた。>

L命術の修行だけじゃなく、瘴気の研究までやるなんて、どうなの?

私ら封命士以外、研究ができないんだし、しょうがないんじゃない?

L計算くらいは得意な人にやってほしい……

そう?むしろ癒やしじゃない?

L変人はこれだから……ところで、最近何か変なことしてたりしない?

ソウルを使って、命滅獣をおとなしくさせることも、できるんじゃないかってね。

L何だ、そういうのか……

何だと思ったの!?


…………

……



Rラルフ隊、軽傷4名、帰還しました。死者なしとのこと。

K戦果は。

R敵勢力の全滅を確認とか。

K虚偽報告の可能性は。

Rラルフ隊に潜らせた諜報員の報告によれば――

虚偽の報告はしていません。

Kなら、どうして奴の隊の死亡率はこれほど少ないのだ。

Rラルフ隊だけではありません。ラルフ隊の確立したノウハウが広まった結果……

全部隊で死亡率が大幅に減少しています。

Kそんなことは聞いておらん!!貴様まで奴を持ち上げるのか!

Rいいえ。そんなことは。

Kラルフ隊は何らかの不正を行っている。これは確定事項だ!

Rでは事実を作ります。


…………

……


R敵生物の形状から推測しますと、群体として進化した種ということになりそうです。

l10年前に発見された種との関連が考えられるな。

R過去のデータを洗ってみます。

10年前となると、たいした記録は残っていないぞ。

l俺とガルガが、討滅器を握ったころだ。

R昔は、記録をとってなかったんですか?

l俺以外はな。……これだ。

<ラルフは古びたノートを棚から取り出した。>

l40ページ目だ。

R本当だ……

lこういうデータ、上が保管をしているかもしれんがな。

実戦部隊に共有されんのなら、なんの意味もない。

lどんなデータも、結局は政治の道具でしかないさ。

俺たちが命を張っているのにか。

lこっちはそれが仕事だ。

無駄に死なせる余裕はない。

lお前はいつでもお前だな。安心するよ。

群体型は大型にとっては、いい餌になる。今までのサイクルを考えれば――

個体としての性能を高めた命滅獣が出てくるか。

R……新しい戦術が必要となりますね……

俺たち討滅士を討つように進化するということは、考えられんのか?

l人間はこの海では弱者だ。しかも瘴気が薄くてまずい。

命滅獣にとって、俺達は脅威ですらないということだ。

癩な話だな。

lもっとも、ガルガを倒すために進化したやつが出現する可能性はあるな。

なんだと?

R……副隊長が桁外れなのは、有名ですよ。

lこいつは討伐数をろくに数えてない。全て部隊の戦果として計上している。

大型40、特異型7、中型628。小型の討伐数は2032。

そんな数字を数えてたのか。

lお前は俺のもつ最大の戦力だ。スペックを把握しておく必要があるだろう?

R六匹倒したらエースじゃなかったんですか……?自信無くしますね……

lガルガを基準にしたら、現実的な数字は出ない。


…………

……


アンタたち……ずっと島を守って戦ってたのね。

話を聞く限り、ずいぶんと使い捨てに聞こえます。

死ぬのも討滅士の役割だ。

口減らしですか。

……そういう意味もある。

すみません。……俺達もその、似たようなもんなんで、気になったんです。

どこでも当たり前なのだな。こういうことは。


…………

……



w瘴気測定器のデータを照合した結果、やはり目標は山にいると思われます。

zだったらどうする。

w山に調査隊を送り、目標を発見するのが最優先かと。

z攻撃用のルーンというものが、何のためにあると思ってる。

w攻撃を行うんですか!?

z当然だろう。これだから、戦争を知らん世代は……!

wしかし、敵の能力が不明すぎます!

z調査など、鋼の国の連中にやらせておけばいい!



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story



瘴気がひどいですね。私はそろそろきついです。

ガルガは?

俺の体調は万全だ。魔物が耐えられるなら、俺も耐えられる。

やせ我慢じゃないのよね。

この島を襲ったのは――命滅獣なのね。

その通りだ。

信じられないわね……個体が進化を繰り返し、そのっと環境に適応なんて。

奴らは寿命では死なない。

瘴気がある限り、成長しつづけるんです。

でも、どうして動かないの?

希望的観測をふくめた推測になりますが……

かまわないわ。

もっとも可能性が高いのは、対象が個体としてはすでに死んでいるということです。

えっ?

自然のソウルにあふれたこの島の環境は、目標の生存には適さないと考えられます。

よって目標は、環境そのものを変えるため、瘴気結晶となった。

瘴気結晶の正体が、命滅獣ならば……ありえる話ね。

ですが、もし目標が健在なら――

島の環境への適応を進めているということ?

そのために、休眠をしている可能性があります。

眠っているんなら……

下手に起こすのは愚策。だが駆逐には好機だ。

俺ー人ならそうしていた。

確率の高い方に賭けられるのが、アンタたちのいいとこだわ。

ガルガさん、俺達も……力、貸しますよ。

右に同じくだ。

助かる。だが、情報を明かした代償は払ってもらう。

なんですか?

死ぬな。


…………

……


――ガルガさんが?

lあいつは、俺と違って優しいところがある。

危篤状態になった隊員に、最後まで付き添うのは、いつもあいつだ。

部下を見捨てるという選択をできるだけ避けるために、あいつは研鎖を積んだ。

己の命よりも、他を優先する。そんなところがある男だ。

知ってました。寂しがり屋だから孤独を選ぶ。そんな人なんですね。

lそうだ。あいつはー人でなんとかしたがるところがある。

困った癖だ。


…………

……


(ガルガ……全てを背負って、決着をつけるつもりですね)

生きて命滅獣の脅威を伝えてくれ。それが代償だ。

わかりました、ガルガさん。

あなた達は命滅獣を追って、ここまで来たのね。

そうまでして倒したい相手なの?

――あいつは仇だ。



こっちよ、主人公!

急ぎましょう!

ルーンの反応があるなんて、奇跡ですね……

ー般人までルーンを保有しているなら、ありえてもおかしくはない。

向こうに洞窟があります!

……奥の方は瘴気が薄いな。

あの中に逃げ込んだなら……生存の可能性は高い!

お願い、間に合って……!



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w_k2あっ……!

無事だったんですね……!

「ああ……

w_k2じいちゃんが!じいちゃんが……!

w_oJ……よかった。


…………

……


洞窟にいた老人は、ルーンにソウルを注ぎ続けていたらしいわね。

――死因は生命力の急激な低下によるものよ。

瘴気から身を守るためのルーンを、どうして?

彼が昔住んでた島は、瘴気の蔓延で滅んだそうよ。

だから肌身離さずルーンをもってたらしいわ。

瘴気から生き残ったのに……

フェイ……この汚染は、他の島にも広がるかしら。

確実にそうなります。そうなったら……

なんとしても止めるわ。

瘴気結晶のサンプルを入手しましょう。

濃度の低いところに生えた結晶体は、連邦に監視をされてるから難しいわね。

だったら、濃いところから調達ですね。


…………

……



女の子とお母さんは、ギルドの飛行艇に乗ってもらいました。

何はともあれ、よかった。

こんなことは……もう終わりにしないと……




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この瘴気の濃さならば、奴らも手出しはできまい。

<ガルガは瘴気結晶の側に駆け寄った。

結晶は砕け散った。

ガルガは、瘴気結晶の破片を採集箱に入れて、ロックした。>


…………

……


ガルガが手に入れてくれたサンプルです。

実験を始めましょう。

ここの設備、私たちの島のものとは全然作動原理が違いますね。

ルーンエ学の産物だからね。

私達の研究には科学技術と命術を使ってました。

あなた達の世界で使われる、魔術の体系ね。

ルーンを使った実験なら、違った側面から検証が行えるかもしれません。

そうね。まず瘴気を発生させる原理から解析しましょう。


…………

……


アイリスさん!ハーブさんが、至急来てほしいと。

どうしたんですか?

あの結晶を調べていたら、とんでもないことがわかったそうなんです。


…………

……


<アイリスは、瘴気結晶の収められたガラスケースを見つめる。>

どうかしら。

ああ、やっぱり……これは……!

何なんですか?

これは……ルーンです。正確には、ルーンになりきれていない不完全な存在ですが。

結晶の異常な脆さは、それが原因というわけね。

――これが、ルーン――!?

ハーブさん、この島のグレイスルーンがある場所は。

<グレイスルーンとは、島の環境を決定するほどの力をもったルーンのことである。>

この島の山の頂上よ。それじゃあ、まさか……!

命滅獣は、島のグレイスルーンを乗っ取って、結晶を作らせているんじゃないでしょうか。

ルーンが生み出されるなんて、本当なんですか?

こちらの海では、ー般的な現象よ。

グレイスルーンが、島のソウルを蓄えると、自らの分身となるルーンを生み出すの。

私達の島では、ルーンは上層部が管理しています。初めて知りました。

とはいえ……これだけの速度で成長するルーンなんて、前代未聞よ。

瘴気結晶はソウルを瘴気に変えているんですか?

そうなるわね。ルーンで魔法が使えるのとー緒。

ルーンにソウルを注ぐことで、魔法を発現させる原理ですね。

私達の世界では、わずかなソウルもすべて瘴気結晶が瘴気に変えていたと……

あっ、結晶が!?

砕けて……消えましたね……?

ソウルを照射していたから?今のこの波長……

やっぱり、瘴気治療に使われる波形と同じ……!

治療……瘴気を癒やせば、瘴気結晶も……

大変ッス!


…………

……


<合同軍の飛行艇部隊は山岳地帯に向かっていた……>

……仕掛ける気!?

破壊の力をもったルーンを使うつもりなのか。

なんだか嫌な予感がする……!

アタシらはどうする?

――俺は務めを果たす。




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story



w目標、確認しました。

攻撃は島の山岳地帯、結晶体密集域に集中させます。

w_k3始めろ。

w全艦、攻撃開始!


……

…………


命滅獣に、破壊の力をもったルーンが通用すればいいのだが……

予断は許さん。そういう獣だ。

ところで、どうしてついてきた。

――俺を?

俺たちにしてみれば、ここの環境は相当に恵まれている。

これほど豊かな世界に住む者を、理解できるか、正直不安だったが……

この青い空の下にも、お前たちのような戦士がいた。

理由を増やしても無意味かもしれんが……

俺は、青い空のためにも、戦いたくなった。


始まったか。


……

…………


結晶体健在……どういうことだ。

w砕けた端から、結晶が生えています!

w瘴気濃度、上昇中!観測器の計測限界を突破!

w致死量の数百倍だと!?

w_k3何をしている!撃ちつづけろ!

w結晶体が攻撃のエネルギーを瘴気に変換している……?

将軍、推進弾の使用許可を!

w_k3ええい、許可だ!

ルーン推進弾装填!

w推進弾装填、撃ちます!

w推進弾、全弾命中!結晶体群消滅――

w_k3どうだ、やったぞ。

w待ってください、これは――瘴気の発生源、移動してます!

<連邦の飛行部隊がー撃で全滅した……!>

<ガルガは加速する。

獣を殺すのもまた獣。

殺意の衝動に支配され、討滅の器は走る――!!>



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story



<その存在を意味する言葉はとてもシンプルである。

意味することは、終焉。絶命。衰退。

滅び――



汝を――

滅する!!


…………

……


始まってしまった……!

なんてこと……あれが……命滅獣……!

ええ……

ガルガさん……

ガルガの発している瘴気、命滅獣に匹敵するものよ。

彼は何者なの!?討滅士って何なの!?

……彼を信じてください。


…………

……


はっ!!

瘴気に攻撃が阻まれている。……奴の力は無尽蔵。俺の全開はあとー度。――土壇場か。

舐めるな……!


<討滅士は、構えた。

その手で、禍々しき兵器が唸り声を上げる。

互いに不意の膠着。それは永遠のようにも――

ほんの刹那のようにも――>


討滅の器になりし、強き者たちよ――

俺も、汝らのーつとなろう。だがその前に――

我が生涯最後の戦に、勝利を与えたまえ!

はあああああああ!!




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獣がいた。

それを狩る獣がいた。

果てしない応酬。激突する情動。両者、いずれも譲らず。

――されど。

決着の時は迫っていた。




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