【白猫】サラブレッドLOVE Story
貴族のお嬢様が、執事のためにデートを計画。
助っ人の協力も得て、手作りチョコも無事完成。
決戦はバレンタイン!果たして想いは実るのか――!?
目次
登場人物
マヤ・ヘレフォード cv.福圓美里 没落した貴族の子女。栄誉を取り戻すために冒険家になった。 | |
メルヴィン・ブラックウェル cv.河本啓佑 忠実だが仕事振りは残念な執事。母親譲りの優しい心を持つ。 | |
アピュト・ブーゲンビリア cv.長縄まりあ 恋愛初心者のサキュバス。恋を学ぶために旅をしている。 | |
ゼロキス・チェリサージュ cv.下野紘 自称恋愛マスターのインキュバス。恋の準備は万全だが、必ず失敗する。 |
story1
おはようございます~、お嬢様~。
……ふぁ……
お食事の用意ができておりまーす。
……いま行くわ。
ウフフ。本日もすこぶるいい天気ですねえ、お嬢様ー。
もぐもぐ……そうねえ、いい天気ねえ。――あ、これおいしい。
料理長の新作節約レシピです、私もおいしくいただきました。
じゅ……えっと、5皿ほど。
なるほど20皿ね。食欲旺盛で大変よろしい。
靴を磨かせていただきます~。
うん、ありがと。で、なんで星たぬきのぬいぐるみを持ってるの?
…………
また間違えたのね。
では、本日のご予定をば。まずは魔獣討伐依頼が2件。こちらは午前中で終わるでしょう。
昼食後は馬術と剣術のお稽古を旦那様につけていただきます。そしてわんぱく体操をはさみ、夕食。以上でございます。
なんかヘンなのはさんだわね。
……申し訳ございません。わんぱく体操は私の予定でした。
カワイイなおい!
ちがうちがう。ツッコんでる場合じゃないのよ!
え?
(今日こそ……今日こそ、誘う!)
(もうすぐなのよ……!勝負の日は!!<バレンタインデー>は!!)
えーっとね、メルヴィン。今度のね、バ、バレンタインデーなんだけどね……
はいー。
あの、さ。……遊園地、行かない?
かしこまりましたー。
(よおぉぉ――し!)
――じゃない!!アレ、執事的な感じじゃなくて!二人で、遊びに、行くって感じで!なの!
遊びに……!?私も、遊んで、よいと……!?
そうよ。あ、あたしとー緒に、遊ぶのよ。
あ……ありがとうございます……!光栄です!!
よしよし。……で、でね、メルヴィン……
あ、ちょうちょ。
その、デ、デートのね、最後にね…………話が、あるの!
…………
……メルヴィン?
ウフフフ、かわいいちょうちょさん、まてまて~♪
聞かんかい!!
……ま、いいか。ふふ……♪
story
やっぱりねえ、渡すのは観覧車の中でがよさそうねえ。
な、なるほど……
<マヤは主人公に遊園地デート計画の相談をしていた。>
あとはそうね……力二カマが売られていればあの作戦が使えるけど、いかんせんリスクが――
面白そうな話をしているわね!
こ、こここんにちは、アイリスさん!
あら、こんにちは。
この方たちは……?
しりあいの恋愛初心者コンビよ。
ちょっと!本当のことをいわないでよ!
どうしてお二人が……?
キキキ。あまくてすっぱい恋の香りが漂ってきたのよ。いまヒマだし、協力してあげてもいいかなって!
恋の勉強がしたいだけでしょ。
……うん……
は、は、は、初めまして。僕は、ゼ、ゼンゼ、ゼンゼンゼロキスっていいましゅ!
初めまして。マヤ・ヘレフォードよ。
あなた、見た目からして、どこかのお嬢様よね。……恋のお相手は誰なの?
メルヴィンっていう、あたしの執事よ。彼の事が、前から、そ、その……
え、なにそれ!主と執事、禁断の恋!?これはガゼン興味がわいてきたわ!
実はそういうかんじじゃないんだけどね。
禁断の恋……うらやましすぎる……!
じゃあさっそく、二人の出会いについて教えてくれる?
ええ。……彼は、あたしの幼なじみなの。
メルヴィンさんも、実は貴族なんたそうです。
あたしの家とメルヴィンの家は親交が深くてね。幼い頃から、ー緒によく遊んでいたわ。
10歳の時だった。彼のご両親が、不幸にもお亡くなりになってしまったの……メルヴィンは、ひとりほっちになってしまった。
ひとりぼっち……?
詳しい事情はいえないけど……家に、いられなくなってしまったのよ。
だから、あたし達の所へとやってきた。ヘレフォード家の執事見習いとして。
……もう、7年になるのね。
そうだったのね……
ドジっ子だから、執事としてはまだまだだけどね。
……でも、そんなドジなところも好きになっちゃったりするのよね。あなた、わかる?
ええ、わかります。
確かに困ったり呆れたりもするんだけど、ー生懸命ゆえにそうなっちゃってる感じがいじらしいっていうか、グッとくるっていうか。この前なんか特に――
…………
とにかく、そういう経緯もあって、アタシらはこの子の恋を成就させてやりたいって思うわけよ。
わかった。僕でよければ協力するよ。
(アイリスさんに会う口実もできるし……)
わあ!ありがとう、ゼンゼンゼロキス君!
あ、いや僕はゼロ、ゼロゼロゼロキスですっ!
story3
<遊園地デートの計画を立てたマヤ。バレンタインデーは翌日に迫り、肝心のチョコづくりに励んでいた。>
あとは1時間ほど冷やせば完成よ。初めてにしては上出来ね、マヤ。
そう?ありがとう。アピュトがいてくれてよかったわ。まさかメルヴィンに教えてもらう訳にもいかないしね。
またまだ、これからが本番よ、クッキーとブラウ二ーも作るんでしょ?
うん。彼、大食いだから……チョコ以外にも、色々と食べさせてあげたくて。
……ねえ。マヤ。よかったら教えてくれない?メルヴィンを好きになったきっかけ。
…………
彼がうちに来る少し前にね、魔獣に襲われた事があったの。
行くなっていわれてた危険な森に、ー人で入っちゃったんだ。……ふと、冒険がしたくなってね。
魔獣が目の前まで迫ってきて……ああ、あたしは死ぬんだ、って思った。そしたら……
彼が助けにきてくれた?
いつもはのほほんとしてるのに、その時だけは別人みたいだった。
マヤっ!!
メ……メルヴィン!!
グルルルル……
マヤからはなれろっ!!
グァッ!?
いまだ!さあ、マヤ!にげるよ!!
う、うん……!
う、うぅ……いたい……
いま、ばんそうこうを貼るからね。……よし、これでもうだいじょうぶ。
ご、ごめんね、メルヴィン、ころんじゃって……あたし、ドジだね……
それで……ケガしたあたしを、メルヴィンはおんぶしてくれたの。
もう夜になってた。あたりは真っ暗で何も見えなくて、どの方角に行けぱ家に帰れるかなんて全然わかんなかった。
それでもメルヴィンは、ひたすらに歩き続けた。あたしがもう大丈夫だよって言っても、聞かないの。
あたしを不安にさせないように、精ー杯楽しい話をしながら、無事に帰れるまで、ずっと……ずっと、守ってくれた。ボロボロに、なりながら……
その時から……いえ、それはただのきっかけ。きっと、それよりもずっと前から……
出会った時からずっと……彼の優しさに、あたしは惹かれ続けてきたんだと思う。
素敵な話ねえ……
……でもさあ。7年以上もー緒にいるんでしょ?そんだけ好きなら、ふつー告白してない?
う……いや、それがね、何度かしようと思ったのよ。しようと思ったんだけど……
メ、メルヴィン……あのね、あたしね、実は、あなたのことが、す、す、す……
す~~~!す~~~!!
おお……!それは健康になる呼吸法でございますか!?
す~~~!
なんと美しい場所なのでしょう!ね、お嬢様~♪
メルヴィン!今日こそ聞いてもらうわよ!
……おや、あれは……!
あたしは、あなたのことが――
いない。
お嬢様~~!ちょうちょがたくさん飛んでますよ~!ご覧になりませんかー!?
…………
ご覧になる~♪
とまあ、ずっとこういった感じが続いておりまして……
ダメダメじゃないの。
食材のチェックを忘れていましたよ~。
!!
……やや?やややややっ!?
……ごきげんよう、メルヴィン。
お嬢様……こんな時間に、なにを……?……料理を、されているのですか?
あー、えーとね、えーと!これはアレよ、ヘレフォード家に伝わる秘密の儀式よ!
ね、セバスチャーナ。
(セバスチャーナってなに!?ていうか別に、私の名前阻す必要ないでしょ!)
秘密の儀式……?そんなものは、聞いたことがございませんが……
ふん。知らないのも無理はないわ。なにせ、年頃の乙女がその誇りと信念と純情と羞恥とその他もろもろのアレをアレする、古よりの暗黒儀式なのだから。
ね、セバスチャーナ。
そうだピョン。血と肉を捧げるピョン。
……お嬢様……
ご立派に、なられたのですね……!うっ、私、なみだが……
はやくするピョン。我が輩は待つのか嫌いだピョン。
ええ、そうですね。すぐに失礼いたしますとも。お邪魔をばいたしました。
お嬢様……ファイト――ー!!
あぶなかったわね。
まったくだピョン。
story4
うん、いい感じね。おいしくできたと思うわ。
や、やった……!これで全移完成ね!
ゃあ……仕上げの娠薬をー滴二滴……
垂らさないでね。お願いだから。
いいの~?彼、思い通りにできちゃうわよ?
え……
今までに夢みてきた、あんなことやこんなこと。すべて、あなたの意のままよ……
……意のまま……
日も変わろうとする深夜。彼はあなたの部屋を訪れる。ノックされ、ゆっくりと扉を開けるあなた。
ねまき姿の彼が、あなたをじっと見つめている。上気した頬。悩ましげに潤む瞳。
ふ、ふおお……!
普段は絶対に見せることのない荒々しい男の雰囲気を漂わせて、彼はゆっくりと部屋に入る。そ、そ、そして――!
だ……だめよ、メルヴィ――ーン!
じゃない!!
……ざんねん。
あとはリボンを結んで……オッケー、できた。
……われながら、上手く包装したものね。……うふふ……
<マヤは勢いよくベッドに寝転がった。>
いよいよ今日、かあ……メルヴィンと、適園地でデート……
そういえば……あいっとデートなんて、したことあったっけ……
ー緒に外に出るのも、ほとんどが仕事かお稽古で、だったもんなあ……
……ふふ。楽しみだなあ……
メルヴィン、よろこんでくれるといいな……楽しんでくれるといいな……
<そう言って、包装した手作りのお菓子をまじまじと見つめる。>
頑張ろう。
story5
うわさどおり、なかなかスリルがあったわね!
ええ。あのゴロゴロ感はクセになりそうですー!
<バレンタインデー当日。遊園地デート……マヤの計画は、順調に進んでいた!
……と!マヤの顔つきが、ー気に鋭くなる!>(そろそろね……作戦実行よ!!)
メルヴィ~ン。あたし、ノドがかわいちゃったあ。
あっ!!あんなところに飲み物の屋台が!いってみましょう!!
い、ー本しかなくてご、ごごごごめんなさい!ふ、二人でチューチューと……――チュウ!?うそだー!!
なんたかヘンな店員さんね。……でもまあ、しょうがないわね!メ、メルヴィン、そういう事だから――
紙コップ、持ってきてよかったですー。
こんな時だけデキるな!!
うーらーめーしーやー!!
きゃああああん♪こわ――ーい♪あたしもうやだ~~♪
……!!お嬢様が、ピンチです!助けねば守らねば!
え?
<メルヴィンはマヤをお姫様だっこした!>
え、ちょ、メルヴィン?
だっしゅっ!!だっしゅつ~~~!!
うーらーめーしー……
お嬢様ああああああ!!
危ないところでした……おお、おお。こわい思いをさせてしまいましたね……申し訳ごさいません、お嬢様……!
色々となにやってんのよ!!
(でもお姫様だっこは、ラッキーだったわ)
(はあ。うまくいってないような、いってるような……いえ、いってないわね……)
(……ダメ、めげるな!どんどん行かなきゃ!えっと次は、<あーん>を……)
……?どうしたの、メルヴィン。神妙な顔して。……食べないの?
<テーブルには、注文した料理が所せましと並べられている。>
いつもならこれくらいは軽く平らけるじゃない。……今になって、乗り物酔いとか?
……それとも、やっぱり、楽しく、ない……?
楽しいです。これ以上ないくらいに。しあわせさえ、感じています、……だから、です。
……どういうこと?
私は……執事です。その執事が、主とー緒に、こんなにも楽しんでしまっていいものか、と……
なあんだ。そんなことか。ここに釆たときに言ったでしょ?今日ぐらいは主と執事の関係を忘れていいから、って。
あなたはマジメすぎるのよ、メルヴィン。……ほら、食べよ?なんならほら、あーん……
…………
…………
<マヤはフォークを置き、うつむくメルヴィンをじっと見つめた。重苦しい空気が、二人を包む。>
甘えちゃダメだ、って思ってる?
……!
そんな顔をしてる。自分の使命を全うしなきゃって、その為には自分の全てを捨てなきゃって、そんな顔。
…………
旦那様や奥様、そしてお嬢様は……私を受け入れてくださいました。
……寄る辺のない私を、執事として育ててくださいました。笑顔を向けてくださいました。温かな言葉をかけてくださいました。
……ヘレフォード家を裏切り、多くのものを奪い去った、愚かなブラックウェル家の人間であるにも関わらずです。
私は、頂いたご恩をお返ししなければならないのです、そして――
罪滅ぼしを、しなければならないのです。……ですから……
…………
<気づけば、夜になっていた。――パレードのきらびやかな光が、マヤとメルヴィンを照らしている。>
ねえ、メルヴィン。……聞いてもいい?
なんなりと。
今日は……どうしてあたしに付き合ってくれたの?
……私は……私は、お嬢様の執事でございますから。
うん。……そう答えると、思った。
<音楽がひときわ盛り上がると、パレードの光もそのきらめきを増した。歓声が、園内に満ちる。>
すげー!きれいだなー!
うん♪
<青年にそっと寄り添う少女を、マヤは悲しそうな、羨ましそうな顔で見つめた。>
……本当は……
本当は、主と執事じゃなく……普通の男の子と女の子みたいに……
あの頃みたいに……
…………
……ごめん!
お嬢様!
――危ないっ!!
きゃっ!?
いつつつ……
救急セット、持ってきておいてよかったです。……ばんそうこう、貼りますね。
ごめんね……ドジ、ふんじゃった。
……あの時以来ですね、転んだのは。
……覚えてたの?
もちろんですとも。
…………
だいじょうぶ!もうすぐ、おうちに帰れるから。
メルヴィン……
マヤには、ぼくがついてるからね。。いつだって、ぼくは、マヤを、たすける。
いつだって……
いつの間にか、あたしも、メルヴィンも、ずいぶんと大きくなったね。
大人になるのもきっと、いつの間にかだね。
…………
むずかしいなあ…………
story
…………
帰ろっか。今日はありがとね、メルヴィン。
……メルヴィン?
…………
……?
……まだ……
まだ……まだ!帰りたく、ない、です……!
え……
お、お嬢様。先に、謝罪をさせていただきます。……私の無礼を、どうかお許しください。
メルヴィン、なにを――
マヤ。
!!
僕と、観覧車に乗ってくれないか?
それで、チョコは渡せたの!?それで、そのあと……野となったの!?山となったの!?
どっちなの!?
ちゃんと渡したわ。作戦とおり、観覧車の中で。……でも……
やっぱり今回も、想いは伝えられなかった。……いえ、伝えなかったわ。
ど……どうして?
……満ち足りちゃったの。表情やしぐさ、言葉……彼なりに、精ー杯贈ってくれた。……だから、ね。
……それに……
……ううん、やっぱりなんでもない!
え、なによなによ!?
ひみつー♪
はい、あーん♪
あーん……
番外編 夢魔ふたり
街はバレンタインー色ね、ゼロキスくん。
そうだね……
……なによ、元気がないじゃない。
バレンタインっていうのはさ、アピュト。女の子が男の子にチョコを渡すイベントだろ?
まあ最近は、逆チョコとか友チョコとか色々あるみたいだけど。
そうねえ。……あ、もしかして?
…………
アイリスさん、チョコくれたりしないかなあ?
やっぱりね。そんなことだと思った。
――くれると思うわよ?
うん、やっぱり無理だよ――え?
アイリスちゃん、優しいし。ちゃんと手作りするんじゃないかしら。
や……やったあああああああ!!
もちろん、義理でしょうけどね。
ふん。アピュト、君はわかってないな。
最近は、義理にみせかけた本命もあるんだぜ?
意味わかんないわよ。
もちろん、チョコは手作りで……クッキーとブラウニーも作りたいな……
カレヘの愛をたっぷりとこめるのよ。
おまじないもかけちゃいましょう!
……この声は……
これは……キッキッキッ!純情乙女の恋のアロマね!
ゼロキスくん、面白そうだから行ってみましょ!ちょうど、アイリスちゃんもいるみたいだし!
ま、まってくれ!服と髪とお肌と心の用意が……2時間で終わるから!
長すぎよ!
story
……とまあ、全体の流れとしてはこんなかんじね。
遊園地のスタッフに話は通してあるわ。アンタたちは当日の段取りを頭にたたきこんでおいてちょうだい。
キャトラさんの幅広いコネには目を見張るものがありますね……
……あなたたちは、遊園地にはこないのよね?
お手伝いしたいところなんですが……
当日はギルドの仕事たのなんたので忙しいのよ。
バレンタインデーだからね!それ関係のがね!色々とね!
アタシだってチョコ欲しいわよ!食べたいわよ!ふんとにもうー!
……で、最初の曲がり角に二人が来たら……
私の出番ね。そこで密着させつつ進ませた先、最初の小部屋に――
僕がいる、と。
……部屋のスミに追い込めば、もっと密着していい感じになるかな?
そうね。この後、マヤと会うことになっているから、その時にもうー度打ち合わせしておくわ。
このあと?もう夜だけど。
キッキッキッ。――カレには秘密のチョコづくり、というヤツよ。
story
<遊園地デートを手助けする準備を進めていたゼロキスだったが……
なぜかこのタイミングで、重大な事実に気がついた。>
……待てよ?明日はアイリスさんたち、来れないんだよな…………てことはつまり……
バレンタインデーにアイリスさんと会うのは不可能って事じゃないか?
……って事じゃないかああぁぁぁ!
役目を終えたあとにアイリスさんと二人っきりになるプランとか練ってたのがバカバカしい……
観覧車とか乗っちゃうぞーとか張り切ってた自分が恥ずかしい……
あー。なんかもう、やる気がどんどん……
夜遅くまでお疲れさまです、ゼロキスさん。
アアアアイアイアイアイ、アーイリースさーん!?
これを渡しに来たんです。ちょうどさっき出来上がって……
チョ――――ーコではないですかああああ!?!?
お手伝いしてもらってますし、お礼をと思いまして。
お口にあうといいんですけど……よかったら、食べてくださいね。
アイ、アイリスさんが作ったものが僕の口にあわない訳がありませぬ!
せぬ?
食べます!ゆっくり!味わって!
うふふ。……明日、マヤさんとメルヴィンさんを、よろしくお願いしますね。
ま、まかせてください!ぼ、僕はインキュバス……れ、恋愛ますた~ですからね!
はい、では、頼りにしてます♪おやすみなさい。
…………
今日はいい日だっ!!
story
……あ、見えた。乗ってる業ってる。
よし、定時連絡だ。<ルーン・インカム>の通話ボタンを押して……っと。
こちらゼロキスです。アピュト聞こえますかーどうぞ。
”聞こえますよーどうぞ”
二人はいま、<ゴロゴロキャプチャー>に乗ってます、どうぞ。
”了解です。こっちはふつーにスタッフしてます、どうぞ。”
<間接キッス作戦>の準備は完璧です、どうぞ。
”……ゼロキスくん。私はノドがかわきました。飲み物を持ってきてほしいです。どうぞ”
そんな時間はありません。どうぞ。
”中は思ったより暑いんです、お願いします。どうぞ。”
しょうがないなあ。ダッシュで届けに行くよ。どうぞ。
思ったより時間がかかってしまった……大丈夫かな?
……あ。二人がこっちに歩いてくる。間に合ったみたいだ。
…………
お似合いだな、あの二人……
…………
……ふ。たまにはこういうのも、悪くない、か……!
待ってろよ。この恋愛マスターゼロキス様が、君の想いをばっちりアシストしてやるぜ!