【白猫】ユーリエ(Brave The LionⅢ)・思い出
守銭奴人魚 ユーリエ・ハ・イドラ cv.植田佳奈 とても長生きをしている、人魚の研究者。 多くの富と、多くの縁を持っている。 |
思い出1
<彼の地で起きた事件の後――ユーリエは飛行島を訪れていた。>
飛行島――のう……よくもまぁ、こんなモノを足代わりに使おうなどと考えたものよ。
アンタねぇ、来てそうそうケチつける気なの?
そんなつもりはないわ。
じゃから今のは、ただの感想じゃよ。ただの、のう。
ふくみがあるようにしか、聞こえないんだけど……
あの……ユーリエさんは、飛行島のことをなにか知っているんですか?
さて、どうであろうの?
どう聞いても知ってるみたいに聞こえるわよ!
そうか。では、そうなのかもしれぬな。ほっほっほっ♪
笑ってないで、なにかあるなら教えてよ!
知りたいのなら、わしに対価を払うことじゃ。
対価……ですか?
金じゃよ。かね。
お金取るの?!
当然であろ。他者に教えを乞うなら、対価は必要じゃ。
それはわしら人魚でも、人でも同じじゃろ。
それはそうだけど……ちょっと教えるたけだし、ケチケチしなくてもいいじゃない。
知識とは、願えば手に入るものばかりではあるまい?
ゆえに価値ある知とは、とかく金かかかるものなんじゃ。
特に長く生きて蓄えられた、わしが持つ知識はの。ほっほっほっ。
むむむ……ケチ!
……キャトラ、それ以上はダメよ。
でもアイリスだって、知りたいでしょ?
それは……うん。でもだめよ。
もうユーリエさんは飛行島に。『なにかある』ことを教えてくれたもの。
それだけで十分……あとは私たちで調べて知っていきましょう?
わかったわ。ふたりがそういうなら、ここは引いといてあげる。
ほっほっほっ。アイリスちゃんは、見込みのある子じゃの。気に入ったわ♪
あ、じゃあ、教えてくれる?!
それはダメじゃ。
えー!
己の努力で知を得た時の喜びは、なにものにも代え難い。
知る喜びとは、快楽じゃからの。
誰かからそれを奪って、悦に浸る趣味は、わしにはないわ。
ま、どうしてもというなら、いつでも聞きにくるかよいぞ。ただし――
お金取るんでしょ!
ほっほっほっ。存分に考え楽しむがよい、若者たちよ♪
思い出2
ねえ、ユーリエってカティアの先生なんでしょ?
うむ。ただし<昔は>と、注釈はつくがの。
今は違うんですか?
あやつがわしの元を去った後、何年も教えておらんからの。
元教え子というのが正しいじゃろな。
ふーん。でも先生だったのは事実なんでしょ。昔のカティアってどんなだったの?
そうじゃのう……最初から頭のよい子じゃったな。
己を天才と称しながらも、自身が足りぬことを知っておる知恵者じゃった。
カティアさん、その頃からすごかったんですね……
たしかに、ずば抜けておったのう。
己の不足を学ぶため、他者へ教えを乞うことも出来るのじゃからな。
あのカティアがねえ……今じゃ考えられないわね。
そうでもない。あやつ初対面から、ずいぶん生意気を言っておったぞ。
ほうほう。なんて?
『おっほー』などと奇声をあげて、『天才に知恵をわける機会をやる』とか――
すぐにわしを超え、『天才じゃなく、超天才になる』とか豪語しておったわ。
(そのへんは変わらないんだ……)
まあ、ちょっと教えはじめたら、あっという間に大人しくなっての。
そうなの?
うむ。可愛いもんじゃったぞ。授業が難しいと、泣きながらわしに――
「先生っ!!!」
なんじゃ、カティアではないか。どうしたのじゃ?
どうしたではありません。私の昔話は止めてください。
なんじゃ、恥ずかしがっとるのか?
違います。でも、お願いします。
か、カティアがお願いしてる……
あんたたち……そんなこと言ってられるのは今のウチよ!
先生に関わったんだから、あんたたちも、すぐ思い知るわ!
恩師に対して、ずいぶんな言い様じゃな……
我ながら的確だと自負しています。
なんかよくわかんないけど……わかんない方がいい気がしてきたわ!
思い出3
まさか、本当にここへ来てるなんてね。
予想外だが、ユーリエなら、十分有り得るコトだったな。
つまり、想定しなかった私たちが甘かったということね。
おぬしらまで来よったのか……
どうやらココは想定以上に、特別な場所のようじゃのう。
わかってんなら、余計なことしないでくれよ~。
ほっほっほっ。約束はできぬのう。
話し声が聞こえると思ったら、アンタたちだったのね。
いらっしゃい。オズマさん、ファルファラさん。
ええ。
邪魔してるぜ。
そういえば、アンタたちがいるの、ちょっとめずらしいわね。
いつも忙しくて島にいないのに……もしかして、またなんかあったの?
なにもないわ。いいえ……なにもないように来たというのが正解ね。
あの……どういう意味でしょうか?
ユーリエが原因だよ。
ユーリエさんですか?
その人は顔が広くて影響力もデカイんだよ。
だからココで余計なことされると、コッチの具合が良くないのさ。
アレね。大人のジジョーってやつ!
そんなトコだな。んで、こうしてトラブルがないように<お願い>に来たってワケ。
あの坊主が殊勝なことじゃ。昔は腕っ節ばかりが自慢の、鼻っ柱の強いお子様じゃったのにの。
他人をあなどると痛い目をみる……嫌ってほど学んだからな……はあ。
良い勉強をしたのう。
どうだか。授業料が高過ぎだぜ……
ときに坊主。おぬし偉くなったら、わしを嫁にすると言っとったが、いつ申し込みに来るんじゃ?
ナマ言ってすみませんでした。ガキの頃の話は勘弁してください。
ほっほっほっ♪あの頃の坊主は可愛かったのう。
これは!つまり!おふたりは!そういう関係だったと!思っていいのでっ?!
ちょっ、やめろって!?ホントにガキの頃の黒歴史なんだよっ!
その話は初耳ね。私も興味あるわ。
てめえもかっ!!?
坊主の話だけでは不公平じゃな。どれ、小娘の話も聞かせて――
ごめんなさい。もう聞かないから、ユーリエも何もいわないで。お願い。
あんたたち……どれだけ弱み握られてんのよ……
お前、この人が、何千年生きてると思ってんだ。
年端もいかねえ頃、なにも知らずに信頼して頼って、色々話した当時をオレがどれだけ呪ったか……
なんじゃ、坊主はまたまだ元気があふれとるな。
すみませんでした!
***
たっく……アイツらの前だからって、なんて話を持ち出しやがるんだ。
わしは別にかまわんのに、隠したがったのはぬしらじゃろ。
だとしても、話題は選んでほしかったっていってんだよ。
たしかにそうだけどね。でも、だとすると、さっきの話は作り話?
坊主がわしに告白したのは本当じゃぞ。
え、本当だったの!?
まだ十……二、三歳ほどの、尻の青い子供の頃じゃかな。
本当に勘弁してくれ。あの頃のオレは、なにか血迷ってたんだよ……それより――
ユーリエ、アイツらのことどう見る?
『どう』とは、また抽象的じゃな。ま、言いたい事はわかるがの。
…………
心配いらん。少なくともわしは、敵にまわるつもりはない。
……そう。
ホッとしおって。入れ込んでおるのう。そこまでの子たちか?
まあな。もう少しここで、アイツらのことを見てればわかるだろうけどよ。
信頼できる、いいヤツらだぜ。
その点は、私もまったく同感ね。なにより、彼らは――
そこの法王様より、品がいいわ。
こりゃキビシイねえ~。
なるほどのう。なら、もう少し見守ってみるとするか。おぬしらのお気に入りをの。
お願いね、ユーリエ。
たのんたぜ、センセ。
うむ。まかせておくがいい。
思い出4
アイリス!あそこ、ひとが集まってるわ!
ほんと……なにかあるのかしら……
もう用事も済んでるし、行ってみましょ。
***
う~ん……よく見えないんだけど……
あの……これは、なんの集まりなんですか?
こいつは集まりじゃないよ。
違うの?
そこの通りにエライ人がいて、警備の関係で通せないんだと。
そうだったんですね。
なあーんだ。楽しい話でもないし、ユーリエさがして帰りましょ。
もう一度、お願い申し上げる。私に、そなたの知恵をかしてくれぬか!
なんど来ようと答えはかわらぬ――お断り申し上げる。
今の……ユーリエさん?
みたいだけど……じゃあ、この中にユーリエがいるの?
あの、すみません。通してください……
<人垣を抜けた先では、立派な服に身を包んだ男が、ユーリエに頭を下げていた。>
えっと……どういう状況?
おぬしらか。もう買い物は済んだのかの?
はい。こっちは終わりました。
そうか。なら島へ戻るとするかの。
おぬしらも帰るがよい。わしの返事はわかったじゃろ。
いたし方ありませぬな。では今回は、これにて失礼いたしましょう。
ですが、まだ諦めませぬぞ。次こそ良い返事を頂きます。
約束などせん。じゃが、毎度おぬし本人が出向いてくる、その意気だけは感じておるぞ。
ならば、私の行動もまったくの無駄ではなさそうですな。では、また参りますぞ。
ねえ、今のって……どう見ても王様なんだけど……
そりゃ、当然じゃな。王じゃからの。
王様が会いにきてんの?!わざわざ?!
そうなるのう。
……どんなご用事だったんですか?
わしが欲しいらしい。国と自分に仕えてくれと、何度もやってきよるわ。
仕える……ですか?
わしの知を国のために役立ててほしいそうじゃ。ま、この手の勧誘は珍しくもない。
中には無理矢理に従えさせようと、権力で脅す馬鹿者もおるからの。
ただそんな中で<自ら足を運ぶ王><礼を尽くして願う王>は、ちいとばかり特殊じゃがな。
あの……断って、大丈夫なんですか?
心配はいらん。慣れたもんじゃ。
ねえねえ、相手が王様なら、待遇もすごくいいんじゃない?
興味ないのう。
そうなの?カティアなら、研究費出してもらえるってホイホイついていくのに。
天才なら自分の研究費くらい、自分で稼ぐもんじゃか……
あやつの場合、ああなった責任が、わしにもあるからのう。
どういうことよ?
簡単で単純な話じゃ。あやつのアレは、わしの影響じゃ。
わしが研究に金を惜しまんのを、カティアはずっと側でみて育った。じゃから――
カティアもそれが当たり前になっとるんじゃろ。
ああ、なるほどね。って、それホントにアンタのせいっぽいじゃん!!
そうなるかのう。ほっほっほっ♪
笑い事じゃないわ!おかけでコッチもパトロンって目を付けられてんのよ!
お詫びに、アタシに力二カマをご馳走して!
そこまで面倒みきれぬわ。よってご馳走なぞ、お断りじゃ!
思い出5
しつもーん!おしえてユーリエせんせー!
なんじゃい藪から棒に……
あ、そうだ。質問する前に、お金?
またぬか!それではわしが金の亡者みたいじゃろが!
違うの?
違うわ!失敬な!
でもアンタ、カネカネ言ってるじゃない。
ヒトとは金が絡むと、腹の底が見えてくるからのう。相手を計るには丁度いいんじゃ。
なら相手のことかわかったら、
お金とかいらない?
対価は当然じゃと言うたじゃろ。それにわしは――
金が大好きじゃからの!
で、なんじゃ?いちおう聞くだけ聞いてやるぞ?
いいんですか?
おぬしらの質問だからの、出来るだけ答えてやろう。
ならおしえてユーリエせんせー!
それはもういいわい。
次の島までの楽しいヒマ潰しを教えて!
……なにかと思えば退屈をしておっただけか。
退屈をあまくみないで!
キャトラ?!
好奇心は猫を殺すらしいけど、退屈だって致命傷なんだから!
そんな説は初めてきいたのう。
あー残念じゃー。わしにまだ探究心があれば、ほってはおかんのにー。
……え?
その説を調べるために、アレコレしてやるのにのー。アレコレのー。
こわっ!?でもこれ、助かったってことよね!
いいや、そうともいえぬな。
ど、どういうこと?!
今言った通りじゃ。わしは、もうなにも研究しておらん。
それはの、わしが歳をとりすぎたからじゃ。
歳を……とりすぎた?
そうじゃ。わしは歳をとった。もう未来を――新しい『先』を作れぬのよ。
簡単に言えば、『今より幸せになること』かの。
わしは歳をとって、未来を望む気持ちが薄れておる。
そんな者に――未来を作ることはできぬわ。
えっと……つ、つまり?
おぬしを楽しませるような願いも叶えられんということじゃ。すまぬな。
……ユーリエさん……
むきいー!枯れたこと言って誤摩化すつもりね!
え?え?まって、キャト――
主人公!アンタの若さで目を覚まさせてやんなさい!
思い出6 (友情覚醒)
これは……ルーンの光か!?
力強い光、たしかに若さじゃな!
あんただって見た目は、十分若いでしょ。だったら気持ちも若くしなさいよ!
……いいよるわ。じゃが、わしは未来をもう――
大丈夫です。ユーリエさんなら。新しい未来だって作っていけます。
そうそう。心配いらないわ。
ひよっこ……いや、子猫どもが簡単に言うてくれる。
わしがひとり、永き時を生き、理想の未来を夢見て研究し――
されど諦めねばならんかった、その惨めな挫折を知らぬくせに……
知らないわよ。でも、アンタならいくらでも楽しみや、喜びを作れるわよ。
断言しよるか。なら聞かせよ……なぜそう思う?
だってアンタ、ずっとひとりで研究してたんでしょ?それじゃ、ダメなの当然でしょ。
……なに?
どんだけ研究したのか知らないわ。けど、そういうのは、みんなで一緒にやんないと。
みんなで一緒に……じゃと?
そうよ。みんなで一緒に。アンタ、その研究を誰かとしたことなかったんじゃない?
……それは…………たしかにないのう。
ユーリエさん。ひとりで考える幸せは、きっと見つかりにくいです。
人は誰かと一緒でないと、寂しい生き物ですから。
……そう、か。なるほどのう。
あやつらが言っておったのは、こういうところか………ほっほっほっ♪
いや、すまぬ。わしにとっては、盲点すぎての……目からウロコが落ちよった。
そうなんですか……?
わしに教えを乞う者は多いが。『誰かと一緒に』と言われたのは初めてじゃったわ。
この歳になって、教えられるとはの……ほっほっほっ。
どうやら世界は、またまたわしの知らぬことばかりだったようじゃ!
元気出て来たわね!それじゃ早速、楽しい遊び考えましょ♪
ふむ。手始めにやってみるか。むろん、みなで一緒にな。
はい♪
うむ……悪くない。これから楽しくなりそうじゃな♪
みな、よろしく頼むぞ♪
永き時を泳ぐ者 ユーリエ・ハ・イドラ
その他