ヴァイス・グリーガー cv.櫻井孝宏
武芸の高みを征く後継者のひとり。
戦いの外での学びを己の糧としている。 |
2021/12/30
思い出1
あら、あれってヴァイスじゃないの？
あら、本当ね。ヴァイスさ～ん！
ちょうどよかった。飛行島に行きたいんだが、どう行けばいい？
ここがその飛行島ですよ。
そうか。ならよかった。しばらく世話になるから、よろしく頼む。
それから、今日来たのは他にも用事があるからだ。
いつもみたいに忘れたなんて言わないでしょうね。
ちゃんと覚えてるぞ。
ここに来るまで、繰り返し唱えながら来たからな。
それはそれで、なんだか不審者っぽいわね……
それで、どうしたんですか？
何がだ？
用事よ、用事！
大丈夫だ。覚えてる。
…………
そうだ、主人公、オレと修行をしないか？
ちゃんと思い出せましたね。
たった今、思いついたんじゃないの？
オレたちはまだまだ強くなれる。オレはもっと、強くなりたい。
ずいぶんと意気込んできたわね。どんな風の吹き回しかしら。
主人公、どうする？
修行って、いったい何をするんですか？
オレは何をしたらいい？
結局そうなるのね！
強くなりたいっていうなら、戦う練習……とか？
そうなのか？
アンタが言い出したんでしょ。
ヴァイスさんほどの実力者だと、練習相手になる人も限られそうですね。
きっと、そのつもりで飛行島まで来たんでしょ。
言われてみれは、そうかもしれないな。
そういうわけで、オレと修行をしよう。
ふたりとも、頑張ってくださいね！
アタシとしては、頭の修行をして欲しいわね……
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思い出2
はあああぁぁぁぁ！！！
相変わらず、すごいことになってるわね。
流石だ。腕を上げたな。
だがオレも、強くなってる。
ついてこれるか？
ああ、そうでなければ困る！
目が回りそう……
アタシが見てるから、アイリスは飲み物でも準備してあげたら？
うん。そうしようかな。
……なるほど。
……違うな。
とてもいい運動になっている。それは間違いない。
間違いないが……何か違うな。
何かって何よ？
あれ、どうかしたんですか？休憩なら、お水をどうぞ。
助かる。
それで、どうしたってのよ？
ああ、そうだ。オレは修業がしたいんだ。
してるでしょう？
して……ます？よね？
オレが言う修行とは、もっとー見役に立たなさそうで、実は役に立つようなものだ。
そういう方法があると聞いたんだ。
意昧不明なんだけど。いったい誰に聞いたのよ？
それは忘れた。
お前と戦うのはとても有意義だ。だが、それじゃダメだ。
オレはホテルでの仕事や学園生活の中で……戦いからかけ離れたところで、成長のヒントを得てきた。
だからもっと無意味で、だけど実は有意義な、そんな修行がしたい。
なんか分かりかけたけど、最後で分からなくなったわ。
ええと……いろんな経験をしてみたいってことでしょうか？
たぶん、それだ。
ううん……どうする？
そういうことなら、私たちで考えてみない？
はぁ～、しょうがないわね。
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思い出3
さて、それじゃまずアンタの案からね。
「」
島の草むしり……？確かに、あっちこっち草がボーボーかも。
これを綺麗にするのは、いい運動になりそうね。
草を全部むしればいいのか？
全部って言ったら、ホントに全部むしっちゃいそうね。
畑の作物とか。花壇のお花とか、そうじゃない雑草を抜くんですよ。
それで、強くなれるのか？
普段やらない動きって、身体には負担になるものでしょ。
なるほど。それは確かに。
とにかく、アイリスたちを手本にやってみなさい。
よいしょ……よいしょ……
ヴァイスさん、速いですね！
ふたりの動きを真似て、オレのペースでやってみた。
ん？どうかしたの？
……って、ヴァイス。全然ダメじゃないの。
どういうことだ？
あっ、本当。根っこが残っちゃってますね。
そうか。動きを真似るだけじゃダメなのか。
力加減……指先……手首の角度……根の先まで集中して……こうだ！
そうそう！上手です！
要領をつかんだみたいね。これなら何とかなりそう。
…………
……
ふう、だいぶ綺麗になったかな？
こういう作業って、気づくと時間を忘れちゃうわね。
でも集中したおかげで、ずいぶん捗ったよ。
ヴァイス～、休憩に……ってヴァイスはどこ行ったの？
私たちと反対側を、ずっと掃除してたはず……
この草むしり跡ってヴァイスの？ずーっと島の端まで続いてない？
も、もしかしてヴァイスさん、落っこちちゃったんじゃ！？
いや、そんなまさか……え、大丈夫よね？
ヴァイスさん、大丈夫ですかー！？
呼んだか？
わっ、びっくりした！
ちょっと、アンタどっから出てきたのよ！？
ああ、島の下にも雑草を見つけてへばりついて取ってたところだ。
そんなとこ取らなくていいの！もう～、全部説明しなきゃなんないんだから！
大変そうだな。
アンタのことよ！
落ちたんじゃなくて良かった……
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思い出4
たくさん働いたところで、今度は私の番ですね。
ヴァイスさん、一緒にお料理をしましょう！
確かに、あまりやったことがないな。
肉や魚を丸焼きにするくらいだ。
それも美味しそうですけど……でも、栄養のバランスとか、見た目の彩りとか。
そういうのを気にしていろんな作葉を計画的にするのが料理なのよ。
アンタが苦手にしてる頭の修行ってわけね。
オレの何が苦手なんた？
アンタを苦手なんじゃなくて、アンタが苦手なことよ！
すまん。最初から説明してくれ。
とにかく、一緒にやってみましょう。
メニューは焼き魚と野菜のスープです。
焼くだけ、煮るだけですけど、野菜を煮る順番が大切なので気を付けてくださいね。
順番だな。わかった。
それで、まず何をしたらいい？
まずは食材を切りましょう。焦らなくていいですから、ひとつずつやっていきましょうね。
任せておけ。
私より見事な包丁さばさ……
刃物の扱いなら、戦いとそう変わらないな。
ホテルで学んだことね。戦いに関連付けてみればうまくいくみたい。
正直心配だったけど、案外うまくいくかも？
それじゃあ、次の工程にいきましょう！
…………
……
切った野菜を、鍋にぶちこむ。
あ、ヴァイスさん！煮るのは硬いお野菜から順番ですよ！
硬さに差があるようには思えなかったが？
切るのがうますきると、みんないっしょに感じるのね。
えっと、そう、根っこです！根っこのお野菜から煮るんです！
根っこ……根っこって細くて長いんじゃなかったか？さっきの雑草がそうだった。
お野菜だとそうじゃないんです。ええと、これと、これと、これがそうですよ。
なるほど。そう指して貰えるとわかる。
……ところで、さっきからなんだか焦げ臭くない？
あ、あれ！？お魚が火にかけられてる！？
魚を焼くのならできるから、先に済ませておいた。
焦げちゃってるじゃないの！火にかけるのは良いけど最後まで面倒みなさいよ！
焼きたてが旨いから、食べる時まで焼いておこうかと。
その頃には炭の塊よ！
えっと、ところでヴァイスさん……それ、お鍋に何入れてるんですか？
さっき魚から取った内臓だ。もったいないから入れてみた。すべて栄養だ。
生臭くなっちゃいますよ……！
ヴァイスに科理は１００年早かったみたいね……
１００年後にはー流の料理人か。ホテルの仕事が増えるな。
もうツッコむのも疲れたわ。
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思い出5
ふわぁぁぁ……
うーん……きもちいい～。
…………
……聞いていいか？
何よ……？今良い感じにうとうとしてたのに……
オレたちは今、何をやってるんだ？
何って……お日様の下でごろごろしてるのよ。
それは、修行になるのか？
アンタってほら、落ち着きが……ありまくるのが逆にムカつくけど。
とにかく、もっといろいろと自分の意見を考えられるようになって欲しいのよね。
だからぼーっとして、心を静めて、自分のことを見つめなおす時間も必要なのよ。
瞑想のようなものか。
（たぶんキャトラ自身が休みたかったんだろうなぁ）
今日はいろいろ動いたし、頭も使ったから、こういうのも良いかも。
どうですか、ヴタイスさん。強くなるヒント見つけられました？
草むしりの動きは、低姿勢での戦いで活かせるかもしれないな。
料理は失敗してしまったが、俺に足りないものを再確認できた。
まったく、なんで突然、修行しようなんて思ったのかしらね。
…………
……はっ。すまん。何の話だ。
きもちよくて寝てたわね。でもま、今はそれで良いわ。
いや、良くはない。
オレはもっと強くなりたい。それは武術的な意味だけじゃない。
オレはこの時代で沢山の人に出会い沢山のことを学んできた。
オレはアホだからずっと気づかなかったかみんなが俺を強くしてくれた。
オレにいろんな経験をくれたみんなのためにも、もっと強くならなきゃいけない。
ヴァイスさん……そんなに、気を詰めなくても。
オレが強くなってなければ、日々が無駄になってしまう気がしてそれが怖いんだ。
珍しく何か考えてると思ったら……難しく考えすぎなのよ。
オレもそう思う。だけどオレはアホだから、自分の不安に答えが出せない。
オレは何かを間違えているのか？
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思い出6
どう？少しは落ち着いた？
オレは今まで何をしていたんだ？
さすがに記憶無くすほどの力はないわよ！
そうなのか？
そう……ですよね？
なんでアンタが不安そうなのよ。
だが、気分がすごくいい。今ならなんでもできそうだ。
島中を草むしりしてみようか？
アタシたちは大助かりだけど。
ふふふ、でもヴァイスさんのその何にでも真っすぐで全力なところすごく良いと思います。
きっと、そんなヴァイスさんだから、沢山の出会いの中から学ぶことができるんですね。
そう、なのか？ただのアホだと思うが。
ヴァイスさんはきっと、みんなとの時間が大切だから、強くなって応えたいんですよね？
大切だから……そうだな。その通りだ。
この時代に目覚めて良かった。おまえ達やみんなと出会えて良かった。
だからオレは応えたいんだ。そう、みんなのために。
ヴァイスさんのその思いが、ヴァイスさん自身を少しずつ、成長させてくれているはずです。
オレは、成長できているのか？
そう……か。オレは成長できているのか。
そもそもアホなんだから、難しいこと考えないで、良いと思ったことをやればいいのよ。
それで上手くいってるんだから。
ニャトラ……お前、良いこと言うな。
キャ・ト・ラ！前はちゃんと言えたのに！
オレはオレのまま、ありのまま強くなる。仲間との日々の中で、だ。
その調子です！
だが、修行も捨てがたい……これにすごく良いことが書いてあるんだ。
何ですか、その本？何ですか、その本？
学園の図書館で勧められた。お前たちにも教えてやろうと持ってきてたのを思い出した。
なになに『ヤナぎのことば』……ってもしかしてヤナギさんのこと！？
これとか、すごく良いぞ。『何気ない日常の中こそ、最良の修行の場となりうるのだ』
ヤナギさんって、無口のイメージなのだけど……ホントに言ったのかしら？
この本、クウちゃんが書いてるよ。クウちゃんが感じたものを、言葉にしてまとめたのかも？
例えば雑用に見える窓磨きが、防御の練習になっているらしい。
無駄に思える修行にこそ、大きな意義があるんだな。
なんだか、意味を取り違えてる気がしないでもないわね……
覚醒絵・覚醒画像
天井知らずの求道者 ヴァイス・グリーガー
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