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アナザーエデン Story4

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん

第8章

パルジファル宮殿 聴けよ幻視の祈り


古代世界の水の都アクトゥールで 不思議な亡霊事件に遭遇したアルド。そこで出会った仮面の予言者は 時の塔の計画は星を守るためのものだと語る。アルドの出現により新たな星の夢が紡がれる? パルジファル宮殿で アルドを待ち受けるものは……?




 ***





 ***

「あんたがパルジファル王か?

「おや。これはめずらしい客人方の来訪のようだな。遠いところをよくぞ来られた。

フッ……。遠い時間をと言った方がより正確かな。

「どうやらワタシ達については何かしら情報をつかんでイタヨウデスネ?

「フン。おまえ達がやって来るのはわかっていたよ。前もって予言者が教えてくれたのでね。

じきに計画をジャマ立てする者が姿を現すだろうと……。時を超えてね。

「時の塔という所で何か企んでるらしいな……。いったい何を始めたんだ?

「我々の現在の選択の結果として未来は様々に変動する。きみ達の「現在」でだってそうだろう?

因果応報。未来は変わるために存在する。というかこの時点ではまだ存在すらしていないわけだが。

結局は無数の可能性のうちのひとつのヴァリエーションに過ぎないのだよ。

そうである以上我々が好きなように自分達の未来を作り変えてしまって何が悪い?違うかね?

「まさか本当に未来を自分達の好き勝手に書き換えてるっていうのか?ふざけるな!

あんた達に殺された未来は……そこで生きてた人達はどうなるっていうんだ!?

「どうって……そんなものは私の知ったことではないな。

繰り返すがそもそもこの時点ではそうした未来もそこで生きる人間も存在すらしていないのだ。

ヴァリエーションのひとつに過ぎないようなものになんの感興もわかないね。

「なんだと!?きさまッ!

「せっかく来てもらって残念だがこの時代におまえ達の居場所はない。ごきげんよう時の旅人よ。

「なに……わッ!?

「未来はすべて我が手の中にある。私の見る夢こそがこの星の夢なのだ!クククッ……ハハハハハハッ……!


 ***

 ***


「ふーッビックリした……!くそッ!おぼえてろよパルジファル王。

大丈夫かリィカ?

「ハイ。ショックアブソーバーの機能は完全デス。ワタシの方はまったく何の問題もありマセンデス。

「そうか……ならよかった。

しかしなんなんだこの薄気味悪い場所は……?

黄泉の底ってのはおそらくきっとこんな感じなんじゃないか……?

ともかく出口を探そう!こんなとこに長居は無用だぞ。

「賛成デス。コノ場所の湿気はワタシのナノコーティングされたボディにも望ましくありマセンノデ!

行きマショウアルドさん。


「明るくなったけどこんな場所にランプ…?誰が使うって言うんだ?

ザブッ……

「な……なんだいまの音?

ザブッザブザブッ……

「動態センサーに反応アリ!気をつけてクダサイ。前方向に未確認生命体確認!

ぴちょーん……

「ザザザザザーッ!!!! てなもんでござる。

「うわッ!出たッ!



「拙者の家に断りもなしに足を踏み入れるとはいい度胸でござるなおぬしたち。」

「な、なんだ!?カ、カエル人間!?え!?い、家って……!?」

「しかもよく見たら土足ではござらぬかッ!ふむ……。よほど命が要らぬとみえる……。

よかろう。まとめて叩っ斬ってくれるでござるわ。」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!オレ達は別にあやしい者じゃ……」

「問答無用!覚悟して参れよ。行くでござるぞッ!」


「ほうなかなかやるでござるな。構えるでござる。この技を受けてみよ。

「ほう!思ったよりはやるでござるな。面白い!しからば拙者も久しぶりに本気を出すとしようかでござるよ。


「お待ち下サイカエルさん。ナニカ誤解がアルヨウデス。

ワタシ達にはアナタの権利を侵害する意志はアリマセン。むしろ尊重スルものデス!

「うむ……?誤解でござると?

「ああ、そうだ。このドロ沼に……あ、いやお宅に断りなく勝手に上り込んだのは悪かった。

だがこれには事情があってオレ達だって好き好んでここに来たわけじゃない。

「おぬしらひょっとして……押し売りでも空き巣狙いでもないでござるか?

「ちがうちがう!全然そんなんじゃないって。

(……っていうかどこの世界にこんな所にやって来る押し売りや空き巣がいるんだ?)

「なんだ。そうならそうと早く言うでござる!あやうくまたムダな殺生をいたすところでござった。

まいったまいったでござるよ。

(こ、このカエルは……!)

「さてそれではあらためて聞くでござるがそなた達ここで何をしておるのでござる?

「オレ達は歴史を書き換えるなんて真似はやめるようパルジファル王を説得してたんだ。

そうしたらいきなり落とし穴でここまで真っ逆さまってわけだ。

「歴史を書き換える……?いったいそれはなんの話でござるか?

「パルジファル王はどうやら予言者の力を借りて本来の歴史を好き勝手に書き換えてるらしいんだ。

そんな真似をほっとくわけにはいかない。なんとしても彼らの計画を止めないと……。

そうだ!あんたも腕が立つようだしオレ達に力を貸してくれないか?

「どうして拙者がそなた達に協力しなくてはならんのでござる?

「そ、それはそうだけど……!でも彼らのせいで未来で生きてた人達もみんな消されてしまってるんだぞ。

「ワタシからもお願いシマスカエルさん!

星の未来を本来あるべきものに戻すためにどうかワタシ達に力を貸してもらえないデショウカ。

「ふむ……。未来の世界とやらがどうなろうと拙者には一切関係ない話でござるな。

が……なにやらよくわからぬがパルジファル王がおかしな計画に手を染めておると言ったでござるな。

そういうことなら話は別でござる。要はその計画をつぶせば良いのでござるな?

「ああ、そうだ。

「王が道を踏み誤ったのなら正しき道に戻して差し上げねばなるまいでござろう。

致し方ないでござる。久しぶりに外に出るとするでござるか……。これもまた天の理ではござろうよ。

「よかった!オレはアルド。

「ワタシはリィカデス。

「拙者はサイラス。気ままな浪人者でござるよ。

まあここで会ったのも何かの縁でござろう。よろしく頼むでござるよ。アルド、リィカ。

「ああ、こっちこそ!

「ヨロシクお願いシマスデス。サイラスさん!


 ***


「ここはアクトゥールか……。こんなところに通じてるのか。

「そなたらの話を聞いた限りでは王宮に戻り王に説得を繰り返してもおそらくムダなだけでござろう。

それどころか次は拙者のところに落とされるぐらいではすまぬかもしれんでござるぞ?

「アルドさん。ここは直接時の塔を調べに行くという作戦はいかがデショウカ?

「よし。じゃあ時の塔に行って王達の計画を探ってみるか!

「アルドその前にちょっとよいでござるか?

「うん?どうかしたかサイラス?

「そなたの腰のその長剣だがどうして先の闘いの際に抜かなかったでござるか?

「ああこれか。ダメなんだ。抜けないんだよ。オーガベインっていうらしいんだけど……。

オーガ族というヤツの意志だかなんだかがとり憑いてるみたいでさ。

「ふむ……時の塔に行く前にまずその剣についてちょっと確かめてみないでござるか?

おそらくその剣には強力な魔法だか術たかがかけられているのでござろう。

となるとここはひとつ専門家に見てもらうのがよいでござろうよ。

「専門家って……誰に?

「ラチェット……王宮の魔術師でござるよ。普段は子供らに魔法を教えているはずでござる。

「ああ、なるほど!わかった。それじゃ王宮に戻ってラチェットを捜そうか。


第10章

時の塔幻視の夢を視るもの

パルジファル宮殿の地下奈落の底でアルドはカエルの剣士サイラスと出会う。そこから抜けだしたー行は王と謎の予言者が幻視の力により歴史改変を行っているという時の塔を目指すが……。



**********


「あら、あなた方は……?なにかご用ですか?

「ラチェットちょっとこいつの剣を見てやって欲しいんでござるが。

「申し訳ありませんけどカエルに知り合いはいません。

「そう言うな。拙者でござるよ……サイラスでござる。

「サイラス!?ウソでしょう!?本当にあなたなの?

「ああほんとに拙者でござる。拙者がそなたにウソをついたことがあるでござるか?

また今度ウシブタのミルクをおごってやるでござるよ。

「サイラス!それじゃ本当にサイラスなのね!

「でも……どうしちゃったのそのカッコ?もうビックリするじゃない!

「その話を始めると長くなるでござるよ。いつかまたでござる。

今はともかくアルドの剣を見てやって欲しいでござる。

なにかしら術がかけられているようなのでござるが……。

「わかった。ちょっと見せて。どれどれ……。

うわ。ナニこれ!?すごい強力な封印の術がかけられてるわよ……。よっぽどとんでもない剣みたいね。

「解けるでござるか?

「私達の精霊魔法とは全然違うから完全に解くのはムリだけど少しの間だけ無効にするくらいなら……。

「短時間だけなら剣の封印を解いて自由に振るえるってことでござるか?

「ええそうよ。でもものすごい邪気が感じられるからそれでもかなり危険かもしれない。

「そうでござるか……。どうするでござるアルド?剣の封印をなんとかしてもらうでござるか?

「ああ。こいつがどれだけヤバイのかわからないけど抜かなけりゃあ問題ないんだろ?

この先なにがあるかわからないしとりあえず短時間でも自由に使えるようにしておきたい。

「というわけでござるよ。ラチェット頼むでござる。

「わかったわ!それじゃあヨリドリミドリのお肉でどう?

「はあ?手数料を取るでござるか?拙者から?

「当たり前でしょ。こんな厄介な仕事引き受けようっていうんだから。体力や気力は使うしお腹もすくし……。

「わかったわかったでござるよ。ヨリドリミドリの肉でよいのでござるな?

「デリスモ街道で見つかると思うからよろしくね!私は封印を解く準備をしておくから。

「わかったでござるよ。それでは行くでござるぞアルド。目指すはデリスモ街道でござる。


 ***


「こやつがヨリドリミドリでござる。そういえばラチェットは昔からこいっが好物でござったな。

「こいつの肉を食べるのか……?

「武人ならば見た目で判断するなでござるぞ。ブニョブニョジャリジャリで美味でござるよ。

(それってうまいのか……?)

「対象の成分を分析中……成分バランス……食用とシテ理想的な生物デス。

コノ生物を家畜とスルのはイカガ?」

「待て待て!オレはブニョブニョジャリジャリはごめんだからな!」

「よし。では行くでござるぞ。さっさと倒して肉を持って帰るでござろう!」


 ***


「楽勝でござったな。」

ラチェットに内緒で少しいただいてみるでござるか?」

「……いや遠慮しとくよ。」

「パルジファル宮殿に戻リマショウ。」


 ***


「ラチェット約束の肉を持って来たでござるぞ。こいつでよいのでござろう?

「ええ。こちらの準備もオッケーよ。じゃあ早速はじめましょうか。

「ああ。よろしく頼む。

「言ったように封印の術を完全に解くのは私にはムリよ。あくまで部分的な解除だから。いいわね?

「わかってるよ。それでいい。

「じゃあその剣をこちらに……。


 ***


「ここは……?」

「束の間でも我が縛めを解くすべを見出したようだなアルド……我らが心火を受け継ぐ者よ。」

「オーガベインか!?何なんだオーガ族の心火というのは?」

「我ら一族をうち滅ぼした魔獣どもへの永遠に消えぬ恨み……憎しみだ。

ヤツらを倒すためならいくらでも力を貸してやろう。失われし我らオーガ族の力を……。

そもそもおまえと我らとの間には遥か古より深い結びつきがある。おまえの考える以上にな。」

「なんだと!?」

「いずれわがる……。」

「おいちょっと待てッ!オーガベイン!?」


 ***


「アルド!おいアルド!?目を覚ますでござる!」

「大丈夫デスカアルドさん?」


「あ、ああ……大丈夫だ……。なんだかオーガベインと話をしてたような気がするが……。」

「剣は口をきかんでござるぞ。夢でも見てたのでござらぬか?お気楽そうな顔で寝てたでござる。」


「さあ剣の封印の方は解けたわよ。私にできるのはここまで。」

「ありがとう!助かったよラチェット。」

「どういたしまして。」

「しかしよく見てみるとその剣の柄は王の剣のものとそっくりでござるな。

かなり古びて傷んでしまっているようではござるが。」

「パルジファル王の剣に?こいつが……?まさか!」

「いや間違いないでござるぞ。

王の剣は王家に古くから伝わるこの世に二つとない聖剣でござるからな。」

「パルジファル王の聖剣……。」

「それはともかく……まずは時の塔とかいうやつをどうにかするとしようでござるぞ。」

「サイラスあなた達時の塔に向かうつもりなの?

あそこは目くらましの術で封じられてるはずだからそれを解いてあげるわ。」

「そいつは助かるでござる。ありがとうでござるよラチェット。

それから……拙者が戻って来ていることは他の者には内緒にしておいて欲しいでござる。」

「でも……いいのそれで?」

「ああ頼むでござるよ。」

「そうわかったわ。あなたがそう言うのなら。」

「うむ……いつかすべてにケリがついたら何もかも話すでござるよ。

よしアルド。行くでござるぞ!時の塔はデリスモ街道を抜けたケルリの道の先でござる。」

「ああわかった。行こうサイラス、リィカ!」




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