アナザーエデン Story5
「こいつが時の塔か……。
「アルドさん。君子危うきに近寄らズンバ虎子を得ズデス!
「うむ。気合いを入れて参るでござるぞ。
「しかし……何なんだここは?妙に生々しい感じがするな……。
「ドウヤラコノ塔ソノモノが巨大なひとつの有機体デアルと推定サレマス。
「おいおい悪い冗談でござろう?生きているというのでござるかこの建物が……?
「ともかく王と予言者がここで歴史改変の計画を実行してるのは間違いないようだ。
この中のどこかに秘密があるはずだ。なんとしてもそいつを探り出そう。
***
「こ、これは……!?
「なんでござるかこの妙な風景を貼り付けた板みたいなものは?
「間違いアリマセン!コレらのミニターに映し出サレテイルのは無数に存在スル世界の可能性デス!
コノ胎児のヨウナ人工生命群が無数の未来を幻視シテイルと推定サレマス。
コノ部屋は……胎児達は……時の塔の頭脳でアリ……生ける量子コンピューターデス。
彼らが星の見る夢を制御シ支配シテイルノデス。」
「??????以前からヘンだとは思っていたがそなた達宇宙人でござったか?」
「世界の無数の可能性……?無数の未来……?
ではあの未来は?書き換えられた……廃墟と化した今の未来はどこだ!?
むッ!?
「これだ!廃墟の未来世界!この胎児達はどうやらオレ達の言葉がわかるみたいだな。
よし。この改変された未来を本来のあるべき歴史に……。
エルジオンの存在する改変前の未来に戻すにはどうすればいい?戻せるのかおまえ達?はッ!?
『オート・セーフ回路発動!未承認ノオペレーターノ排除ヲ実行!関係者ハ速ヤカニ退去セヨ!』
「くッ!こいつらをどうにかしない限り未来は元に戻せないのか!?よし!ならば行くぞッ!」
『被害甚大……対象ヲ脅威レベルSト判定。
クロノ・スコープ起動 時ノ探索ヲ開始……』
***
「オレ達の勝ちだ!さあそれじゃもう一度廃墟となった未来の世界を出してくれないか?
『了解。新規オペレーター承認ヲ完了。
「よし。王達によって改変されたこの誤った未来を本来のあるべき歴史に……。
エルジオンの存在する改変前の未来に戻してくれ!頼むおまえ達。
「はッ!?
「膨大な時間流変動の収束ヲ確認。曙光都市エルジオンが復活シタと推定サレマス。
「戻ったのか元の歴史に……?エイミや親父さん未来の人達もみんなよみがえったんだな?
ああ、確かにエイミの親父さんが直してくれたオーガペインの柄もちゃんと復活してるぞ。
「ふむ!ではこれでもう一件落着ということでござるな。
「ああ……でもまだもうひとつかたづけなきゃならない事が残ってる……。
「さて……おまえ達をこのままにしとくわけにはいかないんだ。
これ以上好き勝手に歴史改変を繰り返させるわけにはいかない。おまえ達にはなんの罪もないけど……。
リィカ。幻視胎を完全に停止させて二度と動かないようにすることは可能なのか?
「ハイ。全プログラム全データヲ破壊。有機CPUノ緊急焼却装置ヲ作動サセレバ実行可能デス。
「そうか……じゃあそいつを実行させて彼らを眠らせてやろう。
「了解デス。幻視胎メーン・システムに侵入。緊急焼却装置作動!
完全ナル自己消却ヲ実行シマス。
『完全自己消却率90%……70%……40%……ジュウ……ゴ………………………………』
「幻視胎完全に沈黙……機能停止ヲ確認……デス。
「ふう……ともかくこれでパルジファル王の歴史改変計画も終わりだ。
「とりあえずひと安心でござるな。後はなんとかして王の目を覚まさせねばならぬでござるが……。
元凶は仮面の予言者でござろう。そやつのこともこのまま放っておくわけにはいくまいでござるぞ。
「よくやってくれたアルド。
「おまえは……!
「なんでござるかこのお化けのような輩は?そなた達の知り合いでござるか?
「ワタシのフレンド・リストに未確認生命体は一体ナリトモ登録サレテオリマセンノデ!
「おまえ達のおかげで殺された未来はよみがえった……。もう一度礼を言おう。アルドよくやってくれた。
これで世界は再びカウント・ダウンを開始した。滅びの刻への……!
「なんだと……!?いったいなんの話だ?
「ゼノ・プリズマには時層に歪みを蓄積する性質があるのだ。特殊な次元振動波を発生させてな。
そして歪みの蓄積が限界に達するとこれを解消しようとして時層に急激なズレが生じる。
この結果時空間に強大なエネルギー衝撃波が襲いかかり時震が発生する。
つまりゼノ・プリズマは着々と時空を破壊する力を溜めていたのだよ。歴史が改変されるその直前まで。
「時震……?時空の破壊だと?
「そうだ……。ところがここで予想外のことが起きた。
この時代であの男が未来の改変を企ててゼノ・プリズマを歴史から抹消してしまったのだ。
なんとしても変えられた歴史をいま一度元に戻す必要があった……。
おまえという存在は打ってつけだった。我々はこの次元ではまだ十分に実体化できないのだ。
時層の歪みはじきに限界に達する。本震である巨大時震が世界を襲うのはもう時間の問題だ。
「時層の歪みの臨界……シカシモシソノヨウナ事態にナレバコノ世界は……!?」
「結果として時空はバラバラに砕け散るだろう!」
「時空がバラバラに!?バカな……でござるぞ!」
「本気なのかきさま!?オレをダマしたな!」
「ダマした……?何を言っている。確かにおまえは殺された未来を救えただろう?
それにはじめにちゃんと警告したはずだ。忘れたとは言わせないぞアルド。
おまえの決断次第であらゆる世界あらゆる時代が失われることになるやも知れぬと。」
「くッ……。」
「さておまえの役目はこれまでだ。さらばだアルド……クロノスの仔よ。」
「なんだと……!?」
「むッ!?なんだこりゃ……でござるぞ!お、おわわッ!?引っ張られるでござるッ!」
***
「それでね、お兄ちゃんったら……」
「ウソッ!信じらんない。」
「でしょ!?もうイヤになっちゃう。どうしてもっと好きにさせてくれないかなあ。」
「だけどうちのアニキだって似たようなもんだよ。めちゃくちゃアタマ固くってさ、サイアクだよ。」
「あッ!あなた達!?」
「やい魔獣!こんなところで何してる?ここはおれ達人間様の森だぞッ!」
「やめて!どうしてイジワルするの?
アルテナも……彼らだってわたし達と同じ生き物じゃない?仲良くしようよ。」
「同じだって?バカかおまえ?こいつら魔獣がおれ達と同じ生き物のわけないだろが!
そんなこともわからないのか?やっぱり拾われっ子はアタマがおかしいんだな。ハハハ!」
「…………。」
「ほんとはおまえ人間じゃないんじゃないのか?人間に化けた魔獣なんだろ?」
「ちがう……そんなことないもん……。」
「やーい!拾われっ子は魔獣の仲間!拾われっ子は魔獣の子供!」
「「「魔獣の仲間魔獣の子供!
魔獣といっしょにやっつけろ!
魔獣といっしょにやっつけろ!」」」
「ちがう!ちがう……!!」
「あんた達いい加減にしな。」
「おッ?やるのか魔獣?こいつらはキョーボーだからすぐボーリョクにうったえるんだよな。
でもおれ達に手を出したりしたらただじゃすまないぞ?
魔獣にやられたって大人達に言いつけたら大騒ぎになるからな。」
「く……!」
「やい魔獣の分際で人間さまにたてつくってのかおまえ!?どうするんだよ?おい!?」
「やめろッ!」
「お兄ちゃん!!」
「出たッ!拾われっ子の兄貴!」
「やーい拾われっ子ぉー!」
「だいじょうぶかフィーネ?」
「お兄ちゃん……わたし……。」
「わかってる……。何も言うな。」
「あんたも、もう人間の村には近づかない方がいい。
さあ帰ろうフィーネ。爺ちゃんが心配するぞ。」
「お兄ちゃん……でも……!」
「残念だけど……オレ達にはどうすることもできない……。さあ行くぞ。」
「アルテナ……わたし……。ゴメンね……。」
「…………。」
***
「なんだ……?いったい何が起こったのでござるか?
「ああ時空を飛び越えたんだよ。どうやらまたこれまでと違う別の時代に飛ばされたみたいだな。
オレ達のことを厄介払いしたつもりなんだろう。
「時空を飛び越えた……でござると!?ほう!?それはそれは……!
そなたらと一緒だと退屈するヒマはなくてすみそうでござるな。
しかしまさか殺された未来をよみがえらすことが時空の破壊につながるなんて……。
「だからと言ってひとつの未来を勝手に抹殺してしまっていいなんてことにはならないはずだ。
それにあいつの最後の言葉……。クロノスの子……?
「クロノスとイウノハ、エルジオンの科学者……クロノス博士のことを指してイルノデショウカ。
「ああおそらくな。だとしたらオレとフィーネは……そのクロノスという博士の……?
くそッ!何がどうなってるんだ?
ともかくまずはここがいつの時代でどこなのかはっきりさせないと……。
***
「あら……あなたは……。そうアルドというのね。
「え!?どうしてオレの名前を?
「なぜかしら。でもあなたが来るってずっと前から知っていたような気がするわ。
「なんだか変わったやつたな……。でキミは誰なんだ?
「わたし?わたしは……次元の水先案内人。
わかるのはそれだけ。ここに来る前のことはよく覚えていないの。
「記憶喪失ってやつか?だとしたら大変だなあ……。名前とかもわからないのか?
「私の名前?……そうね。わからないわ。
「そうか……何か手がかりになりそうなこととかないのか?
「手がかり……。少しだけ覚えている記憶があるわ。記憶というか景色というか……。
うすぼんやりした場所……。その中をゆっくりとたゆたっていたの。
あそこはどこだったのかしら。私はどうしてあそこにいたのかしら?
朝と夜のない揺り龍……。暗くて冷たくて泣きそうになるくらい静かで……。
ダメ。これ以上は思い出せないわ。
「そうか……。何か手助け出来ればいいんだけど……。
「じゃあこの扉の中を調べてきてくれない?
「この扉か?一体なんなんだコレ?扉だけポツンと立っているが……。
「この扉は私かここに来た時に出来たみたい……。それまでは何もなかったって。
だからきっとこの扉の先に私の記憶の手がかりがある……。
「なるほど……よくわからないがこの先を調べればいいんだな?
そういうことなら任せてくれ!
「おや君たちも迷い人かい?
……いや違うようだ。他の住人たちとは違う力強さを感じる。
後ろにいるのはうちの相棒さ。ここに流れ着く前の世界で懐かれ……いや知り合ってね。
名前はウクアージと言うんだが……
そうだ。うちの相棒に戦いを教えてやってくれないか?
本人の素質とやる気はありそうなんだが僕は戦いはからっきしでね。
また旅を始めることになるかもしれないし相棒が強くなってくれたら心強い。ぜひともお願いするよ。
***
***
隠れちゃったようだね。
見かけによらず負けず嫌いだしきっと強くなって戻ってくるからまた相手してやってくれないか。
***
「やあ来たな……。そろそろ来る頃合いじゃないかと思っていたよ……アルド。」
「ここはいったい……?」
「ごらんのとおりさ。ただの小さなバーだよ。迷子になった人達のちょっとした助けになればと考えてね。」
「このような時空デ……デスカ?」
「こんな時間と場所だからかな。まあ昔からちょっと変わった所が好きなんでね。」
「ご主人はアルドの知り合いでござるか?以前にどこかで会ったことがおありとか?」
「ああ……いや、知らないと言えば知らない。知ってると言えば知ってる……
直接に会ったことはないが……まあ古い友人とでも思ってくれ。」
「なんだかよくわからないが……まあいいや。
ところでどうすればここから出て行けるんだ?オレは早く自分の時代に帰りたいんだ。
さらわれた妹のことが気になるし他にもいろいろとマズイことになりそうなんだ……。」
「なに。帰れる者はいるべき所に……。きみに帰りたいという強い意志さえあれば大丈夫だ。
外に出て道なりに進めば光の柱があるだろう?
あの柱はあちこちの次元の歪みにつながっている……。きみの時代にも戻れるはずだ。」
「わかった。ありがとうマスター。」
***
「そうそう。元の時代に戻る前にそこにいるミド婆に話を聞いていくといい。きっと君たちの力になってくれるはずだ。
この先きみにはおおきな助けが必要だろうからねアルド。」
「アルド……。汝には未知なる力が眠っておるぞ。書物があれば新たな力が目覚めよう。」
***
アナエデ mark