【黒ウィズ】クラヴィル・スティ
クラヴィル・スティ cv.石川界人 |
2000/00/00 |
ウィズセレ
「ちっ、このあたりも魔物に囲まれたか。」
クラヴィル・スティはあたりを見渡し、ひとつ舌打ちをした。
「クラヴィルさん、このあたりはもう無理だ。今すぐここを放棄しよう!」
自らの故郷を離れて数年――。
多くの街、人を見てきたが、皆は一様に魔物の脅威に怯えていた。
己が剣で世界を守ろうと誓い立ち上がった彼だったが、その夢は果てしなく違い。
「クラヴィルさん、東側に親玉みてぇにでかい魔物が出たらしい。どうすりゃいい!?」
「…………。」
クラヴィルは、天に向かってほうっと息を吐いた。
かつて――クラヴィルが生まれるずっと前には、魔物なんてものは存在しなかったという。
(そういや、あいつが聞かせてくれたんだったな)
「おいおい、クラヴィルさん、こんなときに呆けないでくれよ!」
「わかってる! 大丈夫だ! 全部ぶっ潰すぞ!」
クラヴィルは自分の中で鎌首をもたげ始める恐怖を噛み殺し、怒声にも似た声を上げた。
自分を信じてついてきてくれる人がいるのなら、決して振り返ってはならない。
進め、進め!! 彼はそう自分に言い聞かせ、震えそうになる膝に喝を入れる。
「お前ら、絶対にはぐれるなッ! 全員、俺について来い!」
この声が、この剣が、この背中が――!
自分の全てが、人々にとっての光となるのだから!!
story2
全員を救えるわけではないことは、クラヴィルも重々承知し抜いていた。
守ることができず、泡沫のように消えた人も、街も……数多く見てきた。
眠れない日々を過ごしたこともある。赤子のように泣きはらしたこともある。
いまだって逃げ出したい衝動に駆られ、必死に抑えるので精一杯だ。
(自分が強くない人間だってことぐらい、わかってんだよ……!)
だから、そうだからこそ、クラヴィルは自分を騙すようにして、強い人間を演じてきた。
あいつに笑われたくはない。
ある日、突然姿をくらました自らの親友に、不甲斐ないところなんて――。
「見せられねえ……よなぁ!!」
クラヴィルは叫び、星に届くよう高々と剣を掲げる。
「人々の平和を脅かす魔物は、俺の剣で一匹残らず喰い尽くす!」
見ているか、どこかに消えた天体バカ。俺はここにいるぞ。
一等星のように光る剣を掲げ、クラヴィルは不敵に笑った。
「行くぞッ!」
story3
相変わらず星を見上げながら、クラヴィルは額の汗を拭う。
戦いを終えたクラヴィル達は、静かになった戦場で空を見上げた。
……そういや、クラヴィルさんが探してる友達ってのは、どんな奴なんだ?」
「理屈っぽくて、面倒くさい奴だったよ。
……ただ、星を見てる時だけは、ガキみたいに夢中になってたな。
言葉してみれば、なんとも不思議なやつだった。
性格はクラヴィルとは正反対だったが、何故か馬が合った。
ある日、忽然と姿を消したときは、さすがのクラヴィルも驚いたけれど――。
「あいつは、要領のいい人間だったからな。どこにいても上手くやってるだろうさ。」
「なるほどな。面白い奴だったんだな、そいつ。」
兵士の言葉に笑いながら、クラヴィルは続ける。
「初めて故郷を出ようと思ったのは、あいつがいなくなったからなんだ。
あいつを見つけて、連れ戻したいから……ってのが俺が故郷を離れた理由さ。」
どこかに人を飲み込む扉が湧いて、別世界に飛ばしてしまうなどという与太を聞いたことがある。
クラヴィルは一笑に付したが、あながち嘘でもないのかもしれない。
星を眺めながら、彼はその友人と最初に出会った時のことを思い出す。
「ちょっと僕の手伝いをお願いできないかな?」
「……懐かしいな。」
いつか彼が帰って来た時に、胸を張って出会えるように。
彼はまた、星空を見上げて歩き出した。
ストーリー
クラヴィル(ザ・ゴールデン2016) | 2016/04/28 |