【白猫】ジルベスタ物語 Story6
2019/05/31 |
目次
story31 騎士道とは
「はぁ、はぁ……これで、最後の一匹……!」
「やるじゃねえか、カシス!」
「皆さんの、おかげです……!」
「――見てたかぁァァアアアア!!!」
「!」
「騎士道とは――<人を守ること>なり!!!
だって、俺はいつだって……みんなに褒めてもらいてえ!!
名誉は人の心に残る!!たとえ死んでも残り続ける!!ずっと褒めてもらえる!!
だから俺はこれからも、騎士として多くの人を守る――それが俺の<道>だ!!」
「……ディーン。」
「だが騎士道ってのは、一つだけじゃあない! ――そうだろ!?」
「お、俺に振るのか!?
騎士道とは――<姫を守ること>なり!!!
当然だ!! 美しい姫との恋愛に憧れずして、なにが騎士だ!!
その思いはすなわち……姫が愛するものすべてを守るという信念に繋がる!!
姫が愛するは国! そして、そこに暮らす人々!!
だから俺は、騎士として――これからも人を守るんだ!!!」
「騎士道とは――<愛するものを守ること>なり!
国家、家族、仲間、主君、民。そして……友。
そう、友が守りたいと願うものは、僕が守るべきものでもある!!
我が親友、クライヴ。キミが守ると決めたものならば――この命、懸けてみせよう!
「よしみんな、怪我人の救助を再開しよう」
「クラァァァアアアイヴ!!! 今大事なこと言ったぞボクはァ!」
「アンタたちねえ……」
「騎士道とは――<守るべきものを守ること>なり」
「あなたまで……そんな綺麗事を……」
「綺麗事とちゃうよ。
ヴィクちゃんは。自分の騎士団の子たちや領地の人たちのことも、心から大切に思っとる」
「……強硬な軍拡思想、手段を選ばぬ扱搦さ、血縁を手にかける残虐性――
貴様が王座につけば、いずれ<氷の国>の脅威となる危険があると判断した」
「ヴィクトール、エイス……」
「騎士道とは――<未来を守ること>なり。
そのためには時に、なにかを切り捨て、見捨てる――そんな決断が必要だ」
「ならば、僕の理想は理解できるはずだ……!!
「だが貴様は、道を誤った。犯してはならない罪を犯した」
「……カレン」
「<忠勇の国>の友邦として――我らはこの国の民に仇なす者を、見逃すわけにはいかない!」
「……カレン・ガランドォオ……!」
「……フリント。
逃げ出したお主の精鋭隊とやらと、ディーンたちの違いが、ユー力にはやっとわかった……
彼らは皆、信じる道は違えど、例外なく、見つめておった。
その先にいる<人>のことを……ちゃんと見つめておった……!」
「それが綺麗事だと、どうしてわからないッ!?」
「わかるものか……!!
国のためとうたいながら、人の命をないがしろにするお主の道は、きっと――間違っている!!」
「……観念しろ、フリント・アインヴァッカ。」
「む、無駄だ……! 呪具は粉々に壊した!! 証拠はもう、どこにも……!!
「ファフナーは、一度目にした物体を記憶し、再現する」
「ふ、ふふ……なんでだ……どうして誰もわからない……!!
国を守るのに必要なのは、力! 力、力……力だ!!! 圧倒的な、力だ!! なのに!なぜ!! 兄上は――貴様らはァ!!」
「――力なら、差し上げますよ。文字通り、死ぬほどね――」
「ガ、ガグ……グウウウウウウ!? な、なに、なに――なにぉォオオオオオ!?!?
「フリント……!? どうしたのじゃ、フリント……!
「近づくな、ユーカ! この凄まじい魔力は……」
<フリントはふらふらと後ずさり、城から落下した……>
「――フリント!?」
***
「なんだ、こりゃあ……!」
「……なんて巨大な。やつを止めなければ――」
「カレン! ユー力もいく!!
今度はユーカが……自分の道を皆に示す番なのじゃ。これからの<目的>のためには、それが必要なのじゃ……!!」
「……止めても、ついてくるんだろうな。。君というやつは。
これを着るんだ。防護魔術を施した。ないよりはマシだろう」
「この国は……そして民は……ユー力が守るのじゃ!!」
story32 たとえ剣が折れても
「とんでもない強敵だ。だけどね――
退くわけにはいかないんだよ。ボクたちは……!」
「ああ、その通りだブライ。今度こそ――」
「「……守り抜くッ!!!」」
***
「はぁぁあッ!!
<ヴィクトールとエイスは、上空からフリントに対して絶え間ない猛攻を仕掛ける――!>
「――エイス。このまま敵の注意を。上方に引きつける。
「わかっとる、ヴィクちゃん! みんなを守るで!!
『こノ国を統ベルのは――守れルのは、僕ダけだ――このフリントダけだァアア!!!』
「これが……フリント様なのか……!?」
「た、ただの化け物じゃないの……!」
「皆、逃げるのじゃ! ――こっちじゃフリントぉ!!」
「完全に正気を失ってやがる……」
「……未知の術式による、肉体転化と精神汚染。あの様子では、あの男自身、長くはもたないだろうが――
「ああ――ほっとけば、やつが自滅する前に国が滅ぶぞ……!
『終わレナい、こんナところで……兄上さエこの手に力けた――! 僕ハもう――後戻りデきない!!
「な、フリント様が……ロレンツ様を殺した……!?
「そんな……我々は、フリント様の『国を守る』という思想を信じて、今まで……
『ゆぅぅぅカレぁぁアアアア!!!!
「今だ、ディーン……叩き込め!!!
「魔を征し、邪を討つ……! ――征魔討邪剣!」
「出たわ、ディーンの必殺技! あれならひとたまりも……!」
「あれを食らって、無傷だと!?」
「化け物め……!」
「あの分厚い装甲を、まずはどうにかしないと……!」
『死ね! シネ!じネ!!!! ミんな壊しテやる!! どうセいつか滅ブのなら!!
国モ! 騎士も! 民モ!! ぜんぶ全部ゼンブゥウ!!』
「――」
「なぁに不安そうな顔してんだ。ほら、涙ふけ」
「でも……見るのじゃ! この混乱を! 民の顔を……嘆きを……!
この国は……もう……っ!」
「だから、大丈夫だって。……ほら」
「僕たちはまだ――諦めてはいません」
「我々も……戦うぞ!! 今度こそ……民のために!!」
「ユーカ。この国の道はまだ、途切れてはいない」
「………っ!」
『おまエラさえ――いなァけレバぁぁあああ――』
「……フリント・アインヴァッカ。貴様はユー力から、けっして奪ってはならないものを奪った。
一人の騎士として――私は貴様を、許しはしない」
「そういうこった。まあ諦めてくれ、フリントさん。
ロレンツさんのこと。――俺だって、こう見えて、かなり怒ってんだぜ。
<剣誓騎士団>総長――ディーン・バルト!!」
「同じく副長――カレン・ガランド!!」
「「いざ尋常に――参る!!!」」
story33 王
「いくぜ、必殺ぅぅうう……!!!
『――
「ディーン!!? え、ちょ、うそ!?
『――――なァアッ!?
「このまま押さえるぞ……! ファフナァァァ……!」
『離せ、離セ、はなァ――
「遅えよ。
『!!
「征魔討邪剣・追の型――
――――<煌>ッッ!!!」
『ギイイイイイイイイイイー!?』
x爆発した……!?
C突き剌した剣を通して、やつの体内のソウルを操り――
b内側から咋裂させたのか!? なんてえげつない……!
「……装甲が剥がれました!!今なら……!
「よっしゃ、いけェ!!!
「!!
「お前の――<道>だぁぁぁあ!!!
「――恩に着るぞ、ディーン!!
「お、おい見ろ! あの女の子……空中を、駆け上ってる……!?
「フリントの傷口から噴き出た大量のソウルを操って――道を作ったのか。
「――フゥゥゥリィィィインンントォォォォォオ!!!!
『――』
「――なぁんのぉぉぉおおお!!!!」
「あのお姿は……ユーカレア王女!?」
「そんな……あの子は……!!」
「レッカお姉ちゃんって、もしかして……」
「お、お姫様だったの!?」
「――いけぇええええええええ!!」
「国に仇なす不届き者よ。このユーカレア・アインヴァッカが――」
『じィイネぇぇえエエエッ!!!!!』
「じきじきに――成敗するッッッ!!」
「やったああああああ♪」
「聞け、皆の衆!!
父上の死、国の動乱、そして此度の魔物の襲撃――それらはすべて、仕組まれたものじゃ!!
「<剣の国>の名誉にかけて、ユーカレア様のお言葉が。真実であることを保証します。
王弟フリント・アインヴァッカは国家の乗っ取りを企み。ロレンツ・アインヴァッカ様を暗殺――
得体の知れぬ呪術士と共謀し、この国に甚大な被害をもたらしました」
「あのフリント様が……そんなことを……」
「……俺たちはいったい、なんのために……」
「――案ずるな!! これより我が王位を継ぐ!!
このユーカレア・アインヴァッカが――ジルベスタの王となるっ!!」
「……姫様……!」
「我はこの数日間――勇敢な騎士や、かけがえのない民らと共に戦った!!
そして、学んだのじゃ! 国を守るということの意味を!!
ユーカは王として……ずっえぇええんぶ守るっ!!!!
富める民も!!
貧しき民も!!
民を守る騎士も!!
王としてすべて守り通す!!それがユー力の……<王道>じゃああああああ!!!!
だからいつまでもいつまでも喧嘩しとらんで……一つになれえエエエエエ!!!
同じ国のぉぉ――民じゃろーがあああああああ!!
「――しかし、姫様はまだ幼い子供じゃないか……」
「だが、その幼い子供が、あんな大きな化け物をやっつけたんだぞ……! 俺たちのために……!」
「――ユーカレア様は見事、お父上の仇を自ら討ち取り、命を懸けて民を守り抜きました!」
「その勇猛なるお姿――我らが命を捧げることに、いささかの疑問もありませぬ!」
「永遠の忠誠を――新たなる女王陛下にッッ!!!」
「……いくぜ、お前ら。
ユーカレァアアアア!!!」
「「「ばんざーーーーーーーい♪」」
「「「ユーカレア女王様ーー!! バンザァアアアアアアアイ!!」」」
最終話 道を歩む物語
<王城での剌いから、数日後――>
「クソ……!!」
「……どうだ。対呪術式を刻み込んだ剣の味は――!
「……我ら、の……世界……を――」
「呪術士の正体は、魔物だったか」
「フリントの思想を利用し、この国に混乱を招いて、乗っ取る算段だったんだろう。
近年の魔物の急激な増加も、やつの仕業だったのかもしれない。
「ともあれ、これでやつの野望はついえた」
「……これは第ー歩だ。長らく割れていた僕たち騎士が、ーつになるための」
「ユーカレア様のお言葉だな。<力>と<正しさ>……その両方が、我々には必要だ」
「貴公らの強さに、敬意を表する」
「貴公らの気高さに、敬意を」
***
「貧民街の件、そうにかなりそうでよかったな。
「ああ、騎士の配備が徹底され、再整備ももうすぐ始まる……素晴らしいじゃないか♪
「ユーカのおかげさ。……ケッ借りができちまった。
「ふふ♪ それじゃ、アタシたちは帰るわ!
「みんな、元気で。
「なあ――
俺さ……もう少しデカくなったら、騎士団に入ろうと思う。
騎士なんて大嫌いだったけど、クライヴやブライ……”アンタ”を見てて……俺も、こうなりてえって思った。
「……大丈夫。あの夜、姫を守り抜いたお前に、俺は騎士の在るべき姿を見た。
ガフならきっと、なれるさ。誰よりも立派な騎士に」
「もしもこの国の騎士団が肌に合わなかったら、バルラにきたまえ♪
……いつでも歓迎するよ。勇敢な、騎士の少年」
「いかねーよ。――じゃあな!!」
***
「ヴィクトールとエイスのやつ、俺たちに別れの挨拶もなしに帰っちまってんだもんなー」
「残していったものといえば、破り捨てられた誓約書くらい、か」
「ま、全部丸くおさまったし、この国でのアレコレを咎められる心配もないもんな♪」
「二人とも……いろいろと、世話になったのじゃ♪」
「んなことないさ。それじゃあな、ユー力。
――
おぐ……貴国での滞在の日々……大変、有意義でありましたぁ……」
「――ユーカレア陛下。どうか、お達者で」
「今さら堅苦しくするでない。どうせ民は見ておらんのじゃ」
「ならお言葉に甘えて……これから大変だろうけど、がんばれよ、ユー力」
「ししし♪ 心配するでない。ユーカはすっかり元気じゃ☆」
「私の命尽きるまで、そばでお支えいたします」
「頼んだぜ、大臣さん」
「私が関与できることではないが……フリント・アインヴァッカの処遇は本当にあれでよかったのか?」
「無期限の拘禁……だっけか」
「罪を考えれば極刑が妥当です。ですが、姫様は――あの男を許す道を選びました」
「何年、何十年かかっても、あやつには罪を償ってもらう。そしてユー力は、それを見届けるのじゃ」
「……君の中では、あの男もまた、守るべき民のー人なのだな」
「そっか。ユー力がそう決めたなら、文句はないさ」
「それじゃあ――また」
「あっ……」
「「?」」
「……いや……二人とも、達者での☆」
「ああ! またな、ユーカ!!」
「困ったことがあったら、いつでも呼んでくれ」
「――全員、気をつけ!!
<剣の国>の騎士たちの勇猛なる活躍に――心からの感謝と敬意を!!!」
***
「……よく、耐えられましたな」
「……なんの、ことじゃ……」
「引き止めたかったのでしょう。お二人のことを」
「………そ、んな……こと……」
「泣いてもよいのです、今は」
「で、も……ユー力はもう女王で……だから、皆の前で涙など………」
「僣越ながら――その涙は、恥すべき涙ではないと、自分は考えます。
人を思うユーカレア様の純粋さと優しさは、我らに――この国に、必要なものです」
「…………ふっ、うっ……うぅぅ……
うぅぅぅわああああああ!! うわあああああああああん……!!」
***
――ジルベスタを襲った危機は、こうして一旦、幕を閉じた。
このたった数日間の出来事を私は、一生忘れないだろう。
命を懸けて戦い抜いた、勇猛なる騎士たちの輝きを、けっして忘れないだろう。
これは、<道>を探す物語。そして――
――見出した<道>を信じ、まっすぐに歩んでいく物語――
「もーのーがーたーり、っと♪」
「――姫様、授業中ですぞ! いったいなにを書いているのですか!?
ラクガキですか? え~と、なになに……? 私がこれから綴るのは~? 道を探す物語~……?」
「読ーむーなーー-!!!」
「姫様ァ~~~! 授業中の脱走はもう許しませんぞぉぉおお!!」
ジルベスタ物語 ~おてんば姫と義勇の騎士~ -END-