【白猫】ジルベスタ物語 Story5
2019/05/31 |
目次
story26 動かぬ証拠
「…………
「ああ。強力な呪術の発動に用いられる触媒だろう。
ソレはきっと、この世にあっちゃいけないものだ……
***
行こう――王城へ!
ディーン殿たちの立場を考えれば、それまでに力夕をつけるのが望ましいよ。
皆……ユーカに力を、貸してくれ……!
>式典が始まってしまうのじゃ!
>ああ、全速力で戻るぞ!
>待っていろ……!
story27 追求
――ジルベスタ王城前広場――
***
「……失礼いたします、フリント様。
ユーカレア様と、<剣の国>のご両名様より、お話があると……」
「後にしてほしいとお伝えしてくれ。間もなく式典が始まる」
「そういうわけにはいかねえさ」
「森の奥で、この呪具を見つけました」
「これを使って、お主は……父上を殺したのじゃ……!」
「音もなく、痕跡も残さず、標的を殺害せしめる……
非常に複雑かつ高度な術式です。協力者がいたのでは?」
「……落ち着いてください。さっきから、一体なにを――」
「呪術は専門外ですが、表層の術式だけはかろうじて。読み解けました。
この呪具は、使用者が特定のキーワードを唱えることで。発動する仕組みになっています。
キーワードは、<眠れ>――です。」
母上がいなくなって……父上にも嫌われたら……ユーカは……さびしい。
ふふ、兄上?ちゃんと仲直りしておかないと、また気になって、<眠れ>なくなってしまうよ?
「言い逃れはさせない。おとなしくしてもらうぜ」
「言い逃れ、ですか? なんの?」
「あんた、まだとぼけるのか!?」
「僕が。あの愚かな男を。処断した事実について。……いったいどんな言い逃れをする必要がある、と?
軍事の縮小と、貧民街の救済?そんな愚かなやり方では、国はいずれ滅ぶでしょう。
他国からの侵略によって、あるいは魔物によって……今すぐでなくとも、数十年後、数百年後――」
「フリント、様……」
「――あの蒙昧な暗君から、国を守ろうとした僕が、どんな言い逃れをしろと!」
「テメエ……!」
「フリント……本当は、操られておるんじゃろ!? だってお主は……厳しいけど……優しい、ユー力の大事な――」
「――兄上に似たその甘さが、前々から鼻につきましたよ」
「……我々を国へ招き、王の殺害現場に同伴させたのは、<証人>に仕立てるためか」
「ご明察です。国際的な証人を立てておけば、周囲から向けられる暗殺の疑念を防ぐ盾となりますから」
「お主は……! そんなことのために……!」
「……フリント・アインヴァッカ。国王暗殺の容疑につき、あなたを拘束します」
「このまがまがしい魔力……あの呪術は貴様が仕込んだものか!」
「彼は優秀な呪術士であると同時に、召喚士でもあります。僕の思想に賛同してくれた、いわば同志ですよ」
「ド、ドアが勝手に閉まったぞ……! 閉じ込められた!!」
「ユーカレア様! 私の後ろへ!!」
「――いくぞ、みんな!!」
>フリント……
>あの野郎……!
>ついに正体を現したな。
>ユーカレア様、大臣、後ろへ!
>なぜなのじゃフリント……
>絶対ェ、許さねえ……!
>敵が来るぞ……迎撃する!
story 最強の騎士
「これで最後だ! もう諦めろ!!」
「――」
「な、なんじゃ……!? き、気分……が……」
「なんだ……これは……!?」
「やべぇ……全身から、力が抜けて……!」
「……部屋全域に……吸精の呪術が刻まれて……魔物は時間稼ぎか……!」
「これで、証拠の品も消え去った。……さようなら、皆さん」
「――やらせん」
「壁を破って……!? だが、無駄です――
………な、氷が……ッ!」
「今度は逃がさん」
「カレンちゃん、今やで!! 気張ってや!!
「――誓いをここに! 白き光よ、骨肉蝕む柳をはらえ――!」
「ナイスカレン! ヴィクトールとエイスも助かったぜ!」
「ここまでだ。降伏しろ」
「どうか少しだけ、証明するお時間をいただけませんか?
「………証明、だと?
「僕の<騎士道>を、名高き騎士である皆さんにも理解していただきたいのです。
<騎士道>とはすなわち、いかなる脅威をも打ち払う<力>です。<誇り>だの<正しさ>だの、
耳障りのいい綺麗事では国は守れない。
「国を守る、ね……」
「なにを……するつもりじゃ。城下には、集まった民が……!」
「――――」
***
こ、こいつら、強――ぎゃあああああっっ!!?
***
「な……!? 兵が……民が……!!」
「貴様――正気か!?」
「……今すぐやめさせろ。さもないと――」
「今、僕を殺せば、魔物の召喚は止まりませんよ。
これは、証明です。僕の<騎士道>の、正しさの」
「聞け、騎士諸君! 我が国に悪辣なる召喚士がまぎれ込み、今まさにこの国を滅ぼさんと企んでいる!!
最強たる騎士たちよ!! その身を盾とし、民を守り通せ!!」
「ウォォォオオオオオオ!!!!!!
<駆けつけた騎士たちは、圧倒的な強さで魔物の群れを蹴散らしている。>
「――強い。なんだ、彼らは……!?」
「<精鋭騎士隊>ですよ。極限まで磨いた戦闘技術に加え、魔術付与を施した最新鋭の武器防具とルーンで武装した、選りすぐりの騎士たち――
彼らは尖兵です。コストはかかりますが、僕が国の全権を握れば、この国の兵士はいずれ皆、彼らのように強くなる――
未来永劫、いかなる脅威からも、このジルベスタを守れるのです!」
***
>みんなを守るわよ!
>うぉぉぉおおお!!
>さあ、かかってこい!
story29 守るってなんだ?
***
「……そろそろいい。魔物の召喚をとめてください。
――? どこへ行った、呪術士? おい……!?」
「なんだか知らねえが、目算が狂ったみたいだな」
「……ぐ、僕を助けろ、呪術士……! 聞いているのかっ!?」
「総員、戦闘準備! 命に代えても民を守れ!!」
***
『――ギィイ――』
***
「な――ふ、ふざけるな。戦えよ、最後まで……戦えぇ!」
「……あの姿が、貴様の求めた騎士道とやらか?」
「ち、違う……僕の騎士は、あんなものじゃ……」
「…………」
「俺も行く。カレン、お前はここから、こいつで指揮を頼む」
「<拡声のルーン>か。おあつらえ向きだな」
「いくぞ、エイス」
「よっしゃ、気張るで!」
「……なあ、ユーカ。いつぞやの質問の答えだ」
「質問……?」
「俺の<騎士道>――しっかり見ててくれよな!!」
***
”――忠勇の騎士たちよ! 臆するな!!
我らが助力する!! 国と民を守るため、騎士の本懐を遂げてみせよ!!”
>諦めるには早いぜ!!
>蹴散らすぞ――エイス。
story30 約束した
”ヴィクトール殿とクライヴ殿は、兵を率いて左右に展開! ブライ殿は、避難の補助にあたってくれ!”
<カレンの指揮のもと、騎士たちは次々と魔物を蹴散らしていく――>
我々はフリント様のもと、日々鍛錬を積んできた。なのに……
でも、自分がなにを守ってるのか、自覚してるやつらってのは――
「貧しい民を見捨てるのが、国を守るべき騎士の在り方か? 誇りはないのか!?
「国が潤えば潤うほど、俺たち騎士は強くなる。
立派な『国を守る騎士』だろう? 誇りだの騎士道だのほざく、軟弱なお前らと違ってな!
”忠勇の騎士たち! 臆するな、挫けるな!!
我らがついている!! 国と民の未来を――その剣で斬りひらけェ!!”
「「「おおぉおおおおお!!」」」
「おい! 主人公!!」
!
「来てたんだな! ガキども見なかったか!?
俺、さっき起きたんだ。そしたらあいつら、みんな王城に向かったって――」
「「「うわぁあああああ!!!」」」
「お前ら!!!」
「ガフ兄ちゃん……! 主人公兄ちゃん!」
「この騒ぎのせいで、みんな怪我しちゃって、ここから動けなくて……」
「………クソ、マジか!!」
<アイリスたちは……他の場所で救護をしている。頼れない……>
「ちくしょう……もう……」
――まだ!!
――まだまだ!!
――まだまだまだまだ!!
「おい、こんな数、一人じゃ……!」
守る、絶対に――!!
「なんで、そこまで……?」
<誰かを守るのに、理由なんていらない。それに――約束した。>
――もしもなにか起きたとき、ここにいる人たちを守るのはボクたちの役目だ――
仲間たちと、そう――約束した!!
さあ……かかってこい!!