【白猫】伝説を築く者たち Story
2015/04/06
目次
登場人物
story1 基礎工事
ヘイヘイヘイ!ついにこのリアム様が、この村にやってきたぜ!
俺様の伝説、よおーくその目に焼き付けやがれ!
皆様初めまして、私、ブランシュと申します。
二人とも、誰に向かって自己紹介しているのよ。
で、姫さんよ、俺の相手はとこだ!?ここは魔物がウジャウジャいるんだろ?
そうですね。まずは村の周りの壁を修復いたしましょう。
それから村役場と倉庫と教会の建築ですね。
建築……?いやいや、なにいってんだよ。
はやく現場作業を終わらせないと、開拓村の皆様が困ってしまいます。
だから何だってんだよ。俺たちは魔物を討伐に来たんだろうがよ。
いいえ。開拓村の皆様をお助けするために来たのです。
確かに依頼内容は『開拓村の発展に力を貸してほしい』だったわね。
みんなの役に立つなら私はいいと思います。
村の方々にもお話は通してあります。さあ、参りましょう。
…………
……
っしゃおらー!!
<ブランシュは、ハンマーで地面に杭を打ち込んでいる。>
このお姫様、大工だったのか……
地面が揺れてるわ!?さすがにスゴイパワーね!
<リアムはトンカチを叩き、壁板に釘をうっている。>
えーい、こうなったらヤケだ!とっとと終わらせるぜ!
<主人公はカンナをつかって木材を削っている。>
……二人とも、大工仕事慣れてるのね。
主人公は大工たぬきさんのお手伝いもしてるからね。
リアム、アンタはなんで慣れてるわけ?
大工仕事ができねえ傭兵なんか、いるわけねえだろ。
塹壕掘ったり、テントを設営したり、この手の仕事はしょっちゅうなんだ。
<その時、村の見張り台に設えられた鐘が鳴った。周囲に緊張が走る。>
な、なになに!?
……魔物が出たんだって。
魔物ですか。現場の邪魔をするものは、容赦しません!
魔物ォ!?よっしゃいくぜええ!なにしろ俺は大工じゃなくて騎士だからな!
story2 建てつけ工事
えーいくそおお!この俺がなんでこんなことしてるんだ!
<リアムは、懸命にノコギリを引いている……>
常にクールで、さりげないカッコよさをまとったこの俺が!
自分でいっちゃうところがアンタのダメなところね。
俺にゃあこう見えて、カッケえ二つ名とかあるからな?
たとえば『混沌の世に舞い降りた漆黒の……
大工。
大工じゃねえ!
カッコいいです。リアムさん!
私は働く男性って、カッコいいと思います!
俺はそういうイメージじゃねえ!
だいたい主人公のほうが大工にむいてるだろうが!
見ろよそこの建てつけの繊細な仕事!こいつこそ大工だろうが!
たしかに彼には才能があります。でもリアムさんの堅実な仕事も現場には欠かせません。
二人それぞれに良さがあるんですね。
堅実って……ふだんチャラぶってるのにねえ。
本当はしっかりしているんですね。
実はがり勉タイプ?
ンなわけねーだろおおお!!……俺はがり勉でも大工でもねえ!
<――その時、鐘が鳴った。
魔物の襲来を告げる鐘が。>
はあ……待ちくたびれた、ぜ。
ド三流の三下ども、今日の俺様は血に飢えてる。並の地獄で終わると思うなよ!
<リアムは、ノコギリを構えた!>
そっちじゃないでしょ!
story3 飯だっしゃおらー!!
役場の設計も決まったことだし、さっそく作業をすすめましょう。
フン、この設計なら強度もばっちりってわけか……
そのとおりです。これが我が国に伝わる伝統の工法です。
なるほど、な……さすが<荒れ野の国>の建築技術ってことかい。
リアム、なんか発言が大工っぽいわ。ハアァ!?ぜ、ぜんぜん大工じゃねえし!
たしかに、厳しいことをいえばリアムさんはー人前にはまだまだです。
そういわれっと、ちょっとムカつくな……
でも、リアムさんは大工には欠かせないすぐれた目があります。
現場作業は、わずかな手抜きが大きな問題になることがありますから。
やっぱり細かいのね。意外と繊細なのかしら?
私は昔から細かいことが苦手だったので、うらやましいです。
細かいところは、細かいヤツにまかせたら?
俺は細かくねえ!常に大胆不敵だってえの!
みなさん。お昼御飯ですよ?
あら、もうそんな時間なのね。
それではみなさん、気合をいれてからいただきましょう。
なんだよそりゃ。
っしゃおらー!!
っしゃおらー!!
っしゃおらー!!
<――その時、鐘が鳴った。
のどかなランチタイムに、戦慄が走る。>
フッ……この俺には、どうにも許せないものが二つある。
昼飯を邪魔されることと、昼飯を邪魔する奴だ!
story4 目を見張る出来栄え
……ようやく村役場ができたな。
いや、ようやくとはいったが……なんかほとんどー瞬でできたような……
これも皆様のおかげです。
主人公もよく頑張ったわ。
(ほとんどブランシュのパワーでできたみたいなもんだけどね?)
……でもなあ、外見はよくできてるかもしれねえが、問題は中身だ。
じゃ、さっそく中に入ってみましょ?
おっ……外見は堅牢だが、中は木の質感が活かされてるじゃねえか!?
はい、こだわりのポイントです。
窓から差し込む光線が、実に和やかな雰囲気をかもし出しているぜ。
……もしかして、何か始まった?
柱回りの、この空気感。クラシックでありながらモダンなテイストだな。
どこでそんな言い回しを……
村の人たちにとって、親しみやすい建物を目指しました。
あらためて外からファサードを伺うと……実に村の外観とマッチしているじゃねえか。
ファサードってなに?
建物を前から見たところよ?
<荒れ野の国>らしい重厚さと人のぬくもりを感じさせるデザインだぜ。
故郷を離れてこの地に移り住んだ人々にとって、第二の故郷を感じさせる極上の建築だな……
アンタのボキャブラリーにびっくりだわ。
<その時、鐘が鳴った――
無機質な音色が鳴り響くたびに、不吉なる予兆が満ちていく……>
ガンガンガンガンうるせえなあ!
えーと、魔物……よね?
だろうな。フン、いい加減コリろってんだよ!
story5 襲撃を告げる鐘
<平和な村に、鐘が鳴り響く……
重々しい音色は、まさに暗黒の時代の訪れを告げるかのようであった。>
うるせーバカ野郎!!
くそっ、村の連中は役場に逃げ込め!
ど、どうしたの!?
村の中に、魔物がいるなんて……!
うかつだったぜ、連中、村を囲んでいた壁をぶち破ったらしい。
大型のモンスターを中心に、壁の弱いところをー点突破したらしいな。
うかつでした……この私がもっとしっかり修復をしていたら。
アンタの責任じゃねえよ。なにしろ急場ごしらえだ。今までよく保ってくれたってもんよ。
次にもっと立派な壁をつくりゃいい。そうだろ?
リアムさん……
それより問題はこの数だ。おそらく連中、魔物の本隊だぜ。
では、この魔物を撃退できれば……
当面は、ここが魔物に襲われることもないだろうよ。
だったら、がんばりましょ!
フン……俺たちが汗水たらして働いて作ったこの村を!
てめえらの汚い手で、触れさせてたまるか!
神聖な現場に土足で踏み込み、あまつさえ人々の住まいを損なおうとするなど……
このブランシュが許しません!王家の名のもとに叩き潰します!
最終話 騎士よ、ハンマーを取れ
これでこの村もどうにか助かったな……フン、やれやれ。
でも、私たちの仕事はまだ終わってません。壁を補強しなければ。
ああ、そうだな。開墾地から出た岩を積めば、いい石垣になるだろうよ。
リアムさん、貴方は……
ん、なんだい?姫さん。
貴方はもう、ー人前の大工です。
この俺なんかが……大工を名乗っていいのかい。
薄汚れた人生を歩んできたこの俺がよ……
<大工>の称号は、今のあなたにこそふさわしい。
私はそう思います。さあ、今こそこのハンマーを!
<リアムはハンマーを手に取った。>
おめでとうリアム!
よかったですね、リアムさん。
今日からこの俺は、大工だ!……ってちょっとまった。
なんでだ!なんで俺が大工なんだよ俺は騎士だっつーの!!
いいじゃないの。大工兼騎士で。
よくない!だいたいなんだよハンマーって!
ハンマーは大工の証ですから。
俺の得物は剣だー!!えーいくそっ!魔物はぶっ飛ばしたし、俺は帰るぞ!
だめです。いちはやく壁を修復しなければ。
<ブランシュは、リアムの首根っこをつかんだ!>
俺は騎士だー!
さあ、もうー度気合を入れましょう!
っしゃおらああああー!!
やれやれ、忙しいわね……あれ?主人公?
<主人公は、ー心不乱にカンナを動かしている。>
あの目……匠の目だわ!?
そうなの?