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【白猫】Brave The Lion 4 Story4

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story23


<破壊樹から生じる瘴気が室内庭園に満ちていた。>


ギャハハハハ!どうですかァ?大切なお友達や家族が、ゆっくり死んでいくのを眺めるのはァ?

無力ですねェ♪目を背けたいですよねェ♪でも、だァめ。最期まで見届けなくちゃア。大切な家族なんですから♪ギャハハハハ!!

っ!!

アンタ、だから無理するなって言ってんでしょーが!って、瘴気だらけじゃない!

ちょっと、ダグラス!アンタ、なに考えてんの!?

大丈夫さ、今のオレは調子がいいもんでね。なあ、ダニエル!

<ダグラスの左目に――突如、ぎらりと苛烈な光がまたたいた!

瘴気が一気に吸われる――ダグラスの髪が一瞬、虹色に輝く!

誇りある獅子の猛り立つように――ぞわりと震え、燃え上がる!>

ま、これくらい余裕で<できちまう>からな!

おかしいですねェ。アナタは確かに無意識の牢獄に捕らえたはずですが?

助けてって言われたら、助けに来るしかないだろ?なあ、ルエル。

破壊樹のネットワークを通してまさか敵に助けを乞うなんてゴミはゴミらしく、さっさと捨てるべきでしたね。

ですが、アナタ、知ってますよ♪もう限界なんですよねェ?

<破壊樹から大量の瘴気が放出される。>

ほら、このままだとお仲間が瘴気で死んでしまいますよォ?ギャハハハハハ。

これ以上はアンタがもたないわ!

それを誰が決めたっ!?

!!

限界だとか余命だとか!だからなんだって話だ!結局、そんなもんは自分で超えてくしかねえのさ!

なあ、ルエル!おまえだって、まだ戦えるはずだ!そのバカに負けてんじゃねぇぇぇぇ!

ぐっ!まだ足掻く……のか?心を……折った……はず……

うおおおおおおおおおおおおお!!!

調子に……乗るなあああっ!破壊樹!!

もういい!まとめて心を壊せ!ここにいる奴、全部だっ!!

なにこれ!?

また精神攻撃か?そんなもん、もう効かないぜ?

舐めるな、劣化品!今度はワタシが手ずから壊してあげますよ!

ギャハハハハハハハ!!


またここか……直接叩くしかねぇみたいだな。そうだろ?ルエル。

余裕面をしていられるのは今だけですよ。ダグラス・ウィンゲート。

ワタシは破壊樹を統制するために造られたんです。この世界ではワタシが絶対的な支配権を有しています。あがくだけ無駄です。

要はおまえを倒せば、みんな目を覚ますってことだな。

いい加減、決着つけようぜ!ルエル!!

やれるもんならやってみろおお!




BOSS

>おまえとの因縁も、ここで終わりにしようぜ!

>終わりなのはオマエだァァァ!!


>なかなかやりますねェ……

でも、ここからです。

>ほんと嫌なやつだよ、おまえ……

>ギャハハハハ!


>アナタの心が手に取るようにわかります。

つらいですねェ。いたいですねェ。

もう休んでもいいんですよ?

>自分の終わりくらい自分で決めるさ。

ここらで決着としようぜ!


>これでトドメだぁぁっ!

>ギャハハハ……

どうせ、アナタモ……

>ああ、しばらくしたら後を追うさ。

あばよ、ルエル……


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story24


「ダグラス……いや、違うな……ダニエル……か?」

「そろそろ破壊樹の自我が崩壊する。キミも自力で起きられるはずだ。」

「そうか……」

「キミは強いね。自分の心を押し殺してでもキミは強いね。自分の心を押し殺してでも命の限り戦い続ける。」

「それでも取りこぼすものはある。お前もそのなかの一つだ。」

「なんでも救えると思うのは傲慢じゃないかな?それができたら人じゃなくなる。」

「……俺のやってきたことは正しかったのか?」

「そんなことボクにはわからないよ。でも、そうだな、キミの戦う姿をダグラスは一番近くから見てたよ。」

「…………」

「正しさなんてものは自分で決めればいい。その判断を他人に任せたら正しさの奴隷だ。」

「……わかってる。通り過ぎてきた悩みを思い出しただけだ。」


 ***


「あああああああっ!」

「グレイヴ、落ち着きなよ。」

「ダグラス?」

「ボクはダニエル。まあ、ダグラスの別側面だと思ってくれていいよ。」

「俺は……いったいなんなんだ?」

「キミはボクたちと似ているね。運命を他人に弄ばれた。

でもさ、その創造神面した奴に、ボクらは殴り返してやったんだ。お前の望みどおりになんかならねーぞって。

どっかのバカに負けるなよ、グレイヴ。不幸なんて笑い飛ばせ!運命なんて殴り飛ばせ!キミならできるさ。」


「!」


「お前が決めた運命をなぞらないっ!!」

「俺は道化師じゃないっ!!!」


 はあ、はあ、はあ……助かったよ、ダグ……ダニエル。


 ***


「やあ、レイチェル。はじめまして、ボクはダニエル。

どうしたんだい?」

「私は死んでた。友達と一緒に木に変えられてた……

なら、この私はなに?」

「それは本人に直接聞きなよ。ねえ、ルエル・ウォーロック。」

「ルエル……ちゃん……

教えて、私は何者なの?私はあの破壊樹なの?私がみんなをおかしくしてたの?」

「違う。あれはレイチェルじゃない。

アレは私。」

「!」



「嫌だ、嫌だ、嫌だぁぁぁぁっ!」

「!」

<今までルエルだったものが姿を変え、大きな木になっていた。>

「こういうのが見たかったわけではないんですけどねェ……」

「ルエル……ちゃん?」

「あら、アナタ、壊れかけてますかァ?求めてたのは逆だったんですが、まあ、いいでしょう。

みんな死にましたよ。アナタの友達は、アナタを守るためにこうして木になりました。」

「……私のせい?私の……?」

「そうですよォ♪アナタのせいです。」

「ごめん……なさい……」

「この試作品の記憶をリセットなさい。兵士として心が弱すぎます。もっと残酷で冷徹になるよう調整してください。」

「はっ。」



「私を助けるために……ルエルちゃんが……ごめんなさい。私のせいで……」

「私はあんたの友達を木に変えた。あんたから奪った私に謝る必要なんてない。

あんたはあんたよ。昔から誰にでも優しくて誰かのために一生懸命になって……

それを知ってたけど、怖くて言えなかった。私はあんたみたいに綺麗じゃないって思われるんじゃないかって……

私はずっとあんたに謝りたかった。なのに謝るのはあんたばかりで……

だから、最後に伝えるわ。

ごめんね、レイチェル……」

「ルエルちゃん!待って、ルエルちゃん!!」




はああっ!

ダグ……ラスゥゥゥゥ!!

やったか?

いや、逃げただけだね。破壊樹との接続を切って、ルエル・ウォーロックの体に引っ込んだ。

しぶとい奴だな、あいかわらず。

他のみんなは起こしてきた。あとは任せたよ。

ああ、任せとけ。ありがとうな、ダニエル。



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story25



戻ったか……

私は私と戦う夢を見ていたのだが…・

勝てたのか?

当然だ。犬と老人なら犬が勝つのが道理だろう。

……すごいな、コテツは。

もっと褒めるがよい。

おまえの負けだ、ルエル。

そうですねェ……もう、限界です……最期に……一つだけ……いいことを教えましょう。

この体は破壊樹の分け株です。ルエル・ウォーロックが……生み出した……想いの……具現。

破壊樹を殺せば……彼女も死にますねェ……

ルエルちゃん!

レイチェル……助けて……死にたく……ない。

なァんちゃって……ギャハハハハハハ!

<破壊樹から大量の瘴気が溢れ出す。>

この量の瘴気……まずいわよ、このまま放置したら島が飲まれる。

破壊する。

ダメ……そんなの、絶対にダメです!

<レイチェルは破壊樹を背にしてダグラスたちの前に立った。>

どけ。

うちのガキに……手を出すなら俺も相手になる……

破壊樹を放置すれば、みんな死ぬぞ。

私が瘴気を吸い続ければいいだけです!

それはお前の体がもたん。お前とて永遠に瘴気を置換し続けられるわけではないのだ。

でも、この木はルエルちゃんなんです!私を助けてくれた私の友達なんです!

ごめんなさい……でも、私、ルエルちゃんに助けられてばかりだから。今度は私がルエルちゃんを……ごめんなさい!

おまえは謝ってばかりだな、レイチェル……

助ける方法あるかもしれないのにシケたツラして考えることを放棄したら、そこで終わりだぜ。

なにか策があるのか?

確信はねえけど、この木はヒストリアの時のルエルみたいなもんだろ?

なら、今度こそあいつを救えるんじゃないのか?

そうか!俺が<分ければ>いいのか!

あの時のルエルは、もうぶっ壊れてて闇と分離したら死んじまった。けど、このルエルは壊れちゃいない。

なあ、レイチェル、試してみないか?

本当にルエルちゃんを助けてくれるんですか?

ああ、任せろ。


最後のあがきか……

量が多すぎます……!私だけじゃあ、瘴気を……!

おまえだけならな!

瘴気の吸収なら任せろ!

でも、ダグラスさんは体が!

止めるなよ。これがオレの覚悟と選択。それとケジメってやつだ。

ごめん……なさい……

そんな顔で謝るな。おまえにオレの選択は背負えないし、背負えると思ってんなら傲慢だぜ。

ごめんなさい……

だから、こういう時は、ニコっと笑ってありがとうございます!で、いいんだよ!!

あ、ありがとうございます!

おう、気にするな!いくぞ、おらああああっ!

<周囲の瘴気がダグラスとレイチェルの二人に集まっていく。>

行けぇぇぇっ!グレぇぇぇぇイヴ!!

うおおおおおおおっ!!

<グレイヴが瘴気を振りまく破壊樹へと疾駆した。

グレイヴの手が光り輝き、破壊樹の幹を貫く。

ノイズのような音を聞いた瞬間、意識が飛ばされた。グレイヴの心に怒りが満ちてくる。>

怒り(それ)は超えたぁぁぁぁっ!!

ダグラスは負けなかった!自分の運命を乗り越え!今も戦ってる!!

そんな仲間がいるのに!ここで俺が負けてたまるかぁぁっ!

<分 か れ>ろぉぉおお!!!

<手を突き入れた幹が水面のように渦を巻く。

脳が焼け、ような音に意識が一瞬、断線する。だが、たしかになにかの手をつかんだ。>

ぐうっ!まだ……俺はぁ!!

手伝う。

<フゥが幹から伸びた腕をつかむ。>

うぉおおおおおおあああああ!!!

<フゥがルエルを抱きとめるように引き上げた。>


成功……だ……

グレイヴ!



まずいぞ。まだ木は死んでない!

やれるか、レイチェル。

あの木を倒すには瘴気が……ギリギリ……足りないかも……しれません。

だったらオレのなかにある瘴気を使え。

ダグラス!

やらせてくれよ、カティア。

…………

レイチェル、やりなさい!アンタとこのバカで、この呪われた計画を終わりにするの!

はい!ダグラスさん、力を借ります!

ああ、全部、持ってけ!レイチェル!!


ぐぅぅああああああっ!全部回せぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!


<レイチェルから放たれた超高温の熱波は空間ごと破壊樹を飲み込む。

空気を焼く灼熱のあとにはなにも残っていなかった。>


終わったの?

……ああ、ルエルは消えたよ。結局、あいつとはわかりあえなかったな……

それは、まだわからないわよ。

ルエルちゃん!

レイチェル……

<レイチェルがルエルを抱きしめた。>

ごめんなさい!私、ルエルちゃんに助けられてたのに信じきれなかった!

当然でしょ、そんなの……あんたの友達を木に変えたのは当然でしょ、そんなの……あんたの友達を木に変えたのは私なんだから……

あんたの隣にいる資格、ないのよ。

……世界中の人がルエルちゃんを悪いって言っても、私はそう思わない。

だって、ルエルちゃんは私を助けてくれた!

ありがとう、ルエルちゃん!私を助けてくれて!

…………


あの夢のなかで言われた……

どこかのバカに運命を弄ばれたからといって、腐ったらバカに負けたことになる。

罪も苦しみも消えはしない。それでも、もし、いつか自分を許せる日が来たら、俺は笑いたいと思う。

笑えたら、きっとバカに勝ったってことだと思うから。

……そういうこと、目を見て言いなさいよ。

……すまない、人見知りだ。

でも、あんたに助けられたのよね…・一応、礼だけは言うわ。

ありがと……

助けてくれてありがとうございますグレイヴさん!

……ああ、気にするな。

成長したな、グレイヴ。


あいつらなら、わかりあえるかもしれないわ。

そうだな。そうなると……いいな……本当に……

ダグラス?

おい、しっかりしろ!ダグラス!ダグラスっ!!!



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最終話



こうして、ルエル・サクラリッジが残した負の遺産。樹冠兵団計画と破壊樹計画の全てを破棄することができた。

フソーの実は破壊樹が消えたことで、その効果を失ったようだ。島民たちが狂うことは二度とない。

破壊樹の影響によって起きた殺人事件の真相を知り、島民たちは嘆き、苦しんだ。だが、その感情を処理することは彼らにしかできない。

少なくとも孤児院の者たちが犯人扱いされることはなくなるだろう。

グレイヴの話によると、ルエル・ウォーロックを救い出した際、ルエル・サクラリッジの人格とも分離させたらしい。

彼女は正真正銘ただ魔術が得意なだけの少女となった。とはいえ、経過観察が必要ということもあり、グレイヴが彼女を担当するエージェントとなった。

ルエル・サクラリッジの遺産は多くの悲しみと傷を生み出した。それは我々<レディ・キラー>も例外ではない。我々もまた――

――ダグラスを失った。



…………

……


「こらー!グリーンピース残しちゃダメでしょ!」

「まずいからやー!」

「やー!」

「食べないと大きくなれないんだよ!」

「やー!」

「フゥも、なにか言ってやってよ!」

「食えるものを食えないなら死ぬ確率があがるだけだ。ここにいる開は守るが、外に出たあとは知らんぞ。

長生きしたければ、食えるものはなんでも食え、ガキども。」

「「はい。」」

「やっぱり先生が言うと一発ですね。」

「…………」


「せんせー!なんか暗い奴と犬が来たー!」

「こらっ!尻尾を引っ張るな!グレイヴ、助けろ!」

「スッ――」

「子供相手にまで人見知りを発揮するな。」

「子供は残酷だから……」

「今の私を無視するお前も充分残酷だ!」


「ダメだよ、ワンちゃん、いじめたら……」

「それで、なんの用?」

「仕事の依頼だ。ダグラスの抜けた穴を埋められるのはお前たちしかいない。

……手伝ってくれると助かる。」

「あんた、人の目を見て喋りなさいよ。」

「……すまない、慣れるまでもう少し待ってくれ。」

「それで請け負ってくれるか?」

「私はかまわないけど、レイチェルは?」

「ルエルちゃんが行くなら私も行くよ。」

「……足、引っ張るんじゃないわよ。」

「うん!それじゃあ、先生、いってきますね。」

「好きにしろ。」


 ***


「きちんと暮らせているか?」

「ええ、問題なくやれてるわ。」

「そうか……また顔を出す。」



 ***



「さみしくなっちゃったわね、ダグラス。」

<クロエはベッドで眠るダグラスの頭を撫でた。>

「姉……ちゃんか?」

「起こしちゃってごめんなさい。今、バイパーが来てたの。」

「なんだ……声かけてくれよ。」

「気持ちよさそうに眠ってたから。」

「……結局、あいつとしっかり飲めてないな。」

「無理しちゃダメよ。」

「なあ、姉ちゃん……」

「なに?」

「ありがとな。いろいろしてくれてさ……」

「これくらいなんてことないわ。」

「なんか、ごめん、また眠くなっちまったな…・少し、寝るよ……」

「おやすみなさい、ダグラス。」




Brave The Lion 4 -END-




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