【白猫】Brave The Lion 4 Story4
Brave The Lion 4 Story4
Brave The Lion 4 Story5
story23
<破壊樹から生じる瘴気が室内庭園に満ちていた。>
無力ですねェ♪目を背けたいですよねェ♪でも、だァめ。最期まで見届けなくちゃア。大切な家族なんですから♪ギャハハハハ!!
っ!!
ちょっと、ダグラス!アンタ、なに考えてんの!?
<ダグラスの左目に――突如、ぎらりと苛烈な光がまたたいた!
瘴気が一気に吸われる――ダグラスの髪が一瞬、虹色に輝く!
誇りある獅子の猛り立つように――ぞわりと震え、燃え上がる!>
ですが、アナタ、知ってますよ♪もう限界なんですよねェ?
<破壊樹から大量の瘴気が放出される。>
なあ、ルエル!おまえだって、まだ戦えるはずだ!そのバカに負けてんじゃねぇぇぇぇ!
もういい!まとめて心を壊せ!ここにいる奴、全部だっ!!
ギャハハハハハハハ!!
ワタシは破壊樹を統制するために造られたんです。この世界ではワタシが絶対的な支配権を有しています。あがくだけ無駄です。
いい加減、決着つけようぜ!ルエル!!
>おまえとの因縁も、ここで終わりにしようぜ!
>終わりなのはオマエだァァァ!!
>なかなかやりますねェ……
でも、ここからです。
>ほんと嫌なやつだよ、おまえ……
>ギャハハハハ!
>アナタの心が手に取るようにわかります。
つらいですねェ。いたいですねェ。
もう休んでもいいんですよ?
>自分の終わりくらい自分で決めるさ。
ここらで決着としようぜ!
>これでトドメだぁぁっ!
>ギャハハハ……
どうせ、アナタモ……
>ああ、しばらくしたら後を追うさ。
あばよ、ルエル……
story24
「ダグラス……いや、違うな……ダニエル……か?」
「そろそろ破壊樹の自我が崩壊する。キミも自力で起きられるはずだ。」
「そうか……」
「キミは強いね。自分の心を押し殺してでもキミは強いね。自分の心を押し殺してでも命の限り戦い続ける。」
「それでも取りこぼすものはある。お前もそのなかの一つだ。」
「なんでも救えると思うのは傲慢じゃないかな?それができたら人じゃなくなる。」
「……俺のやってきたことは正しかったのか?」
「そんなことボクにはわからないよ。でも、そうだな、キミの戦う姿をダグラスは一番近くから見てたよ。」
「…………」
「正しさなんてものは自分で決めればいい。その判断を他人に任せたら正しさの奴隷だ。」
「……わかってる。通り過ぎてきた悩みを思い出しただけだ。」
***
「あああああああっ!」
「グレイヴ、落ち着きなよ。」
「ダグラス?」
「ボクはダニエル。まあ、ダグラスの別側面だと思ってくれていいよ。」
「俺は……いったいなんなんだ?」
「キミはボクたちと似ているね。運命を他人に弄ばれた。
でもさ、その創造神面した奴に、ボクらは殴り返してやったんだ。お前の望みどおりになんかならねーぞって。
どっかのバカに負けるなよ、グレイヴ。不幸なんて笑い飛ばせ!運命なんて殴り飛ばせ!キミならできるさ。」
「!」
「お前が決めた運命をなぞらないっ!!」
「俺は道化師じゃないっ!!!」
はあ、はあ、はあ……助かったよ、ダグ……ダニエル。
***
「やあ、レイチェル。はじめまして、ボクはダニエル。
どうしたんだい?」
「私は死んでた。友達と一緒に木に変えられてた……
なら、この私はなに?」
「それは本人に直接聞きなよ。ねえ、ルエル・ウォーロック。」
「ルエル……ちゃん……
教えて、私は何者なの?私はあの破壊樹なの?私がみんなをおかしくしてたの?」
「違う。あれはレイチェルじゃない。
アレは私。」
「!」
「嫌だ、嫌だ、嫌だぁぁぁぁっ!」
「!」
<今までルエルだったものが姿を変え、大きな木になっていた。>
「こういうのが見たかったわけではないんですけどねェ……」
「ルエル……ちゃん?」
「あら、アナタ、壊れかけてますかァ?求めてたのは逆だったんですが、まあ、いいでしょう。
みんな死にましたよ。アナタの友達は、アナタを守るためにこうして木になりました。」
「……私のせい?私の……?」
「そうですよォ♪アナタのせいです。」
「ごめん……なさい……」
「この試作品の記憶をリセットなさい。兵士として心が弱すぎます。もっと残酷で冷徹になるよう調整してください。」
「はっ。」
「私を助けるために……ルエルちゃんが……ごめんなさい。私のせいで……」
「私はあんたの友達を木に変えた。あんたから奪った私に謝る必要なんてない。
あんたはあんたよ。昔から誰にでも優しくて誰かのために一生懸命になって……
それを知ってたけど、怖くて言えなかった。私はあんたみたいに綺麗じゃないって思われるんじゃないかって……
私はずっとあんたに謝りたかった。なのに謝るのはあんたばかりで……
だから、最後に伝えるわ。
ごめんね、レイチェル……」
「ルエルちゃん!待って、ルエルちゃん!!」
story25
この体は破壊樹の分け株です。ルエル・ウォーロックが……生み出した……想いの……具現。
破壊樹を殺せば……彼女も死にますねェ……
<破壊樹から大量の瘴気が溢れ出す。>
<レイチェルは破壊樹を背にしてダグラスたちの前に立った。>
ごめんなさい……でも、私、ルエルちゃんに助けられてばかりだから。今度は私がルエルちゃんを……ごめんなさい!
助ける方法あるかもしれないのにシケたツラして考えることを放棄したら、そこで終わりだぜ。
なら、今度こそあいつを救えるんじゃないのか?
なあ、レイチェル、試してみないか?
瘴気の吸収なら任せろ!
<周囲の瘴気がダグラスとレイチェルの二人に集まっていく。>
<グレイヴが瘴気を振りまく破壊樹へと疾駆した。
グレイヴの手が光り輝き、破壊樹の幹を貫く。
ノイズのような音を聞いた瞬間、意識が飛ばされた。グレイヴの心に怒りが満ちてくる。>
ダグラスは負けなかった!自分の運命を乗り越え!今も戦ってる!!
そんな仲間がいるのに!ここで俺が負けてたまるかぁぁっ!
<分 か れ>ろぉぉおお!!!
<手を突き入れた幹が水面のように渦を巻く。
脳が焼け、ような音に意識が一瞬、断線する。だが、たしかになにかの手をつかんだ。>
<フゥが幹から伸びた腕をつかむ。>
<フゥがルエルを抱きとめるように引き上げた。>
レイチェル、やりなさい!アンタとこのバカで、この呪われた計画を終わりにするの!
<レイチェルから放たれた超高温の熱波は空間ごと破壊樹を飲み込む。
空気を焼く灼熱のあとにはなにも残っていなかった。>
<レイチェルがルエルを抱きしめた。>
あんたの隣にいる資格、ないのよ。
だって、ルエルちゃんは私を助けてくれた!
ありがとう、ルエルちゃん!私を助けてくれて!
どこかのバカに運命を弄ばれたからといって、腐ったらバカに負けたことになる。
罪も苦しみも消えはしない。それでも、もし、いつか自分を許せる日が来たら、俺は笑いたいと思う。
笑えたら、きっとバカに勝ったってことだと思うから。
ありがと……
最終話
こうして、ルエル・サクラリッジが残した負の遺産。樹冠兵団計画と破壊樹計画の全てを破棄することができた。
フソーの実は破壊樹が消えたことで、その効果を失ったようだ。島民たちが狂うことは二度とない。
破壊樹の影響によって起きた殺人事件の真相を知り、島民たちは嘆き、苦しんだ。だが、その感情を処理することは彼らにしかできない。
少なくとも孤児院の者たちが犯人扱いされることはなくなるだろう。
グレイヴの話によると、ルエル・ウォーロックを救い出した際、ルエル・サクラリッジの人格とも分離させたらしい。
彼女は正真正銘ただ魔術が得意なだけの少女となった。とはいえ、経過観察が必要ということもあり、グレイヴが彼女を担当するエージェントとなった。
ルエル・サクラリッジの遺産は多くの悲しみと傷を生み出した。それは我々<レディ・キラー>も例外ではない。我々もまた――
――ダグラスを失った。
…………
……
「こらー!グリーンピース残しちゃダメでしょ!」
「まずいからやー!」
「やー!」
「食べないと大きくなれないんだよ!」
「やー!」
「フゥも、なにか言ってやってよ!」
「食えるものを食えないなら死ぬ確率があがるだけだ。ここにいる開は守るが、外に出たあとは知らんぞ。
長生きしたければ、食えるものはなんでも食え、ガキども。」
「「はい。」」
「やっぱり先生が言うと一発ですね。」
「…………」
「せんせー!なんか暗い奴と犬が来たー!」
「こらっ!尻尾を引っ張るな!グレイヴ、助けろ!」
「スッ――」
「子供相手にまで人見知りを発揮するな。」
「子供は残酷だから……」
「今の私を無視するお前も充分残酷だ!」
「ダメだよ、ワンちゃん、いじめたら……」
「それで、なんの用?」
「仕事の依頼だ。ダグラスの抜けた穴を埋められるのはお前たちしかいない。
……手伝ってくれると助かる。」
「あんた、人の目を見て喋りなさいよ。」
「……すまない、慣れるまでもう少し待ってくれ。」
「それで請け負ってくれるか?」
「私はかまわないけど、レイチェルは?」
「ルエルちゃんが行くなら私も行くよ。」
「……足、引っ張るんじゃないわよ。」
「うん!それじゃあ、先生、いってきますね。」
「好きにしろ。」
***
「きちんと暮らせているか?」
「ええ、問題なくやれてるわ。」
「そうか……また顔を出す。」
***
「さみしくなっちゃったわね、ダグラス。」
<クロエはベッドで眠るダグラスの頭を撫でた。>
「姉……ちゃんか?」
「起こしちゃってごめんなさい。今、バイパーが来てたの。」
「なんだ……声かけてくれよ。」
「気持ちよさそうに眠ってたから。」
「……結局、あいつとしっかり飲めてないな。」
「無理しちゃダメよ。」
「なあ、姉ちゃん……」
「なに?」
「ありがとな。いろいろしてくれてさ……」
「これくらいなんてことないわ。」
「なんか、ごめん、また眠くなっちまったな…・少し、寝るよ……」
「おやすみなさい、ダグラス。」
Brave The Lion 4 -END-
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