卜ルリッカ Story2
story4 魔植物を統べる者
トルリッカヘと戻った君は、魔道士ギルドでバロンと見知らぬ魔法使いの姿を見つける。
「そうですか……聖賢はまだ……。」
「足取り一つわかっていなくてな。力になれず済まないが……。」
バロンが君の姿に気づく。
何かあったのか、と君は問う。
「中央本部からの指令があってな。ウィズの行方を知りたいそうだが……。」
バロンは力なく首を振る。
「ウィズ殿は、魔道士ギルドの最高意志決定機関――四聖賢のお一人です。いつまでも、聖賢の椅子を空席にしておくわけにはいきませんからね。」
?
魔道士ギルドの最高意志決定機関!?
「…………。」
「……おや? その猫は……。」
君はウィズから凄まじいプレッシャーを感じる。ウィズのことは秘密にしておく方がよさそうだ。
捨て猫を拾った、と君は言う。
「……ふむ。」
「バロン殿、こちらは?」
「ああ、紹介が遅れたな。」
バロンは君を簡単に紹介する。
「なるほど、あの零世界事件に巻き込まれた方でしたか。
……バロン殿。私としても、このまま何の収穫もなく戻るわけには参りません。こちらの魔法使い殿と、今一度古代図書館の調査を行いたいのですがいかがでしょう?」
「今さら何かが出てくるとは思えんが……。どうだ? お前は。」
構わない、と君は答える。
「魔道士ギルドヘは依頼を出しておきますので、よろしくお願いします。」
story5 失われた真実
古代図書館の再調査を終えた君は、中央本部の魔法使いとギルドヘ戻る。
「助かりましたよ、バロン殿。悪くないデータが取れました。」
「ほう? 我々も入念に調べたつもりだったが、何か残されておりましたかな?」
「あの場所には、特に何も。ただ――」
魔法使いがちらりと君を見やる。
「……ただ、何か?」
「いいえ、詳しくはやめておきましょう。ともあれ依頼はいったん完了です。調査自体は今後も続けるつもりです。気が向いたらお付き合いください。」
魔法使いは街へと去って行く。
「……やれやれ。中央本部の魔法使いは何を考えているのかさっぱりわからんな。お前たちも、ご苦労だったな。」
story6 水源を脅かすもの
君は夕暮れの街並みを、ウィズと並んで歩いている。
「最近この姿になってから、段々食の好みが変わってきてるにゃよ。
ネコがどうしてあんなに魚が好きなのか、今ならすごく良くわかるにゃ。何事も経験してみるものにゃね。」
だからといって猫になるというのも……。
「にゃははは。キミも一度なってみるといいにゃ。
ということで、今夜も焼き魚にするにゃ!」
と、向こうからバロンが歩いてくる。
バロンは君の姿を見つけると、まっすぐこちらへ向かってくる。
「探したぞ。……ほう、猫も一緒か。」
「…………にゃー。」
「ここまで人に懐く猫は初めて見たぞ。どうだ? 曲芸でも仕込んでみては。」
「…………にゃー?」
「ふっ、まんざらでもないようだ。」
それはないな、と君は密かに心で笑う。
「それはさておき、お前に仕事の依頼だ。
例の中央本部の魔法使いから、調査レポートを王都へ届けて欲しいと言われている。
例の調査協力の一件で、お前のことが気に入ったらしくてな。直接の指名だ。
どうだ、受けてもらえるか?」
もちろん、と君は言う。
「そう言ってくれると思ったぞ。
王都までの道のりは長い。心配なら猫を預かってやってもいいが……。」
「…………。」
何も言わず、ウィズは街角へ消えて行く。
「……やれやれ、嫌われたかな。まぁいい。では、頼んだぞ。」
最終話 忍び寄る影
無事王都へ調査結果を届けた君は、トルリッカのギルドヘと戻る。
「やあ、おかえりなさい。モノは無事に届けてもらえたようですね。」
「……どうした? 何か気がかりなことでもあるような顔だが。」
君は王都へ向かう途中、謎のドラゴンに襲撃されたことを話す。
「……やはり、ですか。」
やはり?
「このところ、魔道士ギルドの要人たちを嗅ぎ回る輩かおりましてね。思うところがあり、今回の件はあなたへ依頼したのですよ。」
「それは我々の大事な魔法使いをかませ犬にしたということですかな?」
「正確には、試した、といったところです。
実のところ、王都へ届けていただいた文書には何の価値もありません。私一人が調査を行ったところで、たかが知れていますからね。
にも関わらず、あなたは襲撃されたという。何故でしょうか?」
君は黙って耳を傾けている。
「聞けば、聖賢ウィズ殿はあなたの腕前を高く評価していたとか。
これがどれだけ意外なことか――バロン殿にもわかるでしょう?」
「うむ……。」
「…………。」
「果たしてそれが何を意味するのか。零世界の事件と関係があるのか……それは不明です。
ただ、あなたには何か重大な秘密が隠されているようです。それもおそらく、零世界に関わる何かが。」
「……どうやら、トルリッカから巣立つべき時がきたようだな。今のお前ならば、どのギルドの依頼であっても乗り越えることができるだろう。腕を磨き、世界を見てくるがいい。」
「まずは王都のギルドヘ行ってみることをおすすめしますよ。向こうへは私から連絡しておきましょう。
私たちとしても、四聖賢の一角を失ったのは痛手なのでね。あなたが成長したその先に、ウィズ殿が待っていることを望んでいますよ。」
実は目の前にいるのだけれど、と君は思うがもちろん口にはしない。
「決まりだな。お前の今後の活躍に期待しているぞ。」