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【黒ウィズ】メインストーリー 第10章 Story2

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん


始まりの場所

(ウィズ……。今頃どこで何をしているのか。)


story 古代図書館にて



――とある日のトルリッカの午後……。

「ふむ……。」

その日、バロンは何かに導かれるようにふらりと古代図書館に足を運んだ。

内部はまだ多くの魔道士たちが調査中である。みんな、依頼としてここにやってきている。

何の理由もなく気ままな衝動に駆られて、わざわざこんな危険な場所にやってくるものもいない。

その日のバロンを除いては……。


「あいつがいなくなってもう長くなるな……。最後はここの調査依頼か……。

やはり……死んでしまったのか?」

「あのー? バロンさん……。もうそろそろいいですか?」

バロンが視察をする間、調査の手を止めていた魔道士が遠くから呼びかけた。

「ああ、すまなかった。すぐ退くよ。」

バロンはすまなそうに応えると、その場から立ち去りかかる。

突然、古代図書館の奥から魔法同士の激しい衝突音が鳴り響いてくる。

「なんだ? おい! 何があった!?」

「わ、わかりません……。奥の方で……。あそこにはまだ調査中の魔道士たちが……。」

バロンは音がした闇を睨んだ。ちらちらと衝突の気配と共に火花が散っている。

一瞬の煌きの中に、飛び交ういくつかの影が見える。

「精霊が……暴走している。いかん! 君はすぐに応援を呼んでくるんだ。」



<懐かしいにゃ。
キミと私の冒険の始まりの地にゃ。



暴走する精霊を鎮めながら、バロンは古代図書館の奥へと進んでいった。

ふと通路の片隅に、わが身を抱えて震えている魔道士を見つけた。


「おい。どうしたというんだ! 何があった?」

「……お、俺はただ……いつも通り魔法を……使おうとしたんだ。そしたら……。」

「そしたら?」

「呼んでもいない精霊まで飛び出してきて……。」

「馬鹿な。……ん?」

気配がした。バロンがすぐにそちらを見返すと、


「ウィズ! お前……こんなところで何をしている?」

その質問には答えず、彼女はさらに奥へと消えていった。

「待て! みんな、お前を探しているのだぞ!」

とバロンは慌てて追いかけたが……。


「いない……。私は幻を見たのか……? おや? これは……。」

バロンは、床に何かが落ちているのに気づき、それを拾い上げる。

「種? 植物の種か……。」


 ***


翌日。バロンはトルリッカのギルドに休暇届を出す。

彼は、旅に出ることにした。


「では、少しの間、留守にする。」

「はあ……。ギルドの方は我々でなんとかしておきます。

……ですが、一体どこへ行くんですか?」

「さあな。友のいる、どこかだ。」



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story 夜空の異変



ウィリトナの夜。

砂漠の砂は、ため込んでいたはずの昼間の熱気を失って、冷たさが支配を強めつつあった。


「へえ。これは珍しい……。」

天文鏡から目を雌して、今度は肉眼でその夜空を見上げた。


「〈混沌の夜〉でもないのに叡智の扉が開いている……。それもひとつじゃない。結構な数だ……。

何よりも良くないことは、扉から魔物たちが次々とこぼれ落ちて、地上に降りてきていることだ。」

と、ひとつずつ今起こっていることの状況を整理しているのは、何か分析的な意味があるわけではない。

自分に対する時間稼ぎをしているだけだった。

やらなければいけないことを先延ばしにするための、時間稼ぎ。

「いまからギルドに戻って人を呼んできても間に合わないかもしれない……。」

少しだけ決断に近づいた。

「でも、ここにいるのは僕ひとりだしなあ。」

でもまた決断に退のく。

「とはいえ……。」

ドサリッ! と逡巡するアレクの背後で重たい着地音がする。

そして見なくてもわかるほどの殺気が砂漠の夜気と共に伝わってくる。

「やれやれ……。」

そろそろ決断の時。

「こういうのは引退したつもりだったんだけど、仕方ないね。」

アレクは、くるりと後ろに振り向いて、招かれざる客に涼しい顔で言い放つ。

「やあ。……僕が相手になるよ。」



<空に異変が起こってるにゃ。
 何が起こってるにゃ。



「ふう。こういうのは僕の役目じゃないんだけどな。

砂の漠とした広がりの中に、点々と“客”たちが眠っている。

「少し頑張りすぎたね。」

アレクは天文鏡のそばまで歩いていくと、再びレンズを空へと向けた。

相変わらず叡智の扉は、その数を増やしたり減らしたりを繰り返していた。

「まるで安定していない。これに似た現象は……?」

頭をかきながらアレクはここ最近の観測記録を思い出そうとする。

すぐにひとつだけ思い浮かんだ。

「あの時のサイオーンか……。んー……。行ってみるか。やっぱり原因は気になるし。

平和に過ごせる静かな夜も大切だからね。」

今度の決断は、彼にしてはすんなりと下せた。


天文鏡を抱えた彼は、とりわけ急いだ様子も見せず、ウィリトナの街へ帰っていった。



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story 嘆きの森



――ラリドンの朝。いつもは静かなそのひと時はその日だけ、住民全ての胸を騒がせる朝だった。

ロレッタの住まいに、この日何度目かのドアを開け放つ音が鳴り響いた。

「ロレッタ様。やっぱり森に淀みが溢れてます。こんなこと……私が生きてる間で初めてですよ。」

ロレッタは窓の前に立つと、森の大樹を見つめた。

「森が……泣いている。……行かなきゃ。私が……。」

「冗談は止してください。ロレッタ様に何かあったらどうするんですか?」

「私のことは……大丈夫。」


元々のラリドンは淀みが薄いせいで、魔法が使いづらく、魔道士たちが敬遠する地であった。

それゆえ、いざという時に仕事を依頼する魔道士も、ギルドにいないことが多い。

ところが今日は……。


また何度目かの、ドアが開け放たれる音がする。

「失礼する。私はトルリッカのギルドマスターのバロンだ。ロレッタはいるか?」

バロンはなぜかやたら期待のこもったふたりの視線を受けてしまう。

「……な、なにか?」

「……よかった。」



<ラリドンの森まで……。



「まったく……。これは巡り合わせの悪い時に来てしまった。」

バロンがそう言うのも無理はなかった。

ウィズの足跡を追って、偶然ラリドンに立ち寄っただけなのだ。

「……もうすぐ………聖域。」

「うむ。ラリドンの森が淀みに包まれるなどということは非常事態だからな。もちろん協力は惜しまんよ。」

「ありがとう……。」


しばらく進むと、聖域に到着した。

到着するなり、ロレッタは胸の前で手を組み合わせる。


「調べたい……バロン……お願い。」

そう言って、ロレッタは瞼を閉じて、専心し始める。

「任せろ。一匹たりとも魔物を近づかせはせんよ。」



<間違いなく、世界中で異常なことが起こっているにゃ。





再びロレッタの瞳が開かれた。

「これは……森のせいじゃない。もっと……別の何か……。……森だけじゃない……。」

ロレッタの言葉に、バロンの耳がピクリと反応した。

「それは例えば、トルリッカでも何か異変が起きているということか?」

「……うん……。世界中……かも……。」

「なるほど………。これはむしろ巡り合わせが良かったのかもしれんな。

いや実はな……トルリッカでも奇妙なことが起こった。精霊が暴走したのだ。それに……。そこにウィズがいた……。そしてこの種を落としていった。見覚えはあるか?」

「……これは……。ここにしかない……植物の種……。」

「ではウィズはここに来たということか?」

「……わからない……。でも……誰か来た……。気配が……する。」

「こんなところに入れるのは、普通の魔法使いでは無理だ。」

ロレッタ、ウィズの行き先を知っているか?」

「……アイヴィアス。」


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story 中央の噂



バロンとロレッタはウィズの行方を追って、アイヴィアスヘとやって来ていた。

「そういえば以前バカンスに来た時は大変な目にあったな……。」

「……どうしたの……?」

「いや、言いたくない。」

と、突然アイヴィアスの警備兵にバロンたちは取り囲まれる。

「…………。」

「な、なんだ……。ええい、なんだ貴様ら! 私が何をしたというのだ!?」

「大人しくしておく方が身のためです。さもないと……。」

「ロ、ロレッタ、お前からも説明してやってくれ!」

「正直に言ってくださいね。あなたはこの人と知り合いですか?」

ロレッタは初めて見るアイヴィアスの警備兵に気圧されて、思わず答えてしまう。

「……知りません……。」

「またもや!」

「さあ、詳しいことは屯所で聞かせてもらおうか。」


「止すんだ、君達!」

その一声で警備兵たちの背筋がぴんと伸びる。


「その人たちは僕の友達だよ。解放してあげるんだ。」

「おお、ルシェ! 助かった!」

ロレッタもホッとした様子で胸を一息つく。


「一体どうしたんだい? ギルドマスターがふたりも揃って、こんなところに。」

「おお! それだ、そのことだ。実はな……。」


バロンがこれまでの事の次第を一息にルシェに説明した。

精霊の暴走、ラリドンの聖域の淀み、そしてウィズ……。


「ウィズ? それは人のウィズのこと?」

「当然だ。人以外のウィズがどこにいる?」

「ん?」

ルシェは思わずロレッタの方を見る。

「……しーー……。」

ロレッタは人差し指で口を押えて、首を横に振った。

「ああ、なるほど。……バロン、僕の方も色々と妙な噂を聞いているんだ。

そのことを説明したい。ただここじゃないところでね。」


 ***



「ワダツミの湖底神殿か……。」

バロンたちは、ルシエに案内されワダツミの湖底神殿にやってきていた。

「うん。ここなら誰も入って来られないからね。」

「で、話と言うのは?」

「最近、中央本部がおかしい。」

「昔からだ。」

「それ以上なんだよ。そもそも連絡が取れない。送ったはずの使者も帰ってこない。」

 「…………。」

「噂では四聖賢のクォとアナスタシアが中央本部に戻ったらしい。何か良くないことが起こりそうだ。

中央本部のルベリとは、彼の父クラクス卿と僕の祖父が懇意だったことで、付き合いも長い。

とても心配だよ。彼はクォを憎んでいるし、クォも彼を嫌っている。」

「何か因縁があるのか、そのふたりに?」

「クォはクラクス卿の弟子だった。そして、師匠であるクラクス卿は……。」

 「……不幸な……死……。」

「ああ、有名なことだからね。ちょうどサイオーン戦役が終わって間もない頃だ。

僕の祖父とクラクス卿……相次いで四聖賢が亡くなり、やがてクォが四聖賢に入った。」

「その頃からだな……。統治派が力をつけ始めたのは……。

「うん。臭いなんてものじゃない。」


その時、湖底の静かな祠にわずかに乾いた靴音が聞こえる。

それもひとつやふたつではない数。


「気配……恐ろしい……多くの……悪い気持ち。」

「まさか……ここにまで手を出すなんて……。もうなりふり構わないようだね。」

「なりふりを構っていられないのは我々もだぞ。」



<中央本部の動きも怪しいにゃ。



襲撃者は身元こそ口にしなかったが、明らかに上位の魔道士たちだった。


「これほど魔道士を揃えられる人物というのは……考えるほど多くはないね。」

「想像通りで間違いないだろうな。」

「バロン。君がいたのは向こうも想定外だったんじゃないかな?

そうでないならこの程度の人数じゃないはずだよ。そして――。

……たぶん、僕は死んでいた。

君たちはこれからどうする?」

「もう少し状況を探ろうと思う。このままでは寝つきが悪そうだからな。」

「それなら……彼女の弟子を追う方が早いかもね。黒猫の魔法使いを……。

僕は……アイヴィアスから出られない……。すまない。力になれなくて……。」

「気にするな。人にはそれぞれ役割がある。お前の立場では旅に出るのも難しいだろう。」

 「……それに……運命も。……運命には……逆らえないから。」


バロンたちを見送りながら、ルシエの拳は悔しさで固く握りしめられていた。


「運命か……。

ワダツミの血が……僕の運命なのか。」



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story 剛腕と天文学者


「やっぱりサイオーンでも同じ現象が起きていたんだね。」

アレクは節々の痛む体を壁にもたせかけると、恨めしそうな目配せを隣に立つ影に送る。

筋骨隆々とした影は壁に寄りかかりながら、からからと笑う。

「ははは。そんな調子では先が思いやられるね。まだまだ始まったばかりだぞ!」

「僕は君みたいに筋肉バカではないんでね……。ほどよいところで抜けさせてもらうよ。」

「文武両道と言え。抜けるも何も……上も下も魔物でいっばいだぞ!」

アレクはゆっくりと塔の上階を見上げ、それから下を見下ろした。

どちらも魔物とそれと戦う魔道士たちでいっぱいである。


ウィリトナで観測した異界の狭間の揺らぎを調査するために、サイオーンにやってきたアレクだったが……。

やってきて早々、ドゥーガによって魔物退治に引っ張り込まれてしまったのだ。


「楽しくなってきたじゃないか。」

「楽しくないよ……。異界の扉が不安定になっている現状なら……。

元々、魔物が集まりやすい地場のサイオーンならこういうことになるか……。」

「それだけが理由ではないのだがな。」

「ん? どういうことだい?

「詳しくは後だ。まずは魔物を片付けないとな。さあ、いくぞ!」

「やれやれ……。」



<アレクも災難にゃ。
 それにしてもドゥーガはわかりやすいにゃ。



「ご覧の通り。このサイオーンも、お前の見たという現象のおかげで、この有様だ。」

「うん。それは知っているよ……。うんざりするほど。

で、その原因は何かわかってるのかい?」

「お前も知っているように――

このグノスタワーは避雷針のように周辺の淀みを集めて、周辺の安定化を図っている。

だがここ最近、グノスタワーはその役割が果たせなくなっている。」

アレクはその言葉を聞いて、意外だとばかりに目をぱちくりさせてみせた。

「何者かがこのグノスタワーに魔法の波動を送り込み、タワーの容量を飽和状態にしているのだ。

しかも受けた魔力は微弱ではあるが、このタワーからも送り出されている。」

「共鳴現象か。考えられないことではないね……。」

そこまで言って、アレクはハッとした表情を浮かべる。

「それってここだけなのかな? それとも?」

「そうだ。それはたぶんこのサイオーンだけではないだろうな。

各地の古代遺跡など魔法の力を帯びている場所はおそらく影響を受けているだろう。

それら全てが反響なり、共鳴なりを起こしている。

「世界が揺らいでいる……。この世界の魔力の流れが乱れ、おかしなことになっている。

「うむ。叡智の扉がおかしいのも、それが原因だろうな。」

「一体誰が、何のために、膨大な魔力を放出しているんだろう。」

「理由はわからんが、場所ならわかる。……〈ノクトニアの柱〉だ。

膨大な魔力が集中しているあそこなら可能だろう。」

「それなら中央に向かう……のは嫌だなあ。」

「中央に向かう必要はない。まずはこれから何か起こるかを調べた方が良い。

この手のことに詳しい人物に助力を仰ごう。


……アユ・タラのティア殿だ。」




ノクトニアポリス Story3

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