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【黒ウィズ】アルティメットガールズ Story2

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目次


Story3 大魔道士との戦い 上級




story3 大魔道士との戦い


私はレナ・イラプション。よろしくね、黒猫の魔道士さん。

私、リルム・ロロット!魔道百人組手の人数を消化するために参加したんだ。

 助けてくれた女の子に、君はありがとう、と伝える。


アリエッタ。

……エリス、なぁに?

あいたぁっ!

 エリスが杖でアリエッタを小突いた。

逃げる人を追い回しちゃダメって、言ったでしょう。

アリエッタ。相変わらず無茶してるね。

レナだー!


 エリスは、ソフィとリルムのほうを向き、短く挨拶をする。

エリス=マギア・シャルムよ。よろしくね。

リルムちゃんエリス=マギア・シャルムだよ!

え?知らない……。

シャルム家は、封印の一族の名門だよ。……。最近ちょっと廃れてるけど。

魔道の中でも封印は特殊だから、今でも名前ぐらいは知られてるよ。

 ソフィが言うには、限定的ではあるものの、「封印」を使うことによって、

魔道士の行動を制限させることができるらしい。

悪い魔道士や魔物などを封印することが可能だからか、畏怖の対象になっているのだとか。

――もしかすると、この近くに封印されているという、凶悪な魔道士も、

エリスのような封印を生業とするものが閉じ込めたのかもしれない。

ふぅん……私には関係ないかな!

馬鹿を言うな、小娘。我が関係あるではないか。いつ狙われることになるか、面倒極まりない。

杖が喋ってるにゃ……意味がわからないにゃ。

ふん、黒猫の。貴様も猫の身分で喋っているだろう。

 隕石を防いでくれたとき聞こえてきた声は、この杖だったのか、と君は思う。

ロアちゃん。ええっと、エターナル・ロアっていうリルムちゃんの杖なの。

 とソフィが耳打ちしてくれた。

でもエリス、貧乏だもんね。

余計なことは言わなくていいの!

大変なんだね、あなたも。

た、大変じゃないわよ!

 エリスが声を荒らげ、ぶんぶんと杖を振り回す。

おじいちゃんの代のときに、魔杖の封印に失敗したんだって!

えっ。

人の体を乗っ取るひどーい杖で、エリスのおじいちゃん乗り移られて……

それで家は全壊。当時住んでいた国を追い出されて、今は細々と暮らしていましたとさ。

わはは!

なに人の不幸を笑ってるのよ!

大変だったね。

待ちなさいよ。慰めないでよ。心が痛くなるでしょ。

でも安心して、エリス。その杖見つけたら、わたしが叩き割ってあげるから!

縦に。

縦に!?

さっきからどうしたの?

う、うむ。我、ちょっと用事を思い出した。次の街に行きたい。

そんな杖があるなんて……許せない!

ソフィちゃん、私たちもそれを見つけたら、エリスさんに教えてあげよう!

うん!そうだね。

魔杖かー……魔杖ね一……。

いや、我、知らない。我、喋るだけの男だから。

 レナの視線を受け流し、エターナル・ロアは言う。


私のことはいいわ。あなたたち、戦うんでしょう?

 エリスが顔を上げ、君たちに問う。

考えてみれば、君とエリスを含め、魔道士が6人。

……バトルロイヤル形式のこの大会で、戦わない理由はない。

よし、やっちゃおうかな!

 先陣を切り、声を上げたのはレナだった。

優勝とかどうでもいいけど、年に1度、自分の力を試せる大事な場所だし。

すごい魔力にゃ。

 レナが放つ極大の魔力にあてられ、君は一歩後ずさる。

リルムちゃんは?どうする?

もっちろん、やる!魔道百人組手終わらせないと、また仕送り止められるし……。

決まりね。

決まっちゃったにゃ。キミ、どうするにゃ?

やらないのなら、棄権するのがいいわ。無理して怪我でもしたら大変でしょう?

 君は少しだけ考えたあとで、戦う、と口にした。

無理をするわけではない。

勢いと力強さと、華々しい魔法の撃ち合いに、君自身も自分の力を試したくなっていた。

うん!そういうことならほら、黒猫のひとは、わたしと一緒に来て!

 君はアリエッタに手を引かれ、数多くの魔道士たちが戦い合う街中へ突撃することになった。


***


いま何か吹き飛ばしたような気がするにゃ!

アリエッタにまるで連れ去られるようなカタチになった君は、

確かに魔進士のような人に激突したような気がしていた。

アリエッタは、“ヘーきへーき!”と言っていたけれど……。

くッ、すばしっこいなぁ、もう……!

 先ほど、君の手を掴んだアリエッタは、立てかけられていた棒にまたがり、空を飛んだ。

ソフィほどの“上手さ”はなく、それどころか勢いに任せた動きのせいか、乗り心地は悪い。

よーし、飛ばすよっ!

キミ!レナが構えてるにゃ!

 屋根伝いに追ってくるレナが、詠唱を防いでいる。

わたし、飛ぶのに慣れてないから攻撃できない!

めちゃくちゃにゃ!じゃあ、どうしてこんなのに乗ったのかにゃ!

黒猫のひと、お願い!

 いきなりそんなことを任されても……と言おうとしたところで、

何かが頬を掠めた。

ぎゃー!

めっちゃなんか!めっちゃなんか飛んできた!

 それは刃物のように鋭い“風”だった。

アリエッタ!あなたには、ここで脱落してもらうからね!フルスロットルよ!

 一切の手加減をすることなく、魔法をぶつけてくる。

君はカードに魔力を込めて、対抗することにした。

うわあっ!

 動いているせいで狙いをつけにくいが、君は運良くレナの足をもつれさせることができた。

おお、さすが黒猫のひと!

 さすがもなにも、ここで魔法を使ったのは初めてのことだ。

……どうしてアリエッタから狙うにゃ!リムムとソフィも隙だらけだったにゃ!

戦う上でいちばん面倒なのから倒すのは、定石でしょ!

 バランスを整えたレナが、再び君たちに焦点を合わせる。

本気出すから!――フルバーストッ!

黒猫のひと!迎撃!

 君は思わず、はい!と口にして、レナの魔法に対峙する。

キミ、意外とその場の空気に流されるタイプにゃ……。

きた!黒猫のひととアリエッタ!

うぉぉぉぉぉ!リルム式ロロット砲!

挟み撃ちにゃ……!

 君が背後に意識を向けたとき、狙いすましたかのようにリルムが前方から姿を見せた。

くぅぅ……!出てこい、本!

 苦渋の決断……とでも言いたげな声で、アリエッタがどこからか本を取り出した。

それは特大で分厚い、壁と見紛うほどの一冊の本だった。


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story



いっけー!リルム式ロロット砲!

挟み撃ちにゃ……!

 前方から姿を現したリルムは、直進する君たちに向けて、魔法を放った。

出てこい、本!

 アリエッタが取り出したのは、壁と見紛うほどの分厚い本だった。

護りの型――

 どんな魔法なのか……

アリエッタは本を自分の前に立てて――

盾!

 リルムの魔法を防いでしまった。

にゃ!?

 盾……いや、盾!?魔道障壁や、魔法による打ち消しではなく、本の盾……!?

こうなったら……とりあえず杖を投げるッ!

グレェェートーー!!

ザッーー。

…………。

うわあ!杖がない!

あの子はいったい何をやってるにゃ……。

 どこかでエターナル・ロアを紛失したらしい。

このまま逃げる!

 リルムは追ってこなかった。

今ごろ、大事な杖を探しているのかもしれない。

撒いた撒いた。

アリエッタはもう空を飛ぶのは禁止にゃ。

 すっかり目を回してしまったらしいウィズが、そんなことを呟いた。

君もまた、地に足をつけた瞬間、安堵の表情を浮かべてしまっていた。

優勝するためだから我慢我慢。

 初めて会ったときも言っていたけど、どうして優勝したいの?と君は問いかける。

優勝したら賞金が出るよ。

答えになってないにゃ。

賞金をエリスにあげて、貧乏解消してもらわないと。

鍵の杖とか、毎日磨いてるし!あはは!

真面目に考えてることは考えてるみたいにゃ。

 優勝者には、賞金と魔術書が賞品として与えられるらしい。

どれほど役立つものなのか、この異界のことを君はまだ理解できていない。

あと、モノを壊しすぎたって、えらい人に怒られてるから頑張っておきたい。

 ――あんな魔法を撃っていたら、えらい人とやらも怒るだろう、と君は思う。

だから黒猫のひとも倒さなきゃね。

 あっけらかん、と言い放つアリエッタ。

それは困るよ、と君は言う。

このタイミングで魔法を撃ち合ったら、また街が大変なことになる。

あっ!

 曲がり角から、ソフィが顔を覗かせていた。

見つかってしまった、と思い君は身構える。

こんなところにいたのね、アリエッタ。

あれ、エリスも?

何か凶々しい気配を感じたから来ただけ。私はそもそも参加者じゃないし。

エリスが違うなんて、いま知ったにゃ。

私は参加者が無茶をしたら、縛りつけるのよ。

縛りつける?どんなのか見てみたいにゃ。

ええ、いいわよ。こんな風に――

あばばばば……!

 奇妙な声を上げて、アリエッタが倒れた。

私、こういうのは得意だから。

ま、待って……。

 アリエッタが、よろよろと立ち上がる。

友だち……わたし、エリス、友だち。

 手に持ったあの“箱”から何か出てきたようにも見えたが……。

そうそう、忘れるところだったわ。

 それを訊く前に、エリスが切り出した。

あなたたちに、ひとつ聞きたいことがあるの。


***


『我だ。我を拾うのだ――』

 そんな声がどこからか聞こえてきた気がして、君はあたりを見回した。

しかし、そんな声を発するものはどこにもない。


 ……エリスが話を始める寸前に、強そうな武器を持った魔道士が襲ってきたが、

一気に撃退してしまった。

キミは、ちょっと申し訳ないことをしたと思ったけれど、これはれっきとした大会だ。


大会中、膨大な魔力が街に溜まってきていて……。

本来なら、魔道障壁がその魔力を取り込み、より強固になるの……。

 エリスが事情を説明している。

……壊した子がいるにゃ。

ひゅーひゅー……。

 明らかに吹きなれていない口笛を鳴らしながら、アリエッタが目を背ける。

それでエリスさんが、アリエッタちゃんを探してて。

壊したから失格にするってことかにゃ?

魔道障壁の仕組みを考えたのがこの子だからよ。

 君は、えっ!?と声を上げる。

失礼なことかもしれないが、レナの言うとおり、

超一流の破壊力だけを持っているのだと思っていたからだ。

この子、生活に役立つ魔法の発明、改善もやっているのよ。信じられないかもしれないけど。

 魔道障壁は、街を守るため――そして、古の悪い魔道士を封印するため、機能している。

しかし、それを作り上げたアリエッタが、見事に破壊して回っているという……。

エリスが言うところによると、それが続いてしまうと、封印した魔道士が出てきて、

とてつもなくまずいことになるらしい。

アリエッタ・トワ。稀代の大魔道士。……。あまり信じられてないみたいだけど。

魔道障壁の修復……というより、自分で壊したんだからそれくらいやってもらわないと。

 エリスがため息混じりに口にする。

ええっ!わたし、グリモワールグランプリで優勝しなきゃいけないのに!

わがまま言わない。

 アリエッタの腕を掴み、エリスが歩き出す。

ごめんなさい。あなたの邪魔をして。大会、頑張ってね。

 エリスが君にそう言葉を投げかけたときだった。

いたいた!おーい!

 レナとリルムが駆け足で近寄ってくるのが見えた。

私の杖―!杖しらなーい!?

そういえばさっき、杖がないとか言ってたような気がするにゃ。

ままままずい。超まずい……今度仕送りを止められたら、私はもう……!

リルムちゃん、お父さんを怒らせて、仕送りを止められたことがあって……。

 と、ソフィが教えてくれる。

贅沢しなければ、生きていけるものよ。

わはは……ぎゃあ!

 アリエッタが“箱”の餌食になった。

その杖、どんなものだったかしら。落とし物の類は、大会本部にあるかもしれないわ。

うん、あの……杖の形状……ええっと……

でかい!

リルムちゃん……。

私、覚えてるよ。何回か見たから。特徴的だったし。

とりあえず魔じょ――じゃなくて、杖探しに行ってみる?一時休戦ってことにして。

杖見つけたら、再開だね!オッケー!




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