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【黒ウィズ】聖サタニック女学院 Story3

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最終更新者:にゃん



断末魔の叫びにも聞こえる音が教室に鳴り響く。

何度か聞いて君にもわかってきたが、どうやらこの音が授業の始まりや終わりを知らせるらしい。

pさ、午前の授業はここまで。

午後は視聴覚室で授業があるから、昼休みの間に移動を済ませておくように。

 どうやら午前の授業が終わったようだ。

教室の一番後ろに用意された席で、授業見学していた君にも、それはよくわかった。

だが……。何かが違った。終わったというよりも、始まった予感。

戦いの予感。

r何事!

m最後の人、おごりね!!

 と突然ミィアが駆けだす。ものすごい勢いで教室を飛び出していく。

U負けない!

s上等!

 とそれに続くのはウリシラ、シルビー。

rちょ、なになになに!なにー!

 ルルベルもちょこまかと彼女たちについて行く。

そして君も!!

彼女たちにつられて廊下に飛び出し、すでに小さくなっている彼女たちの背中を猛然と追いかけた。

wなんにゃ、なんにゃ?君もいきなりどうしたにゃ?

 なぜだか分からないが、そうしなければいけない気がした。

廊下には数多くの生徒たちがいる。みんながみんな同じ方へ向かっていた。

rおーい!あたしを置いていくなー!

 君は遅れを取るルルベルに並ぶ。

rお。いい所に。

 ルルベルは、君のたなびくローブにしがみつき、羽を広げて宙に上がる。

rお。よし、ニンゲン追いかけろ!あいつら全員ぶっこぬけ!

 言われるまでもないと、君はさらに走る速度をあげた。


 ***


 ようやく先を走る背中が大きくなってきた。これなら抜ける。君は目標を定める。

r行け行け、ニンゲン。ぶっこぬけー!

sゲ!追いつかれる。ま、負けるかー!

 君はさらに足を高く上げて、腕を振る。

wもう少しにゃ!

 君はシルビーを無慈悲に抜き去る。

sうわー……!

さらに次は……。


Uニンゲンさん……!

 無論、彼女に対しても慈悲などない。

Uうそー……。

rざまあみなさい!邪神をなめるなよ!

 抜き去った者たちに向けて、ルルベルは勝ち誇ったように声を上げる。

w自分で走ってないくせに何言っているにゃ……。

 ふたりを抜き去ったとはいえ、他の生徒たちが君の前を走っている。

戦いはまだ終わっていない。

走り続ける君の横に、ふたつの影が並ぶ。

Iごきげんよう、ニンゲン。

kやるじゃない。

 カナメとイーディスだった。恐ろしいことに汗ひとつかいていない。

rこら、ニンゲン!もっと飛ばせ。こんな奴らに負けるな……!

kあら、かわいい邪神さん。威勢だけは一人前ね!

rなんだとー!!

Iカナメ、ニンゲン。お出ましよ。

 促されるように君は前方を見る。そこには廊下にどっかりと腰を下ろした男がいた。

d来やがったな、若人ども。

 ものぐさな素振りで、男は杖を支えにして立ち上がる。

d走るな走るなつってんのに……やれやれ。バカは死ななきゃなんとやらってか。

 あれは誰?と君はカナメに訊ねる。

kこの廊下を守り、廊下を走る者たちを次々打ち倒す奴よ!

Iそれだけが奴のアイデンティー。悲しい奴ね……。

k私はそこまで言ってないわ!

 ふと廊下の端に転がるパブロ先生の亡骸が、君の視界によぎる。

なるほどそういうことか……。と君は納得する。

rなんでもいいから、邪魔するならぶっ飛ばせ!

wキミ、ぶっ飛ばすにゃー!

 この勢いは誰にも止めさせない。君は速度を緩めることなく、戦いに備える。

このまま当たって……砕く君はカードを握りしめる。

dてめえら……廊下を走るんじゃねえ!

その性根、叩き直してやる!


 ***


 勝負は一瞬だった。

d叩き直してやる!

 と、男が振りかぶった瞬間……。

k遅い!

 カナメのアンブレラがまるで花のように男の目の前で開く。

dぐっ!

 その時点で、男の視界も間合いもすべて殺される。

すぐさま君はカードに手をかける。イーディスは……。

zイーディスたまー。

 と彼女の周囲に飛び交う使い魔を一匹掴むと、銃らしきものに詰め込む。

z無理無理、そんなところ入りませ……ムギュー。

 そのわずかな間にも、男は死地を開こうと、間合いを取るため、後ろに飛ぴのく。

dまだ……だ!

 だかそれは……一番の愚策。

k退いたら負けと知りなさい。

 アンブレラが閉じられた時――つまりすべての視界が開けた時――君とイーディスは魔力を前方にぶつける。

zギャー!

グォーーー!

 使い魔は恐ろしき怪物と化して男に向かい、君の攻撃も同時に襲い掛かる。

斬撃の間合いでの射撃と魔法の攻撃。逃げられる術もなく……。

dぐおおおおぉぉ……。

 男は膝をついた。

だが、それを喜んでいる暇もない。すぐさま前へ前へと突き進む。

最後の関門を抜けたのは、君とカナメたちだけのようだった。

やがて見えてきたのは……。


cどうやら君たちで最後のようだね!

喰らえ!フェニックスブラッド!!

 掛け声と共にクルスが何かを投げてよこした。

それはほかほかして、香ばしく、食欲をそそる香りをしていた。

w7なんにゃ?

袋をあけてみると、揚げたパンだろうか。君は一口かじる。

とてもスパイシーで、爽やかな辛さが口の中に広がる。

cどうだい。ドラク領の新名物フェニックスブラットの味は?

 すごく美味しいです……。と君は答える。

cそうだろう。この聖サタニック女学院でもとても人気だよ。

毎日、昼休みには生徒たちが血眼になって、売店に走ってくるからね。

市場調査も兼ねて、新商品はいつも女学院で先行販売しているんだけど、

これなら全魔界展開の道も見えてきたな。

 あの突然の競争にはそういう理由があったのか。と君は納得する。

Iどうやら理由も知らずに走ってきたみたいね。

 とてもおしとやかにフェニックスブラットをかじりながら、彼女は言った。

みんなが突然走り出したので、と君は照れながら答える。

kあなた、おかしなことを言っているわよ。みんなが走り出したら、あなたも走り出すの?

Iそれは……ニンゲンだから?

 違います。と君は即答する。

wなんとなく乗せられちゃっただけにゃ。それはルルベルも同じじゃないかにゃ?

r突然、誰かが急に走り出したら、あたしだって走るわよ。

Iそれは……邪神だから?

r全然達う……。

 それにしても……。一番先頭を走っていたはずのミィアはどこにいったのだろうか。


 ***


mMooo!ここどこなのよ!?

 ナチュラルに道を間達えていた。



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クルス・ドラクは飽くなき探求心を持った少年である。

魔界を席巻した銘菓〈ダークサンプラッド〉だけでは満足せず、新たな新商品の開発に余念がなかった。

その努力の成果が、〈フェニックスブラッド〉である。

I〈フェニックスブラッド〉の味、風味、これまでの魔族の食べ物にない新しいものでした。

k食感は若い魔族の女性の多い、この聖サタニック女学院ではその新しさから絶大な支持を集めています。

Iですが、製法については謎に包まれています。

cそこで今回は特別に〈フェニックスブラッド〉の秘密を大公開しようと思う。

kわお!あの〈フェニックスブラッド〉の秘密が!

Iとってもワクワクするわね。

cどことなく棒読みなのは、深くは問わない。では始めよう!

 クルスは鍋の中にある赤いソースをすくってみせる。

c重要なのはフェニックスブラットの特徴である、この鳳凰の血だ。その作り方を説明しよう。

まずは地獄タマネギのみじん切りを黄昏色になるまで炒める。

それとは別に皆殺しニンジンのみじん切り。さらに邪悪な獣を細切れに引き裂いた肉を炒める。

肉の色が変わったら血塗れトマトを数個と魔獣のコンソメ、災厄ローリエを加える。

黄昏色の地獄タマネギもこのタイミングで投入し、汁気が少し残るまで、煮る。

そして最後に加えるのが、ドラク家特製の粉末、〈紅き黄昏〉である。

これにより、魔界にいままでなかったスパイスという概念を生み出すことに成功した。製法はドラクの秘密だ。

さて、出来上がった鳳凰の血はダークネスパン生地で包み、フェニックス型に成型する。

あとは、それにパン粉をまぶして漬るような灼熱の油で揚げる。

全体が黄昏色になったら、油から引き揚げて完成だ。さあ、熱々のうちに召し上がれ。

Ikダイエット中ですので油ものはちょっと。

c空気を読みたまえ、君たち。



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聖サタニック女学院の昼下がり。

ふたりの令嬢が校庭のど真ん中で、くつろぎのひと時を過ごしていた。

ひとりの令嬢は読みかけの本をパタンと閉じて、もうひとりの令嬢に問いかけた。

Iねえ、カナメ。世の中には実物は知っているのに名前を知らないものが多いわね。

k急にどうしたの?

I例えばこれ。

 と言って、読みかけの本から垂れ下がった紐をカナメに見せた。

Iこれなに?なんて名前なの?

kああ、ページの途中に挟むヤツね。たしかに正確な名前は知らないわ。

Iこれ、何かしら?

kそうねえ……?

 ふたりは深く考え込む。しぱしの沈黙。昼下がりのアンニュイな空気が流れる。

突然、閃きの光が差し込む。

I……ひも?

k(そのまま?)

Iひーもー?

k(言い方変えただけ?)

 カナメは息をひとつ吐くと、ティーカップの口を拭いテーブルの上に置いた。

kたぶんブックマークっていうんじゃないかしら。意味としてはそういうことでしょ?

Iいやよ。

k(感情論?)

I何のひねりもないじゃない。そんな世界に私はいたくないわ。

k(ひねり?ひーもーって言ったくせに?)

Iでもたぶんこの世界は本についた紐を悪魔の舌とは言わないわね。残念。

もしかしてこの紐、ブックマークって言うんじゃないかしら?

kそれはさっき私が言いました。

Iけだるい午後ね……。

k(話を逸らした?)

Iねえカナメ。私ひねくれてるかしら?

kええ、すごく。

 魔界の昼下がり。麗しくうら若い令嬢たちの憂いの午後はこの日もかなり無駄に過ぎていった。



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