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【黒ウィズ】桃娘伝 in 大魔道杯 Story

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最終更新者:にゃん

大魔道杯 in 桃娘伝 晩夏妖怪納涼宴
開催期間:2018/08/24


目次


Story1 今年も夏が来る

Story2 試される肝

Story3 里の風物詩


主な登場人物




story1 今年も夏が来る



すっかり夕焼け色に染まった風は軒下に吊るされた風鈴を鳴らす。

りんと鳴った音に夕を楽しむひぐらしの合唱が合わさる。

それは縁側で茶を綴るふたりに、あの季節の到来を告げていた。


「そろそろ準備をしないといけませんね。」

「そうじゃのう、婆さん。」


頷くようにグランパが茶をすすり、ほう、と息を吐く。


「それじゃあ、いってくるよ。」

「いってらっしゃい。」


 ***


残照に染められた小道の先で、グランパは目当ての少女が待っているのを見た。


「ヤエちゃん、頼めるかい?」


その少女――ヤエは鷹揚に頷く。


「その言葉を待ってた。大船に乗ったつもりでいると良いよ。

アタシの目には成功する未来しか見えてないから。」


今年も、サキモリの里に夏の風物詩がやってくる。


 ***


y――というわけで、今年の肝試しのおどかし役が決まったぞ。ヒョウとキヌ、ティマの3人な。


tはーい、頑張るー!

hついに、私たちの番が来たんだね……!

kき、緊張します、ちゃんとやれるかな……。


キヌとヒョウはまるで決戦に向かう討伐者のような覚悟をにじませていた。

肝試しのおどかし役をやるにしては、気負いすぎに思えるほどの気迫に満ちている。


2ただの肝試しだろ、気楽にやればいいんじゃねえのか。


hそういうわけにはいきません。大切な行事ですから。

k全力で、やらないといけないんです!


フウカは、ふたりの並々ならぬ熱意にたじろぐ。


hただの肝試しになんなんだ……?


彼女たちの意気込みの激しさにはフウカも違和感を感じずにはいられなかった。


 ***


――肝試し当日。二人一組となったスモモとフウカは里の墓地を歩いていた。


すっかりと日も落ちた時間。

虫の声とひんやりとした風の音のみが耳に残る。


1フウカちゃんは、里の肝試しはじめてだっけ、きっと驚くと思うよ。

2おどかし役はあの3人だろ?まともなのになんのか?様子もおかしかったぞ。

1んー、そういうのじゃなくてね――あ、来たみたいだよ。


スモモに言われ、フウカがそちらを見ると、


「いちまーい、にまーい……。」


古井戸からぼんやりした光とともにキヌが現れた。


hこれあれだろ皿を数えるやつ。それで1枚足りないって――痛った!?


突然の衝撃がフウカを襲った。

キヌが数え、投擲した皿は意思を持つかのように連続でフウカの額に飛翔する。


「さんまい!よんまい!冷奴!!」


キヌが数え、投擲した皿は意思を持つかのように

連続でフウカの額に飛翔する。


2痛え! 皿数えるんじゃなくて投げてくるし、豆腐が載ってんぞ!

1たぶんひやっとさせたいんだと思うよ。

2物理的にかよって、痛え! この冷奴痛え!

「努力の成果です!」


キヌの凍み豆腐は、竹で作られたロケットの部品に使えるほど硬いことで有名だ。

しかし、今、投げられている豆腐は凍み豆腐ではなく冷奴だ。本来ならば柔らかく攻撃には使えない。


それを良しとしなかったキヌは、不断の努力で冷奴に凶器たりえる硬度を与えていたのだ。


「ごまい!ろくまい!!」


キヌが皿の枚数を数える度に、皿に載った豆腐が空を飛ぶ。


1あー、お豆腐を見てたらお腹がすいてきたよー。

あまりにも美味しそうだったので、スモモは思わず、飛んできたそれを食べてしまった。

1あ、デリシャス!もっと食べたいかも。


そのとき、豆腐の栄養がスモモに天啓を与える。

怖がったらその料理が出てくるのでは?

題して豆腐怖い作戦――良い考えに思えたスモモは、即座に実行した。



1私、冷奴が怖いなー!

「――!冷奴お願いしまーす!」


怖いという言巣を聞いたキヌは、待ってましたとばかりに井戸の中へ注文を告げる。

井戸の中から、はーい、と声が響き、しばらくすると半透明の手が冷奴を出してきた。


「はちまいっ!」


全力で投げつけられた冷奴は崩れることなくスモモの下へ飛ぶ。


1キャーッチ!いただきまーす!

投げつけている時の硬さはどこへ行ったのか。つるりと、なめらかな触感が口内に広がる。

1ソーヤミー!フウカちゃんもオーダーしようよ!

2肝試しだよな? というかさっき井戸から半透明な手が出てなかったか……?

1料理人じゃない?

2手が半透明な料理人がいてたまるか。


「きゅうまーい……いちまい、足りない……!」


しかし、そこでキヌの投げたお皿の枚数は10枚に達し注文終了となった。


2いや、ちゃんと10枚あるじゃねえか……。

1あ、これだけお皿の形したお豆腐だよ。これじゃお皿は1枚足りないね。

2良いのかよそれで……。

1でも、美味しかったでしょ?

2まあ、な……確かに美味かった。


その味はフウカが今まで食べた、どの冷奴よりも美味しかった。

そんなフウカの思いが伝わったのか――


「私の料理を美味しいって言ってくれて、ありがとう。

こんな形でも食堂を開くことができて、本当に良かった。」


キヌは満足そうに微笑み、井戸の中へと戻っていった。


2なんだ? 急に人が変わったみたいに。スモモ、なんか知ってるだろ。

1まあまあ、先はロングだからとにかくゴーゴーだよ。

2本当に何なんだ……?



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story2 試される肝




がさがさと繁みの揺れが大きくなり、何かが飛び出す。

頭頂部についた2本の角、トラ柄の衣装、多くのトゲがついた金棒を持った影。

かつての敵――鬼に扮したティマが現れた。


「がおー、鬼だぞー。

2…………。

「……がおー、鬼だぞー。

2……おい、コラ、それしかねえのか。鬼舐めてんのか、そんなの鬼じゃねえ。

「またかー。これでもう何度目か、私にもわからない。頭の中でも言われてる。

そんなの鬼じゃねーよって、もう何度も言われてんの、もー、嫌気もさすよね。ティマちゃんだってこんなに頑張ってるのに。

ティマは鬼の衣装を、その場でくるりと回りふたりに見せつける。

鬼とは宝を奪い暴虐の限りを尽くし、無事の民を恐怖のどん底に陥れる存在である。

しかし、ふたりの前にいるティマからは鬼の怖さが感じられなかった。

「だから、ティマちゃんは頭使うことにしました……あ、頭突きね。そんでね、閃いたの。なんか雷落ちてくる系のすんごいやつ――

ティマちゃん以外の鬼を全員倒したら、必然的に真の鬼はティマちゃんになるって。

2発想が怖えよ、鬼かよ。

「ティマちゃん鬼スタンダート計画の為に死にさらせー!

ティマは金棒を振り上げ、目をキランと光らせ飛びかかってくる。

フウカは避けようと足に力を込め後ろに跳ぶ。

その瞬間、ティマはピタリと動きを止めた。

2なんだ……?

フウカが何事かと思っていると、

「いや、待って違う。目的違う。ほら、言ったでしょ? 打ち合わせ通りにしよ?金銀財宝巻き上げよ?

「そんな恐ろしいこと、ティマには出来ない!

2殺す方が恐ろしいだろ!?

ティマは自分で自分と言い合いを始めた。

2別の意味で怖え……。

傍から見れば、今のティマは完璧に関わってはいけないやつだった。

1あーそういうパターンなのかー。

「――ティマちゃん目の前の鬼を倒せば鬼になれると思うの。

「良し、倒そう。


1あ、決まったっばい。

2何がなんだかわからねえが鬼と喧嘩しようってんなら覚悟してもらうぜ?


フウカは、ティマの眼前に風を叩きつける。

風の力は強く地面は大きく抉れ、巻き上げられた土や石がティマに当たる。

2さて……んじゃあ、次は当てる。

ティマは抉れた地面を見て思った、もしかしてヤバイのでは? と。

「……………。

その瞬間、ティマの記憶回路にろくでもない記憶の数々が再生された。

ワニを踏んだ記憶、船を踏んだ記憶。

製造されてからの記憶が次々と思い出され――ティマは、悟る。

――ガチでやべえ、やめたほうがいい。

「…………ジョーダン、ジョーダン、ジョウダン。設定、全部全部、怖がらせるための設定。本気じゃない。

ティマちゃんは良い鬼だから。平和大好き。いつも平和について考えてるから、平和、平和、平和……。

平和……そもそも平和ってなに? 世界平和ってそんなにいいもの? 争いのない世界って本当に幸福なの? 幸福とは、自由とは……。

良い鬼になりたかったんだよ、ホントだよ!一生ついていきます姐御!

2肝試しはどーしたー。てか、姐御ってなんだ。

「命は惜しいんでー! 喧嘩はなしでお願いしゃーす!もっと生きてたい!

ティマが行ったそれは、実に見事な土下座だったという――

フウカは井戸の手やキヌの変化、テイマの行動について考える。

ここまで来ればフウカも、この肝試しの裏で何かが起きていることに気がつく。


2なあ、スモモ、そろそろ教えてくれても――ん?

そうフウカがいうと同時に、何かが地面に落ちた音が耳に飛び込んでくる。

背後でもぞもぞと何かが動く気配に振り返ると体がねじれた男と目があった。

上下逆さまになった顔の暗く落ち窪んだ眼がスモモとフウカをじっと見つめている。

2…………。

1…………。

『あああぁぁああぁああーー』

12ギャー!

スモモとフウカのふたりもこれには悲鳴を上げ全力で逃げ出した。

『あぁああぁぁああーー』

2なんだあれ!追いかけて来んぞ!

1ムーブムーブ!まずは逃げよう!


ひとしきり逃げ回ったスモモとフウカは、おずおずと後ろを確認する。

体のねじれた男は、ふたりを追いかけるのをやめており、その場にぼんやりと佇んでいた。

やがて、男は氷がとけるように消え失せた。


2はぁー油断したぁ、さっきのは肝が冷えたぞ……。


「フフフ、楽しんでいただけたようで何よりです。

暗闇にぎょろりとした氷の一つ目が浮かび上がる。

「えっと……わ、わが名は氷結真眼(ひょうけつしんがん)。よくぞここまでたどり着いた。

そんな、け、卿らに敬意を表し、わが力を見せよう――存分に恐れるが良い。

凍えるような息吹が、大気を凍らせ肺を締め付ける。

「氷温の風、結死の月、ひょうひょうと凍らせ、閉じ込め、永劫を苛む檻となせ――

呟きとともに、冷気が高まり、荘厳な月光がヒョウを照らす。

「氷結真眼たるヒョウが命じる――全てを魅了し輝け欠氷夏氷(けっひょうなつごおり)

ヒョウが言葉を結ぶとともに冷気が天へと昇り、巨大な氷の彫像を形作った。

1すごい!グレートだよ!

2いや、主旨違くね?

「準備は、整った……。

不意に、ヒョウの体から何かが抜け出し彼女は倒れる。

2おい、大丈夫か!?

何があったにせよ早く連れ帰らなければ、とフウカが思った時――

1見て、フウカちゃん!氷像が!

2動いてやがる……!

氷像が生命を得たかのように動きだした。


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story3 里の風物詩




突如として動き出した氷像から声が響く。

それは奈落の底より這い出す怨霊の声だ。

『ふ、ふははははは! ついに体を手に入れた!何よりも強く、巨大な体を!我が世界征服計画の始動だ!』

1おまえは何者だ!

『吾輩は幽霊。名前は忘れた。』

1じゃあ、世界征服太郎!

『世界征服太郎!? ――やっべ最高かよ……。』

2なんだあれ、ガチのやつか?

『そうだ! 世界征服の為にこの世界に残っていた幽霊だ。

肝試しや怖い話、あるいは百物語を行った場には本物の幽霊が訪れやすくなるっていうだろ?

だから、このようなこともあるのだ!』

2こんなこと早々あってたまるか!

「でもあってんじゃん。なら、世界征服するしかないじゃん?

2なんてそうなる。

1世界征服なんてさせないよ!

『止めたくは、我を倒すが良い討伐者!』

世界征服太郎との戦いは激しいものだった。剣戟、大喝、意思と意思がぶつかった。

しかし、歴戦の討伐者であるスモモと、鬼であるフウカが力を合わせればぱ勝てない相手ではない。

1これで終わりだよ! 超必殺――


「もう十分じゃよ、スモモや。」


1グランパ! ……もう良いの?

グランパは頷き、氷像から抜け出た世界征服太郎と向き合う。


「楽しめたかのう。」

『あぁ、満足だ。ありがとう友よ。』

世界征服太郎からは、絶対に世界征服をするという苛烈さがなりをひそめていた。

今は、グランパと親友のように笑いあっている。


「これが最後となると寂しくなるなぁ。」

避けられようのない別れに、グランパの表情が曇る。

『そんな顔をするな、友よ……。

別れは次の出会いの為に必要なものだと我に言ったのはおまえだろう。笑って送り出してくれ。』

「そうじゃったな、人は泣いて生まれてくるのだから、笑って別れるのが一番じゃ。」

そういって、グランパが笑うと――


yハイ、オマエら、そこに並ベー。


突然、帳面を持ったヤエが現れ世界征服太郎とキヌ、ティマ、目覚めたヒョウを前に並ばせる。

キヌとティマからは何かが抜け出し、世界征服太郎と同じ幽霊が2体増えた。


「まずオマエ、食堂幽霊。86点。豆腐料理美味かった。豆腐食堂としてやっていける。」

『ありがとうございます!』

kやりましたね!お豆腐を差し上げます!


「次、オマエ、鬼幽霊。43点。憑依先と協力するのは良いけど、相手に主導権持ってかれちや駄目だろって話。

今に妥協するからそうなるんだよー。アタシみたいに妥協せずに上を目指せば世界が変わるぞー。」

『くそぅ……なんか悔しい!なんで一番相性がいいのがコレなんだ。』

tそんなに褒められたら照れちゃうー。けどもっと褒めるべし、ほらほらー、ティマちゃんほめて伸びる子だよー!

『ほめてねえよ!ほめねえよ!』


「次、オマエ。75点。世界征服やりたいって志、点数高い。」

h残りの点数は?

「ちょっと恥ずかしがってたところ。アレがなければもっと点数高くなってた。途中からは良かったけどな。

もっと恥じらいを捨てろよー、自分を出すのはそりゃ怖いけどさ、怖かってたら何もできないんだからさー。

アタシ、もう随分と恥じらったことない。

2いや、恥じらいは持てよ。

h自分を変えることは勇気が必要ですけど、1歩踏み出してみたらなんてことありませんよ。


「ハイ、というわけで採点終了。きちんと成仏しろよー。」


『では、本当にこれで最後だ、友よ。』

「またの。」


グランパの言葉に世界征服太郎は笑い、消えた。他の幽霊たちも天に昇っていく。

夜を包んでいた、ひんやりとした空気は霧散し、熱い夏の夜が戻って来る。


h……終わったのか? ならいろいろと聞かせてくれるんだろうな。

jこの肝試しはね、成仏出来ない幽霊たちを成仏させるための催しなんじゃよ。

hじゃあ、世界征服太郎も早くに死んで未練で残ってたってことか。はた迷惑なこった。

j生前は90歳で孫に囲まれて未練はないと幸せそうに旅立っていったのう。

h未練ないって言っちまってるじゃねえか。なんで残ってたんだ。

t人間、未練がないと言っても、心の奥底では未練があるもの……。

きっと、世界征服太郎もそうだったのよ……。

h人間じゃないやつに言われた……。

とにもかくにも幽霊が成仏した以上、肝試しはこれで終了だ。

hはあ、もういいや。疲れたし、帰って寝ようぜ。

1待ってフウカちゃん、もう少しだから――来た。空を見て!

なにが、と聞く前に空を見上げたフウカは、思わず言葉を失った。


星が群れをなして流れていた。

1つ、2つ、3つ……10……。100……。

数えきれないほどの流れ星が空を覆い尽くしている。


今夜は一段と、綺麗だね。

1肝試しが終わるとスターがいっぱい流れるんだよ。もしかしたら成仏したゴーストなのかも。

そうかもしれないし、そうでないかもしねない。

2そうだと良いな……。


誰も何も言わなかった。

ただじっと、流れていく星を見続けた――






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登場人物



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