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絶対零度の鎖 Story

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最終更新者:にゃん

「あれ……あの子の服どこかで見たことあるな。

エルジオンのIDAスクールとかいうところの制服か?

【白い服の少女】

………………。

「………………っ!ななんだ?オレを見て微笑んだような……。でも……うーん?知らない子だよなあ……。

女子生徒

「ちょちょちょーっとそこのアナターっ!

「えっオレ?

「ここっこの辺りで真っ白な制服の生徒を見ませんでしたっ!?

「真っ白な……制服?あ……ああそうか。

君もIDAスクールの学生さんなんだな。

「ええもちろん。IDAスクール唯一無二の報道機関!新聞部の鉄砲玉とは私のことですよぉ!

「ヘ……へえ。

「それでですね!今神出鬼没の謎の組織IDEAの調査をしていましてですね!

「神出鬼没の謎の組織?」(厄介なことになりそうだな……)

「そうなんですよ!彼らにまつわる不思議な不思議な噂を根掘り葉掘り聞き出そうかと!

むむ?そういえばアナタも不思議な恰好をしてますね。

まるで大昔のコスプレのような……。

「オレの恰好この時代だとそんなに古臭いのかなぁ……?

「……はっ!!もしやアナタ噂の剣士さん!?

ガリアードを倒したとか!イシャール堂の看板娘といい感じだとか噂のあの!?

「え……っと?ガリアートは倒したけど二番目のは多分違うと思うぞ?

「おおおおっ!思わぬ逸材発見です!是非取材させてくださいっ!

そうですね……こんな場所では何ですし私たちのスタールヘ来てください!

「え……でもオレ部外者だぞ?

「大丈夫ですよっ!招待用の入校パスをお渡しします!

このパスをエレベーターにかざせばカーゴ・ステーションに行けるようになりますっ!

スクール行きの黄色いバスカーゴがありますから探してみてくださいね!

私は取材の準備のため先に向かってますから!



「な、なんだったんだ……?入校パスか……。もらいっぱなしってわけにもいかないよなぁ。

ま、返すついでに寄ってみよう。IDAスクール話には聞いてたけど一体どんな場所なんだろう?

この入校パスってのを使えばいいんだよな。

「ちょっとはやくしなさいよ。アルド。

「でござるよ。

「デス!

「ってみんな!?いきなり話しかけるなよ……。IDAスクールにいくんでしょ?一度行ってみたかったのよね!

「ヘえエイミも行ったことないのか。

「IDAスクールはエルジオンの中でもトップクラスの学園都市なのよ。

だからこんな風に入校パスが手に入るなんて思ってもみなかったわ。

「パルジファル宮殿の魔法教室とどっちが大きいかいざ勝負でござるよ。

ささはやくするでござる。

「わわ!押すなって!

ええと……こうか……?

おお……空飛ぶ鉄の馬がいっぱい……。ここがエルジオンの交通の要所なのか?

「ココカラバスカーゴに搭乗シスタールヘ行くコトができるヨウデス。

「いやはやこの都市はどこまでも広大でござるな。

「IDAスクール以外にもいろんな場所にいくバスカーゴが出ているみたいだけど……

スクール行きのはあの黄色いやつね。さ早いとこ乗りましょ!






【フォラン】

うーん……アルドならそう言うよねえ。まあいっか。

……あっいっけない!そういや課題の提出忘れてた!

落第なんてしたらばーちゃんにどやされる!ほらアルド早く行くよ!

「あっおい!フォラン!?


「アルド何してるの?はやく乗りましょ。

「あ、ああ……。

まもなくIDAスクール行きバスカーゴが発車いたします。

「そろそろ出発のようデス!

「いざ!でござる!



「……ここがIDAスクールなのか?

「現在座標特定。ココハIDAの玄関口に当たる場所デス。

「この広さで玄関口なのか……。

「IDAは巨大な学園都市デス。ココカラエアチューブで学内の各所にアクセスできるヨウデスネ。

鉄砲玉サンはハイグレード所属ト推定されマス。ハイグレードエリア行きのエアチューブを通りマショウ。



「ハイグレードエリア行き……これか。

「エアチューブかあ……私苦手なのよね……。

「それはどういうものでござるか?それはどういうものでござるか?

「百聞は一見にしかずよ。さあ行きましょ。



「わわっ!?ちょっとこれ危ないぞ!!

「アルドさんハ独特な乗り方ヲしていマスネ。流石アルドさんデス!

「バランスをとって……大丈夫よエイミ。あなたなら出来るわ……。

「ほう!これはなかなか興味深い乗り物でござるな。体幹の鍛錬に使えそうな……。



「おお!こりゃすごいな!?

「これが未来の魔法教室でござるか!?宮殿くらいの大きさでござるな!

「ミ当然でしょう?エルジオンのプレート丸々一個使っているんだから。

「校舎や高度な設備の研究棟ダケでなく生徒向け居住ユニット。

商業モールや娯楽施設も敷地内に保有しているヨウデス!

「話には聞いてたけど……目の当たりにするとやっぱりすごいわね。

「よし。これでようやく鉄砲玉の人に会えるんだな。広そうだけど頑張って探してみよう。


「あっ!剣士さん!こっちこっち!

「なんていうか……すごいなここ……。

「ええ!優れた素質を持つ若者が学び競い成長する……。

エルジオンの誇る至高の学び舎それがIDAスクールなのです!

ところでそちらの方々は……?


「私はエイミハンターよ。

「サイラス。気ままな浪人者でござるよ。

「リイカデス。

「なんと!噂のイシャール堂の看板娘さんにカエル人間と意味深なアンドロイドまで!?

これはスクープの予感ですっ!ぜひ取材させていただかなくてはっ!

「なあ前にも言ってたけど取材ってのは何なんだ?

「ふっふっふよくぞ聞いてくれました!

私たちこそ世の中に蔓延る不思議や噂を追う正義のペン!新聞部とは仮の姿!しかしてその実態は……

なんと!オカルト記者クラブなので~す!!

「オカルト……記者クラブ?

「この学園にはいくつかのウワサや七不思議といった逸話があるんですよ。

それを追って記事にしているんです!もちろんアナタがたもそんなウワサの一つですよ?

「ええっそうなのか!?

「ええもちろん!そして先ほど調査していたIDEAのウワサとか。

他にもいろいろあるんですよ。そうですねえ……。

校内を危険なアンドロイドがうろついているとか……。

壁から生える手のウワサとか……。

「ええ……?

「あ、アンドロイドはまだしも壁から手が生えるわけないじゃない。何かの見間違いよ……。

「どれほど時が過ぎても面妖な話は尽きぬものでござるな。

「それを確かめるのが我々の役目ですよ。たとえどんなに危険でも!

……というわけでアナタがたをオカルト記者クラブの外部特派員に任命します!

「ええ!?

「合成人間ともやり合えるアナタがたの腕前が必要なんですよー!

ここ最近出回っているウワサがもしも本当に繋かってしまうなら……

「どんなウワサなんだ?

「ここだけの話ですよ?近ごろ姿を見かけない生徒が出ているんです。

聞くところによると家にも帰っていないとか……

「なんだって……?もし本当なら大事じゃないか。

「はい。ですからアナタがたに真相を探ってはしいんです。

「ああ。たしかにそれは放っておけないな。

「では外部特派員のオファーを受けていただけるということで!

「ああもちろんだ!みんなで手分けして……


「話は済んだ?じゃあここからは自由行動ってことにしましょうか。

「ハイ。IDAは謎が多いノデ前々から興味がありマシタ。貴重なデータがとれそうデス。

「拙者も未来の魔法教室でどのような剣術が教えられているか見てくるでござる。

「ええっちょっと待ってくれよ!手伝ってくれないのか?

「いやね半分は冗談よ。

用事があったら呼んでちょうだい。すぐに合流するわ。

「半分って……みんな初めての学校だからって浮かれすぎじゃないか!?

「剣士さんの冒険はいきなり波乱の展開に……!

でもめげちゃダメですよ!調査の準備が出来たら私に声をかけてくださいね!



 ***




「あっ剣士さん!準備できたんですか?

「ああ。それで調査って何をすればいいんだ?

「昔々どこかの誰かがいいました。人の口に戸は立てられぬ!と。

ウワサは生徒たちの口を伝って今もどんどん広まっているんです!

例の姿を消した生徒の話も学校中で広まっています。聞き込みで何かわかるかもしれません。

「わかった。聞き込みならオレ結構得意だよ。

「ありがとうございます!いろんなウワサを聞いてみてください!

一見関係なさそうなウワサでも蓋を開けてみれば意外な真実に繋がっていたりするものなので!

では何か収穫があったらすぐに教えてください!


「よし!早速生徒たちに聞き込みをしよう!


「変なアンドロイドのウワサ聞いた?なんか料理好きでひとりでいると食べ物を振る舞ってくれるんだって。

「ええー!なにそれカワイイ!会ってみたいかも。

「そういえばさっきスカイテラスで見かけたって友達が言ってたよ。あとでいってみる?


「知ってる知ってる。満月の夜にひとりでいると何もない壁から手が生えるってやつでしょ?

「ああ地獄へ誘うようにおいでおいでをしてるらしいぜ。まあ眉唾だろうけどな。




「姿を消した生徒のウワサ?ああそれなら聞いたことあるよ。

スクールの用務員アンドロイドがおかしくなってあたりをうろついてるんだってさ。

はぐれアンドロイドってやつだな。でそいつに目をつけられると異世界に連れ去られちまうらしいぜ。

ウワサだからって尾ひれ付きすぎたよなあ。馬鹿馬鹿しい。


「さあはやく見せるでござる!この教室で教えている剣術を!

「いや……そう言われてもなあ。

このカエル人間の知り合いかい?さっきからこの調子で困ってるんだよ。

……一体なにものなんだ?新手のミュータントか?

変人揃いのIDAスクールといえどこのレベルにはお目にかかったことが……

「何をこそこそやっているでござる!さっさとするでござるよ。

「うわあ!?勘弁してくれよ~!俺は魔術専攻なんだって~!


「……変わった人たち。私になにか用?

私はルイナ。あなた達についてこないかって?

IDAスクールの校則には『素性のわからぬ相手に力を貸してはならない』とある。

うちの生徒の力は脅威にもなりえるから。

あなた達のことがわからない限りついていくことはない。そういうルールだから。


「本当なんだって!いきなり教室が凍りついてさ!俺は間違いなく見たんだって!

「えー?なんか嘘っぽいなあ。夢でも見てたんじゃない?というかそれでなんで無事なわけ?

「命からがら逃げたんだよ!信じてくれよ!それで翌日の学級閉鎖だろ!?あれは夢じゃないって!

「ふーん……。まあでも学級閉鎖って洒落にならないよね。ローグレードの頃以来じゃない?

なんかヤバイ伝染病とか広まってないといいんだけど……。


「あら。来てたの。え?何してるのかって?

ここ景色綺麗でしょ。

今考えると学校って不思議な空間よね。大勢の同年代の子たちと一緒に長い時間を過ごしてさ。

私もハンターになる前は学校に通ってたのよ。

え?また学校に通いたいって思わないのかって?そうね……。

懐かしくなる時はあるけど……それでも振り返ってはいられないわ。私にはやるべきことがあるもの。


「なんか最近校舎の中寒くない?特にこの階で授業受ける時とか……もしかしてこれが冷え性ってやつかな?

「それ私もなんだけど!本当に寒くて寒くて……ひざかけ持ってきちゃった。

「やっぱり!?ひざかけか……私も持ってこようかなあ。

男性教師

「技術は日夜発展しています。最先端の教育を施すためには最新の技術を知らねばなりません。

研究課程では時に現役の科学者でさえ舌を巻くような研究成果にたどり着く生徒もいます。

教えるだけでなく彼らから教わることも多い。我々教師も日々勉強ですよ。


「ヤミリンゴって知ってる?綺麗な青いリンゴで食べると願いが叶うんだって。

そんなもの食べて大丈夫なのかって?さあ……だってウワサだもの。でも願いが叶うなら食べてみたいよね。

「本当にいろんなウワサがあるんだな……。しかもどれも嘘か本当かわからないようなものばかりだぞ。

姿を消した生徒の件に関係ありそうなのははぐれアンドロイドのウワサくらいか……。

たしかすかいてらす?とか言ってたかな……まずはそこに行ってみよう。

はぐれアンドロイドってやつが本当に生徒を連れ去ってるなら一大事だしな。



「先生!今度の研究テーマ決めました!

「あら何にしたの?

「クロノス博士が一瞬だけネットワークにアップした論文知ってますよね?すぐに削除されちゃいましたけど……。

この間ネットの知人にそのデータの一部をもらったんです!そしたらゼノ・プリズマの危険性について書いてあって……。

だから私ゼノ・プリズマの引き起こす影響についてクロノス博士の論文の追試がしたいんです!

「……。

「えーっと……。

「いい研究テーマだと思うけど……プリズマ研究には多額の研究費がいるし一介の学生の手に負えるものじゃないわ。

他のテーマを探しなさい。

「そんなあ……。



「やめるんだサキ!考え直してくれ……!

「放っておいて!あなたと私をつなぐものなんてもう何もない!


「なんだ!?あの二人すごい剣幕で言い争ってるけど……。

ん?あの子が持ってるのは……青い……リンゴ……?

そういえばさっきウワサで願いを叶える青いリンゴの話を聞いたような……。


「私が何をしようと勝手でしょ!もう私に関わらないで!

これを食べれば私の願いが叶うんだから!!

「な……なんだ!?

「サキ!!くそっこの中に吸い込まれたのか!?

「あっ!おい!

「これは……時空の穴とはちょっと違うな。

二人はこの中に吸い込まれたのか?なら助けないと……!



「なんだここ……あの二人は……見当たらないな。とにかく探してみよう。


「チッなんだこれは……びくともしないぞ……。

「あいつはさっきの生徒!

やっと見つけた!大丈夫か!?

「誰だお前は……なぜここにいる?

「二人がここに吸い込まれたのを見かけてさ。ただごとじゃないのはわかったし……。

「………………。

……お前のような男を知っている。あまりお人好しが過ぎるといつか後悔することになるぞ。

「どういう意味だ……?

え……?

いま向こうからすり抜けてこなかったか……?

「この子は……いやそんなバカな……


「……この奥に行きたいの?

じゃあきらきらを集めてみたら?そしたらきっと……

あう……!

……ごめんね。もう喋っちゃダメだって。また……どこかで……

「待て……!

くそ……っ。何がどうなってるんだ……?

「きらきら……この空間の魔物が落とすこの欠片のことか……?

これを集めろって言ってたな。よかったら手伝うけど。

「……あいつを助けるのは俺だ。誰の力も借りるつもりはない。

「待てって!ここには魔物もたくさんいる。一人じゃ危険だ。

「………………。

……もういい勝手にしろ。断る時間も惜しい。

ただお前の身に何か起きても俺は一切取り合うつもりはないからな。

「望むところだ。望むところだ。えっと……

「……ジェイドだ。

「オレはアルド。よろしくなジェイド!

「……馴れ合いはしない。

「頑固なやつだなあ……。


「これは……!

「道が拓けたな……あの子どもの言ったとおりだ。

いま行くぞサキ……!

「お、おい待てって!



「こいつは……

今までのやつとは格が違うみたいだな……!

「……俺の邪魔はするな。不安なら後ろに隠れておけ。

「そっちこそ。危なかったらすぐに下がってくれ!


「やった……!

「待て誰かいるぞ……サキなのか!?

「……しつこい人。放っておいてという言葉が聞こえなかったの?

「そんなことできるわけないだろう……妹のことだぞ……!

「……何もかも今さらよ。そんな言葉には何の意味もない。


「サキの言うとおりだ。愚か者め。

「親父……!?貴様は死んだはずじゃ……!

サキ!そいつから離れるんだ!

「早々に立ち去るがいい。あの時の二の舞になりたくなければな。

「貴様……!

「はっきり言わなければわからないの?それなら言ってあげる。

あなたなんかもう……私の兄じゃない。

これでお別れよ。二度と私に関わらないで。

……さようなら。

「ダメだサキ……!


「ここは……元の学校に戻されたのか?

「……迷っている場合じゃないな。たとえ拒絶されても構わない。

サキはまだ親父に囚われているんだ。……俺が助けなければ。

「何かあったのかわからないけど……

妹のためだもんな。オレにも妹がいるから他人事とは思えないんだ。

「………………。

どこにでもいるんだな。底抜けの善人というやつは……。

「ん?何か言ったか?

「……いや独り言だ。

どうせ断ったところでしつこく付きまとう気だろう。

なら時間の無駄だ。さっさとサキのところへ戻るぞ。

「もちろんだ。スカイテラスに急ごう!改めてよろしくなジェイド!

「……馴れ合いはしない。

「相変わらず頑固だなあ……。





「幻覚?……ううん。私の健康状態は概ね良好。その可能性は低い。

「どうしたんだルイナ?

「アルド。……この壁から何かが生えてた。

「壁から……?

ああそういえばそんなウワサを聞いたような……

この校舎が建てられたとき間違って壁に閉じ込められた女の人がいたとか何とか……

「……ああ思い出した。それなら私も風のウワサで聞いたことがある。

よかった原因がわかって。

「ええっ反応薄いな……!ルイナはそういうの怖くないのか?

「………………?恐いのは原因がわからないこと。正体がわかれば何も恐いことはない。

「そそうか……。いやそうかなあ……?

「正体も何も眉唾だろう。そもそもそんな幻覚を……

「……あれも幻覚?

「………………。

「………………。

「……おいアルド。

「ああ……オレにも見えてる。

「……まさか三人とも同じ幻を見るということはないだろうな。

「おおい!?

「なんだこの壁……通れるみたいだぞ。

「え……っ大丈夫なのか?地獄へ通じてるとか言われてたような気もするけど……

「……地獄?

……上等だ。地獄なら何度も見てきた……!

「ま待てジェイド!オレも行く……っ!


「……あれ入れない……?



「あれ……真っ暗だな。おーい!誰かいるのか?

「ようこそ諸君。キミたちがやって来るのを心待ちにしていたよ。

「………………!!

「君は……この前シータ区画で見かけた……!

「覚えていてくれたんだね。わたしはイスカ。

「この場所は一体……

「ここはIDA防衛執行委員会通称『IDEA』の作戦室さ。

「いであ……?

「校内の治安維持を一任されているいわば警察機構のようなものだよ。わたしはここの会長を任されている。

IDA領内に蔓延る諸悪はわたしたちが絶つ。IDEAの象徴たるこの白制服にかけてね。

で……そのIDEAの会長が俺たちに何の用だ?

「こんな場所に招いておいてただの挨拶ということもないだろう。

「この隠し部屋まで来てもらったのは他でもない。

実は現在我々IDEAはある連続失踪事件を捜査している。失踪事件……?

キミたちも見たはずだ。あの青いリンゴを。

「ジェイドの妹さんが食べたあのリンゴのことだな。ヤミリンゴってウワサされてたけど……

「ヤミリンゴは未知の物質で構成されていてね。口にした者は異空間に取り込まれてしまう。

異空間への扉はしばらくの間外部からアクセスすることが可能だけれど……

……しかしそれも時間の問題だ。

やがて異空間への扉は閉じ外からは手出しができなくなる。すなわち……

「この世から消えてしまう……?

「……ああ。それが現在IDEAが調査している連続失踪事件……ヤミリンゴ事件の概要だ。

?????????????????

「それで機会を伺っていたら……どうだい。キミは自分からこの事件に足を踏み入れてくれたじゃないか。



「ふふ……どうやらキミは天性のお節介焼きのようだね。

「悪かったな……確かによく言われるけど。

「いや悪いなんてことはないさ。むしろとても尊いことだよ。

では早速スカイテラスヘ向かおうか。

「でもスカイテラスは立ち入り禁止だって……

「心配無用さ。立ち入り禁止にしたのは他でもない我々だからね。他の生徒が巻き込まれては困るだろう?

「ってことはあの白い制服の生徒もイスカの仲間だったのか……。

「ああ彼もIDEAの一員だよ。我々には有事の捜査権が与えられている。封鎖などもその権限のうちなのさ。

「なるほど。イスカたちはIDAスクールの騎士団みたいなものなんだな。

「騎士団?変わった解釈をするのだねキミは。

では行こう。時間も限られている。


「………………。

ここでも白制服とは……因果なものだな。

まあいい。俺がすべきことは最初からひとつだ。

あいつらを裏切ることにはなるが……背に腹は代えられない。


「準備が出来たら次の目的地へ急ごう。あまり時間もないからね。


「ぐう……ぐう……

「男子生徒おおい!いきなり寝始めないでくれ!


「あれ……あいつどこかで見たような……

「あ会長!お疲れ様です。

「ああなんだか苦労している様子だね。

キミ起きてくれたまえ。こんなところで寝てしまっては針のむしろだよ?

「むにゃ……うーん……

って……君たちどちらさまー?

「オレはアルド。こっちはジェイドとイスカだ。

「そっかあ僕はマイティだよー。よろしくねー。ふぁあ……おはよー。

「どうしてこんなところで寝てたんだ?しかも立ったまま……

「スカイテラスが使えないから仕方なくここで寝てたんだー。

「サボリ魔ばかりですね……大丈夫かなこの学校。【IDEA男子生徒】

「まあまあ。あまり咎めないでやってくれ。彼には彼なりの事情がありそうだ。

「えヘヘーなんだか珍しいなー。こんなとき僕の方に肩入れしてくれる人がいるなんてー。

「IDAスクールの生徒のことはそれなりに知っているつもりだよ。ぜひIDEAに勧誘したい人材だけれど……

キミはキミでとても多忙のようだからね。

「そうなんだよー。いつも寝場所探しで忙しくてねー。

「ふふ……今回はそういうことにしておこうか。

さてあまりゆっくりしている時間はないね。

当初の予定通り彼らには捜査に協力してもらえることになった。これからは通してやってほしい。

「かしこまりました。リストに載っている人物の通行は許可するようにします。

「ありがとう。では早速いこうか。

「これが顔パスってやつだねー。さっすが頼りになるなあ。

「おっとリスト不整合だね。きみは通すわけにはいかないな。

「えー?そんなあ。三人ともズルいよー。


 ***


「ここが彼女の『夢意識』か……。しかしこの凍てついた空間は……。

「むいしき……?

「「仕組みはまだ未解明だけれどこれまでの調査でヤミリンゴの機能は概ね明らかになっている。

あれは食べた者を謎の異空間に引きずり込みその中である種の夢を見させるんだ。

「こうでありたい」「こうしたい」という願い……それを具現化した夢をね。

それが夢意識と呼ばれる異空間の正体さ。

「待て……ならはこの氷の世界はまさか……

「……キミの妹さんの願ったものである可能性が高い。

「そんなバカな……。

……いや。こんな世界が本心からの願いのはずはない。

サキは親父に囚われているんだ。この空間には死んだはずの親父がいたからな……。

「それでどうするんだ?

「この扉以前は開いていなかったな。ここを進んでみるとしよう。


「チッまた行き止まりか……。

「前と一緒だな……またあの子どもが言ってたきらきらってやつを集めてみるか。なあジェイド。

「……この事件に最も深く関係しているのはキミだ。

今はキミの考えるとおりに動いてくれたまえ。

きっとそれが最善の方法さ。簡単な道のりではないだろうけれどね。

「言われなくてもそうさせてもらう。どれだけ険しかろうと道があるならそこを突き進むだけだ。

……前と同じようにここを突破してサキに会いに行くぞ。

待っていてくれサキ……。


 ***



「まただ……あのときと同じ……。

「やっぱりあの子どもの言ってたとおりだな。偶然じゃなかったんだ。

「ここがサキの夢だとすれば……やはりあの子どもは……

「……どうしたんだ?先へ進むんだろうジェイド。

「……もちろんだ。だが少し待て。

ド俺たちがここに来るのはこれで二度目……何か罠があるかもしれん。

まずは俺が様子を見る。お前たちは下がっていてくれ。

「ああ……。


「親父いるんだろう!

ジェイド俺と貴様だけで決着をつける。他のやつを巻き込みたくはない!

”愚か者なりに考えた結果か。その覚悟だけは褒めてやろう。

「ジェイド!これはどういうつもりだ!

「……悪く思うなよ。

最初から言っていたはずだ。これは俺とサキの問題だと。

俺は一人で行く。誰にも邪魔はさせない。

「待てジェイド!


「くそっどうしたらいいんだ……!

「………………。

いいかいアルド。このことはジェイドには内緒にしておいてくれたまえ。

「イスカ……?


 ***


「少しは学習したらしいな。お前のような怪物と関わった者はみな不幸へ落ちるということを。

「……御託はいい。サキはどこだ?あいつは解放してもらうぞ。

「そんなに会いたいなら会わせてやろう。事態は何も変わらんがな。

「貴様なんということを……!

「どこまでもめでたい男だな。この私がサキを幽閉しているとでも?

「貴様以外に誰がそんな非道を働くというんだ……!

……貴様を倒して俺がサキを助け出す……!

「それをサキは求めておらんのだ。お前の自己満足に娘を巻き込むのはよしてもらおう。

「く……っ!

「たった一人で何かできる?

いやこれは意地の悪い問いだったか。

お前はもう誰かに背中を預けることもできまい。口で助けるというのは簡単だがお前はもう詰んでいるのだ。

……これで終いとしよう。


「下がりたまえ!

「大丈夫かジェイド!


「アルド、イスカ……!?

一体どうやって……!

「話は後だ。キミには対峙すべき相手がいるだろう?

「……これはこれは。愚息のためにわざわざ駆けつけてくれたのかね。

だがこの男には君たちが命を張るほどの価値などない。

我が魔導書の実験に耐えかねておめおめと逃げ出した軟弱者なのだからな。

「魔導書の実験……!?

「ああ。あの魔導書は実に素晴らしいものだよ。

私はKMS社の元研究者でね。会社に指示されて人体を強化する兵器の研究をしていた。

「………………。

「だが……なかなか実りはなかった。私のことを給料泥棒と呼ぶ者もいるくらいでね。

そんな折あの魔導書に出会ったのだ。あれは私にとって起死回生のチャンスたった……。

魔導書から抽出された膨大な魔力を人体に付加すれば強力な強化人間が完成する。

そう踏んだ私は早速そこの愚息に実験を施した。そう踏んだ私は早速そこの愚息に実験を施した。

「……正気の沙汰ではないね。そんな危険な実験をするなんて。

「……余人に私の苦悩はわかるまいよ。

どうあれそこの男は実験の途中で逃げ出してしまった。

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