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【黒ウィズ】メインストーリー 第01章 Story

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最終更新者:にゃん

卜ルリッカ

いにしえの魔道書

異界への扉

魔植物を統べる者

失われた真実 

水源を脅かすもの

忍び寄る影 


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story1 卜ルリッカ



 バロンに指定された通り、君はトルリッカの中央広場へ移動する。

少しして、向こうから一人の少女が駆け足でやってくる。

「はじめまして。キミが魔道士ギルド期待の新人さん? ……うん、いい目をしてるね。それに、とても強い精霊の力を感じるよ。」

この人が……?

「私はウィズ。一応、キミの師匠ってことになってるの。魔道士ランクは……。……どうだっていいか、そんなこと。キミも興味ないだろうし。」

『師匠』、と試しに君は呼んでみる。

「……にゃはは、ちょっとこそばゆいね。ウィズ、でいいよ。」

よろしく、と君は言う。

「うん! よろしくね。さっ、それじゃ早速、魔道士ギルドの依頼――クエストを受けに行こう!」


 ***


「魔道士ギルドには、街の人たちから色んな依頼が寄せられているの。魔物退治や魔道書の解析みたいな、私たちにしかできない仕事も多いけど――。中には街道の掃除やら学校の手伝いやら、変わり種の依頼もあったりするんだ。

魔法使いは人々の奉仕者たれ! とか偉い人が言ってたけど、要するに使いっ走りだよね。精霊の方も、従う人を選ぶってことかな。にゃはははは。

それはさておき、まずキミは訓練からだね。張り切って行ってみよー!」


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story2 いにしえの魔道書



 古代図書館から戻った君は、魔道士ギルドの前に人だかりができていることに気づく。


「おい……聞いたか?」

「困ったことになったわねぇ……。」

「これが本当なら大事だぞ……。」


 ギルドからバロンが顔を出す。

 ウィズの姿に気づいたバロンが、人ごみをかきわけこちらへやってくる。


「何よ何よ、この人だかりは。面白い事件でもあったわけ?」

「面白いコトなど何もない。お前たちに依頼している古代図書館の調査で<零世界>の手がかりが見つかったのだ。」

「……!!」

零世界?

「世界には、私たちがいるこの現実の他に108の異界があると言われている。お前たち魔法使いが、叡智の扉……カードで繋ぐ向こう側の世界のことだ。

だが、そのいずれにも属さぬ世界が存在する。それが零世界。

伝承では、零世界の扉が開かれしとき、暗黒の時代が訪れる……と伝えられている。」

「……にゃは。<暗黒の時代>だって。笑えるよね。」

「だがあの人だかりを見ろ。たかが手がかり一つで、あの騒ぎだ。騒動をおさめるだけで一苦労だぞ。他の魔法使いも、気味悪がって調査から手を引いてしまったしな。」

「ふーん。じゃ、私たちが真相を確かめてきてあげるよ。本当に零世界に関係あるなら興味あるし。」

「遊びではないのだぞ。」

ふと、ウィズが真顔になる。

「“本当に”零世界に関係あるなら。本気にもなるよ、私。」

「……好きにしろ。私にはお前を止める資格はないしな。」

「にゃはは。すねなくてもいいじゃない。」

「……古代図書館へは連絡を入れておく。無茶はするなよ。」

「……にゃは。ま、どうせニセ情報だろうけどね。」


 ***


「それじゃ、行こっか。もちろんキミも一緒に来るよね?」

 君の答えを待つこともなく、ウィズは足早に歩きだす。


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story3 異界への扉



キミがミニドラゴンの群れ倒すと、あたりはしんと静まり返る。


「……ちぇ。やっぱりエセ情報だったみたいだね。ミニドラゴンの影にビビった魔法使いが焦ってギルドに報告した――そんなとこかな。」

『――――。』

 ……?

「……ん? 何か言った? ……ま、いいや。帰ろっか。」

『――――れが。』

 君は、確かに、“声”を聞く。

『――貴様の……導き出した。』

「!?」

不意に、これまで感じたことのない強烈な威圧感があたりを包み込む!

『答えか!!!』

突如現れだそれ”を前に、君は身動き一つとることができない!

「っ……逃げて!!!」

“それ”の吐き出した紫炎のブレスが、君の全身を包み込む!

下級魔法使いに過ぎない君に、あらがう術は何一つとしてない!

「し――しっかりして! 起きて、逃げて!!!」

かろうじて君の意識は保たれているが、立ち上がる気力は残されていない。

“それ”は力量をはかるかのように距離をとりウィズの方をうかがいはじめる。


「……相手の力をわきまえるくらいの知能は持ちあわせてるってこと? ……いいよ。相手、してあげる。」


 ***


「にゃは……なかなかしぶといわね。でも、それもいつまで持つかしら?」


 と。

 死に瀕した魔龍が力を暴走させる!!!


「しまっ――。」


 ***


「っつ……そん……な……。

にゃは……失敗……しちゃったよ……。

このまま……こいつを……ほっとく……わけには……。」

とどめを刺そうと、魔龍が鎌首をもたげる。

「…………。……しょうがない……か……。」

かろうじて保たれていた君の意識が、徐々に遠のいていく。

「……ごめんね。」

それが、君が耳にした最後のウィズの言葉となった。



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story3-2



次に目を覚ましたとき、君はトルリッカのギルドのベッドに横たわっていた。


「……目覚めたようだな。まったく、よく生きていたものだ。」

不思議と、体に痛みはない。

「……図書館は酷いありさまだった。いったいあの場所で何があった?」

君は、記憶に残る全てを話す。

「……私たちが駆けつけた時には、魔龍の姿などどこにもありはしなかった。ただ、焼けこげた古文書と、倒れたお前がいただけた。」

ウィズは!?

「……私が聞きたいくらいだよ。いったいウィズはどこへ消えた? その魔龍とやらは、四聖賢をも上回る力を持っていたというのか!? だとすれば、国中の魔法使いの力をあわせても勝ち目などないのだぞ!?」

君は答えを持ち合わせていない。

「……すまんな。お前にあたっても詮無きこと。今は、ゆっくり休め。そして、全て忘れてしまえ。我々が何をどうしたところで――。この件は、ギルドの上層部がよしなに処理することだろう。」

キミは身を起こすと、バロンに礼を言って魔道士ギルドを後にする。

「……すまんな。」

力ない声でバロンは言う。

キミはギルドの外へと出る。


 ***


 魔道士ギルドの前には相変わらず人だかりができ人々が口々に不安をささやいている。

目を市街へ向けると、商人たちが必死に何かを叫んでいる。


ウィズは、いない。

どこにも。


………………。

…………。

……。


ふと足下へ目をやると、端正な毛並みの黒猫が頬をすり寄せていた。抱き上げる。


「……。」

 猫は、可愛らしい目でまっすぐにこちらを見つめている。やがて――

「…………にゃははははは。」

 !?

「にゃー、ごめんごめん。かんっぜんに、失敗しちゃったにゃ。」

 !?!?!?

「まだわからにゃい? ウィズにゃ、ウィズ。

私もよくわからにゃーけど、気づいたらこの姿になってたにゃ。にゃー、けど、キミが無事でよかったにゃ。」

 まだ君は状況を受け入れることができない。

「そんなに驚く必要もないにゃ。世の中不思議だらけにゃ。それより、聞いて欲しいにゃ。あの魔龍――私のカンが正しければ、間違いなく零世界から召喚されたものにゃ。私がしてやられるにゃんて、それ以外に考えられないにゃ。」

 ウィズは君の手からするりと抜けると、軽やかに地面に着地する。

「さ、じゃあ行くにゃ。」

 どこへ?

「決まってるにゃ。零世界は存在するんにゃよ? こんなに面白そうなことはないにゃ!」

 面白い?

「にゃ? 私が猫になって凹んでるとでも思ったにゃ? 読みが甘いにゃ。むしろ余計なしがらみがなくにゃってスッキリにゃ。

……にゃ、いつまでもこの姿でいるわけにもいかにゃいし……。どこかに零世界を悪用しようとしているヤツがいるかもにゃ。今は、零世界の手がかりが必要にゃよ。そのためには、キミの力が必要にゃ。もちろん、手伝ってくれるにゃ?」

 わざわざ答えるまでもない。

「にゃはは、そう言ってくれると思ったにゃ。

キミにはあの魔龍をラクラク倒せるくらいの大・大・大魔法使いになってもらうにゃ!」

ウィズは楽しそうに駆けていく。

キミは彼女の後を追い、思いを新たに一歩を踏み出すのだった。



卜ルリッカ 後編

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