登龍台の碑
概要
レア度 | 画像 | マス |
---|---|---|
効果
1510
入手方法
イベント、袁洪(梅山の七怪)
物語
「あの夜、僕を探しに町まで来てくれたんだよね。すっかり酔ってて、あなたを傷つけるようなことをたくさん言ってしまった。」
「あんな言葉、本当は口をついた瞬間から後悔してたんだ。でも僕は……」
骨ばった右手で石碑に触れ、若者は深々と腰を折った。声はどんどん小さく、湿っていった。
「次の日、あなたが夜の帰り道で崖から池に落ちたと聞かされた。」
「あの日、あなたはどんな気持ちで帰って行ったのかな。」
立ち上がり、碑文を見つめる苗の目には涙が浮かんでいた。
「僕、もうあなたと同じ年になったよ、兄さん。」
その年、湛はこの登龍台の碑を超えて、山の中腹で崖から転落したのだった。以来、苗はここに来ようとしなかった。子供のころ苗はいつも、兄の湛が町の書院に行くたび、麓のこの石碑まで見送っていた。
湛はいつも、苗の手を取って碑に触れさせた。
「登龍台に触れば、 苗は将来状元になれるよ!」
「僕の前にお兄ちゃんだよ、きっと状元になれるよ。」
そんな兄弟も、いまや一人は帰らぬ人に。この石碑が与えた喜びと苦しみが、苗の心の中で渦巻いた。苗は手をかざして、石碑を軽く叩いた。
「兄さん、僕、今日科挙試験なんだ。」
苗は目の前の青々と茂る山を見上げた。
家はその山の奥にある。
深く息を吐くと、 苗は振り返って老馬に跨り、山野の中に消えていった。
【前の物語】:状元の龍亭
【次の物語】:魁星の祠