魁星の祠
概要
レア度 | 画像 | マス |
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効果
35
入手方法
イベント、袁洪(梅山の七怪)
物語
八年前、周家は天災に見舞われ、裕福だった家庭は一転して困窮した。周は家族を見て、胸を痛めた。二人の息子たちは、家の外で一句ずつ詩を暗唱していた。
鳴呼、と周から思わず大きなため息が漏れた。家にはもはや、子供一人分の学費しか残っていない。いったいどちらを選ぶべきか。周は日夜悩んでいた。
兄の湛はもう三年も書院へ通っているし、弟の苗もそろそろ書院に通う年だ。周は、湛を書院に通わせようと決めた。 湛を早く官府に出仕させれば、周家の再起を図れる。
そして、兄弟の仲は冷えていった。だが周はその様を痛ましげに見ることしかできなかった。
その後、湛は二度も父親のもとにやってきて、弟に勉強をさせてやってくれ、自分なら仕事を探すから、と訴えたが、いずれも周に断られた。
毎年、湛が科挙に出かけると、周はいつも供え物を持って魁星の祠を訪れ、息子が良い成績をとれるよう祈った。
しかし、祈りもむなしく、湛の科挙がうまくいくことはなかった。周は失望し、長男を叱りつけてしまった。
その後、苗は家を出て、湛は崖から落ちて亡くなった。 胸が張り裂けんばかりの苦しみに、 周は一夜にして髪が白く染まった。苗とは、湛の葬儀の時に会ったきりだ。
先日町から帰ってきた人から、 苗が今年の科挙に参加すると聞いた。 いつの間にか魁星を信じられなくなっていた周だったが、酒と肉を入れた籠を担ぎ気づけばまた魁星の祠にやってきて、苗の合格を祈っていた。
周は魁星に酒を注ぎ、自らも飲み始めた。
周は湛が亡くなってからこの方、酒を断っていた。それが今、酒壺半分を二口であおる勢いで飲んでいた。
酔いが回る。
今日は、長年心の中で抑えていた言葉を、全て吐き出すつもりだった。
「息子の一人は死に、一人は家を出てい った。」
「子供二人を書院に行かせる余裕がなかった。一人しか選べないなんて、心苦しいに決まってるだろ。」
周は溜め込み続けた胸の苦しみと痛みを一気に吐き出し、祠のそばで酔いつぶれた。 眠りながらも、口からこぼれるのは「魁星さま、どうか苗を合格させてください。」という祈りだった。
山に風が立ち、 周の体にふわりと一枚、薄い毛布がかけられた。
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