【白猫】The World of Guilty 2 Story3
The World of Guilty 2 Story3
目次
story9 罪についての詳察
<一冊の書物がある。タイトルは『罪についての詳察』>
罪の意識とは何か……
それは集団に対する負い目だ。個体の生存よりも、種全体の利益を優先する意識。
他者への共感という、ある種の倒錯がもたらす負の感情である。
ならば、他者への共感が存在しない生物は……
罪なるものを理解しない。
…………
……
<アシュレイはルウシェと離別し、街をさまよっていた……>
――最初から、結論は出ていた。罪に救いなど必要はない。赦しなど、贖いなど無意味だ。
――断罪あるのみ。
この俺もいずれ裁かれよう。その前に――
教会の罪を暴き、裁きを下す。……しかし、それでどうなる?
――誰も救われはしない。
…………
……
ああ、聖女様……
ついに聖女様が、お戻りになられた……!
ご無事で何よりです、聖女様……
まずはごゆっくり、お休みくださいませ……
至聖所に向かいます。
――聖女様。
私にはわかりました。己のなすべきことが。
では――
私はこの身を捧げて償います。全ての罪を。
ルウシェ、あなたは……!
えへへ……名前で呼んでくれましたね。そのほうが好きです。
……あなたは……
――目覚めさせます。本当のアラストルを。
…………
……
<ルウシェは、生まれ育った部屋に帰ってきた。
そこが、ルウシェの知る世界の全てだった。>
……そのままにしていただいていたんですね……
……ええ。聖女様。
私、騎士様と一緒に、いろいろなところに行さました。
いろんな人と会って、いろんな事を話しました。
本当に、楽しかったです!
全ての罪を贖うおつもりですか。
だって……
世界は罪に穢れていましたから。
……あなたは、外の世界を……自分の目で見たのでしょう。
はい。騎士様と一緒に。
その上で、そう思われるのですか。
はい!
心をお決めになられたのですね。聖女様。
教皇様……
貌下――!
お久しぶりです。聖女様。
ああ、アラストル様。あなたにもお会いしたかった。
教皇様、私は――
聞き及んでおります。ですが……よくお考えを。
聖女様のご決意は、誠に尊いものです。されども……
罪とは本来、一人一人の人間が背負うものではありませんか。
人にとって、罪は重すぎるものです。
私が罪を背負い、聖霊の御使いが裁きを下せば、人は救われます。
聖女様一人を犠牲にした救いに、何の意味がありましょう。
意味はあります。
――私は、そのために生まれたんです。
story10 獣の目覚め
<大聖堂の深部には、小さな地下墳墓がある。
歴代の聖女の亡骸を納めた場所であった。>
――私が背負えていれば――
あの、アラストルを――
でも私には無理だった……ただ一人の罪さえも、私には重すぎた……
あの子は紛れもなく、アラストルを背負うために生まれた子……
あれほどの罪を背負って……さらに罪を背負うなんて……
……罪に贖いを。
罪に贖いを。
聖女様の決意は固いようです。
私も、そのように、受け取りました……
騎士アシュレイとの旅が、もたらした答えが……このようなものになるとは……
貌下……
私は心から……良かったと思いました。
騎士アシュレイが……あの子を解き放ってくれたことを。
聖女などではない、ただのルウシェとなって……
自由に生きてくれればと……
――教会は、数百年に渡り、聖女の再来を夢見てきました。
罪の聖霊を背負い、世界を救った贖いの聖女。我らの信仰の起源。
<原罪のアラストル>を背負える器を……
我ら聖霊教会は、資格をもつ少女を探し、あの聖霊を背負わせてきた。
それこそが罪なのかも、しれませんね……
ううっ……あああっ……
教皇様……聖女様を……どうか……
――罪に、贖いを――
…………
……
ついに、この時が……
聖女様が、真のアラストルを……目覚めさせる時が……
全ての人の罪を背負うために……
なんという慈愛……
祈りを捧げよう。罪に贖いを!
罪に贖いを!
…………
……
罪に――贖いを――!
私に宿った罪を捧げます。
目覚めてください……贖い獣よ……!
騎士様を苦しめる罪を……全てこの世から……
アラストル……?どうしたの……?
私は大丈夫だよ。
そっか。アラストルはずっと……
心配してくれてたんだね……
ありがとう。ずっとそばにいてくれて。
だから止めないで。これが私の役目だから。
私は嬉しいの。罪深い私が、役にたてることが。
――アラストル!?
――えっ。
<巨大な聖霊が、アラストルを飲み込んだ……!>
これが……アラストルの、本当の姿……
原罪のアラストル……!
うううっ……!!あああっ!!
…………
……
――なんだ、このソウルは!!
至聖所の方角だ!!一体何が起こっている!
あそこでは今、聖女様が祈りを……
アルマたちが怯えている……まさか本当に……!!
誰も成し得なかった、原罪の聖霊の復活を……!
おおおっ……!?な、何だ……
心が、解き放たれる……
あああ……この救済は!この赦しは!
見ろ!罪が!罪がこの島に……聖女のもとに吸い寄せられる!
――罪が――
……罪が、流れ込んでくる……
私を通じて……原罪のアラストルに……
あらゆる罪が……
story11 救罪という罪
ううっ……
ああ……心が……満たされていく……
俺は……罪人だ……
――これはどういうことだ。デュナミス!!
<アシュレイはデュナミスを出し、罪の略奪に耐える。
かつてデュナミスは、アラストルに食われた罪を、奪い返した。>
この感覚は、あの時の……!!罪を食われた時の……!!
<人々は、空を見上げながら、赦しを乞う。>
これがお前の救済か……ルウシェ……!
…………
……
<島中を巡ったアシュレイは、救済が島中に及んでいることを確認した。>
誰もが罪を悔いている。アラストルの力を……際限なく拡大させたようだ……
これが救いというのなら、そうかもしれないな……
もう武器をもつ必要はない……
争いはもう起こらない。我らは救われたのだ……
人の弱さが、人らしさだというのなら、俺はもうそれには飽きた。
奇跡とやらに救われてしまえばいい。
所詮お前たちは、自らを救うことすら、できなかったのだ……
ああっ……私は……ありがとうございます!
ああ、なんて……素晴らしい……
みんなが泣いてる……どうしたのかな……
――――だが。ルウシェはどうなる?
全ての人が救われたら、ルウシェはどうなるのだ……?
……お前は、アラストル!?
何のつもりだ。俺に何を……!
<アラストルは、デュナミスを通じ、アシュレイに意志を伝えた――>
――アラストルよ。お前は――原罪のアラストルの写しなのか。
本来お前に心はなかった。役目を果たすための分身に個別の意志は不要か。
だがお前には意志がある。ルウシェを守ろうとする意志が。
――心が芽生えたのか。罪を食らううちに。
ルウシェは犠牲となるのだな。歴代の聖女のように。
――救えというのか。罪の救済を行おうという、贖罪の聖女を。
<アシュレイは理解した。今このアルマは怒っている。>
ああそうだ。我が断罪の聖霊よ……
聖女たちを犠牲にし続けた罪。ルウシェに全てを負わせた罪。裁かずにいられるものか!!
――本来のアラストルに、取り込まれたのか――
お前の思い、受け取ったぞ。
story12 赦しへの贖い
<ルウシェは、懸命に祈る……>
騎士様――私は――
あなたがなぜ苦しんでいるのか、わかりません。
罪……罪が何か、私にはわかりません。
私は、誰かの心の苦痛を、取り除いているだけ。
どんな罪も、私には愛しいもの……
…………
……
ああ、我々の罪が……消えていく……
教会のためとはいえ……我らはなんということを……
しかし、すべては……救済をもたらさんがため……
ううっ……!
アルマよ、私の罪を……
アラストルに捧げてはなりません。
あの子にこの思いを……知られるわけには……!
……罪に贖いを……
貌下……?
罪とは人の業より生じるもの。
この世に生まれ落ちたときより、人は罪人なのです。
どうして。貌下には罪が存在しないというの……?
今より聖霊教会は、生まれ変わるのです。
おお……これこそが慈悲……
奇跡だ……我らは奇跡を前にしている……
…………
……
デュナミス――俺を罪のもとに誘え!
うおおおおっ!!
<デュナミスとアシュレイは、心を重ねる――
使い手と聖霊は、一つとなって飛んだ!>
…………
……
<聖霊教会の中枢たる大聖堂に、集まる罪……
その罪を追って、断罪のアルマは翔ける。>
……ルウシェ。世界中の全ての人間が、救済を望んだとしても……
俺だけは拒む。人々より奪った罪――返してもらうぞ!
…………
……
世界の罪が集まっていく……
……奇跡が世界を変えてしまおうとしているのか。
――なんだ!?このソウルは――
凄まじいソウルが、島に近づいている!!
はあ、はあ……堪えるな……これは……
騎士アシュレイ……!?
ルウシェ……!!
どこへ行こうというのだ。救いが訪れたというのに。
……罪を食われたのか。
……然り。我らは赦された。
では祈りでも捧げていろ。俺は聖女に用がある。
貴様……!聖女の救いを踏みにじるか!
聖女に手出しはさせん!!
……俺もお前たちのように、罪を手放せば……そのように思えるのか?
アルマ達よ!奇跡を守れ!
――俺は奇跡を断罪する。
story13 誰がために聖女は
はああっ!!
邪魔を――するな――!!
ぐふっ……!!こんな、ところで……
聖女様を守れ!!
ルウシェは至聖所か――
どうして来たのですか。異端者アシュレイ。
……司教か。
あなたにできることは、もう何もありません。
<――かつて司教は、アシュレイのアルマを奪い返そうと試みた。>
……どうしてお前は、デュナミスを奪おうとした。
――断罪のアルマは、異端者にはふさわしくありません。
デュナミスは聖霊教会の禁忌。
原罪のアルマを止められる、唯一のアルマなのだろう。
――何故それを。
ただの推察だ。お前は――――
デュナミスから、ルウシェを守ろうとした。
罪人が、賢しいことを……!
……司教。お前はこれでいいのか。
この奇跡は、あの子の人生の証です!
だったらなぜ、お前は罪を捧げない。
私は…………!
ルウシェは命を捧げるだろう。
罪に穢れた世界のために……自分に罪を背負わせ続けた、この世界のためにだ!
俺はそんな救いなど認めん。
貴方のしていることは、ただの自己満足……
……そのとおりだ。俺は世界など、救われなくていい。
この罪人が!!
我らが断罪してやる!!
下がりなさい。
……司教様……!!
この罪人は異端者ですらない。ただの愚か者です。…………我らが手出しをするまでもありません……
……感謝する。
…………
……
騎士アシュレイ。よくぞここまでいらっしゃいました。
貌下……いや、教皇よ。俺はこの罪を断罪する。
罪とは何ですか。
とぼけるな……!
そうですね……我らのしていることは、赦されることではない。
原罪にたどり着くまで、幾人もの少女が犠牲となりました。
聖女ルウシェもまた、その犠牲の一人。
理解しているのであれば、どうして止めなかった!
望んだのですよ……!彼女たちが!!
何だと……!!
罪深い世界を憂い、罪の聖霊を背負う……
その選択をしたものが、聖女と呼ばれるのです。
我らが強制をしたことはありません……
お前たちが、追い詰めた結果だ!
追い詰めたのは。この世界でしょう。我らは機会を与えただけ。
論弁を弄するな!!
騎士アシュレイ……聖女ルウシェが。どうして己が身を捧げたと?
……どうして、だと……
貴殿のためです。
馬鹿な……どうして俺のために……
おわかりでしょう。聖女がいかに無垢であったか。
覚えていらっしゃるでしょう。聖女と共にあったのは、誰であったか。
……あなたを助けるためなのです。罪の苦しみから。
……俺が……追い詰めたと……
騎士よ。心のままにありなさい。あなたの思いのままに。
……なすべきことをするのです。
救済が望みではなかったのか。
聖女の決断こそが――聖霊の意志です。さあ、お行きなさい。
……お前の罪は、いずれ裁く……
…………
……
再び、この場に来るとはな……ルウシェのために……
俺のためだというのなら……!俺はこの意志を、貫かせてもらう!!
おーっと。
お前は……!!
これから楽しいことになるんだ。ちょっとここで時間を潰しといてくれ。
おいおい。迷いもなくバッサリか。いいねぇ、最高だ。
アルバといったな……どういうつもりだ。
そっちこそ、どういうつもりだ。世界から罪がなくなるんだ、結構なことじゃねえか。
このような救済など、それこそが罪だ!!
なるほどイカれてるな。ああ、そうそう……
お前の妹が焼かれる時、なんていったか知りたいか?
――何をいっている。何故お前が!!
お前は俺達と殺し合ったろ。俺を信じる連中を、たーくさん殺した。
恨んでるんだぜぇ?ぎゃははははは!!
罪の教団……!!
そうだ……その目だよ……俺は見ていたぞ……信者たちの目を借りてな。
遊ぼうぜえ、騎士様!!
story14 贖われし罪
お前たちはいつもそうだ……
自分で全部決めるのに、やけにこだわるよな。
少し前までは……自分の意志よりも、神様とかの声を信じてたのに。
変わっちまったよなあ。お前たちは。
うっ、うううっ……
<連戦による疲労。浅からぬ傷。アルマなくしては命もない。>
まあ……今のお前たちには、それが気持ちいいんだろう……
だが忠告しとくぜ。少しは自分を疑ったほうがいい。
ぐっ……体が……!
はあ……はあ……はあ……
<アシュレイは立ち上がる……>
デュナミスの力を、傷の手当に使う……持ってくれよ……!
これは――
<ただならぬ気配に、騎士は、至聖所へと走った――>
…………
……
ルウシェ!!
<そこにあるのは……
あまりにも巨大な、ソウルの結晶――>
騎士様……!
これが、アラストルの真の姿……?
こいつが――救済をもたらすだと!?
――ありがとう、ございます。
……なぜ礼を言う。俺はお前を止めるために、ここに来た……!
やっぱり……騎士様は……聖霊の御使いで……
私に裁きを下すために、いらっしゃったのですね。
俺はただの人間だ!
あなたがいたから――私は……知ることができた……世界の罪を……
この罪を背負うために、私は生まれたんです。さあ、みなさんの罪を、私にください……
<聖女の姿は――原罪のアラストルの中に消えていく……!>
デュナミスよ――断罪のアルマよ……
お前の流儀ではなかろう。だが今は、俺のわがままを聞いてくれ。
原罪より聖女を奪還する!!征くぞ、デュナミス!!
The World of Guilty 2 Story3