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【黒ウィズ】シュガーレスバンビーナ2 Story6

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作成者: にゃん
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絶望の監獄、スロータープリズン。その一画に、今は使われていない牢獄がある。

その牢獄の床に染みついた痕がなにを示しているのか、知る者は少ない。

そこにかつて閉じこめられていた、ひとりの少女の想いも、今となっては、知ることができないだろう。

その扉を開ける鍵は、とうに失われてしまったのだから……。

だがもし、その鍵を復元することができるのならば、あるいは――



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いつの間にか、キルラの部屋にあった鍵。それがどこのものなのかは、ひと目でわかった。

祖父マディーロが父母を殺したと知った時、彼女は絶望した。

「なにを嘆くキルラ。実の息子とはいえ、あれはコルテロを裏切った。裏切りには罰を。当然ではないか。お前は賢い娘だ。時が経てば、わしの正しさにも気づこう。少しばかり、頭を冷やすがいい。」

そう言って、マディーロは孫娘を、監獄の一室に閉じこめた。この鍵は、その部屋の鍵だ。

キルラの胸が、不穏な脈動をはじめる。

行くべきなのか、あの部屋に……。

そこには、封じた思い出がある。忘れることにした真実がある。

行くな、と自分の心が止めている。だが、鍵の出現は、なにかの導きのように思えた。

今回の作戦がうまくいけば、激動がはじまる。バビーナファミリーは、もう止まることができない。

「……行こう。」

キルラは立ち上がり、鍵の指し示す部屋へと向かう。

ヴィタ・バビーナと初めて出逢った場所へと――

祖父マディーロに異を唱え、牢獄に入れられたあの時、キルラは消えることを望んでいた。

いっそこのまま……。

飲まず、食わず、眠らず――緩やかに自らの生を終えようとしていた。

もし、それでも生きろというのなら――

(誰でもいい……私の成長を止めてくれ……。あんな獣に、させないでくれ……)

口にした言葉ではなかったはずだ。心の中でつぶやいた言葉のはずだった。

なのに、閉じこめられてから、7日ほどが経ったある夜、牢の外に、それは立っていた。

「なあ、この辺で、誰か私を呼んでいなかったか?」

夜の闇に浮かぶ血のように赤い月。それがそのまま人の形をとったものにキルラには思えた。

「……そうか、お前か。」

それは、鍵のかかっていたはずの牢の扉を平然と開けると、力なく座りこむキルラの前に立った。

「で、なんの用だ?」

衰弱が見せた、死の間際の幻影だと思った。だから、キルラはすべてを語った。

自分の苦しみを。自分の絶望を。自分の願いを

長い時間をかけてすべてを聞き届けると、それは「ふうん」と興味なさそうに鼻を鳴らし、それから言った。

「じゃあ、大人になるの、やめるか。」

それは奇妙な鍵を取り出し、キルラの前にかざした。

「これは〈奴隷の鍵〉。この鍵を使えば、お前はもう、大人にならなくなる。ただし、人間でもなくなるけどな。それでも、大人になるのを拒むか?」

荒唐無稽な言葉を信じたわけではない。それでも、心は迷いもなく答えを出した。

「大人に――獣にならないで済むのなら、なんだっていい!」

「わかった。けど、その代わり、私の願いも、ひとつ聞いてくれ。

いまから私がお前の心に鍵をかける。そうしたら、お前が私の心に鍵をかけてくれ。

家族がほしいんだ。大人にならない私とお前で、ずっと一緒にやっていこう。きっと楽しいぞ。お前、名前は?

「キルラ。あの……あなたは?」

「私か?私は……たぶん……ヴィタ。みんなはそう呼んでいた。」

「ヴィタ……私の、家族……」

「そうだ。今日から私たちはファミリーだ。さあ、いくぞ、キルラ。」

ヴィタが手を差し伸べる。キルラはそれを握った。強く、強く。

「ええ、ヴィタ。あなたが共にいてくれるなら、どこにでも。」

それが、バビーナファミリー、はじまりの瞬間。


「そうだ。いいぞ。そしたら、そのまま、私がお前にしたように、胸元に差し込むんだ。」

だが――

「よし、お前の心に鍵をかけた。これで、お前はもう大人にならない。

約束通り、次は私だ。さあ、この鍵を持ってくれ。」

「はい。」

「そうだ。いいぞ。そしたら、そのまま、私がお前にしたように、胸元に差し込むんだ。

……どうした?早く鍵をかけてくれ。」

「は、入りません……!どうやっても、鍵が入っていきません!」

……ヴィタには〈奴隷の鍵〉は使えなかった。だから、あの錠前も、人形も、フェイク……。

それはファミリーでも私だけが知っている秘密。けれど、もっと大きな秘密は……。

鍵はかけられなかったのに、あれからヴィタが、成長をしていないこと……。

そんなことは忘れようと思っていた。だが、忘れることはできない。あれからずっと考えている。

ヴィタ・バビーナ――あなたはいったい、何者なんですか……?

無人の牢獄に答えるものなどいるはずもなく、キルラの問いは、夜の闇へと溶けていくばかりだった……。



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ジジリリリリリリリリ

ガチャ。

「もしもし。俺です。

ええ、無事に終わりました。すべて予定通りですよ。

スロータープリズンは破壊され、市長は消えました。

これで、ヤツラも本格的に動き出すでしょう。これまで機を窺っていた周辺都市のファミリーもね。

変わりますよ、ビスティアは。なにもかもが無秩序の、力だけが支配する街。真の魔都にね。

……。ええ、もちろんです。バビーナの終わりも近いですとも。その時こそが、あなたの復活にふさわしい。

……。ええ、もちろんです。バビーナの終わりも近いですとも。その時こそが、あなたの復活にふさわしい。

このルポーティ・ルファンにおまかせを。すべてはあなた様のために――

ドン・ガレオーネ。




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