【黒ウィズ】聖サタニック女学院2 Story
2017年8月18日(金)
聖サタニック女学院2 Story0
魔界乙女の集う学び舎聖サタニック女学院。
そこでは日夜、立派な魔族になるために、生徒たちが勉学に勤しんでいた。
はずであった……。
rなんだこの夏休みって制度は……。休みが長すぎるだろ。
Uそうだね。こんな大きな建物に私たちだけじゃ、なんか寂しくなっちゃうね。
v俺は静かでいいと思う。
r寂しいとか静かだとかじゃない。……暇だ!暇すぎるぞ!学校に誰もいないとモ~レツに!暇だ!
が、いまは夏季休暇中で、学校に生徒たちはいなかった。
やむを得ない理由のあるルルベル、ウリシラ、ズローヴァ以外の生徒は部活動などで時折顔を出す程度だった。
U宿題くらいしかやることないよね……。
r宿題なんて休みが始まって3日で終わってしまったぞ!いまの楽しみといえば闇電波体操の皆勧賞を取るくらいしかない!
Uルルベルさん、ちゃんと毎朝通ってるよね。
r当たり前だ。お菓子がもらえるからな!闇電波体操第三、始め~!
ルルベルは身体を大きく回して、最近の日課である閻電波体操第三の動きをウリシラに見せつける。
rふははは!まずは腕を下から前に伸ばし、相手の眼を狙う構え~!
イチ、ニイ、サン、シ!眼を狙う!眼を狙う!ニイ、ニ、サン、シ!執拗に~眼を狙う!眼を狙う!
「ふははは!次は、身体を回し腕を大きく横に振って希望を打ち砕く波動~!」
rイチ、ニイ、サン、シ!打ち砕く!打ち砕く!ニイ、ニ、サン、シ!根こそぎ~打ち砕く!打ち砕く!
……って、なんだクルスじゃないか。
突然問こえた掛け声の方を向き直ると、そこには聖サタニック女学院の理事長クルス・ドラクが立っていた。
cさすが、毎朝一番に集合場所に来るだけはあるね、ルルベルさん。キレが違ったよ。
r何をいまさら……皆勤賞の最有力候補だぞ。他の者とは意識からして違うからな。
cふふふ。誰も勝負しようとも思っていない所ですら、勝ちを狙う姿勢。流石ルルベルと言った所かな。
rで、何の用だ?お前がここに来るのは珍しいな。
cそうそう。今日はみんなに良い報告だよ。
クルスがそう言うと、彼の頭の上にひょっこりとミィアの顔が出た。
m旅行だよ、みんな旅行に行くよ!
U旅行?ミィアちゃん、旅行ってどこに行くの?
mカントリーハウスだよ。ほら貴族がバカンスに行くところ。
理事長の紹介で私たちも行けることになったんだよ。
rvUへえー。
m反応うっすー……。
cまあ、みんな魔界のことには疎いから、仕方がないことじゃないかな?
でも、いまから行く所は、ルルベルさんやスローヴァさんとも関係のある所なんだよ。
rあたしはカントリーハウスなんて行ったことないぞ。
c行けばわかるよ!
クルスは力強く言い放つが、ルルベルは首を傾げたままだった。
見ると、ミィアが床に魔法円を書き込んでいる。一通り書き終わると、立ち上がって、手でその魔法円を示す。
m移動用の魔法陣出来たよ!
v気が早いな、子孫。
mこちとらヤガダ一族でい!気が早えのが取り柄なんでい!
vそうなのか?俺とはだいぶ違うな。
mいんや。なんとなく言っただけだよ。
rお前はもうヤガダ一族を名乗るな。
mひどいなあ、ルルちゃんは。さて、ではでは、魔法陣を発動させちゃうぞ。Moooo !
ミィアは牛めいた掛け声を上げながら、拳を振り上げる。すると、描かれた線に炎が走った。
炎の描線が生まれていくのを眺めていたウリシラは、ふとあることに気づく。
Uミィアちゃん。これ、召喚用だよ。
mえ?あ、ホントだ。
r気が早いというか、雑なだけだな。
wにゃにゃ?
気がつくと、君はかって見たことのある学び舎にいた。
rあー!ニンゲン!
wにゃ?ルルベルにゃ?ということはここは魔界にゃ?
みたいだね、と君はウィズに相槌を打った。
君はあの騒々しかった教室が、いまはずいぶん静かなことに気がついた。
U久しぶりですね、ニンゲンさん。ミィアちゃんが間違えて呼び出しちゃったみたい。
事情を訊いて、君は少し納得する。たしか前もそんな登場の仕方だった。
ミィアの顔を見つけようと、君は周囲を見回す。と、なぜかミィアは君の足元にいた。
ガチャリという鉄が組み合う重たい音がすると、ミィアは顔を上げる。
mこれでよしっと!
w何したにゃ?
m足かせだよ。今度は逃げないように。
え?外してほしいんだけど、と君は訳がわからなかったので、ミィアにそう言った。
mえ、なんで?
向こうもこちらの言葉の意味がわかっていないようだった。
cでは、改めて、ニンゲンも交え、旅行に出発するとしようか!
rmおー!
どうやら、自分も頭数に入っているようだ。半ばあきらめ気味に君は足かせの重りを持ち上げる。
それは魔界で最も華麗な一族の、最も悲しい物語。
女学院の夏休みを利用して、魔界のカントリーハウス〈アルトーパーク〉へ旅行に行くことになった「君」とルルベルたち。
話によると、その場所にはルルベルと因縁浅からぬ人物がいるということであった。
だが、一行を待っていたのは、まさしく惨劇であった。
楽しい旅行は一変し、「君」たちは、恐ろしい連続殺人事件とある一族の悲しき秘密と対峙することとなった……?