【黒ウィズ】Birth of New Order 3 Story2
Birth of New Order 3 Story2
Birth of New Order 3 Story7
登場人物
story
君はもちろん、クロッシュの事も知っていた。
ギガント・マキアでのクロッシュは、大鎌と大剣を振り回し、無数の審判獣相手に互角以上に戦った。
しかし、最後はイスカを逃がすために全身を審判獣に食われてもなお戦い続け……最後は、立ったまま息絶えた。
ちょっと喋りすぎなんじゃない?と君はウィズの口を塞いだ。
あんな悲劇は、二度と繰り返させてはいけない……。そう思うと言わずにはいられなかったにゃ。
クロッシュは、死んだと思っていた妻のトロスと思いがけず再会し――直後、彼女を斬った。ウィズはそのことを話している。
だが、まだ起きても居ないことを今話したところで、ちんぷんかんぷんだろう。
未来のことを明かすのは、少しずつの方がいい。焦っても、向こうの疑念を招くだけだ。
怪しまれると思ったのに、予想外に食いつかれてしまった。
魔法が誤解されている。君は、慌ててメルテールたちが抱く魔法への誤解を解いてから仕切り直す。
未来で起きたギガント・マキアのこと――そして最悪の事態を避けるためになにをするべきかを説明する。
聖都出身のクロッシュは、聖典の内容を知っているため、君たちの話を理解してくれた。
魔法使いさんが持っている剣に触れた時、私はもうひとつの人生を歩んできたもうひとりの私に出会ってしまったの。
もうひとりの私が言うの。目の前にある恨みや、憎しみだけを追いかけるなって……。
だから戦争はやめた方がいいって……そんな気持ちになったの。
わかった。イスカが、戦争をやめたいって言うなら……やめよう。戦争。
リュオンやサザたちのサンクチュアとは、また違った団結がここにはあった。
考え方の違う、ふたつの勢力。この両者の団結がなければ、ギガント・マキアは回避できない。
さて、どうすれば、両勢力を結びつけることができるだろうか?
***
その意味は、わかるはずにゃ。サンクチュアは、インフェルナと和平を結びたいと考えているにゃ。
それよりも、サンクチュアが、こちらと和平を結びたいと考えるはずがなかろう。きっとなにかの罠だ。
戦争のことは、頭首のマルテュスと話し合って決めるゆえ、身体を休めておれ。
イスカは、落胆したように頭を垂れた。
イーロスは、元はサンクチュアの騎士。聖皇と聖堂が支配するサンクチュアを変えたくて、インフェルナに寝返った人。
時間を遡る前の世界で聖皇ベテルギウスを斬ったイーロスの姿が、まだ君の記憶に生々しく残っている。
イーロスたちを和平に傾かせるには、やはり、黒幕であるマルテュス――大教主の正体を暴くしかないだろう。
戦争は、あの男の指揮で行なわれていた。野望をすべてを暴露したのは、聖皇が死んで後戻りできなくなってからだった。
サンクチュアとインフェルナは戦争状態。そう易々と往来できないはずにゃ。どうやって移動していたにゃ?
熱い取っ手に苦戦しながら熱した鍋を運んでくる。
ふたりで熱々の鍋を運んできた。結果、どちらも手を軽く火傷したが、おかげで中の芋は熱々のまま食卓に届けられた。
君はメルテールに、サンクチュアと行き来する方法を訊ねた。
ただ、晶血片を取り扱う商人だけは、聖域へ入ることを許されるかな。
晶血片とは、インフェルナで取れる赤い結晶。死んだ審判獣の血肉が固まり結晶化したもので、様々な力が充填されている。
両陣営とも根はいい人たちだ。手を結んでもきっと上手くやれるだろう。
だが、両者の間にわだかまる復讐心や猪疑心といった些細な感情を上手く操り、戦争を起こそうとする者がいる。
それが、マルテュス。あの男の正体を、ー刻も早く暴かなければ。そのためには証拠がいる――
突然、武装したインフェルナの兵がやってきた。そして、君たちを取り囲む。
story
君とウィズは、地下牢へ投獄された。
イーロスはイスカには優しいけど、私たちには優しくしてくれないようにゃ。
ここにぶち込んだということは、サンクチュアとの和平を声高に叫ばれると、都合が悪く感じる人がいるわけか。
そうかもね。けれども、お陰で向こうの魂胆がわかった。
イーロスは、この世の秩序を保持しているサンクチュアを倒したい。その情熱をマルテュスが巧みに利用している。
利用されてるイーロスが、マルテュスの本心に気づいていないことが悲劇だ。
やろうと思えば、鉄の檻を魔法で焼き切れないこともない。
君は慌ててウィズの口を塞いだ。喋っていたのは、自分ひとりだと言う。
予言ではない。この目で実際に見たことだと、君は反論するが、ー笑に付された。
君に口を塞がれていたウィズが、我慢できないとばかりに口を開いた。
とても落ち着き払っている。まさか、本当にこの男は大教主と同ー人物ではないのか――
口元を歪めてから、マルテュスは去っていく。余裕ある態度は、自分が絶対優位にあるという確信から来るものだろうか。
食事が運ばれてきた。ふかした芋とほとんどお湯のようなスープ。
さっそく食事に舌を付けようとするウィズを君は慌てて止めた。
qはい。突然苦しみはじめまして……。
qしかし、あの薬は――
マルテュスは、もっていたナイフで兵の喉をかききった。
冷静な頭首は、インフェルナ人を虫けらのように扱う残忍な大教主へと変貌していた。
よそ者と黒猫が、重なるように冷たい石畳の上に倒れている。
解毒剤を持っている。正直に話せば、命だけは助けてやらんこともない。
毒を盛ったのは、お前だったのかと君は喘ぎながら訊ねる。
サンクチュアの大教主であるお前が、なぜインフェルナの頭首に化けている?
やはり、聖皇を殺してエンテレケイアを覚醒させるためなのか?
君は、突然立ち上がってマルテュスに毒入り食事のお礼のー撃を食らわす。
爆轟により、鼓膜が激しく震動した。遅れて地下牢の辺りから黒煙が立ち上る。
まるで反逆の狼煙のように、インフェルナの空を黒く染めていく。
傷だらけの身体を引き摺りながら歩いてくる。爆発に巻き込まれたマルテュスは、全身に怪我を負っていた。
怪我の治療を行おうとイスカが近づく。そのイスカの首元にマルテュスは刃物を突きつけた。
黒い煙にひとつの影が浮かび上がる。君たちは、爆風を間近で受けながらも魔法による障壁によって、無傷だった。
イスカを離せ。狙いはこっちだろと君は冷静に言う。
頭首マルテュスは、おぞましい悲鳴をあげながら、狂ったように首を振りたくった。
君たちは、肉が急激に膨張していくおぞましい音を聴いた。マルテュスの身体に何かが起きている。
身体が漆黒に染まっていく。影が、マルテュスを飲み込んだように見えたが、そうじゃない。
マルテュスが影を飲み込み、闇へと変貌したのだ。
肉体を変異させたマルテュスは、上体を仰け反らせて狂ったような哄笑をあげた。
これは、インフェルナ軍滅亡の筋書きだったのだがね……。結局、舞台の幕が上がることなく頓挫するとは!
これまで散々人を利用し、沢山の人を戦争で死なせておきながら、開き直った態度に君は怒りが止まらない。
ではなぜ、審判獣が人間同士の戦争を焚きつけるのだろう?
人質にしたイスカを押し出して盾にしている。君たちは、うかつに手が出せなかった。
先ほどとは違う存在の声が、マルテュスだったものの身体から放たれている。
イスカは、逃げ出そうと抵抗を試みる。だが、審判獣化していない身体では、ふりほどけない。
しかし、計画に破綻が生じた。ゆえに、私はこの男の意識を取り込まざるを得なかった。
足元に巨大な影が出現する。マルテュスに取り憑いたアンラ・マユは、水たまりに足を踏み入れるように影を踏みつける。
君もとっさにカードを引き抜くが、アンラ・マユはイスカを連れたまま影の中に消えた。
あとには、なにも残らない。気配も、痕跡も。
もちろん、君も付いていく。イスカを取り戻し、アンラ・マユの目的を阻止しなければ。
***
それぞれ手に持った得物を叩くなり、地面を踏みならすなりして、大きな音を出す。
Q止まれ。インフェルナ人!この先は、我らサンクチュアの聖域だ。
事前の打ち合わせどおり、君たちはサンクチュア兵相手に戦う素振りをみせた。だが振りだけで、実際に戦うわけではない。
Q全員捕らえろ!サンクチュアに逆らう者は、聖堂に連れて行き裁きを受けさせる!
君も、必死に抵抗するふりをした。下手な芝居だと自分でも思うが、これも狙いどおり。
メルテール、クロッシュとは別の牢に入れられた。イスカも別の牢に捕らえられているのだろうか?
魔法で鍵を破壊した君は、他の仲間たちをさがすべく移動する。
元いた未来では、長い時間、この牢に入れられていた。
暇だったから、時間を潰すために脱獄の方法を色々考えていた。結局、脱獄はしなかったが、こうして役に立っている。
諦めるのはまだ早い。聖堂の方へ向かおう、と君は足を速めた。
Q聖域に許可なく足を踏み入れようとした罪深きインフェルナ人よ。聖皇と審判獣の名の下に裁きを下します。
Qここは、厳粛なる裁きの場である。許可のない発言は控えなさい!
君たちが、聖堂の間にたどり着いた時にはサンクチュアの聖職者たちによるー方的な裁きが下されようとしていた。
Qインフェルナの戦士メルテールとクロッシュ。この両名を死罪とする。
傍聴席の陰から裁判を覗いていた君は、メルテールたちを救い出す方法を思案していた。
君は、端的にここまで至った経緯を説明する。
返事はない。あまりにも、急な話すぎて信じてもらえないか。
マルテュスに審判獣が取り憑いてたなんて、君自身まだ半信半疑なのだから。
この聖都で実権を握っている奴には、聖皇様も手が出せず、野放しにするしかなかったらしい。
死んだ審判獣の血が凝固して出来る晶血片は、この聖域でも重宝がられている。宝石として。エネルギー源として。
なにより、君の言葉をリュオンたちが信じてくれたことが嬉しかった。
今は大教主のことよりも、処刑されそうになっているメルテールとクロッシュの命を救いたい。
サザは、大きく息を吸い込み、そして、審議を中断させるべく大声を張り上げる。
審判獣エンテレケイアの前において決闘裁判を行い、その結果によって刑を決めるべきだろう!
執行騎士団長の横槍で、審判はー時中断する。聖職者たちが、顔をつきあわせて相談しはじめた。
Q決闘裁判か……。むしろ、そっちの方が良い見世物になりそうだ。
聖職者たちが、サザの意見を受け入れるまで、それほど時間は掛からなかった。
Qこのものたちの罪は、決闘裁判によって定めることにする!
君は、まかせておけというように、メルテールたちに目で合図を送った。
その時、君の視界にある人物が見えた。執行騎士のカサルリオとティレティだ。
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決闘裁判。サンクチュアにおいて捕虜や反逆者たちを裁くために用いられる伝統的な裁判である。
被告は、大審判獣エンテレケイアが見守るこの聖堂の間で、身の潔白を証明するぺく決闘に挑む。
負ければ命はないが、勝てば無罪を勝ち取れる……ことになっている。
カサルリオ――その顔を見た瞬間、クロッシュの全身の血が、ー気に熱を帯びた。
ー方、聖堂の間の反対側には、同じく西方執行騎士のひとりティレティが姿を現していた。
Qああ、聖女ティレティ様。噂どおり、お美しい人……。
あんたの目、とても冷たいね。ー生懸命笑みを作ってるようだけど、瞳の奥には冷酷な光が宿っているのがわかるよ。
メルテールとティレティ。クロッシュとカサルリオ。なぜよりによって、この組み合わせなのか。
この2組の戦いが、どれほど凄惨な結末に終わったか、君たちは知っている。
君が行っている歴史の変更を阻止しようと、見えない力が働いているようにしか思えない。
審判獣と契約した執行騎士に対抗するために、インフェルナの戦士たちは、思念獣が宿った武器を手にした。
クロッシュとカサルリオは、かつてサンクチュアの聖堂兵として腕を競った仲だ。
しかし、クロッシュは友だったはずのカサルリオに裏切られた。戒律に背いたとして子どもを殺され、妻も殺された。
剣に宿った思念獣フェンリナルが、血を求めている。人の血も欲しいが、審判獣の血がより欲しいと。
剣気が膨張する。クロッシュは、背丈ほどもある大剣を片手で振り抜いた。
拳と刃が衝突する。火花が飛び散り、お互いの骨に軋みをもたらす。
あの日。カサルリオに復讐を誓った日から、鍛練を怠ったことはない。復讐のために剣を磨き続けてきた。
それが、今や貴様は罪人。俺は、サンクチュアの執行騎士。運命はどこで違えたのだろうな?
大剣が、空を切った隙にカサルリオの拳が、数発打ち込まれる。
5年前とは勝手が違った。クロッシュが剣の腕を磨き続けたのと同様に、カサルリオも拳を鍛え続けてきた。
勝負を賭ける。大剣に宿る思念獣フェンリナルの’力を呼び覚ますことにした。それはすなわち、サンクチュアヘの恨みによる力。
大剣は、怨念の炎を纏い、無数の残影を残して天地を断つ。これぞ、クロッシュの渾身のー太刀。
サンクチュアでクロッシュは愛した女を妻とした。だが、ふたりの間に生まれた子どもは、聖職者たちの審判によって悪の熔印を押された。
悪と審判された者は、サンクチュアの聖域から立ち去らなければいけない。そうやって長い間、聖域の人ロを調節してきた。
クロッシュには、生まれたばかりの我が子をインフェルナに堕とすなどできなかった。だから、サンクチュアに反逆した。
だが、そのクロッシュを止めに来たのは、もっとも信頼を置いていたカサルリオだった。
復讐に身を焦がすクロッシュ――ほんのー時、イスカのことすら忘れ、夢中で大剣を振るう。
カサルリオが指差した場所にいるのは、かつて愛した妻トロスだった。
クロッシュに混乱と戸惑いが同時に押し寄せてくる。握った大剣が、手から滑り落ちそうになった。
答えろぉ!
ノコノコ近づいてきたあんたにー撃食らわせてやるためにね!
メルテールの体格をゆうに超えるハンマー。それは、タイタナスの思念が宿っている武器である。
イスカと共に戦う戦士になるとき、メルテールは、みずから発掘した晶血片に思念獣が宿っていることに気づき、それで得物を造った。
本来、あなたのような無作法者とは、口も利きたくないのですが。これも執行騎士のお仕事です
契約している審判獣サヴラ――まるでトカゲのような格好をした奇妙な形の審判獣が出現した。
傍から見ているとメルテールがー方的に攻撃し、ティレティは防戦ー方……押されているようにも見える。
ぴーっと、ティレティは指笛を鳴らした。傍聴席に控えさせていた聖堂兵たちが動きはじめる
ティレティは、傍聴席を指さした。聖堂兵に連れてこられたのは――
マルテュスに人質として取られ、影に飲み込まれて以来、行方がわからなくなっていたイスカが傍聴席にいる。
おかしい。目の焦点が合っていない。メルテールの声も届いているはずなのに反応しない。
審判獣サヴラの卵を植え付けられ宿主となったものは、まず全身の神経を乗っ取られる。
すると肉体は、脳の命令を受け付けなくなり、代わりに植え付けられた卵が、脳の代わりに命令を下して肉体を操る。
人を操り傀儡化する恐るべき能力。それが審判獣サヴラだった。
かわいそうにあのお嬢さんは、生きたままサヴラちゃんに操られるお人形さんになったのです。
それでも、インフェルナの戦士として戦場で命を失うよりは、マシな生き方だとは思いません?
その誰かって……イスカなんだよ。あんたはイスカに手を出した。それは私の誓いを踏みにじったも同然だよ。
メルテールは、全身が焼け焦げるほどの怒りを感じていた。
それが思念獣タイタナスが抱く恨みと共鳴し、正常な思考ができないほどの恨みの熱が全身を焼き尽くす。
どうせなら、もっと怒らせてあげましょう。傀儡となったインフェルナの娘よ。私の言うとおりに動きなさい。
クロッシュとメルテール、どちらも感情が高まり、冷静ではいられなくなっている。
執行騎士のリュオンなら聖堂兵に睨みが利く。任せていいだろう。
君が今すべきは、思念獣という呪いからクロッシュとメルテールを救うことだ。