【黒ウィズ】Birth of New Order 3 Story
2020/01/31
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この大地は、人の為にあるのではない。
ギガント・マキア――それは審判獣同士が争い、最強を決める戦い。
彼らの前に、人はあまりにも無力だった。
サンクチュアの民を乗せた方舟は、多くの犠牲を払いながら、避難民を乗せて飛び立った。
審判獣にとって人間は、「福音」という栄養をふんだんに含んだ餌である。
ギガント・マキアで疲れ果てた審判獣は、人を食って力を蓄える。
方舟に乗れず、大地に残された人々は、格好の標的だった。
「この戦い……勝てる見込みはあるのかにゃ?」
君が、この異界へ送り込まれるのは3度目だ。
勝てる見込みなんてあるわけない。
それでも、目の前で危険な目に遭ってる人たちを救わない理由はない。
「キミがそう言うなら、私も最後まで付き合うにゃ。」
なんのためにこの異界へ飛ばされたのか、その答えはまだ見つからない。
だからこそ君は、審判獣から人々を守ろうと決意した。魔道士の使命を果たすために。
***
審判獣アウラ――肉体は破壊され、腕も千切れ、傷ロからは、審判獣の血液である赤い晶血がこぼれていた。
受けた深手はギガント・マキアが、いかに激しい戦いであったかを物語っている。
しかし、それだけの傷を負いながら、審判獣アウラは契約者ケラヴノスを飲み込み、自我を得て――とうとう運命をつかみ取った。
「ここにたどり着いた者へ、言祝ぎを。」
審判獣が、はじめて降り立った原初の地。
中心にて勝者を待ち受けているのは、始祖審判獣ニュクス。
この大地に降り立った最初の審判獣が、そこにいた。
「後継者を得て、嬉しく思います。ようやく眠りに就くことができそうです。」
始祖審判獣ニュクスの後継者たる資格を得る――それが、ギガント・マキアの勝利の代価。
超越者であるニュクスも、己の中を流れる時間だけは変えられなかった。
そのための後継者の選定。それが、ギガント・マキアという祭事が持つ意味であった。
「全の円環を砕き、永劫の戒めより、すべての子どもたちを解き放つ日が来ることを願います。」
「お誓い申し上げます。」
審判獣アウラは後継者として誓う。時間と空間の縛りを超越し、審判獣すべてを新たなるステージヘ導くことを。
ここは、遥か遠い座標に位置する異界トワ。
「私がかつて産み落とした片割れが、まさか、始祖審判獣ニュクスの後継となるとは。」
審判獣アウラとは、かつてアウラが、捨てた己の半身。醜く、汚れた部分。
「私はあのお方にお仕えするために、あらゆる我欲を捨て去った。それが今になって自我を得て、独自に動きはじめるとは。」
捨てたはずの半身は、審判獣アウラとなり、独自の自我を得て、ギガント・マキアを勝ち抜いた。
「全の円環に挑戦するつもりならば、その前にこちらは手を打つだけだ。
必ず止めてみせよう。たとえ、次元の回廊を歪めることになるとしても……。」
君は、かすれゆく意識の中、遠くから轟く、審判獣の咆吼を聞いていた。
人間たちの生存圏――最後の聖地を守る戦いは、圧倒的な数の審判獣を前に人類側の敗北に終わった。
インフェルナのクロッシュやメルテールは戦死し、イスカもまた……。
「どうしてこんなことに……。」
君も、審判獣との戦いで深手を負ってしまった。もはや、自力で立ち上がることすらできない状態だった。
結局、誰も救うことができなかった――無念の思いが、なんども過ぎる。
「ここにいたか……。へへっ……お互い、ひでえ傷だなあ?」
傷だらけの身体を引き摺ってやってくる。リュオンの思念が宿っている磔剣が、その手にあった。
磔剣は、シリスが使っていたはず。その剣をマグエル先輩が持っているということは。シリスもきっと……。
「もう……終わりだな?魔法使いは、よく戦ってくれたよ。おいらたちのために……本当、感謝してるぜ。」
見慣れた白い輝きが、君を包み込もうとする。
まさか、運命はこのタイミングで君たちをクエス=アリアスに戻すというのか。
「でも、この世界を見捨てて帰るわけにはいかないにゃ。」
「いいんだ。行けよ。その光は、お前たちを迎えにきたんだろ?せめて魔法使いだけでも、生きてくれ。
実は、気づいてたんだ。魔法使いたちが、この世界の人間じゃないって……。」
自分たちだけ、助かるわけにはいかない。せめてマグエル先輩だけでも助けたいと君は言う。
「この磔剣を託すぜ。これを持って戦ったシリスたちの魂と、リュオンの思念は、この剣の中にある。
魔法使いが、こいつを受け継いでくれれば、おいらは安心できる。そしていつか、この世界を再び――
やべえ、奴らが来た!ここはおいらが食い止めるから、早く行け!」
君はなおも踏みとどまろうとした。けれど、白い光はいつものように君の意思を無視して、君たちをこの場から連れ去る。
「そんな顔するなよ。魔法使いは、よく戦ってくれた……。おいらたちの世界のために……な。
磔剣を頼むぜ。それには、執行騎士団の誇りが宿っているんだ。託したおいらたちの気持ち。絶対無駄にするなよ?」
マグエル先輩は卑怯だ。こんな大事なものを託されたら、簡単に死ねないじゃないか。
君は、受け取った磔剣の鎖を握りしめた。必ず、この磔剣を持って、もうー度戻ってくる。だから――
――光が消えて君の目に映ったもの。それは、見慣れたトルリッカの町並みではなかった。
光を通ったお陰か、君が受けた深い傷は治っていた。
言われてみれば、インフェルナ軍と戦い、審判獣ティアマギスとも戦った場所に似ているかもしれない。
こんなことは、今までになかった。あの光は、君たちをクエス=アリアスに戻すための光ではなかったのか?
近づいてきた男は、その身なりから執行騎士であることがわかった。審判獣との契約を示す鎖が、腰の得物と繋がっている。
リュオンを知っているとは……。あなたは?と君は訊ねた。
サザ。サザ。サザ。その名前に聞き覚えがあった。
リュオンの前任の執行騎士団長がサザ・ヤニタという名前だった。
イスカと戦い、戦死したと聞いていたけど……。
私たちは、過去に飛ばされたのかもしれないにゃ!
あの光は、君をクエス=アリアスではなく、過去へ飛ばす光だった……?
審判獣の姿となったイスカが、空からこちらを見下ろしていた。
鋭利な先端を持つ尾をかざしながら、敵意のある目で執行騎士サザを睨んでいる。
インフェルナ軍は、いつの間にやら、厄介な審判獣を味方につけている。だから、執行騎士の俺が出なきゃしょうがねえわけよ。
腰の剣を抜いた。僅かに湾曲した薄い刃がサザの得物らしい。
私が、手を血で汚せば、それだけ被害が少なくて済みます。だから、あなたを殺します。
俺ひとり消えたところで、なにも変わらねえかもしれねえぜ?
サザは、ふた振りの剣を構えるでもなく、脱力して立っていた。ー見、だらしなく見えるが、隙はない。
イスカは、蠍の尾を持ち上げ、力を溜めながら急降下する。地上のサザは、2本の刃をかざして迎え撃つ。
確かリュオンが言っていた。第4聖堂で起きた戦いで、審判獣イスカによってサザは殺されたと。
「殺したのは、蠍のような尾を持つ審判獣だという情報は得ている。俺たちは、これからその審判獣を探して罰を下す。」
もちろん、助けるに決まっている。目の前で誰かが死ぬのは、もう見たくない。
イスカは予想を超える速度を見せた。サザの頭上をかすめ、その背後に着地する。
蠍尾は、堅い鎧すらも貫く威力を持つ。それが、サザの背中に向かって繰り出される――
このままだと、サザは確実に貫かれて死ぬ。そう思った君は、咄嵯に魔法を放った。
魔法の衝撃に押し返されたイスカは、後方に吹き飛んでいた。
今のー撃は、咄嵯に身体が動いたものだが……ひょっとしてサザの命を救ったことになるのか?
別の気配が、すばやく駆け寄ってくる。その声には聞き覚えがあった。
分が悪いと感じたイスカは、飛び去っていく。
ラーシャがいる……。君が、あの時、助けられなかったラーシャが、こうして生きて……動いている。
副団長……。サザが死んだあとリュオンは団長になったと聞いた。やはりここは――
聖域と呼ばれるサンクチュア。煉獄と呼ばれ、悪の熔印を押されたものたちが暮らすインフェルナ。
この両者が、戦争を続けている時代に戻ってきたというわけだ。
つまり、いまはまだギガント・マキアは起きていない。エンテレケイアも動き出していないということだ。
すでにサザが、イスカに殺されるのを邪魔した時点で歴史は変わっている。
もう、引き返せないところに来ている。ならば、あの悲劇――ギガント・マキアを回避するように動くべきだ。
それでこそ、マグエルが君に磔剣を預けた意味があるというもの。
まさか、そのスープとは……。君は、リュオンに飲まされたあの昧を思い出して吐きそうになった。
なんもないところだが、あんたたちは命の恩人だ。精ー杯の礼をさせてくれよ。な?
***
到着したばかりの部隊がテントに入ってきた。隊を率いている指揮官は、不機嫌な顔をしている。
団長がいなくなったら、執行騎士団はおしまいだ。頼むから、自分の立場を考えてくれ。
指さされた君の存在に気づく。だが、リュオンの視線は、君が背負っている十字刃に向けられた。
君の磔剣は、リュオンの磔剣とまったく同じものだ。疑問に思わないわけがなかった。
俺の磔剣は、契約した審判獣が変化した執行器具だ。同じものはふたつと存在しない。
知っている。それは審判獣ネメシスと契約した証しだと君は言う。
雰囲気がー変する。やはりこの時代でも、リュオンは怒らせると怖い。
君は、咄嵯に未来から来た。だから知っていると答えた。それは、嘘ではない。
信じて貰えなくて君は落胆するが、当然といえば当然だ。君でも、きっと笑い飛ばすだろう。
信じてもらうには、どうすればいい?やがて起きるであろうギガント・マキアを防ぐには、リュオンたちの協力が不可欠だ。
というわけでリュオン。スープを作るぞ。お前も手伝え。
***
団長にはさすがのリュオンも逆らえないらしい。いかにもやる気なさそうな態度で、料理ナイフをにぎっている。
リュオンの覇気のなさが尋常じゃない。目が完全に死んでる。
だから俺はこの……えーっと、サンクチュアの適当なところで摘んできた、よくわからない草を刻むぜ!
とんでもないスープが、作られようとしている!
シリスとまだ子どもの審判獣だった頃のマグエル先輩だ。
ともにギガント・マキアを戦った仲だが、現在のこのふたりは、そのことを知らない。
君は、マグエル先輩のことをよく知っている。そのお腹のポケットに、お菓子が隠されていることも。
え?お菓子……?おいらのポケットにお菓子が隠されてること、どうして知っているんだ?
未来のマグエル先輩から直接聞いた。そして、このお菓子を隠しているのは、リュオンだということも知っている。
エンテレケイアが覚醒し、それを切っ掛けにギガント・マキアが起こり、壊滅してしまった未来から来た――
だから、みんなも協力して欲しいにゃ。
あらすじ
最終審判。人類滅亡の時――。
眠り続けていた審判獣が目覚め、地上は彼らに支配された。
そんな最悪な未来を回避するために過去に遡った「君」とウィズは、最終審判を防ぐべく奔走するのだが……。
運命は、非情にも君たちの願いを打ち消すのだった。
Birth of New Order | |
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01. Birth of New Order 序章 リュオン・イスカ 1・2・3・4・5・6 | 2018 03/16 |
02. リュオン編(黒ウィズGP2018) | 08/31 |
03. イスカ編(黒ウィズGP2018) | 08/31 |
04. Birth of New Order 2 序章・1・2・3・4・5・6 | 2018 09/28 |
05. イスカ&メルテール編(X'mas2018) | 12/15 |
06. リュオン編(黒ウィズGP2018) | 08/31 |
07. 三大悪女?(魔道杯) | 08/23 |
08. リュオン編(黒ウィズGP2019) | 08/30 |
09. Birth of New Order 3 前日譚・1・2・3・4・5・6 | 2020 01/31 |