【黒ウィズ】Birth of New Order 3 Story4
Birth of New Order 3 Story4
Birth of New Order 3 Story7
登場人物
story
聖皇ベテルギウスの死。それにより、聖都に眠っていた大審判獣エンテレケイアが覚醒する。
空は赤く燃え、エンテレケイアの巨大な影が、安寧の都全体に覆い被さる。
エンテレケイアは、長い眠りから覚めたことを知らせるように雄叫びをあげ、地上を真理の光芒でなぎ払う。
君にとっては、二度目に見る光景だった。この事態を避けるために、心血を注いできた。だが、努力は水泡に帰した。
運命は、狂ってしまった歴史をあるべき姿に戻そうと、見えない力を働かせた。
結局、聖皇は守れなかった。考えられる手はすべて打った。だがヽ君の特殊な立場を俯瞰している存在がいた。
君は、目の前にいる審判獣アウラに訊ねる。未来の記憶を受け継いだと言っていたな――?
肉体は、この時間を過ごすケラヴノスだが、頭は、貴様と同じ時代にいた審判獣アウラの記憶に塗り替えられている。
始祖審判獣ニュクスは、別の平行世界で起きている出来事も知ることができるのか?
とにかく聖皇ベテルギウスは死んだ。ギガント・マキアが起きてしまう。
エンテレケイアの目覚めの咆吼が、開始の合図だ。
ゆえに、ここで私が貴様を裁く!歴史の改変者よ、この世界から消え失せろ!
満身に浸る怒気。審判獣アウラが放つ、巨大な波動が君を襲う。
サザ、リュオン、ラーシャ、そしてシリスが、君の前に立ちはだかり、審判獣アウラの攻撃を防ぐ盾となる。
突き放したような物言い。審判獣アウラからは、ケラヴノスだった頃の気配は、微塵も感じない。
聖皇は守れなかった。エンテレケイアの覚醒も防げなかった。でも、君が過去にきたのは無駄ではなかった。
シリスの執行器具〈執刀の針剣〉が、審判獣アウラに巻き付く。その自在の鎖の動きは、さながら得物を捕らえる蛇のよう。
2本の刃が、審判獣アウラの両方の羽を切り裂く。絶叫に近い悲鳴があがった。
磔剣が弧を描いて中空に飛翔する。審判獣アウラの翼を切り裂いた。
渾身に力を浸らせ、アウラはシリスの鎖を分断した。
地上を這う人間どもは、所詮我々に裁かれる運命なのだと知れい!
翼をはためかせた。無数の羽が飛び上がり、視界を覆った。
大聖堂の天井が崩れ落ち、審判獣アウラは焼けた夜空に飛び立った。
凄まじい地鳴りと共に地の底が、波打ったような揺れが起きた。
***
巨大な審判獣の影が、聖都に覆い被さる。足元に蠢く人々は、絶望の悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。
だが、ゆりかごに居られるのも今日までだ。この日は、ギガント・マキアのはじまり。地上の支配者が入れ替わる日となろう。
エンテレケイアが悲鳴をあげる。遥か遠くにある審判獣たちが眠る森から、返答のようなこだまが返ってきた。
審判獣たちが目覚めはじめている。この世界は、黄昏を迎えようとしていた。
決まっている。まずは、エンテレケイアを止めて聖都を守る。リュオンたちもそのつもりだ。
審判獣アウラ――そして始祖審判獣ニュクス。どうしても、歴史を変えさせないというのなら、こちらは意地でも変えてみせる。
それが、ギガント・マキアで死んでいったもうひとりのリュオンたちとの約束だ。
当たり前だと君は返す。
聖都をこれ以上破壊するな化け物。ここは、死んだ父と兄が、守ろうとした場所なんだよ!
蛇型の審判獣が夜空に飛び、ー条の光となる。それは、人々の希望だった。
審判獣ハーデスと同調したラーシャは、君が未来で見たような不安定さを感じさせなかった。
これも君とウィズが、過去に遡った影響だった。
行こうぜ相棒!久し振りだが、上手くやろうぜ!
無数の腕を持ち、無数の剣を握った審判獣。これが、サザが契約しているアスラの姿だ。
そういえば――と、君は過去に遡る前に、マグエルから聞いた話を思い出す。
「おいらは大昔、審判獣と戦った英雄と呼ばれる執行騎士のー員だったんだ。
子どもの審判獣の姿をしていたのは、エンテレケイアが目覚め、最終審判がはじまった時、人間たちの切り札になるためだ。
アバルドロスっていう審判獣が、おいらのこの輪っかを突いて、封印を解いてくれたんだ。」
マグエル先輩が付けていたお腹の輪っかが、封印の証しだった。つまり輪っかを破壊すれば、また人間のマグエル先輩に会える。
マグエル先輩は、拳を通して、審判獣に意思を伝えたり、意思を受け取ったりする奇妙な力がある。
封印から解くことは、エンテレケイアを止めることにもきっと役立つ。
マグエル先輩のお腹の輪っかに魔力を流し込み、封印が解除されるように願いを込めた。
白い輝きが放たれ、マグエル先輩を包み込んだ。
以前の歴史では、エンテレケイアが覚醒した時、まだマグエル先輩は人ではなかった。
だが君の手で、人に戻してあげることができた。些細なことかもしれないが、君は間違いなく歴史を変えている。
この小さな積み重ねは、必ずこの世界を――人々を救うことになるはずだ。
おいらやるぜ!ギガント・マキアからこの世界を救ってみせる!
story
リュオンたち4体の審判獣は、4本の光条となり、燃え盛る空を飛翔する。
審判獣ネメシスは、エンテレケイアの頭部目掛けて拳を叩き込む。
巨大な審判獣の殼衣は、割れこそしなかったがヒビが入った。
完全なる存在――エンテレケイアと呼ばれた大審判獣の悲鳴が轟いた。
あなたの殻衣がどれだけ分厚かろうと、この漆黒の鎌は、あなたを断ち切るわ。
大鎌で切断されたエンテレケイア。雲をかき消すほどの咆吼が、サンクチュア全域に轟く。
でも、聖都にはまだ逃げ遅れた人たちがいます。これ以上の破壊は、させませんから。
エンテレケイアが凝集している真理の光芒。地上の支配者たらんとする裁きのエネルギーが、放たれる。
だが、執行騎士たちが、自らを盾にして放たれた光条を受け止めた。
審判獣アスラは、両手に刃を携えたまま泰然自若。気息を整え、その機が訪れるのを待っている。
無数の腕に握られた刃は、光が濡れ堕ちそうなほどの清冽な光沢に満ちていた。
神速。空中を蹴って、ただ真っ直ぐ――審判獣アスラが、エンテレケイアに向かって宙を疾駆する。
ー閃。音も、光も、すべて置き去りにして、刃を携えたアスラが巨大審判獣の脇を横切った。
瞬きするほどの間を置いて、エンテレケイアの胴体が、その場に沈下する。
遅れて、真っ赤な晶血――審判獣の血液が、大量にエンテレケイアの胴体からほとばしる。
放たれた衝撃にリュオンたちはたじろいだ。それは、エンテレケイアの悲鳴による大気の圧迫だった。
ひび割れた殻衣から晶血を流しながら、エンテレケイアは再び動きはじめる。
リュオン、シリス、ラーシャたちは、先ほどの真理の光芒を盾となって防いだ代償が、まだ癒えていない。
審判獣アスラの刃に剣気を浸らせる。先ほどのー撃をもうー度叩き込めば、勝負は付く。
だが、剣気を集める時間は、集中の度合いによって変わる。その隙を守ってくれる者はいない。
放たれた輝光が、審判獣アスラの半身を貫いた。
結集した剣気は、まだ不十分だ。もう少し、時間が掛かる。
お前たちには、死が訪れる。それは、果てのない永劫の無だ――
突如、エンテレケイアの足元の殼衣が破裂した。再び大審判獣の姿勢が崩れる。
決闘裁判とイスカを助けてくれた礼をさせてもらう。インフェルナ人にだって義理ってものがあるんだからね?
***
サンクチュアの為に働く気はないけど……リュオンたちに借りを作ったままは嫌だから、この戦い手伝わせて。
「おーい!」
遠くから声が聞こえる。
魔法を地上に放ち、その反動で飛ぶ魔法使いと、その背中にしがみついている――見覚えのない少年が手を振っていた。
審判獣と拳で語り合える――これがおいらの得意技だって魔法使いが言うもんだからよお~。
半信半疑だけどやってみたら、これがマジで拳で語り合えたんだ。いやー、思念獣にもおいらの気持ちが伝わるなんてなー。
おいら、マグエルだ。魔法使いに人間に戻して貰ったんだ。
未来のマグエルから直接聞いたことを実行に移しただけで、魔法で人間にしたわけじゃないと君は言う。
森からは、目覚めた審判獣の声が聞こえてくる。状況は、あまりよくねえが、頑張ろうぜ!
すでにギガント・マキア――人類への試練は、はじまっている。
本当の試練は、エンテレケイアを止めたあとからはじまる。
それは、細い1本の糸のような儚い希望。だが、新しい未来へと繋がる確かな希望だ。
再び審判獣と同調する。繰り返しの同調は、契約者の心身に多大な負担を掛けるが、いまが人類存亡の分水嶺。
story
いつも部下たちの世話になりながら、団長としての形を整えてもらっている。
団長の資格があるのはリュオンの方だと常々思う。冷静だし、頭の回転もいい。それに人に命令する姿が様になっている。
それが執行騎士団長を拝命した者の務め。サンクチュアの守護者の使命だ。
眼前で燃え上がる聖都は、サザが生まれた場所ではない。
生まれたのは、ここから遠い……辺鄙な場所にある聖域だった。
安全な聖域内とはいえ、生活環境はインフェルナとさして変わらない土地だった。
サザが少年のころ、その聖域で戦争が起きた。大勢のサンクチュア人が死んだ。サザも家族や友人を失い、住む家を失った。
行く場所を失った少年サザは、インフェルナに向かった。子どもには、聖域とインフェルナの区別などなかった。
剣に興味があった。だから、大人になるまでインフェルナで傭兵として戦った。サンクチュアとの戦争に出たこともある。
だが、傭兵は退屈だった。情熱を洽らせてくれる相手にも出会えなかった。
傭兵稼業にも飽きてきた頃、イスカ――という名のインフェルナの少女に出会った。
「お兄さんは、戦争で人を斬って平気なの?」
「さあな……平気もなにも、これしか知らねえんだ。
俺は戦争で家族を失った。だから、食っていく方法を自分で見つけなきゃいけなかったんだ。」
「サンクチュア人が憎い?」
「好きでも嫌いでもない。というか、俺は元々サンクチュアで生まれたんだ。」
そう言うとイスカという少女は押し黙った。普段、周囲の大人たちから、サンクチュアは悪だと教えられている。
将来サンクチュアとの戦争になった時、戦えるように洗脳される。迷わずそれがインフェルナの普通の子どもだった。
「私の周りにいる大人は、サンクチュア人が嫌いという人ばっかり……。」
「お嬢ちゃんはどうなんだ?サンクチュア人は、嫌いか?」
「義父さんを傷付けたりする人は、嫌い。でも……同じ人間だもの。わかり合えると思う。」
「おー、悪い大人たちに左右されずに真っ直ぐに育っているな?なかなか、いいぞ。」
「そうですか?」
「大人の言うことなんて信じるな。奴らはどうせ嘘ばっかりつく。
大事なのは、お嬢ちゃんの胸の中にある正義だ。常にそれだけを信じていろ。」
「せいぎ……?」
「言葉の意味は、そのうちわかるさ。俺が教えてやってもいいけど、自分で気づいた方が言葉にありがたみがでるだろ?」
「もしかして信じるもののこと?私の信じるものは、インフェルナの家族と仲間です。」
「家族と……仲間か。それはいいな。命を賭けるには、十分だ。」
その後、サザはインフェルナを飛び出した。傭兵をやめて自分の思う正義を求めた。
父親から教わった言葉だが、傭兵時代、暇に飽かせて読みあさったどの本にも、意味は書かれていなかった。
なにをするべきかを求め彷徨ったあげく、行き着いた先が、執行騎士の最終試験だった。
「俺も節操のない男だぜ。インフェルナの傭兵だった過去を隠して執行騎士になろうとするなんてよお。」
最終試験は集められた騎士候補生同士で、殺し合わせて残った者を採用するという腐った制度だった。
ラーシャとは、そこではじめて顔を合わせた。覚悟が定まっていないのは、ー目でわかった。
「ここで、ラーシャを殺すくらいなら、俺も自害して果てた方がマシだ。そうなると合格者は誰も居なくなる。
合格者がひとりもいなくなるか、ふたりの合格者を同時に手に入れるか、好きな方を選べ。」
サンクチュアのやり方は、なにもかも気に入らなかった。
「条件を呑もう。その代わり、サザ。君には、最前線である第4聖堂を守って貰う。よいな?」
なんと、サザの態度に面白みを感じたらしい。あっけなくこちらの要求が通ってサザはラーシャとともに執行騎士になった。
それからは、虚しい日々だった。
つかむべき正義も、なにもみつからず、優秀な部下に担ぎ上げられ、団長としての時間を浪費する日々。
「執行騎士――インフェルナの未来のためにあなたを殺します!」
驚いた。成長しているが、インフェルナで出会ったあの小さなお嬢ちゃんだとー目でわかった。
けど向こうは、サザに気づいていない。無理もない。あれから長い時間が経っている。
純粋な目で、仲間と家族が自分の正義だと言った少女――その子が、戦場に現れた。己なりの正義を抱えて。
ー方のサザは、なにも見つけられてなかった。それが、迷いとなり、刃を持つ手に迷いが……移った。
あの時、魔法使いが助けてくれなければ、確実に死んでいただろう。
サザに剣を振る意味を与えてくれたのは、執行騎士のみんなだった。
こんな頼りない男を、団長として支え続けてくれた――バカ正直で、どうしょうもない奴ら。
だから、俺は!このー撃に!すべてを叩き込む!!
光が、エンテレケイアの脇を通過する。それは、舞い落ちる枯れ葉のように軽く、しなやかなー閃だった。
エンテレケイアの巨大な胴体が、真っ二つに割れていく。
そんでこいつが――
逆進する光の筋。今度は審判獣アウラの傍を疾風のような衝撃が通りすぎた。
1本の熱が、審判獣アウラの脇を突き抜けていった。瞬きするほどの間を置いて、殻衣が避けて晶血が吹き出す。
***
切断されたエンテレケイアの殼衣の傷から、大里の晶血が吹き出し、炎上する聖都全体に赤い雨となって降り注ぐ。
大審判獣は、巨大な山が崩れてゆくように、ゆっくりとその身を横たわらせていく。
おぞましい気配を感じた。エンテレケイアとは、また別の存在感にリュオンは押しつぷされそうな錯覚を感じた。
切り裂かれた殻衣の内側から、審判獣の手のようなものが覗き出た。
赤い晶血にまみれたそれは、今、この世に生を受けたかのようにエンテレケイアの内側から、這い出る。
Z大審判獣エンテレケイアを人が、斬り倒したか。進化というものの恐ろしさを実感しますね。
全身から放たれる突き刺すような冷気。それは、人という存在を超越した者のみが放つ、冷酷な殺気だった。
これが始祖審判獣ニュクスなのかと、君は固唾を呑んで向こうの出方を窺った。
Nそこにいる審判獣アウラは、別の世界線で私が後継者に選んだもの。見所があります。
だから、ここで失いたくないのです。彼女だけは、連れて帰らせてください。
N人の分際でなんと傲慢な物言いをするのでしょう。私は、エンテレケイアに寄生していたわけではありません。
超越者たる私には時空の縛りなどありません。私は、どこにでもいる。そしてどこにもいない。
Nお前は……人間と審判獣の間に産まれた子か?
なんと……なんと醜いのですか。ひとでもない。審判獣でもないお前に、居場所などあるわけないでしょ?
言葉が出なかった。イスカが生まれてからずっと抱えてきた胸の傷を改めて抉られたような気分になり、息が詰まった。
N半獣半人の憐れな娘よ。お前は、産まれてくるべきではなかった。私の目に止まったのが不運でしたね。
イスカに向かって手をかざす。掌に光が蓄積されていくように光輝いた。
イスカは、動かない。いや、動けなかった。始祖審判獣と呼ばれる存在に、自分を否定された衝撃はあまりにも大きかった。
地上を審判獣で覆い尽くした元凶を人の手で、引き摺り降ろしてやろう。
鎖を引き、審判獣ネメシスと同調したリュオンは拳でニュクスの背後から心の臓を穿った。
ニュクスの胸から晶血が遊った……かに思えた。
Nなんと……。それは、我が子、ネメシス。
手応えはあった。殻衣を貫いた感触は、まだ拳に残っている。だが、ネメシスは、なにもない場所をつかんでいる。
N先の大戦で人の手に堕ちて以来、行方が知れなかった我が子と巡り会えるとは。
いくら世界中に精神を巡らせても見つけられなかったのは、人に使役され、姿を変えていたからですね?
ニュクスははじめから、そこにいたかのように、リュオンと距離を置いて立っている。
N我が子を返していただきます。
突如、リュオンの心臓に結ぱれている契約の鎖が、切断された。
それは、ネメシスとの契約の証。執行騎士になってから、ー度も断たれたことのない繋がり。
Nひとの鎖に縛り付けておくのは、あまりにも不惘……。さあ、我が子よ、母の元へ参るのです。
ずっとあなたを救いたかった。審判獣はすべて我が子なれど、あなたは私によく似ている。特別な子です。
うしろにいるリュオンを振り返りもせず、母の胸に飛び込んで行く子どものようにネメシスは、ニュクスの元へと誘われた。
N審判獣よ。目覚めよ!ギガント・マキアをはじめるのだ!
歴史は、それが、私が描いた戯曲どおりに進むもの。始祖審判獣が作り出す秩序なのです。
人が、世界の秩序を覆すなど、許されるはずがありません。
地上にいるリュオンたちをー瞥すらせず、ニュクスたちは何処かへ飛び去っていく。
代わりに咆吼が轟いた。
地上の審判獣が、ニュクスの呼びかけに応じるようにあちこちで目覚めはじめる。
審判獣の無数の鼓動。無数の悲鳴。世界を揺るがすように響き渡る。
story
大聖堂は焼け落ちたが、サンクチュアの民は辛うじて生き残った。
連日連夜。生き残った聖職者たちが、集まって今後の対応を協議している。
だが、話はー向にまとまらない。まとまるはずがなかった。
時間を浪費している間にも、各地の聖堂に封じられていた審判獣が目覚めていた。
人類に残された時間は、あまりにも少なかった。
魔法使いやイスカたちと、どこかに行ったまま戻ってこない。
団長としては、その背中をそっと支えてやるだけだ。いつも支えてもらってるから、こういう時こそはりきらないとな!
サザが差し出した手を、クロッシュは力強く握り返し、不適な笑みを浮かべる。
そのお礼はちゃんとしなきゃね。義理と人情は大事にするほうなんで。ええ。
リュオンたちとある場所に向かう途中。君たちは、森で目覚めた審判獣の襲撃を受けていた。
契約審判獣であるネメシスを失ったリュオンは、執行器具を具象化できない。
だが、君が持っている磔剣は、前の世界でのリュオンの得物だった。きっと手に馴染むはずだ。
だがその磔剣には、死んだリュオンの思念が乗り移っている。そのことに関して、リュオンはなにも言わなかった。
襲い来る審判獣の群れ。君も戦う姿勢を取る。
そこへ、弾体のような影が飛来した。蠍のような尻尾を持つ審判獣が目の前に着地する。
降り立つや、手から光線を放ち、群がる審判獣をー掃した。もしかして味方してくれるのか?
ギガント・マキアがはじまった以上、旗幟を鮮明にせねばならん。
鋭い爪のついた指は、君を指し示していた。
突然の申し出に、君はきょとんとする。
教えてくれ人間。お前は、この戦いでなにを求めている?審判獣の殲滅か?それとも人と獣の融合か?
どちらも求めていないと君は答えた。求めているものは、ひとつ――
始祖審判獣ニュクスを撃破し、この地上を人の手に取り戻すこと。
ニュクスは、審判獣たちの母なる存在。あらゆるものを超越した奴には、恐ろしくて誰も近寄れん。
それでも、このまま人が暮らす土地が、失われていくのを黙って見てられない。
審判獣が、この大地にはじめて降り立った聖なる場所。きっと奴はそこで、終わりが来るのを待っているだろう。
お前たちにその覚悟があるのなら、私が案内してやろうぞ。
story
途中予想外の乱入があったが、君たちは、目的としていた場所に到着した。
この時代に来る以前から考えていた。目覚めた審判獣の大群に対抗するためには、なにが必要なのかと。
審判獣には、空を飛ぶものも大勢いる。地上にいては奴らの餌食になるだけだ。
ならば、こちらも空にあがって奴らに対抗する他ない。
時間を遡る前の世界では、サンクチュアのー部の民を大陸から逃がす為に使われた船だが――
このサイズなら、巨大審判獣と真正面からぶつかっても太刀打ちできるのではと思っていた。
Qま、まだ数日は必要です。
ですが……必ず動くようにしてみせます。森で目覚めた審判獣を倒せるのは、執行騎士様たちしかいませんから!
前は、逃げ出すための避難船だった方舟をこの世界では、ニュクスの所へたどり着くために使用する。
我ながら、無茶だとは思うが、そのぐらいの危険を冒さなければ、この苦境は覆せない。
聖堂に封じられていた審判獣が、次々に覚醒している。
カサルリオ、ティレティなど他の執行騎士も、民を守るために出撃しているという話だが、そう長くはもたないだろう。