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【白猫】Runaway Horizon Story1

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん



目次


Story1 座学の授業

Story2 遊びの時間

Story3 伝統の修行

Story4 さぼりのソワソワ

Story5 よるのうち

Story6 おとがめナッシング

Story7 おののおもさ



登場人物




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story1 座学の授業


――遥かなる昔。

偉大なる二人の英雄が、ーつの組織を作った。

――繁栄を極めた古代の文明が崩壊を迎えたとき――

人々は知った。この世界は、繊細なバランスの上に成り立っているのだということを。

その傾きを、乱してはならない。

何者かの突出を許せば、人の世も乱れる。

人の世界の均衡を保つこと。それが、英雄たちの願い。

だが、組織の働きを、外の島々に知られては不都合が生じる。

そう考えた先人たちは、長い歴史の中で、雲海に隠されたこの島に本拠地を移し――

介入組織――アテル・ラナを名乗るようになった。

以来、長年に渡り……人知れず、人間社会の均衡を保ち続ける役割を担っている。


……あなた方二人は、古の英雄の血を最も濃く受け継ぐー族の子。

いずれこの組織を、この島を。背負って立たねばならぬ立場。

よって、12の齢を重ねた今、本格的に、長となるべく教育が始められるのだ。



…………

……うくくくく……

……お二人とも、ちゃんと聞かないと……!

ピラウが……!

…………

ささっ!

<!!!>

おわわわわあっ!?


誰が寝てよいと?

睡眠に許可っているのか……

当然だ。

……あ!肩こり治った!

そんなトシじゃないだろ。

<!!!>

うひょー!

ちっ。

ぴ、ピラウ……あんまりやると机や椅子が壊れちゃう……

ちょいちょい。ご主人様よりそっちの心配かーい。

二人とも。主人なら少しは主人らしく振舞え。

いかに我らが従者として仕えるアンドロイドといえど、限度がある。

そんなこと言ったって、そうプログラムされてるんだろー。ぶー。

コードを書き換えてもらう。地獄の教育マシーンの誕生だ。

できんの?

望めば……アンドロイドにも、職業選択の自由はありますから……

クロカ、ここはこらえるところだぜ。

たしかに。藪をつついて蛇は嫌いだ。嫌いな物増えた。

……はぁ……

ペルマナ、あとは任せた。私は別件がある。

あっ……行っちゃった……

ニコイチのアンドロイドなのに、兄の方が多忙なのな。

言わないでくださいよ……私はもにゃもにゃしちゃうから、会議とかに向かないんです……

でも、向いてることもあります。

なによ?

我慢強いです。さあ、クロカ様、シロー様。

さきほどのピラウの講義を、もうー度おさらいしますよ。

よぉし!真面目にやるぞぉ!

うくくくくく……!

目を閉じていてもいいですよ。頻繁に質問しますから。

耳に集中して、学んでくださいね♪


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story2 遊びの時間



もーいーかい?

ダールメーシアン。

へ?

ダルメシアン。

なんだよ!?

犬種だよ!

隙アリ!

ふっ……!そのまま至れ、末来へと――!

ふざけんな!まだスタートすらしてなかっただろ!

スタートだと?それはとっくにしてるさ。

――俺たちの人生はな。

ぜんぜんカッコよくねえ!

犬種しりとりやろうぜ。

なんでだよ!?

ポノポ。

……なにそれ?

パンパニーシャ。

……もういい。二人だけで遊んでろよ!

混~ざ~れ~よ~!親いないからって差別すんなよ~!

そんな理由じゃないだろ!

しりとりにもなってないんだよ!



ほっほっほ……♪今日も元気だでな……♪

でも、いいのかねえ?将来、この島を背負って立つんだろう?いつまでも遊んでても……

ほんにほんに。

心配はねえっぺ。アピス様が直々に、教育しんさるちゅうとったで。

あらまあ、それなら安心ねえ。

ほんにほんに。

「……パラムジア、スルガ、ディルムンだ。

あらあら……それじゃあ、あたしがバラムジアかねえ。

スルガは引き受けたっぺ。三度目だでよ。

ディルムンか……長い滞在になりそうじゃのう……

「確かに伝えた。

さあて、支度支度、と。

バラムジア用のドレス、まだ着れるかしら……

たっぷりと孫をかわいがるかの。

帰ってこれぬ場合もあるでな。


オラン

ウータン。

チン。

パンジー。

オ。

ランウータン!

ぶぶー。正解は『カピ』でしたー。

負けー。

ずるいぞお前らぁ!!!

げ!

やべえ、校長来た!

あっ!また明日なー!

…………

……アピス様……

…………

ガム食べる?



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story3 伝統の修行


じゃ薪割りー万本、始めちゃってー!

なんで薪割りかって?これが案外大事なの!偉人達人ご先祖様。アルバイトの学生に至るまで、み~んなー度は通る修行なんだから!

バイトの学生はやらないって?てか、バイトとか学生とか、どこの島の話だよってカンジよね!

いいんだよそんな細かいことは!鍛えられっから体幹!あと握力と背筋ね!

背筋大事だよ?弱ってるとお前、将来寝たきりになっちゃうよ!どんだけ先だよってな!?

斧重いッス。

重いよなー?俺もそう思う!でも軽いと薪割れねえの!

割った薪、売るから!ー石二鳥でしょこの修行?あれ俺天才?ちげーよ、つって!

アピス様は究極の内弁慶なのか。

およよ?

普段、そーゆーしゃべりじゃないッスよね?

まーねー、俺こー見えて偉いからね、大精霊だもの!

だから色々あんのよねー、出したくても出せない自分。だからここで出しちゃう!

ー生しまっててくれー。

え?いいの?俺黙っちゃってて。ツラ~イカンジになっちゃうよ?

それにさ、俺教わったの。沈黙ってエグイよって。時間かけてこの口になったのよ。

楽しくやろうぜ、どうせならさ!

あんまり楽しくないっス。

修行とか、前時代的だよ~……

転生して脈絡なく女神さまから力を授かりたい。

古いよね、わかる。でもまあ、この経験も?何年か先に思い出せば、古くなってっから。

だからもーそれはカンベンってカンジ?

黙っててよ~手元が狂うよ~。

そ・れ・が、修行!ぎゃははは!

…………

…………

ハイハイ割る割る!ハイボールかってくらいね!


――カーッ!やっぱウマイね!ハイボール!ー杯目からいっちゃう!ぶちゅ!

お!アピス様が夜の顔になられたぞー!

やめてよ集まってこないでよ!俺のこの痴態、痴態ね痴態、明日になったら忘れてよ!

忘れてくんなかったら魔法で記憶消すかんね!

アピス様。薪、明日もお願いしますねえ。高く買いますからねえ。

ありがと!どんどん割っちゃう!って、割ってんのは俺じゃないんだけどね!

おぬしもワルよのー。

なことないない!経済経済!お金は回してあげなきゃこっちの首が回んなくなっちゃう!

なんつってね!ぎゃはははは!


……ウチらのお金……

なんて師匠ぞ。

……どーする、クロカ?

決まってる。

ボイコッティングだ!


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story4 さぼりのソワソワ



あ~……自由……!

謳歌させてもらおうぜ。

そうしよう。

…………

することないな。

話、する?

体を動かしたいお年頃。

俺も。ちょっと泳ぐわ~。

ずりぃな男は。

特権特権――あ!?

なんだアレはー!?!?


……見た……?

てことは、幻じゃないのか……

…………

泳ぐのやめよ。

うん……

動物だよなぁ?

動けばどうぶつ、の……はず。

動いてたよね?

のはず……でもなんか……

もう自信ない。

な。ついー瞬前なのにな………

…クロカ。

なに?

ご先祖様がどうとか言われて、……どう?

どうったって……前提がね。

会ったこともない人だし。

まあでも、ご先祖様ってことは、俺らの遠い遠い前提の人なんだろうけどな。

ああ、そーゆー考え方?まあ、たしかに。

でもな~……で、なにか?

みたいなのが、正直なトコ。

な。よくわからんよな。

この島に国建てたのは、別の人なんだよな?

てゆー話だよね。歴史のどこかで、だもん。

親は覚えてる?

ほとんど。ちっちゃいときに、ナントカ戦争へ行って、それっきりだもん。

うちも。

それから、ペルマナがまあ、親代わりみたいなもんだけどさ。

そんな俺たちに、ご先祖様のことを言われましてもなあ……

ね、それ。ウチらの前提、それだもんね。

……まあ、別に嫌ではないから。たまには考えるのだって、やぶさかじゃないけどさ。

何をした人なんだろう、とか。

どんな人だったんだろう、とかね。

うん。

…………



…………

なあ?

やばくね?

俺も思った。

いずれ見つかると思ってたけど……

見つかんないのが、逆に……

…………

やばい……そわそわしてきた……!

帰る!

俺も!


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story5 よるのうち



おかえりなさい。

……ただいま。

お夕飯、用意できてますよ。

……なに?

石です。

石ィ!?

ぷんぷん。

……フッ……

フツーに食ってやるぜ!

えぇ!?ちょっとそれはタンマ!


 ***


どこにいた。

川。

――あ、そうだ!なんかスゴイのいたんだけど!

……言い訳はよせ。

ホントなんだって!聞いて聞いて、聞いてってば。

聞く前に……

聞いて!聞ーーーーーーーて!

ごめんは!?

ごめんなさい!

許す。アピス様にも謝っておけ。

らじゃー!でさでさ!川からザバって、緑色のなんかがよ――



 ***



……ご主人。

あれから――途方もないほどの月日が流れ――

ようやく復活の機会に恵まれ、さらに年月が過ぎ――

……私は……霞みがかったような、不確かな記憶だけにすがり……

……見守っています。この里を……ここで育つ、子らを……

……それで…………いいのですよね……?


…………


……そうそう、聞いてください。驚きますよ。なんと、あの二人に瓜二つの子が生まれてきたのです。

これからが楽しみな二人で。聞いてください、ご主人――



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story6 おとがめナッシング



ごめ。

んなさい。

こらーっ!!!

ペルマナ、下がれ。

はい。……ぎろりっ!!!

…………

…………

じゃ、修行いっちゃう?

おとがめナシっすか?

いーのいーの、あるよこゆこと。全然オッケー問題ナシ。

……すません。

オッケ、おしまい。

ならばじゃないけど、反撃してもいいッスか?

え?

薪売った金、どしたんスか?

……お金、って……

使っちゃうよね♪


こんにゃローウ!ウチのおこづかい、いくらだと思ってんだー!

少しはくれよー!ペルマナだって、毎月キツキツでやりくりしてんだぞー!

じゃあ返すよ!俺のうち来いよ!

嘘だ!全部酒場で使ったろ!

あんだよ!100万ゴールドあんだよ!家にあんだよ、見に来いよ!

持って来いよ!

持っては来ねえよ!

なんでだよ!?

なんでも何もねえだろ!あるっつったらあんだよ!

返せー!!!

わかった!返しゃいんだろ!……おげげげ……

なにしてんだ?

現物で返してやるよ!しこたま飲んだハイボールをよ!

いらねーーーーー!!!

最低だ!あんた最低な大人だよ、このクソ師匠が!

…………

ようやく――師匠と呼んでくれたな――

痛ぇ!?

そんなシーンじゃねえだろうが!

流れに無理が満載だ!ごまかされるか!

ひらーり。

!?

さてさて……準備運動は済んじゃったみたいじゃない?

じゃあそろそろゃっちゃうよ?本日の修行をさぁ……!

……っ!

薪割り百本ね!

組み手とかじゃねーのかよ!

しかも減ってるし!

減ってんだからいいじゃないのよ!

いいよ、やるよ!

ガンバ!もっかい師匠って言って!

言わねーよ!

アホ精霊!

――さらばだ、弱き人間よ――

消えたらサボっかんな!

ちぇっ。



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story7 おののおもさ


終わったよ!薪割り百本!

こんなの秒だ。

いや、分はかかったから。……で、どう?どんなカンジ?

なにがよ?

気づいてない?自分たちが強くなったの。

強く……なった……?

本数は百分のーになってたけどね。本数は百分のーになってたけどね。

斧、斧。斧の重さが数百倍になってたんだよ。

えっ――!?

…………

怒るのに忙しくて、いつの間にか振れてたでしょ?いやー、俺ってやっぱ、師匠のセンスあるわ~。

重く――

――なってねえよ!

うそーん!賃して!ホントだ超軽い!

なんの時間だったんだよ!

ハイ、今日はもう終わり!

そうカリカリすんなって。お前らまだ若いんだからさ。

バイバイ!

明日またなー。

わかったよ!


…………

……良いのですか?

…………

<その時>はそう遠くではないと、私もル=ダイン様よりうかがっております。

…………

…………

……っ!?

力をつけさせる、などと。本来その必要すらない。

誰よりも強くなる。あの二人はな。

なぜ……このように回りくどい真似をしてまで……?

知ってるからだ。

重すぎる宿命がため、生きる楽しさを知らぬままでこの世を去った者を。

……アピス様。あなた様は本当に、ご先祖様たちと……?

夢と思うほど遥か昔のこと。記憶の多くもさだかではない。

だが――あの二人は――

決して、幸せなようには、見えなかった……

…………

肉体よりも精神だ。二人は、何よりも心が、先祖には足元にも及ばぬ。

ご先祖様とは、どのような?

まさに英雄然とした――人格者だった――

……そうでしょうな……

…………

……ちょっと違ったかも……

え?

いや。それよりも、ピラウよ。

ペルマナとともに、あの二人の頭をよく鍛えてやれ。

こんな孤島だ。自然のままにさせれば、物を知らずに育ちかねん。

……わかりました。まったく、笑い話なのですが。

昨日クロカ様は、川で緑色の怪物を見たなどと……

いるぞ。

!?




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