【白猫】Runaway Horizon Story3
目次
story1 また5年前
<――そして、五年前――>
<そこそこのピンチを経験し、心を入れ替えて修行するかに思えた二人は――>
<あまり変わっていなかった!>
だらだら……だらり……
だらりとせ……
も~、なんなの~?もうちょっとやる気だしてくれてもいいんじゃな~い?
強くなんなきゃな~、みたいなあの時の気持ちはどこ行っちゃったの~?
や、あんときはそう思ったんスけどね。
今だって思ってるし。ウチらももっとがんばんないと、ロクな大人になれないんだろなって。
師匠みたいに。
ヤーイ!俺は、立派なオトナ!
ダウト!
なによ?
精霊って子供から大人になるの?
ううん俺はハナからこう。
ならば大人とは言い難し!
え~?……そう?
だから……残念すぎるけど、目標にはできないッス、師匠は……大人じゃないから……
師匠が精霊でさえなければ……
そっかあ~……期待に応えられなくてゴメン。
以後、気をつけてくださいね。
うん。じゃあ走ろうか。
えー!?!?!?
おめがー!?!?!?
仮に子供だとしても俺はつっっっよい子供!ガキ大将!
修行はやめませーん!ハイやるよー!
モチベーション問題が末解決だよー!
じゃあ選んでいいよ。
?
難易度選んで。やさしい、普通、ちょいムズ、難しい、超難しい、どれがいい?
…………
……やさしい。
オッケーそのかわり2周ねー。
えぇ~~~~~!!!
超難しいなら1周でいいよ。
なんだよそれー!
世の中そういう風にできてんの。ホラ、選ばせてあげてるんだからこれ以上文句言わないの!
なんだかなあ……
……しょうがない。
やる?
うん。こうしてるあいだに、3周くらいできてた気がするし。
そうそう!何事も考え方次第!ポジティブポジティプ!
苦行と思わずやってちょうだい!その方がゼッタイいいから!
story2 いりょく
ほっほっほっほ。
ほっほっほ。
ししょう。
なに?
ペルマナにも、言ったんだけど、そろそろ、次のステップ、昇りたし。
ただランするのに、飽いてきたにて候。
気持ちはわかるよ、超わかる、でもね、聞いて。
やっぱり走り込みが、全ての鍛錬のキホンのホなの。
二個目やないかい。
旅立ちの海の魔王とか、ブルウドさんとかも、みんな同じこと言うんだよ?
ブルウドさんて?
精霊仲間。
修行の精霊?
ううん、<解説>の精霊。ゴルフの。
ゴルフてなんぞ?
知らない?そういうスポーツあってさ。
スポーツ!
まだだよ~?
ドッジしたいドッジ!
ドッジならウチ、限界を超えて、体力振り絞れる自信ある!
いいねー。気分転換にもなるしね。
どうだろう師匠?ここは、弟子のワガママを聞いてあげる度量を見せては?
ドッジかー。何年振りだろ……
……やっか!ドッジ!
やたーっ!!!
粉とってきまーす!
いらんいらん!カカトで線引け!ぐいぐいぐい!
じゃあメンバー召集だ!
……すげえやる気。ドッジの威力、計り知れねえ。
story3 ドッジ
ドッジボール……くだらん。
ピラウ、そんなこと言わないで?せっかくだし、付き合ってあげましょうよ?
付き合うとも。私が言うのはそういうことではない。
はい?
私はアンドロイドだ。それも、心の搭載に成功した、超高性能の。
いわば最先端。いずれ心もー般化するだろうが、さらにそれより五年は早い。
はあ。それで?
相手の動き、風向き、全てを瞬時に計算すれば、当てることなど造作もない。
勝利は目に見えている。だからくだらんのだ。
演算機能を切れば……
手は抜けん。これも修行のー環なのだからな。
じゃあ……好きにしたら……
じゃスタートねー。ピラウボールから。ピー!
運が無い……よりにもよって、私ボールからとは……
だが……容赦はせん!クロカ様、シロー様!恨むなら、自分の運命を呪え!
おおげさだなぁ……
うぉぉぉぉぉ――お???
はっきよーい!
のこったのこったのこたー!
のこったのこったのこたー!
……なにやってるんです?
クロカが言った!千秋楽で勝ちされぬ奴は、本物ではないと!
そうまで言われて黙ってられるか!うおおおおおおお!!!
くんぬぬぬぬぬぬー!!!
…………
――目標補足。直撃させる!
うおー!!!
シローアウトー。
あ。
やれ。
じゃあ……ポーイ!
んがー!!!
クロカアウトー。
…………
…………
ゲームセットー。
今日の修行おしまーい。
story4 ペルマナの方針
ただい卍固め。
おかえりなさい。決着は?
内緒。
えー?
持ち越し持ち越し。俺とクロカに優劣をつけることに意味はないし。
――真の決着は、未来でつけるぜ。
そうですか。お夕飯食べたら、お勉強ですよ。
げげ。昼間の座学の分、取り戻さなきゃなので。
昼間の座学の分、取り戻さなきゃなので。
ちょっと今日は乳酸キツイから……
体は使いません。頭を使ってください。
ちがうぜペルマナ。勉強も、筋肉でやるモンなんだ。
誰がそんなことを?
クロード・アサノ氏。著書で言ってた。
私もそれ読みましたけど、違いますよ。
クロード氏は、頭脳を鍛え終えてから、筋肉に目を向けたんですから。
つまり勉強は頭だけでできます。
曲解してたかー。
まあでも、ちゃんと本も読んでるようなので、今日はドリルだけにしますか。
おっけー。ギュルギュル回るよ。
そっちじゃなくて。
別に嫌いじゃないんだけど、自分の字が下手で凹むんだよな……
シロー様のクセ字、直らないですよねえ……
ま、それも個性か。
こら。開き直らない。
今度、先生を探してみます。
しまった、習い事が増える……墓穴堀ったぜ……
story5 ピラウの方針
ただー。
いまは。
いま。あ~、今日もー日、がんばったぁ~。
おふろ沸いてる?
薪が尽きた。
えー?あんだけ割ったのにー?
アピス様が売り払ってしまうからな。
あんにゃろう。せめて売り上げのー部を我が家にまわせってんだ。
売り上げのー部ならもらっているぞ。
そーなの!?じゃあウチにもくれよー!
クロカ様の分は、私が責任を持って貯金している。
そんなこと言って、自分にだけいいオイルを買うつもりじゃないだろうな!
せんわ。
信じていいのか?
時が来たら、利子をつけて返してやる。
最近は利子もシブイと聞きますがなあ。
どこの最近だ……とにかく、薪を割ってくる間、勉強をしておけ。
ヘイ!晩御飯もまだなのに!?
満腹になると頭に入らないだろ。それでな満腹になると頭に入らないだろ。それでなくともクロカ様は、シロー様より点数が悪いんだぞ。
ちょっとの差だろー?そういう言い方は逆効果だぞー?
ちょっとの差だから、ちょっとの工夫で追いつくと思わないか?
なるへそ。そのちょっとがメシ前に勉強するの術か。
わかったら済ませておけ。そうすればそのあとはメシ風呂寝るの黄金コースだ。
得意なコースだ。
苦手な奴などおらんわ。ちゃんとやっておけよ。
アイアイア――イ!
まったく……
story6 メリハリ
今日あたり、そろそろ……アレ、数えちゃおっかな~?
!!
どうしよっかな~?やっぱやめよっかな~?
…………
どっちがいいと思う?
ヘイヘイ師匠、その手には乗らねーぜ。
ウチらの食いつきを誘うだけ誘って、実はもう決めてあんだろ?
あったり~。賢いね。
賢いつーか、師匠の言動に慣れてきたッスわ。
ヤバイ。慣れは修行の大敵だ。てことで教えるよ!力の使い方ってヤツを!
ちからのつかいかた?
ホラお前らさ、ー回、俺とかがいなかったとき、ピンチに陥ったじゃん?
そんとき何か感じなかった?こう、体の奥から、グワーってくるようななんかを。
あったッス。
あれをさ、コントロールできたら最強だと思わない?
最強はムシが良すぎるけど、できたら便利とは思う。
便利って便利だからさ!できるようになるといいよね!だからそれを練習しよう!
具体的には?
ん~、口で言うのも難しくてさ。ちょっと実例を示すから、それ見て学んでもらえる?
実例?
お呼びでしょうかアピス様。
来たか。
修行の手伝いというのは?
他でもない。私に話しかけるのだ。
話しかける?
なんぞ?
ナイス!そうそう、そうやって交互に、交互に俺になんか言ってみてチョーダイ!
私たちもですか?
その通りだ。
それがなんなの?
わっかんないかな?メリハリよ、メ・リ・ハ・リ!
?
要は力の出し入れだから。出したいときに出せて、自由に引っ込められれば第ー段階クリアなワケ!
つまり今の俺みたいなことなワケ!
って、師匠、ただ口調を切り替えてるだけじゃないッスか。
『ただ』じゃないんだよ、コレが案外難しいんだからさ!
アピス様、ル=ダイン様が探しておられましたが。
待たせておけ。また、その名は控えろ。
るぐいんて?
ぐいんぐいーんて、する係が、この島にはいんのよ!なんだよぐいーんて!なんのレバーだよ!ぎゃははは!
火戦の島ヴァルにて、不穏な気配ありとの報告が届いておりましたが。
捨て置け。かの島の乱れはハシカのようなもの。大事あらば、予言に現れるであろう。
予言てなんスか?
外しちゃうんだよねー、キャットレース!予言みたいなこと言うと、必ず逆になんの!
理解した。
確かに案外難しそうだ。
でしょでしょ?力のコントロールに通じてるとこあるのよ!
なんて!ホントはほとんど関係ないんだけどね!ぎゃはははは……!
いや、それがダウトだ!割と関係あると見た!
いいねいいね~、麒麟児だね!師匠冥利に尽きるってモンよ!
てなわけで、力の出しどころをきちんと見極めて!魔物を倒しつつ、森を突っ切ってきて頂戴な!
私たちは……
二人に随行し、結果を報告せよ。
はっ。
じゃあ、行ってくるか、クロカ!
うむ。乗せられた気がせんでもないが、ただ駆けるよりよさそうだ!
気ぃつけろよ~!メリハリだぞ、メ・リ・ハ・リ!飛ばしすぎるとすぐバテるかんな~!
まいる!
おう!
また最終話 成長
おかえり~!どうだった?
まあ、なんつーんスかね。
とりあえずやってきたけど、あんまし意味はなかったかなあ。
ズコーン!なんでよ!?
いまいちピンチ度的に切迫しなかったと言いますか。
そっか~……まいいや、第ー段階ってことで。
意識意識、意識するのが大事だからさ!これからも、忘れずにいてよ!
お前らにはご先祖様からつらなる、すん~ごいパワーが、秘められてるんだってことをさ!
たぶんだけど!
多分か~。
たぶんたぶん!確定しちゃった過去以外、全てのことは多分でしかないの!そんなもんなの世の中!ぎゃははは……!
<そんなこんなを経つつ、二人は――>
<徐々に成長を遂げていく……?>
簡単に目には映らないよね!成長とかってさ!そういうモンなんだもの!
でもさでもさ、実際はちょっとずつ何かは進歩してってっから!
たぶんだけどね!ぎゃはははは……!