【白猫】KINGS CROWN Story5
story シャルロットに栄冠を
<パーティ会場からほど近い聖堂に移動したー行。
あら?立派な玉座がしつらえてあるわ。
フンイキって大事じゃない?だから、いちおう準備を整えといたの。
ここ、結構有名なところですよね。……キャトラちゃん、ー体どんなコネを使ったんですか……
さて、いよいよか……
ねえユキムラ、パーティーたのしかったね!
うお、びっくりした。いきなり話しかけるなよ。
ちっちゃなねこ、いろいろありがとね。
満足してくれたんなら、よかったわ。
オウスイ殿、いけませんぞ!
ちぇっ。ライダスはあたま固すぎ。
あ、そうだアイリスさん。『光の道しるべ』の事、思い出しました?
そーいやあったな、そんなこと……
……いえ。でも、たぶん大丈夫です。
みなさん、王冠をこちらへ。
<アイリスが玉座へと登る――>
まずは、シャルさんですね。
ほーい。
……なんか、ごめんなさい。上から見おろしちゃって……
いいよいいよ。リスなら許す!
うふふ、ありがとうございます。……さあ、準備はいいですか?
おーう!頼むわー。
<アイリスは、シャルロットの王冠を両手で掲げた。>
(――光。強く、清く、美しい光。どこか懐かしく、どこか――悲しい)
<アイリスはゆっくりと目を閉じる。>
(まるで、私を導いてくれるよう……)
よくぞ白き光へと帰られた!
(あなたに……祝福を……?……言葉が、自然と……)
――さあ、今こそ!この者達に力の王冠を!言の葉はお判りのはず!
…………
――シャルロット・フェリエ。
はい。
あなたに祝福を与えます。――恩恵に与る喜びを、不断の意志へと変えなさい。
あなたに栄光を与えます。――その名は永遠に輝き、征くべき道を照らすでしょう。
あなたに力を与えます。――命の灯が消えるまで、真の正義はあなたと共に。
<アイリスの言葉とともに、王冠の光が増してゆく――!>
シャルロット殿ッ!これが最後ゆえ、申し上げさせていただきますぞ!
わっ!な、なに?
貴殿の力となれる事……心から光栄に存じております!どうか、ご武運を!
……ん。あんがとな、おっさん。
選ばれし者よ。いま、精霊との契約によりて、汝に光の加護を授けん――
す、すごい……!これが……
精霊の王冠の、本当の力……!
なるほど、こんな感じになるのか。これは……すごいな……
……シャルさん?
…………
<シャルロットは毅然とした表情のまま、アイリスの前にひざまずく。>
この度は得難き栄誉を賜り、わたくしの心はかってない程の喜びで打ち震えております。
わたくしは、光焔の御子……抗う事の出来ない使命を持って生まれた人間です。
ならば……果たしましょう。わたくしの使命は、わたくしの生きる道。
救いましょう。この命、続く限り――
……なーんちゃって、な。ちょっとしおらしくしてみた。
……うふふ。立派ですよ、シャルさん。
いやーしっかし、ホントにすげーよコレ!いまならどんな奴でもぶっ飛ばせる気がする!
おー、イイじゃねえか。あとで俺とタイマンするか?
うぉー!シャルさん、なんだか……守ったる!って感じになりましたね!
はいはい、静かに!まだ二人残ってるんだから!
……ユキムラさん。こちらへ。
ああ。
story ユキムラに栄冠を
お会い出来て光栄です、女王陛下。……なんてな。
もう、ユキムラさんったら。
『光の道しるべ』と、力の解放。何とも疑問だらけだが……
今は、式に集中するとしようか。
ええ、そうですね……
……紋章画家の俺が力を欲するのは、おかしいと思うか?
いいえ。きっと、それだけの理由があるのでしょう?
……機会があれば、飛行島でゆっくり話すとしよう。
ぜひ。
<そうして、ユキムラの王冠がゆっくりと掲げられる。>
もうしゃべってもいいよね!
……ねえ、ユキムラ。ボク、きみのもとへこれて、ほんとうによかった。
きみのためなら、ボクはよろこんで力をかすよ。
なんだか、最後の別れみたいだな。
うん、ある意味ではね。戴冠が終われば、ボクたちは二度と口をひらかない。
そういうものなんだ。
そうか……オウスイ、ありがとう。お前の力は、無駄にはしない。
うん!
――ユキムラ・サイオンジ。
ああ!
あなたに祝福を与えます。――恩恵に与る喜びを、不断の意志へと変えなさい。
あなたに栄光を与えます。――その名は永遠に輝き、征くべき道を照らすでしょう。
あなたに力を与えます。――命の灯が消えるまで、真の正義はあなたと共に。
選ばれし者よ。いま、精霊との契約によりて、汝に光の加護を授けん――
…………
はい、ではー言お願いしまーす!
……俺は、紋章画家として、これまで山ほどの苦難を乗り越えてきた。
親友との辛い別れもあった。……だが、俺は今、こうして生きている。
それもこれも、俺を支えてくれた皆のおかげだ。
ここに誓おう。この力は、そんな皆の為に使うと。俺を必要とする人達の為に使うと!
だからどうか見届けて欲しい。ユキムラ・サイオンジの新たなる出発を!
ユキムラさん、ご立派ですよー!
ユキムラさんっ!やりましたねー!にいちゃんもよろこんでますよ!
いや、きっとまた盛大におちょくってるだろうな。
あはは、そうかもですねー!
さて……最後はオスクロルね。
オスクロルさん、こちらへ。
はいっ!
story オスクロルに栄冠を
アイリスさん、よろしくお願いします。
はい。……あら?そういえば、ソアラさんは?
お腹がいっぱいになったのか……寝てます、あそこで。
あーあー、あんなにヨダレを垂らして……
あの……オスクロルさんは、どうして力を得たいと思ったんですか?
……あ、すみません。踏み込んだことをお聞きして。
……実は、最初に『力を授けよう』っていわれた時……断ったんですよ、私。
え……
シャルロットさんやユキムラさんもそうだったみたいですね。
どうして、断ったのですか?
力の恐さを、知っているからです。
…………
えっと、話し出すと長くなっちゃうんで、続きはまた今度にでも。
……ええ、そうですね。
<オスクロルの王冠をアイリスは掲げた。>
…………あ、あの、カジャさん…………話せるのは、これが最後らしいので……
どうも、お世話になりました。あ、いえ、まだまだこれからもお世話になると思うんですけど……
あなたには、たくさんの事を教えていただきました……
貴様に何か教えたつもりなどない。
いいえ、いいえ!……もう話せないと思うと、寂しいです……
感傷的だな。貴様の甘えた性格が、我はどうにも気に食わぬ。
すみません……
……しかしだからこそ、我は貴様を選んだのだろうな。
よいか――決して、見誤るな。
……わかりました!
それから、ーつだけ言っておこう。
苦難の時は近付いている。心せよ。
世界は待ってはくれぬぞ。
…………はい……
――オスクロル・ラス・カサス。
はい!
あなたに祝福を与えます。――恩恵に与る喜びを、不断の意志へと変えなさい。
あなたに栄光を与えます。――その名は永遠に輝き、征くべき道を照らすでしょう。
あなたに力を与えます。――命の灯が消えるまで、真の正義はあなたと共に。
選ばれし者よ。いま、精霊との契約によりて、汝に光の加護を授けん――
…………
君からも、何かー言あった方がいいのだろうか?
あ、はい、そうですね。えっと、この度はありがとうございます。
私は今、冒険家としての活動だけではなく、ギルドの支部を各地に設立する仕事もしております。
他の冒険家の方だけじゃなく、依頼を出したくても出せないような方のお手伝いができたら――そう思ったからです。
とにかく、誰かの役に立ちたい。誰かを助けたい。……魔王だった頃からの、変わらない願いです。
願いは、意志があれば現実となります。……そして今回、こうして力を得た事で――
私の意志は、より強固なものとなりました。だから、その……
え、えっと!これからも頑張りますえ、えっと!これからも頑張ります!よろしくお願いいたします!
魔王っぽく――ー!
え?
魔王っぽくシメてみましょーやーー!
ええー…………というか、起きてたんですか!
あ、それアタシも見たいかも。
キャトラちゃんまで!……はあ、わかりました。――オホン!
民よ、脆け!そして、震えるがいい。我に秘められし邪悪な力が、今ここに目覚めたのだ!
この暁闇の魔王オスクロルが、この世界を永久の恐怖へと陥れてやろう!
懐かしいっすなー、その感じ。
さあ勇者よ!今こそ立ち上がるのです!
いや、もういいっすから。
あ、ごめんなさい。つい……
……なんとか、終わったね。
うん。お疲れさま、アイリス。
二人もね。色々と、ありがとう。
……というわけで、みんな、今日は来てくれてありがとね!
パーティー会場の方はー日貸し切りだから、まだまだ騒ぎ足りないひとはこのあとも残ってちょーだい!
おっしゃ――ー!戻るぞレイン!騒ぐぞレイン!
やなこった。……おい。そこの元魔王。力試し、したくねーか?俺が相手になってやる。
え!?い、いえ、遠慮しておきます……
いいじゃねえか。付き合えよ。今日はその為に来たんだからなぁ?
えっと、そのぅ……
バカモン!オスクロルさんが困ってるでしょ!相撲で我慢しろ!
だから何で相撲!?
シャルロットちゃんって、ミコだったんだねー!あたし達と同じじゃん!
でも、意味合いは少し違うと思いますよ。
まあ似たようなカンジじゃね?わかんないけど。
だね!じゃあミコ同士、仲良くしよう!
いーよー。……ってことで、ビーフ食いに戻ろうぜー♪
はい!王冠のお話、聞きたいです!
紋章画家ユキムラ……お噂はかねがね。
帝国海軍の大尉にまで知られているとは、光栄だな。
毎日を海の中で過ごすような人間には、芸術が心の拠り所になる時もあるのさ。
確かにそうかもしれないな。……君も、今日はありがとう。
ああ。……すまないが、サインをもらえるか?
タコ……部下がどうしても欲しいと言って聞かなくてな。
お安いご用だ。……今日のお礼だ。どうせなら、紋章画を贈ろう。
みんな交流を深めているわね~。パーティー、やってよかったわ。
私達も戻りましょうか。のど、かわいちゃった。
アタシも、司会進行ばっかで全然食べてないの!主人公、いくわよ!
<こうして、戴冠式は無事に終わった――>
そういえばアイリス。アタシまだ聞いてなかったんだけど……
戴冠式のこと、だよね。
うん。アレさ、見ててわかったけど、アイリスの宣言……ことばがキーになってたワケだよね?
どうして、そのことばがわかったの?
……王冠に触れた時……頭の中に、自然と浮かんできたの。なんとなくだけど。
『光の道しるべ』――精霊さんがいってたのは、その言葉のことだったのよ。
精霊の王冠と、あの光……きっと、私にとって大事なものなんだと思う。
そっか……ねえ、ことば以外にはなにか思い出さなかった?
アイリスのうしなわれた記憶に関することよ。
……ううん。でも、もうーつだけ、思い出した言葉がある。
『正しき力は、正しき者へ』――
……これだけじゃ、なにもわからないよね。
うー……モヤモヤするわね!けっきょく、なにもわからずじまいじゃないの!
でも、私たちは正しいことをした。それだけはわかるわ。
そ-ね…………精霊の王冠、かあ……
それは恐らく、<キングス・クラウン>の事ですな。
!!
失礼……声が聞こえたものですから。
バロンさん。……なにか、ご存じなんですか?
……くキングス・クラウン>。
キングとは文字通り<王>の意。……王の為の王冠ではない。王との絆を結びし光の――
…………?
……いえ、今はやめておきましょう。
ちょっとー!すごくいいところだったのに!
いずれ……思い出す時が来るでしょう。白の巫女殿――
…………
……主人公。心配しないで。
焦らず、ー歩ずつ……みんなとー緒に進んでいけば、きっと大丈夫。
だから……これからも、よろしくね。
「正しき力は、正しき者へ。
どうか、いつまでも――
世界に安らぎが、ありますように。」