【白猫】KINGS CROWN Story3
story6 シンとネモの余興
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…………
まさか、また会うことになるとはね。しかもこんなにぎやかな場所で。
お前。何故、この勝負を受けた。
君と同じさ。
ふん……
……やるからには容赦はしない。泣きっ面を晒したくなかったら大人しく帰る事だな。
それは君の方だよ。――たこ焼き屋さん?
えー、みなさん。これから二人には、真剣勝負をしてもらうわ。
――〈ポーカー〉でね!!
ポーカー……トランプのゲームね。
……でもキャトラ。よくお二人が応じてくれたね?
うん、二人がゲームで賭けるのはチップだけじゃないからね。
えっと、つまり?
(勝負に負けた方は、自分にかんする〈重要な秘密〉を相手に話すことになっているのよ……!)
そ、それって……!
<ネモとシンが、会場の一角に準備されたカジノコーナーへと移動する。>
……ネモ。聞いているとは思うが、僕が勝ったら、君の事について教えてもらうぞ。
僕の心にずっと引っかかっている……〈ある事〉についてだ。
いいだろう。
代わりに、僕が負けたら……
とある重要な〈機密〉を話してもらう事になる。
お前なら知っている……いや、海軍にいるお前だからこそ知っている機密だ。
(……やはり、この男は……)
そういう約束だろう。男に二言は無しだ。誓えるな?
……ああ。たとえパーティの余興だろうと、僕は真剣な気持ちでここへ来た。
それでいい。
それでは始めましょう。ルールは〈ジョカ・ドロー〉でよろしいですね?
<〈ジョカ・ドロー〉――娯楽の島・〈ジョカ〉発祥の、ドロー・ポーカーの一種。
ディラーが、カードを配り始める――>
<ゲーム序盤。勝負は一方的な展開を見せていた。>
……コール!
ふん。
それでは、ショウダウンです。
……ストレートですね。――こちらがフラッシュ。よって、シンさんの勝ちです。
やるじゃないか、大尉。
…………
(さっきから負け続けているのに、何なんだこの余裕は……)
どうやら今日はツキがないようだ。
……君は何を考えている?
そうだな……今日の晩飯とか?
……余裕をかましていられるのも、今の内だぞ!
***
ゲーム中盤。
ネモに対し、シンはいまだリードを保っている。
さて、流れを変えるとしよう。……レイズ。1万ゴールド。
(始めてレイズを宣言した……!今度は自信のある手なのか?いや、ブラフという可能性も……)
ブラフだと思うか?
!!……ブラフなのか?
さあてな。
(ヤツはすでに、何度もハッタリを仕掛けている…………という事は……いや、だからこそ今回も……)
(……考えているな。
シン・シャーク。ドレッド・ノート号艦長。優秀な潜水艦乗り。
部下からの信頼も厚く、真面目で実直な性格。文句の付けようがない経歴。
――しかしそれ故に、お前は敗北を喫する事になる。)
ポーカは苦手なようだな、大尉?
(……ひとまず、出方を見る。)
レイズ!5万ゴールド。
レイズ。10万。
即答だと!?……いや、待て……
(……わかったぞ。これは――ブラフ!)
コール!
それではショウダウンです。シンさんはスリーカード。ネモさんは――
フルハウスです。
馬鹿な!
浅いな。
リードが……一気に……無くなった……
(まさか……まさか!ここまでの展開は、全てヤツの思惑通りだったのか?……嘘だ。そんなはずはない!)
ポーカーは運だけでは勝てない。相手の心を読む必要がある。
シン。お前の考えは手に取るようにわかる。だから浅いと言ったんだ。
***
ゲーム終盤――
状況はあれから変わらず、ほぼイーブンか。
……さて、そろそろだな。
(踊らされている……僕の勝ちも、負けも……全て手の平の上で転がされている!
この狡猾で嫌らしいやり口!似ている……!あの時と……!)
さあ……侵略開始だ。
…………
story7
<ディラーがカードを配る。ゲーム終了まで、あとわずか。>
…………
<シンは配られたカードをめくると、ネモの瞳をじっと見据えた。
冷酷無比に光る瞳……その奥にあるものを、彼はその瞬間、確かに感じ取った。
いや……感じ取ったのではない。――思い出したのだ!>
ベット。50万ゴールド。
<深淵を!>
ほう?
<50万ゴールド……今回の〈ジョカ・ドロー〉において、最初に賭ける金額としては、余りにも非常識な額――
会場がどよめきに包まれる。それでも彼は揺るがない。
そしてもう一人――揺るがない者がいた。
レイズ。100万ゴールド。
<即答するネモに、シンは食らいつく。>
レイズ。200万ゴールド。
コール。
<1回目のベッティング・ラウンドが終了――
シンが2枚、ネモが3枚のカードを捨て、新しいカードと交換。
――二人が、再び見合う!>
シン。宣言しよう。
俺の手は弱い。
ならば降りたらどうだ?
ほう、面白い事を言うな。
君の考えが読めないことが読めた。それなら道は一つ。
己の直感に、賭ける!
……と、お前が言う事まで読めていたとしたら?
大したたこ焼き屋だと、賞賛の言葉を贈ろう。
お褒めに預かり光栄だ。
<このゲームで全ての決着がつく事を――>
オールイン。560万2000ゴールド。
オールイン。558万6000ゴールド。
<二人は確信していた!>
ショウダウンです。8のワンペア。……10のワンペア。よって――
勝者はシンさんです!
***
以上、シンとネモの真剣勝負でした~♪
あ、ちなみにあのチップはただのオモチャだから。フンイキって大事よね~♪
お疲れさまなのです、ネモ。
やれやれ、負けてしまったな。
あとでなぐさめてあげるのです。
……ドーナッツでも食うか。
やりましたね、艦長。
ギリギリだった。いやはや、疲れたよ……
……それで、艦長さんはネモさんから何の秘密を聞こうというんですか?
……後で話すよ。
***
…………
来たか。
約束だ。
君は……〈虹の海〉の戦いを知っているか?
ああ。
僕はその時、ある潜水艦と戦った。……コテンパンにやられたけどね。
挑発的で狡猾な戦術だった。……今日の君にそっくりな戦い方だ。
答えてくれ、ネモ。あの時の僕の相手は……君だったのか?
…………俺は――
ネモ、こんな所にいたのです?いきなりいなくなるから、心配したのです。
はやく、ドーナッツを食べにいくのです。ゆらゆら~♪
…………
ノア、すまないが少し外してくれるか?
……いや、もういい。
聞かなくていいのか?
また今度にするよ。今日はめでたい日だからね。
たこ焼き屋は忙しいんだ。また今度があればいいがな?
あるさ。きっと……
***
さて余興は次で最後となります。
トリを飾るのは、クジョウの島の巫女、セツナとトワよ!張り切ってどーぞ!
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