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【白猫】トモエ・思い出

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
帝国陸軍大尉
トモエ・シンジョウ cv.深川芹亜
帝国陸軍の若き大尉。
己を剣と成すべく鍛錬に励む。
2015/12/24



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思い出1



駄目だ……まだこの身は剣になりきれていない。

この空飛ぶ島に、剣へと至るきっかけがあるのだろうか。

あら、またお客様ね。

私はトモエ。帝国陸軍の大尉であります。

よろしく、私はアイリスです。まあ、帝国の人だったのね。

アタシはキャトラ、こっちは主人公よ。

主人公殿に、アイリス殿、キャトラ殿でありますか。

未だ道に至らぬ、なまくらにございますが、何卒よろしくお願い致します。

堅苦しいわね。もっと気楽でいいのよ?

失礼いたしました。こういう時には小粋なジョークでも交えながらご挨拶をするべきなのでしょうが。

いいんですよ。トモエさんらしいご挨拶で。

お心遣い、痛み入ります。

ところで、飛行島はどうかしら?気に入った?

はい。すばらしい安定感です。帝国の飛行艇ではこうはいきませんね。

こちらの飛行島の積載量と航続力はどれほどなのでしょう。

安定感ねえ。

……えーと、わかんない。

申し訳ない。重要機密でしたね。うかつな質問でした。

別に内緒のことなんか何もないけどね。

時に皆様、こちらの島には名高き鍛冶師殿がいらっしゃるとか。

バロンさんですね。

あら、そんなに有名だったの?

新しい客人か。

噂をすれば影だわ。

貴殿がバロン殿ですか。私は帝国軍人のトモエと申します。

帝国の方か。ようこそ飛行島へ。

どうかこの私に、ご指南をいただけませんでしょうか。

ふむ、私に何を?

私は、剣になりたいのです。




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思い出2



<巻きワラを前にして、トモエが正座をしている。

トモエの腰には、鞘に収まった剣があった。

まばたきのー刹那。トモエの手には抜き身の剣が光っている。>

……ふぅ……

……えっ?

<巻きワラは、上下二つに切断されていた。

トモエはゆっくりと剣を鞘に納めた。>

抜いた瞬間が見えなかったわ!アタシの視力をもってしても!

つたなき技、お目汚しでございました。

トモエったら、剣の達人なのね。

いえ、私など、ただのなまくら。まだ剣には至っておりません。

そこがわからないのよね。剣になりたいってどういうこと?

……確かに疑問ですよね。

我が流派は、心技体を磨き、己の身を一振りの剣にすることを理想としているのです。

私も十数年の鍛錬を積んでまいりましたが、この身はようやく火造りを終えたばかり。

火造りってなんですか?

はい、刀剣造りの用語で、鋼より刀身を打ち出すことです。

じゃあ、基本はできたけど、まだ仕上がってないってことね。

恥ずかしながら、その通りです。

トモエさん、ご自分に厳しいんですね。

ところでアンタ、バロンに何を聞いてたの?

優れた武具を鍛えるバロン殿であれば、己を剣たらしめるということの意味を、お判りではと思ったのです。

自分を剣にする……ですか。

何か参考になったかしら?

バロン殿はおっしゃいました。優れた武具には心金があると。

流石はバロン殿です。私も揺るがぬ心金を持てば、きっと剣に至るでしょう。

なるほど……わかったようなわからないような。

これからも、バロン殿より受けた教えを胸に精進する所存です。




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思い出3



ハッ!! ハッ!! ハッ!!

<トモエが、規則正しく指立て伏せをしている。>

トレーニングしてたのね?

キャトラ殿ですか。ごきげんよう。

指で腕立て伏せって、すごいですね。

握力が鍛えられそうだわ。毎日やってるわけ?

はい。鍛錬の前の準備運動ですので。

準備運動?これが鍛錬じゃないの?

鍛錬にはこちらを使います。

土のう……ですか?

ハーッ!!

<トモエは、土のうを積みあげて作った壁に、抜き手を突き立てた。>

すごいですね……

大丈夫? 突き指しない?

鍛錬しておりますので、問題ありません。ハッ! ハッ!

指が痛そう。

ハァーッ!!

<トモエの手剣が、土のうに突き剌さる!>

うわぁ、すごいわね。土のうに穴があきそう。

私など、ただのなまくらです。いつか刃がそなわればと思うのですが……

剣にこだわるのねえ。

でも、どうして……?

私はー振りの剣でありたいのです。折れず曲がらず、あらゆるものに立ち向かう刃に。

剣に至らねば……我がー命に意味はありません。



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思い出4



<トモエは、急須で緑茶を注いだ。>

いかがでしょうか?

<トモエの滝れたお茶は、甘みと旨味と苦みが程よく絡み合っている。>

美味しいです……!

アンタ、緑茶が好きなのね?

はい。お茶を入れる時は、幸せな気分になります……

ホントに幸せそうねえ。

帝国の方って、お茶がお好きなんですね。

はい。もっとも帝国では、紅茶の方がー般的ですけどね。

あらそうなの?

今は紅茶党の後塵を拝しておりますが……

いずれは我ら緑茶党が、紅茶党をしのぎ天下を取る日が来ると、私は信じています。

天下ですか。

失礼、天下というのは言葉が過ぎましたね。実は私の友人が熱心な紅茶党で、つい張り合ってしまうのです。

そんなお友達がいるのね。

ええ、未来の帝国軍をしょって立つ逸材です。

彼女には負けられません。兵法しか知らぬ私ですが、武功をもって尽くしたいと考えております。

マジメねえ。

では、そろそろ鍛錬に戻ります。

<トモエは丸太を飛行島の地面に立てる。>

今度はこれを切ろうってわけね。

ルーンの力を借りないで、剣だけで斬るって、むずかしいわよね。

むうう……

あれ、トモエ剣もってないわ。

はあーっ!!

<トモエは手剣を丸太に振り下ろす!丸太は斜めに断ち切られた!>

て、手でいったわー!?

まだ……足りない!



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思い出5



えっとトモエ……昨日から何をしてたの。

剣になるための修練をば。

でも、水着で氷山につっこんでいく必要あったの?

この身が剣となれば、氷を斬ることも叶うはずなのです。

されど氷は割れただけ。斬るなどとても……!

怪我しなくてよかったわ。でも氷はまだいいのよ。なんで砂漠を徒歩で横断したの?

あの砂漠は凄まじい風が吹き荒れる魔境。己の身を磨くにはふさわしいと。

サウナにこもったり、断食したり、クルミを手で握りつぶしたりも修行?

はい。ですがいずれの修行でも剣には至れませんでした。

そうだったんですか。

くちおしや。非才なる我が身が恨めしいです。

でもアンタ、なんでそんなに剣にこだわっているの?

……それは……

言いたくないなら、無理には……

いえ、皆様にはお伝えしておきましょう。全ては我が母との時間を取り戻すため。

どういうこと?

私が剣士を志したのは、母によるところが大きいのです。

お母さんも剣を使う人だったのね。

はい、我が流派の継承者です。

なんだか強そうね。

母の力は、一個大隊に匹敵します。

すごく強い方なんですね……

母は帝国軍少将として、長らく軍務についておりました。そのため家に帰るのも稀でした。

ですが父と、父の親族たちは母には他に、家に帰れぬ理由かあるといいました。

どんな……理由よ。

母が……別の男性を愛するようになったからというのです。

母のことを、怨みました。憧れていたから。会えなくとも、慕っていたから。

私の誕生日に、ようやく家に帰ってきてくれた母を、私は拒絶しました。

母の買ってきたプレゼントを床に叩きつけて。

そんな……

すべては誤りでした。他に女性をかこっていたのは、父の方だったのです。

父はもとより、武名名高い母に嫉妬をしていました。憎んでさえいたと――

アンタのお父さん、お母さんが好きじゃなかったの?

元よりー族が決めた政略結婚。ゆえに離れることもできぬ間柄でした。

全てを知った私は、剣に打ち込みました。失った母との時間を、取り戻すために。

間違った怨みをいだいたなまくらな心と体を打ち直し、せめてー振りの剣たればと。

そんなことする前に、お母さんと話をしたら?

いまさらどんな言葉もない……!

愛を拒んだこの身は、剣となるしかないのです。



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思い出6



なんと鋭く、熱い輝き……まるで剣のような。

主人公は、剣に至っていたのですか?

主人公は冒険家です。夢を追っているんです。

夢……なんとまぶしい言葉。

アンタの夢は、お母さんに認めてもらうこと?

私に、そんな資格はありません。

あるわよ。娘なんだからさ。

娘……

ありがとうございます、主人公さん。

私の心は決まりました。



…………

………



トモエは、帝国軍司令部に赴いていた。


「少将、面会の時間をいただき、ありがとうございます。」

トモエの母は、娘に冷たい視線を送った。

トモエは、静かに剣を抜く。

母も抜く。だが、母は構えない。ただ抜き身を下げて、静かにたたずむ。

「無拍子……!」

トモエは声もなく、剣を振りかぶる。

「はあ、はあ、はあ……」

一瞬の交差。その間に勝負は決する。トモエは執務室の床で片膝をつく。


「お前の剣は醜い。」

「そうだろう。ただあなたを母と呼ぶために鍛えた剣。」

「そんな剣が、私に及ぶとでも?」

「及んで見せる!失われた時のために!」

トモエは剣を捨てた!

「つかまつる。我が身は剣なり!」


トモエの手剣は、母の喉笛に。

トモエの母の剣の柄は、トモエの腹に――


「……これが、我が剣。

あなたの背中を見続けた、愚かな娘の剣。」


トモエの母は、立ちすくみ……己の手にしていた剣を、娘へと手渡した。


「……これは……!継承者の証……!」

「持っていきなきい。我が娘よ。」

「……少将殿。」


トモエの目より、熱いものが零れ落ちた。


「あなたの手をとれなかった私を、娘と呼んでくれるなら――

これからは、あなたを母と、呼ばせてください。」




戦術流免許皆伝 トモエ・シンジョウ





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画像説明
トモエトモエ・シンジョウ cv.深川芹亜
帝国陸軍の若き大尉。
己を剣と成すべく鍛錬に励む。

今日はにゃんの日? Story

人物紹介
画像詳細
ジュダジュダ・バル・アーウェルサ cv.子安武人
1人で構成された特殊な帝国軍十三軍団「葬送」に所属。
親友である皇帝への忠義は非常に強く、帝国の敵には一切の容赦をしないことから「帝国の棺」と呼ばれ、恐れられている。
アイシャアイシャ・アージェント
特務機関<狩猟戦旗>に席を置く女性。
ジェリービーンズを手放さない。
(年齢・20代前半)
ヴェロニカヴェロニカ・メアリィワース cv.西田望見
帝国を影から見守る夢魔。
夜を羽ばたく蝶は誰の味方なのか。

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