フィリップ・思い出
弱腰教師 フィリップ・アイレンベルク 魔法学園の教師。 紋章魔法を専門に教えているが、軟弱で生徒に強く出られない。 |
思い出1
こ、こんにちわ……
<ローブをはおった青年が、おどおどと声をかけてくる。>
わ、私、フィリップって言います。魔法学園で紋章魔法の教師をしていまして……
そうなんですか。よろしくお願いしますね。
<アイリスがあいさつすると、フィリップは、ほっとした表情を見せる。>
よ、よかったぁ。私、人見知りで、初対面の方にごあいさつできるか、不安だったんです。
先生が人見知りじゃ、いろいろ困るんじゃな~い?
そうなんです……よく、学年主任の先生に怒られて、おしおきされてるんです……
ああでも、そんなにおしおきはイヤじゃないというか、むしろ……
<沈黙するこちらの視線に気づいて、フィリップはあわてて咳払いした。>
ご、ごほん! と、ともあれ、よろしくお願いしますね。みなさん!
思い出2
マル、バツ、バツ、マル……
<フィリップが、せっせとペンを走らせている。>
フィリップせんせー、何やってんのぉ~?
やあ、みなさん。テストの採点をしてるんです。
へえ~。こんな島まで来て大変ねぇ~。
そういえば、先生はどうしてこの島に?
そ、それはですね……紋章魔法の実地研究と言いますか……
モンスターも強くなってきた昨今、教師も実戦を積み重ねないと、時代遅れになりますので……
ふぅ~ん。魔法の先生は大変ねぇ……
それに……ここで自分を鍛えれば、落ち着きある立派な教師になれると思って!
<フィリップが決意するように拳を握ると――持っていた羽ペンが、べきりと折れた。>
あ、ああ~っ! しまったぁ~!
先は遠いわねぇ~。
思い出3
あぅわわわ……!
<ぼろぼろと、フィリップの手から銀細工の紋章が転がり落ちる。>
拾うの手伝いますよ、先生。
いっぱいあるわねぇ~。何に使うの?
魔法です。私の使う紋章魔法は、これらの紋章を媒介とするんですよ。
そうなのぉ~?
ええ。火や水など、ルーンには種類ごとに異なる紋章がありますよね?
ええ、そうですね。
紋章魔法は、ルーンの紋章を組み合わせ、新たな効果を作るんです。
つまり……ルーンをつぎはぎして、改造するってこと?
はい。効力は落ちますが、幅広い効果を得ることができます。
いろんな紋章を作っておけば、あらゆる状況に対応することが―
あ、あれ? ないぞ?<雷撃>の紋章がなーい!
……まず、なくした物を見つける紋章を作った方がいいんじゃな~い?
思い出4
はあ……
……どうしたのよ先生。幸せそうな顔しちゃって。
あはっ、そんな顔してますぅ?
してるしてる、超してる。何かあったわけ~?
ええ……実はテスト問題を家に忘れてしまったんですけど……
そしたら、学年主任の先生に、『しっかりしなさい!』っておしおきされちゃったんですよ~!
はあ……って、え?
それであの表情!?
はいぃ~。私のことを見てくれてるんだ、と思うと、うれしくって……
そ、そう……
でも、このままでもダメなんです。男らしい魅力をアピールしないと!
ねえ、主人公さん!どうしたら男らしくなれますか!?
とりあえず、腹筋とか、腕立て伏せでもしたら~?
無理です! 死にます!
そんなことを男らしく断言するなぁーっ!
思い出5
あ、フィリップ先生だ。
やあ、みなさん。こんにち――
うっ……!?
<突如、フィリップが口元を押さえ、うずくまる。>
先生!? 大丈夫ですか!?
…………
うるせぇぇえーッ!
<フィリップは、野獣のような咆哮を上げて立ち上がった!>
へ!?
ちっくしょオ! どいつもこいつもオレを軟弱者呼ばわりしやがって!
いや、それも全部オレが悪ぃんだ!この弱腰野郎め! ヘドが出るぜ!
先生が……男らしく?
でも、自虐的よぉ~!?
くそっ! くそっ!ふざけんじゃねェ!ふざけんじゃねェぞォォオーッ!!
思い出6
光……? ああ――これは――うっ……!
先生……、落ち着きました?
は、はい……まだ頭がクラクラしますけど……ありがとう、主人公くん。
いったいなんだったのよぉ?
少しでも男らしくなれればと……<勇猛>の紋章を装着したんです。
そしたら、制御を失ってあんなことに……
そうだったのねぇ……もう、びっくりしちゃったわ!
す、すみません……
先生は、ああいう感じになりたいんですか?
いえ……違いますね。男らしくはなりたいけど……乱暴者はイヤです。
こっちだって、なられたら困るわよ~!
そうですね、反省してます……
紋章に頼るのはナシです。ちゃんと自分で探してみます。私にふさわしい<男らしさ>を……
そして……その時こそ、主任先生にこの想いを――
決心の紋章魔法教師
その他