【白猫】キサラギ・思い出
キサラギ・クレナイ cv.井澤詩織 人の世を謡う鬼族の歌人。 言霊を操り、万象を書き換える。 | ||
2015/01/28 |
フォースター8th Story
思い出1
ううむ、絶景かな絶景かななんとも鬼ヤバい光景じゃの。
空飛ぶ島、いとをかしじゃの ふむ、一首できたのじゃ。
どうかのう? 島の方々、ちょっと読んでくれんかの。
これは……詩ですか?
ずいぶん短いわねー。でも短いなかにいろんな気持ちが入ってるのね?
これは短歌じゃ。わらわの島につたわる短い詩のことじゃよ。
へぇ、こういう詩もあるのね。
詩人さんなんですか?
わらわは歌人じゃ。名はキサラギと申す。
私はアイリスです。
よろしくお願いします。
ここはケッタイでよい島じゃのう。鬼エキサイティンじゃ。
(かわった言葉づかいね?)
(なんと、鬼族か……古き鬼の力は神竜にも匹敵するというが……)
おやおや、こわい顔じゃのぅ。お獅子の人。わらわは暴れたりはせぬよ。
暴れる? 暴れるなら外でやってね。
鬼は外というからのう。ふふふふ。
鬼……?
わらわは鬼じゃ。悪鬼羅列と恐れられる存在よ。ビビったかの?
あっきらせつって何?
鬼ヤバいほど悪くて強いやつ、という意味じゃよ。
キサラギさんは悪い人……なんですか?
わらわは鬼いい人じゃ。
だったらいいじゃない。いまさら鬼なんてだれも気にしないわ。
この島にいるのは変わった連中ばっかりだしねー。
ほう……? ふむふむ、なんとも、人の世にそのような場所があるとはのう……?
思い出2
カニカマや ああカニカマや カニカマや
カマボコなのか それともカニか
ふむふむ、なかなかよい歌じゃ。じつに哲学的な問いかけじゃの。
どのへんが哲学なのかしら?
ふふーん、短歌って意外と簡単じゃない!
簡単でありながら奥が深いのが短歌じゃよ。
アイリスもできたようじゃな。どれどれ……
あ、あの……
どうしたのじゃ? 見せてみい。
ふふ~ん。いいにくいなら、私が読んであげるわ!
先月は 入った服が もうきつい
ごはんをすこし 食べすぎたかも
……ほうほう。なるほどのう、これは乙女の永遠の悩みじゃのう。
ヘレナのごはんが美味しいからって……ねえ。
キャトラー!!
いやいやアイリス。おぬしはまだ若い。身体が育っておるのよ。
そ、そうですね! 育ってるんですよね!
その通りじゃ心配するでない。それに鬼ヶ島ではちょっと太めでも……
主人公はどんな歌を書いたの?
話をそらしたっ!?
どれどれ、見せてみい。
……さあ。見せてみなさい~。アンタがどんなこと考えてるか、興味あるわ~。
ふふふ……ふだんすました顔でどんなすごいことを考えておるのじゃの?
……ふふふ。私も知りたいなあ。
さあ、観念しなさいっ!
おや、逃げおったぞ? どういうわけじゃ?
……まあ、こうなるとおもったわ……
思い出3
のう猫よ……人里にはいろいろな『すいーつ』があるらしいのう。
そうねぇ。チョコにキャンディービスケットにシュークリーム……
おお、なんとも心躍る横文字よのう。
わらわの故郷にも立派に甘味があるが、こちらのすいーつにも鬼興味あるわらわなのじゃ。
そういえば、そろそろおやつの時間ね。
以前にヘレナどのの作られた『がとお・しょこら』は絶品じゃったのう。
みんなー、おやつよー! はい、今日はパンケーキ!
ななっ……!? ぱんけーき、じゃとおおっ!
どうしたのキサラギ、目の色かわってるわ!?
ぱんけーきなるものは鬼の世界では伝説のすいーつなのじゃ。
そのおいしさは鬼ギャルの間でも語り草となっておるのじゃ!
ふふふ、お口にあうかしら?
食べてみてください、美味しいですよ?
い、いただきます!
……ほっ、これは…………おおっ!?
なんと甘く……そしてふわふわなのじゃー!
それでいて、舌でとろけるよーじゃ!
お気に召したようね。よかったわ!
このようなものは食したことがないのう。じつにいとをかしじゃ。
お菓子だからをかし?
これは、わらわからも何か礼をせねばのう
そうじゃそうじゃわらわの国の甘味をこさえてやろうほどに。
キサラギさんの島のお菓子ですか?
そうじゃ、わらわの得意な菓子じゃ。半殺しというものでのう。
は、半殺し!?
それってたしか、おはぎの……
なんじゃ、半殺しは嫌いか。じゃあ全殺しがいいかの?
い、いやーっ!!
思い出4
ハーッ! ハーッ!!
くらいなさいっ! ひっさつのー豆ッ!!
むうっ、やるわね! でも主人公の豆は狙いが甘いのよ!
……キャトラ、主人公、どうしてお豆を投げ合ってるの?
これは節分っていうお祭りの儀式らしいわ。
こうやって豆を投げると幸せになるらしいのよ。
おやおや、何をやっておるのかの? むぅ……これは……
なんだかお豆を投げるのって楽しいわね?
節分……か。
キサラギさん、どうしたんですか?
おぬしたち、節分がどういう祭りかわかっておるのかの?
幸せを呼ぶんでしょ?
人間にとっては、のう……
どういうこと?
おぬしらも知ってのとおり、節分では豆をまく。鬼は外、福は内といってな。
鬼は、外……?
我ら鬼は、災いを招くものと恐れられておるのじゃ。
その鬼を追い払うために、豆をまく。人間どもは、鬼が豆に弱いと信じているからの。
お豆が苦手……だったんですか?
本物の鬼は、豆など怖がりはせぬ。ただの迷信じゃよ。
人間は弱い生き物じゃ。正面切って鬼には勝てぬ。だからこういう嫌がらせをして、うさをはらしておるのよ。
キサラギ、アンタは人間が嫌いだったの?
いやいや、わらわは人間が好きじゃ。こうして旅をしているのは、人間の暮らしを見聞きするためよ。
人間の暮らしは興味深い……じゃが、やはりおぬしらはわれらと相容れぬのかもな。
思い出5
ふむ、連中チョズいておるのう。まったく、いとわろしじゃ。
あやしゅうことものぐるおしけれじゃ。
どうしたんですか? キサラギさん。
故郷より文がきたのじゃ。
手紙? なんかショックな内容だったの?
ショックというほどでもない。ああやっぱり、というほどじゃ。
なになに、かなわぬ恋とか!?
戦になるかもしれぬ、ということじゃ。
……戦争、どうして……!?
わらわの故郷、鬼ヶ島は人間たちと長年いがみあっておる。
人間と……?
我ら鬼は、人間から見れば異形、おとしめるには、それだけで十分。
ましてわれらは、人とは違うことわりにて生きるもの。
闇の中で生きるもの、水中や地中で生きるもの、空を飛ぶものさえいる。
それが、鬼のことわり……
人のようには暮らせぬ。人のようには生きられぬ。どんなに人に焦がれようとんな。
そして人は、人のことわりをはみ出すものを、許しはせぬ。
そうね……人はそれほど、強くないもの。
人は鬼を許せない。許せないから攻めてくる……だから戦うっていうのね、アンタは。
当然じゃ。わらわも島を守る防人じゃからの。
紅の鬼神といえば、少しは知られた名前なのじゃぞ?
キサラギさんは、それでいいんですか?
わらわは嫌じゃ。じゃが、鬼が人と争うのは古よりの習い。
わらわのつむぐ言の葉は、文字通り人を傷つける……
鬼が島も守るためなれば、文字通りわらわは鬼となろう。
安心せい、この島にいる間はわらわはただのギャルじゃからの?
思い出6
……なんじゃ、この光……おぬしはいったい……
……どうしてじゃろうな。戦しかないと思っていた己が、急にばからしくなったぞ。
まだ戦争になるって、決まったわけじゃないんですよね。
だったら、キサラギはキサラギのままでいいじゃないの。
そうじゃな……ふふ、このわらわが、何をふさぎこんでおったのやら。
まだ戦が起こると決まったわけではない。ならばわらわにも、できることがあろう。
鬼の言葉を聞こうとする人間も、少しとはいえおらぬではないからの。
キサラギさん、私たちにできることがあったら、なんでもいってください。
文字通り、ネコの手でもよかったらね!
気持ちだけで十分じゃ、と、いいたいところじゃが……
この島のものたちは頼りになるからのう。困ったら、大いに頼らせてもらうのじゃ。
ところでみんな、このお豆どうするの?
ええっと、それは……
節分には、豆を食べると、一年息災に暮らせるというぞ?
じゃあ、みんなで食べましょ!
うむうむ、それがいいのじゃ。
いつかこの島のように、異なる種族のものが、ともに歩める場ができれば……いや、それはまだ遠き夢か。
されど……ふふ、わらわにも、またやりたいことができたのじゃ。
その他
白猫温泉物語 Story