【白猫】花言葉を伝えて Story
清純と可憐、二輪の花が悲しき運命に挑む――! |
2015/05/22 |
目次
カスミ | カスミ・アサミヤ cv.三澤紗千香 氏神の加護を受けた弓士。 世界を蝕む<まがこと>を祓うため旅をする。 |
フローリア | フローリア・レクランセ cv.東城日沙子 草花を愛する庭師。 植物の<声>を聞くことができる。 |
イシュプール | イシュプール・ヴヴェック cv.杉田智和 頭の回転が速い蛇男。 「言語に頼らない交流」がモットー。 |
コーン・ポップ | K・S・コーン・ポップ 意志を持つトウモロコシ。 畑を飛び出し、ビッグになるため戦い続ける。 |
クロー | スオウ・クロー・ヨシヤス 芸に生きる派手好きの歌舞伎役者。 何ものにも縛られない暮らしを好む。 |
story1 二人の少女
町はずれの路地で、カスミは一人、祝詞をささげていた。
弓士カスミは、神の声を聞く少女である。
凶事<まがごと>のおとずれを神に伝えられ、一人それを祓うため旅を続けているのだ。
かしこみかしこみもうす……
……<まがごと>が近づいてる。それも、とてつもない力の……
「…………これは、ヒガンザクラの香りですね。」
誰ッ!?
…………すみません。街中でお花の香りがしたのでついお声を。
私は フローリア。庭師をしております。
<……少女の目は固く閉ざされていた。>
お花……? あんた、氏神様の神気を感じたの?
私には……草花の声が聞こえるのです。信じてはいただけないでしょうけど。
……声、ね確かに氏神様は桜の神様だけど。
桜の神様ですか……たしかに、長い時の流れを感じる香りでした……
…………わかるの?
ええ。
***
……へえ、そんなことがあってなかよくなったのね。
はい……
……いいでしょ、そんな話。
ふふ~ん、スナオじゃないんだから。
それであんた、こんなさびれた島に何の用があるの?
昔、この島に立ち寄ったとき、一人でいたところを魔物に襲われてしまって……
危ないところを、親切な人に助けてもらったの。でもその人。
すぐに行ってしまったから、お礼が言えなくて。
私はその人に、どうしてもお礼がいいたいの。
<フローリアは、美しい花束を手にしていた。>
……いい香りだわ。それに、すごくきれい。
お礼なんて律儀なもんね。
……でも、あんたらしいか。よし、探しましょう。
私たちも協力します。
みなさん……ありがとうございます。
じゃあ、さっさと行きましょ。
カスミったら、ちょっとうれしそうね?
story2 スイレンの香り
……でさ。その人、どんな人なの?
その人からは、やさしいスイレンの香りがしました。
……えーっと……どんな匂いなんだろう……
香水でもつけていたの?
声はどんな感じだった?
……話してはおりません。
私はその人の叫び声と息をする音を聞いたのです。
声が出せなかったの?
そのようでした。声が出せなかったのか、出せない理由があったのか……
それで優しい人だってわかるの?
私のことを、魔物からかばってくれたのです。たった一人で。
それほど強くない魔物でも、群れを相手にするのはキケンだわ。それを一人で……
よっぽど強い人だったんだね。
その人は、私のことを村まで案内してくれたのですが……
何も言わずに、行ってしまったのです。
……いずれにせよ、ワケありってわけね。
そうかもしれない……
確かに、彼の呼吸には憤りと恐れが感じられた。
誰かに追われてたのかも。人に言えない罪を背負っていたのかも。
でも私には、あの人が――悪い人には思えなかったのです。
***
<人里離れた山野。その中腹に――蠢くものがあった。
それは人ならざる異形の群れ。耐え難き恐怖と狂気に敗れ、光無き夜にその身をささげしものたち。
蛇の目覚めと共に、彼らもまた……>
贄ヲ、贄ヲ、贄ヲ……贄ヲササゲヨ! 聖ナル花ノ乙女ヲ……!
<乙女を贄と捧げれば、<餓えし太陽>は怒りを鎮めてくださるであろう。
彼らはそのように信じていた。>
ソノ血ヲササゲヨ……! オオイナル闇ニ……!
story3 まがことを祓う
<アイリスは、立ち止まった。>
どうしたの、アイリス?
……この感じ……もしかしたら……
……そうね。何かよくないものがこの島にはいるみたい。
<カスミは弓を構え、目を閉じてその弦を鳴らした。>
…………間違いない……この島には<まがごと>をなすものがいる。
<まがごと>……<闇>……が、この島に……
<闇>……みなさんのおっしゃっていた、この世に仇なす存在……
そんな顔しないで、フローリア。
カスミ……
私にとっちゃ好都合よ。
だって私は、<まがごと>を祓うために旅してるんだもの。
当然、この島の<まがごと>も見過ごすつもりはない。
ついでに、フローリアの探し人が見つかるなら、一石二鳥でしょ。
そうよ。その人が危ない目にあってるかもしれないしね。
ありがとう。みんな……
じゃあ、とっととこの島の<闇>を祓っちゃいましょ。
***
やれやれ……こんなに<里>に近いところを、うろつきたくはないんだけど……
でもまあ仕方ないかな?……見逃すことは、できないようだし。
フヒー! ダイチヲケガス<ヤミ>ユルサナイ!
わかってるよ。これも神様の役目ってもんだねぇ。
フヒー! メチャクチャハジケル!
story4 誰かのために
<冒険家たちは、しばしの急速をとっている。
主人公とアイリス、キャトラは水を汲みに川へ向かった。
カスミとフローリアは、二人で木の根元に座っている。>
ねえ、フローリア。探している人に会えたら、何話すの?
えっ……? 私は……お礼をしたいだけ。
花のことを好きな人なら、嬉しいけど……ね……
ね、この花束って、なんの花なわけ?
ホワイトジンジャーなの。
いい香りの花ね。
そうでしょう? 大好きなんだ。
この香りに包まれていると、すごくうれしい気分になるの。
……私には、花の色はわからないから。
そうだったわね。……すごく、綺麗なはな。まるで……
……本当? カスミがそういうんだったら、間違いないね。
……フローリア。ぜったい、その人……探し出そう。
……カスミ、…………ありがとう。
<水筒に水を汲んだ主人公は、川辺から二人を見る。>
カスミったら、フローリアと仲良しなのね。
フローリアさんのために、一生懸命になって……
あの子たちのためにも……ね。
でも、この島の闇は……
確かにそれも気がかりだわ。急いだほうがいいかもね。
***
<闇の中をうごめくものたちが、奇妙な二人連れを取り囲んでいた。>
贄ヲ……贄ヲササゲヨ……
わかっているよ。心弱きもののなれの果て、なんだね。
フヒー!
<ヤミ>ニ トリコマレル コトヲ ノゾンダ モノタチ!
ここは主人公たちに協力するべきだろうかねえ?
…………マテ、イシュプール! コノ<ケハイ>は!
――おっとこれは。じゃあ、君もこの島にいるんだね。
<地べたを這いずる蛇>。……いや、君はもう、一皮むけているのかい?
イソイデ<ヘビ>ノモトニ!
わかっている。さあ、行こうか。大地の女神の子よ。
story5 乙女の誇り
<小さな飛行艇より降り立った男は、花束を手にしている。>
……ここにいるのか、アンタは……
……けっ、なんともなあ、手が震えてるぜ。
<歌舞伎役者は、白いユリの花束を手にしている。>
やっぱりここは……赤いバラにしとくべきだたかねぇ。
だが、なんなんだ。島を覆うこの気配はよ……!
***
……この穢れ……この気配……<まがごと>の具現……
ミツケタゾ……贄ニ フサワシキ 乙女タチ。
オマエタチノ 命ニヨリ、<餓エシ太陽>ハ サラニ輝キヲ マスデアロウ。
……この気配、これが闇……!
あの時私を襲った気配と同じものです……!
イケニエにささげるですって。
いかにも悪役がいいそうなことね!
……闇……この人たちは……闇に魂を……
……じゃあこいつら、元人間ってことね……!
教えて! なぜあなた達は、闇に……!
ワレラハ カツテ トアル神ヲ アガメシモノ。
ダガ 我ラノ カミハ 偽リデ アッタ。
コノ世ニ 神ハ タダヒトツ、ソレハ<黒キ太陽>!
サア 黒キ太陽ニ……ソノ命ヲ ササゲルノダ!
<ひめかみ>様、ご照覧あれ。
……これなる<まがごと>は、この私が祓います。
…………私の存在は、貴方方のためにあるのではありません。
花と木と草と……それを愛する人のためにこそ、この命はあるのです。
行こう、主人公!
<……その時、闇の中に……気配が走った。
ひときわ暗く……凄まじい力の奔流が!>
story6 咲き誇れ、この想い
<*×○■!&%$…………>
<アイリスは、呪文を詠唱した。光の粒子がうずまき、闇を掻き消していく>
オオオオッ……! ダガ、コノテイドノ 光ナド……
<一度は消えた闇は……再び濃さを増していく。
そして闇の中より、おびただしい気配が立ち上る。>
……魔物が、蘇っていく……!
ごめんなさい。みなさん……巻き込んでしまって。
いまさら、そんなこと言わないで。
――私たちは友達でしょ。
贄ヲ、ササゲヨッ!
も、もうだめーっ!
<わずか一瞬……魔物たちは突如現れた影の一撃で、再び暗い霧と化す。>
<*×○■!&%$…………>
<再び、詠唱が鳴り響いた。暗い霧は今度こそ光の中に消えていく。>
……グオオオオッ!
な、なんなのよこの魔物……
さっきの魔物を食ったの……? なんていう力……!
<その場に、一人の男が駆けつける。>
暫く、暫くゥ!
く、クロー!?
そこのお嬢さん方に手を出すのは、この俺が許さんぜえ!
ウ……ウオオオオ……ウオオオオオオオオ!!
<怪物が吠え声をあげると、すさまじい瘴気が発せられる!>
私の友達に、手出しはさせない!
…………スイレンの、香り……
ええっ!? ふ、フローリア!?
<フローリアは、奇怪なる存在の前に歩み寄り、そのおぞましい異形に触れた。
その身には、幾百もの蛇が蠢いている……>
だめっ!フローリア!
はなれろ、お嬢ちゃん!
フローリアさん!
…………あなたがいなければ、私は……
やめて……そいつは……そいつは!!
……カスミ……みなさん……お願いです、私を信じて…………!
フローリア……!!
<フローリアは……ゆっくりと怪物に向けて歩いいく。>
グオオオオオ……グオオオオオオオッ!!
<フローリアは、手にした花束を怪物に渡す。
怪物は……ホワイトジンジャーの花束をつかみ取る。>
グォガ……グ……グオオオ……
<怪物は、その身をひるがえし、去って行った。>
いっちゃった!?
…………あの人は……一人で戦っている……おのれの闇と……
なんて……悲しいさだめ。
<フローリアは、一人、涙を流す。
カスミはその体を、そっと抱きしめた。>
……一足遅かったようだねぇ。
フヒー!
ヘンな二人組ね。アンタたち、なにしてたの?
ちょっと人を探していたのさ。逃げられちゃったけどね。
そういえば、ヘンなのにあったけど……
……闇に破れ、未だ彷徨い続ける地べた這いずりのたうつ蛇。
……君たちが見たのはそんな悲しい存在だったのかもねぇ。
<闇>に呑まれてしまった人……
ということですか。
ごめんね。フローリアのことだけはずっと信じるって決めてたのに。
いいの。……心配してくれて、うれしかった。
……あの人とも、またどこかできっと……
私はあの人に、気持ちを伝えられたから、今はそれで十分。
ホワイトジンジャーの花言葉は……『あなたを信じます』だったか。
ステキな意味ですね。
そんなの知ってたのね。
……ところでアンタその花束は……
あとで教えてやるぜ。今はカンベンしてくんな。
……さようなら。スイレンの人……
私はあなたのことを……信じています。
その他