【白猫】神速の挑戦者 Story
目次
登場人物
story1 迷子の陣
<魔獣退治の帰り道、主人公たちは巨石の乱立する迷路に迷い込んでいた……>
どこもかしこも、岩、岩、岩っ!なんなのよ、この嫌がらせは~。
出口はどこかしら?
??? |
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お困りのようですね。
なによ、アンタ!いきなり、びっくりするじゃないの!
私は軍師のメイリンと申します。
ねえ、もしかしてアンタも迷子?
いいえ、私はここで修行をしているのです。
修行?いったい、ここはなんなのよ?
ここは<石兵八陣>といって、敵兵の進軍を防ぐための陣です。
軍師である兄様が以前、戦で使っていたんですよ。
へ~、兄妹そろって軍師なのね。
はい。しかし、私はまだまだ未熟。尊敬する兄様のお役に立てるよう、戦術を磨いていたのですが――
近くに魔獣が現れて、身動きがとれなくなってしまいました……
それなら私たちが協力しますよ。
その代わり、出口まで案内してよね。
助かります。では、私についてきてください。
急がなければ兄様の出陣式に遅れてしまう……
……って、えっ?この岩を登るの?
<生を視るには高きに処き、山を絶れ、谷を越え、己を信じて直進せよ>です。
なによそれ。
この<兵法書>に記されている戦略の一つです。
信じていいんでしょうね~。
はい。ここに書かれていることは金言です。
さあ、みなさん。『兵は神速を尊ぶ』です――行きましょう!
story2 兵法書の導くままに
ちょっと、メイリ~ン!とまんなさいよ~!
みなさん、遅いですよ!こうしてる間にも、出陣式の時間は……!
あら?こ、これは!?
弓……みたいですね。
きっと、私を心配して兄様が用意してくれたもの……
さっきの魔獣が落としてたわよ。
さっすが兄様~♪顔には出さないけど、私の成長を見守っていたんだわ~。
聞こえてないみたいね。
みなさん安心してください。これさえあれば、一騎当千!敗北はありません!
そんな簡単にいかないわよ。
そうですよね……過信してはいけませんよね……
ここは冷静に、<兵法書>に記された戦術のとおりにいきましょう。
また山に登るんですか?
いえ、少し地形が変わってしまったので別の策を。
えっと……<攻めて必ず取るために、守りを捨てて攻めるなり>らしいです。
捨て身で魔獣に突っ込めってこと?
はい。そのようです。
では、迅速に行きましょう。
もう、わかったわよ!こうなったら、ヤケクソよ!
……私たちを守ってね主人公。
story3 好敵手は風の如し
なんとか勝ったね……
いいえ、どうやらまだ……一匹残っているようです。
――あそこの岩場の陰にいます!
ささっ!
今度はあっちに行きました!
ばびゅーん!!
そこにいるのはわかってるんです!ちょこまかしてないで、大人しく出てきなさい!
え~い!こうさん、こうさんっと。あたしは、もう逃げも隠れもしないよ~。
あなたはフウカさん……どうしてここに?
軍師さまにメイリンを監視してくれって頼まれたんだ~。
兄様にっ!?やっぱり私のことを心配して……
それにしても。あたしの気配に気づくなんて、少しは成長したみたいだね~、メイリン。
当然です!私は日々、精進しているんです!いい加減、子供あつかいするのはやめてください!
なんで怒るの~?もしかしてかけっこで負けたこと、いまだに根にもってる?軍師さまの前だったもんね~。
そんなことより出口はどこよ?もうすぐなんでしょ?
ええ。そのはずなんですが……どうやら道を間違えたようですね。
えー!?あたしも帰り道忘れちゃったよ~。
こんなときこそ兵法書を……ああ!ダメです!!どこにも出口が載っていません!
あたりまえじゃない!
こうなったら、出口をさがすついでに競争しようよメイリン。
いいでしょう!昔日の恨みここで晴らしてみせます!
ヨー……イ、ドォーーーーーーーーーンッ!!
……ふたりとも行っちゃったわね。
ねえ、出口ってあそこじゃない?
あ、ほんとだ。それじゃあ、アタシたちだけでも帰りましょうか。
story4 旅は道連れ世は情け
メイリンに呼ばれてきたけど、なんだか人がたくさんいるわね……
あっ、みなさん。わざわざお越しいただいてありがとうございます。
みなさんはここで何をなさってるんですか?
<八門なんとか>っていう陣の訓練です。広大な陣を敷き、敵兵を誘い込む陣形です。
へ~、これって訓練なのね。
どうして私たちはここに呼ばれたんでしょうか?
私もこの訓練に参加するので、みなさんにも協力してもらおうと思ったんです。
なんでそうなんのよ!
訓練なんですし、一人のほうがいいんじゃないですか?
いえ、この兵法書に書いてあったんです。<危ない橋はみんなで渡ろう>って……
相変わらず、むちゃくちゃな本ねぇ~。
そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。
それに、みなさんの修行にもなりますし、訓練も早く終わります。
別にアタシたち修行なんて頼んでないんだけど。
みなさん、時間は待ってくれませんよ。素早い対応をお願いします。
こうなったらやるしかないわね……まったく。
さあ、はりきってまいりましょう!
最終話 軍師の秘策
みなさん、お疲れ様でした。
はあ……はあ……しばらく足が動きません……
訓練も無事に終わったし……
これで兄様も私を認めて……
喜ぶのはまだ早いよ、メイリン。
兄様っ!私の兄様っ!
本当の訓練はここからだ。
それはどういう意味ですか?
さあ、この<八門金鎖の陣>を破ってみせるんだ!
はい!兄様がそう言うなら喜んで!では、みなさんもご一緒にっ!
それはダメだよメイリン。一人で戦ってこそ訓練だ。
そうなんですね。
それアタシたちも言ったわよ!
残念ですが、みなさんはここで待機していてください。
しかし、困りましたね……陣についてさっぱりなので突破口が見つかりません……
なにこの軍師……
ここはやはり兵法書を……
メイリン、それもダメだよ。自分だけの力でなんとかするんだ。
はい!自分だけの力でなんとかします!
――今こそ兵法書で学んできたことを一つにするとき!
私はただ、兵の壁にまっすぐ突っ込むのみっ!
たあああああああ!!
<密集した兵士たちの中に、メイリンは肩から突っ込んでいった。>
せまあああああああああああい!!
やれやれ……ほんとうに手のかかる妹だ……
あの子はいったい、なんの修行をしてきたのかしら……