【白猫】シオン(バレンタイン)・思い出
甘やかなる概念使い シオン・ロスベルク cv.早見沙織 森羅万象と響きあう概念使いの少女。 しっかりものな、一家のお姉さん。 |
2021/02/12
思い出
<お菓子の家で巻き起こった騒動から少しだけあとのこと――>
こんにちは。
いらっシオン!
いらっしゃ……えっ!?
まあね、言ってもね。
アンタたちー家は、飛行島に家建てて住んでるわけだけどね。
ええ。
でも最近は、お留守にしてることも多いじゃない?
ええ。そうね。
なんでなんで???
それはね。
なんでなんでなんでー!!
キャトラ。
あにさ!!
お金を稼ぐため。
お金がないと、家族がみんなお腹を空かせてしまうから……
そうね。
(いきなり……落ち着いて……!)
<古代の戦士・ハーヴェイ。気高き魔竜・ディーラ。純粋なる少女・レナ。
そして、とある機関により造り出された<共鳴>の概念使い――シオン。
数奇な運命によって巡り会った四人は、血の繋がりこそないものの――
確かな絆で結ばれた家族として、身を寄せ合っている――>
風がそよぐ音。雲が流れる音。青い空から伝わる、たくさんの音。
飛行島の音は……心が落ち着くわ。
<共鳴>のカ――ですね?
いろんなものと響き合う力なのよね?
ええ、そうよ。
いいなー。いいなー!!やっぱりいいなー!!
たとえばさ?じゅーじゅー美味しそうな音を立ててるステーキがあるとするじゃない?
ええ。
そのじゅーじゅーと響き合えたら、ふつうの二倍美味しそうじゃない?
そうなのかしら。
ちがうの?
そうなのかも……
そうなの???
(キャトラ……どんなテンションなの……!?)
それにしても、こないだはとんだバレンタインだったわね。
シオンさんも、お疲れさまでした。
いいえ。良い出会いがあったから。エレノアに、エプリル……
それに……素敵な夫婦とも。歳を重ねても、仲睦まじくて……温かで幸せな気持ちが響いてきて……
(私たち家族も……いつまでも、あんなふうに――)
思い出2
バレンタインチョコを……作りましょう。
お――――――っ♪
ハーヴェイとディーラにあげるやつよね?
そう。日頃の感謝と……想いを込めて。
おねーちゃん、レナがんばる~♪
ふふ、お姉ちゃんもがんばるわ。
私もサポートします♪
ふぁいとー!
牛乳を量って、卵を割って……
おねーちゃん!バナナむけた~♪
ありがとう、レナ。とっても上手。
ハハハーン?さては……
チョコバナナ!チョコバナナね!?
ふふ、どうかな?レナちゃん、そのバナナをフォークでつぶしてくれる?
まかせて~!ぐさ――ー!!
ぎにゃー!チョコバナナがー!
チョコバナナじゃないわ。
えへへ~♪キャトラちゃん、これ知らないのー?
知らなーい!なになに?
ちょこー、ばななー……なんだっけ?
『チョコバナナマフィン』よ。
ほほー?なにやつ?
(なにやつ!?)
つぶしたバナナを生地に練り込んでチョコと一緒に焼き上げるの。
きっと、とても甘くて美昧しいわ。
……窯に入れて、ちょうど三十分たったわ……
こげてないかなぁ!?どきどき……?
ふふ、じゃあ見てみましょうか?せーの……!
おー!
わぁ……!
美味しそう……!
やったね、おねーちゃん!いえーい♪
ええ。いえーい。
この一番おっきいのがおかーさんのでー、こっちのがおとーさんの!
そうね。
これとこれは、アイリスちゃんと主人公ちゃんとー、キャトラちゃんの!
私たちにも?
ヤッターイ!
そしてこれはー……おねーちゃんの!
……まあ。じゃあ、これを、お姉ちゃんは……レナの分にするわ。
やった~♪らっぴんぐが終わったら、あとで渡しあいっこしょうねー♪
それと今日は、こんな物も用意してみました♪
封筒と……便雙?
せっかくですし、チョコと一緒にシオンさんたちの気持ちを綴ったお手紙も添えてみるといいんじゃないかな、と思って。
気持ちを……綴る……?
思い出3
おとーさんへ。いーつーも、あーりーがーと……!
ふふ、レナちゃん、字じょうずになったね。
でしょー♪
…………
(ハーヴェイヘの……ディーラヘの……レナヘの……)
(家族へのー気持ち)
(……うん。文字に起こしてみて、あらためてわかった気がする……)
(私の気持ち。私の……願い)
どれどれ?シオンはどんなお手紙書いてるのかしら~ん?
だ、だめ……
ムムム。ますます気になるじゃない?ねーねー教えてーん?
ま、まだだめ。
手紙を書き終えて、ラッピングも終わったわ。あとは――
ハーヴェイたちを呼んでくるだけね!
じゃあレナ、呼んでくるねー!
転ばないようにね。
皆さんが来る前に、私は後片付け、済ませちゃいますね。
私にも手伝わせて。お砂糖は、どこにしまったら?
ありがとうございます♪では、向こうの棚ヘ――
ええ、わかったわ。
あ。
へ?
シ、シオンさん……!?
<転んたシオンの足元には――
いつの間に落ちたのだろうか。バナナの……皮が……!!>
きゅう。
た、大変!シオンさん!
そ、そ……
そんなバナナ――!!
思い出4
<*×。■!&%$…………>
……ん……
シオンさん……よかった……
もー、心配させんじゃないわよ!
私、気を……失って……?
はい、ー瞬だけ。その……バナナの皮で転んで……
だいじょぶ……?
ええ、平気よ。心配をかけさせてしまって、ごめんなさ――
――え――
……聴こえ、ない…………どう、して――
共鳴の力が使えなくなった?
もしかして、転んだせいで……?
たぶん……こんなことは、初めてだけれど……
と、とりあえずお医者さんー!
……って、たぶんそういうカンジでもないのよね。がいねん使いって……
……どう、しよう……このままじゃ……
シオンさん?
――お願い。すぐに<共鳴>の力を取り戻せるよう……手伝って!
どうしたのよ、そんな慌てて!いいからちょっと休んで――二どうしたのよ、そんな慌てて!いいからちょっと休んで――
いいえ。平気だから。お願い……!
家族たちが、戻ってくる前に……!
じゃあまずは、これを試してみるわよ。
この、二股の金属は……?
『音叉』です。叩くと音が鳴ります。シオンさんの前に置さますね。
主人公!準備オッケー!鳴らしてー!
どう?主人公の鳴らした音叉に共鳴して、シオンの音叉も震えてるでしょ?
本当だわ。
力、戻った?
戻らないわ。
次よー!!
アイリス、アレの用意は?!
うん、持ってきた……けど……
その機械は?
バロンが前に作ってくれた、<ブルブルーン>の力でブルブル動くヤツよ!
<ブルブルーン>の力でブルブル動くヤツ?
上に乗ってブルブルするだけでダイエットに効果的らしいわ!
キャ、キャトラ……あんまり……
それを……?
アタシをだっこして、この機械に乗ってブルブルなさい!
どうして?
響きとか共鳴って、たしか要は細かなブルブルの力なんでしょ?
ならアタシと一緒にブルブルすれば、きっとアンタの力も戻るわよ。
ありがとう。やってみるわ。
どどどどどどどうううううううううかかかかししししららららららら?
だだだだだだだめめめめめめめめめみみみみみたたたたたいいいいいい。
――どう、しよう――
おとーさーん!おかーさーん!こっちこっちー!
わかった、わかった……どうしたんだ、そんなに急かして。
いーから♪みんなー、連れてきたよー!
……あれ?むねーちゃんは……?
ごめんなさい……少し、いろいろあって……
ちょっと目を離したスキに、どこか行っちゃったのよ……
シオンが――?
……何かあったのか?
良い。ひとまず仔細は聞かぬ。我が空から探そう。
レナもいく!!
…………
ごめんだけど、アンタたちは少しだけ待っててくれないかしら?
ちょっとさ。いろいろ、むつかしーみたいだから。
やだよ……レナもおねーちゃん、探しにいきたいよ……!
――レナ。
――我らは家族だ。今は、シオンを信じて待たぬか?
でもっ!
それに。シオンの友人である、彼女らの頼みでもあるのだから。
見つけた!シオン!!
キャトラ……みんな……
見つかってよかった……心配しました。
ごめん……なさい。
謝るのはいーからさ。
なんかあるなら、相談なさいな?仲間でしょ。
…………
怖かったの。
怖かった……ですか?
……さっき、家族に書いた手紙。
あれには、とても大切な……私の願いを、綴ったの。
うん。
けれど……<共鳴>の力を使えない状態で――
みんなと響き合えないのに、その想いを伝えるのが……おそろしいの。
……なるほど。つまりこういうワケね?……なるほど。つまりこういうワケね?
みんなの心がわからないのに、大事なお願いをするのが怖いと。
……私の家族は優しいから。私がどんなことを頼んでも、きっと笑顔で応えてくれるわ。
でも、その心までは目に見えない。どう受け取られたか、わからない。
本当は嫌だと……みんなが心で思っても……今の私には、感じ取れない。
――――
……シオン。
それが!!ふつう!!!
え?
アンタみたいな力のないふつうのひとたちは、他人が本当はどう思ってるかなんて感じ取れないし、わからないの。
でも、そんでも伝えるの!だってそうしないと相手に伝わんないから!
それは……とても、勇気のいることだわ。
そうよ。強い勇気が――いるのよっっ!!
……そうね。
シオンさんが、そこまで思い悩んでしまうほどに伝えたい想いなら――
なおさら……力の使えない今、伝えるべさなのかなと思います。
……アイリス。
今でしか感じ取れないものも……あるかもしれないから。
おねーちゃん!!
心配をかけさせてしまってごめんなさい、レナ……ハーヴェイと、ディーラも。
構わんさ。お前が戻ってきたなら。
それじゃあ、レナ。一緒に。
――うんっ!!
はい、これ、おとーさん、おかーさん!レナたちから!
――甘い匂いがするな。これは?
バレンタインのチョコレート。私たちで、作ったわ。
そして、レナにも……はい。
ありがとー!おねーちゃんにも、どうぞ♪
ありがとう。
……おねーちゃん?
想いを、伝える……勇気……!
――みんな。これも、一緒に受け取ってほしいの。
これは――
手紙か?
おねーちゃん、読んでいーい?
<シオンの手紙に綴られていたのは、家族への日頃の感謝や、とりとめのない言葉――
そして、最後に――
『この間の冒険で、素敵な夫婦と出会った。歳を重ねても仲睦まじい、優しい響きを奏でていた老夫婦。
……憧れた。私たちも、いつまでも、あんなふうでいたいと、強く思った。
お爺さんお婆さんになっても、ずっと、家族一緒に――』>
私たちの前には、いまだに……たくさんの困難があって。明日も、明後日も……一緒にいられる保証なんて。どこにもなくて。
けれど……それでも伝えたかった。私の、気持ち……
…………
……おねーちゃん!
!
レナの心臓の音、わかる?
ええ、レナ。わかるわ。
とくん、とくんって。レナのことを、ちゃんと感じる。
今のシオンに何か起きているか、おおよその察しはついたが――
難しく考えすぎだ。
ディーラ……
鳴る鼓動を共に感じながら、時に別れ、時に衝突し、それでも寄り添い、生きていく――
それが、家族というものだろう。きっとな。
ハーヴェイ……
――うん。
<ちなみに<共鳴>の力は、一晩寝たら治ったのだった。>
覚醒絵・覚醒画像
響き合うチョコレイトガール シオン・ロスベルク
その他