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【白猫】スタートライン Story1

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん


2019/04/11


目次


Story1 憧れの自警……団……?

Story2 原因は誤配

Story3 ギャングのおしごと

Story4 自警団のおしごと

Story5 運命の再開!

Story6 定時上がり新卒



story1 憧れの自警……団……?



<書類選考通過の報が届き、意気揚々とトシン島を訪れた自警団志望の少女・フェネッカ。

しかし面接の当日、彼女を待ち受けていたのは――>


(ひぇぇえ……みなさん、すごい迫力……!

島の平和を守るには、やっぱりこれくらい強そうに見えないとだめなのかなぁ……)

――履歴書、読んだぞ。

――フェネッカ・クロッカ。16歳。国とも呼べねェ、辺境の島の出身ね……

オレはジェイク。この組織のボスだ……一応な。

よよ、よろしくお願いします……!

そう固くなるな。……しかしテメェみたいのが応募してくるとは、世も末だな。

(女の人が自警団志望って、やっぱ珍しいのかな……?)

んじゃさっそく面接だ――テメェはなにができるんだ?

は、はいっ!一番の特技はお科理です!!

……イイじゃねェか。ウチに入ったら、クズ共を存分に料理してくれや。

クズ野菜は、スープにすると美味しいですからね!

(あの小娘……バラした後でさらにそんな残酷な真似を……!?)

それと、お掃除も得意ですよ♪どんなに汚れててもピカピカにしちゃいます!

……後始末は大事だからな。証拠を残さねェのはいいことだ。

小さい頃からお母さんのお手伝いをしてたので慣れてるんです♪

(こいつのお袋さんは悪魔か……!?)

……あと、ここに書いてある『ビームが強い』ってなんだ。ビーム撃てんの?

はい、強いですよ!

(この小娘、カワイイ顔してそんなヤバイ特技を……!?)

えっと、そこのお兄さん!お相手よろしいですか?

オ、レ!?イヤだ、薙ぎ払われたくねえ!

いきますよー!ジャーンケーンポーイポイ、どっちだーすの?

え……こっちだーすの!あ、負けた。

ビーム……アターック!――はい、わたしの勝ちです♪

…………

まァいい……そっちからなにか、質問はあるか?

あ、それでは……定時って、何時でしょうか?

……あ?

あと残業代って出ますか?それと初任給はおいくらほどでしょう……!?

――おい。ちょっと待て。テメエ、ここをなんだと思ってる。

え?自警団ですよね?

……こいつの履歴書の封筒どこだ。

これっす。

……自警団<ソルトホーン>御中……

誤配っすね……

――まァいいか。なァ、フェネッカ。

履歴書の志望動機――『身も心も強くなって、たくさんの人を守りたい』。これに偽りはねえな?

は、はいっ……!!

――オレたちの仕事を教えてやる。物事のスジ通して、島の秩序を保つことだ。

つまり平和を守るお仕事ですよね!わたし、ずっと憧れてたんです!!

こんなわたしでも、誰かの役に立てるのなら……がんばりますからっ!!

そンならよぉ……『どこで働くか』なんざ、些細な問題だよなァ?

――気に入った。採用だ、新入り。

ギャング団――<シガーファング〉へようこそ。歓迎するぜ。

ほ、本当ですかぁ!?やったぁああああっ!!お父さん、お母さん……!わたしやったよ~~~♪

――って、きゃんぐ?……しがーふぁんぐ?……アレ?

エモノはコイツを使え。服もコレに着替えろ。

へ?エート?ちょっとまって……

ソイツには<大志のルーン>が埋め込んである。早ェ話、若くて夢がデカいヤツほど恩恵のある武器ってことだ。

あ、いえ、そうじゃなくて……いまギャングって……?

それ着たらさっそくテストだ。――やるよなァ???

は、はひ!なんか知らないですけど、が、がんばりますーー!!



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story2 原因は誤配


<フェネッカが、ギャングに囲まれている頃――

ギャング団を志望していた少女リルテットは――>


ウェールーカーム!!


……帰ろ。

ンン~!初来訪、即Uターンとはなかなかの胆力だな新卒!

……離して。なにかの間違い。だって、ここって――

オーケーわかったぞ!このあふれんばかりの正義力に圧倒されたんだな!?

いや、そうじゃなくて……

よォし、まずは自己紹介だ!オレはレイモンド!この組織のリーダーだ!!さっそく面接を始めよう!!

……いや、だってここ、自警団でしょ。

そうだが!?

たぶん私の履歴書、間違って届いて――

そう履歴書!君の履歴書にはなかなか度肝を抜かれたぞ!

名前はリルテット・ミッケ。16歳。辺境の小さな島の出身、と。

志望動機が『退屈だから』とか、さすがにどうかと思ったぞぅ!

そもそも志望してない……

なに気にするな!オレが聞きたいのは、こんな紙切れに綴られた文字ではなく君の生の声だ!!

さあ、本当の志望動機をオレに聞かせてくれ!!

いや、だから……私は<シガーファング>に……

そう、<シガーファング>は卑劣な連中だ!やつらをぶっつぶしたいというその気概、実にいいな!

(もうめんどくさい……面接テキトーに答えてさっさと不採用になろ……)

では君の長所を教えてくれ!!

……暴力。

ほう!腕っぷしに自信があるなら、ウチはもってこいだな!!

しまった……

次だ。君は周りからどんな人だと思われてる!?

なに考えてるかわかんないって嫌われてる。

周囲になんと囁かれようと、自分を曲げないその姿勢!実に誇り高いな!!

……なんで。

あの、リーダー。これ、その子の履歴書の封筒なんですけど……

宛先、ウチじゃなくて<シガーファング>です。開ける前に確認しましょうよ……

ンンン~……?

…………

「「…………」」

――君の力が必要だ。自警団<ソルトホーン>で共に働いてみないか?

((勢いで押し通した……!?))

…………

フッ……!これからよろしくな!

それじゃ。

逃がさァん!!!

――

ンーフ!!

しょ、初任給……弾むからアア!

(リーダーが身を切った……!)

(ここずっと、人数滅る一方だったからなぁ……)

…………はぁ。仕方ないな。

おおゥ!君の正義の心を信じていたぞ!

(帰りの運賃もないし…………初任給もらったら、適当なタイミングで出てこ)

それじゃあ、これが君の制服!そして武器だ!

<大志のルーン>が埋め込まれたその武器は、若くてやる気に満ちた心に反応する!抱いてるかァ、大志!?

別に抱いてない……

身につけたらさっそく研修だ!さあ、共にいい汗を流そう!!



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story3 ギャングのおしごと



いいお天気、新しいスーツ――気が引き締まる~♪

よーっし、正義のギャングとして今日からがんばるぞー!!ギャングってなんなのかよく知らないけど!

お嬢ちゃん、元気イイねえ!元気元気ィ~~!!

はーい!どなたか存じませんが、元気にがんばってきまーす!!


 ***


島に売人が紛れ込んだ。ブツは<ワスカの葉>だ。

この島にヤク持ち込むなんざ、いい度胸してますね。

クソが。ナメやがって……

――ケジメつけんぞ。売人の顔は割れてる。丁重にお連れしろ。

ヘイ。生まれてきたことを後悔させてやるぜ――

みなさん、おはようございまーす!

…………

あ、すみません……会議中でしたか!?こんな朝早くからすごいんですね!

わたし、お茶滝れてきます!新人はお茶くみからって、本に書いてありました!

……なんだろうな、この感じ。

逆に落ち着かねえ……


 ***


――テメエだな、売人は。

ヘッ……どうだかな。

この島じゃヤクは許さねェ。ルートを吐け。元締めは誰だ?

さてな……

口は割らねェってか。――おい、アレを用意しろ。

アレですね。……おい新人、入ってこい!

はーい!お呼びでしょうかっ!?

お客様に<特別な風呂>を用意してやれ。

特別なお風呂……ですか?

泡の出るやつだ。ヤツをドロドロに溶かすのさ。

熔かす……あ、そういうことですね!おまかせください♪



お待たせいたしました!いい感じの湯加減ですよ。ふっふっふ――

<金属製のオケに満たされた濁った液体は、ボコボコと泡を噴き出している……!>

ヒィ!?アレはまさか……酸!?

ブルっちまうだろ?とっとと吐け。さもなきゃ――

お、脅しには屈しねえぞ……

…………

は、離せ!うわぁあああ~~~~!!!

!? いい……湯加減……だと!?

泡が出るお風呂のもとです!いちばんいいやつ使いました!

どんなよごれやニオイも、きれいに溶けちゃうそうですよー♪

そうじゃねえよッ!!!


 ***


やっと吐いたか。しかし、まさかアイツが手引きしてたなんて――

……ショックか?元仲間に裏切られてよ。

テメエのご自慢の組織は、確実に腐っていってるぜぇ……?

――うるせェよ。

失礼しまーす♪お茶とお菓子を――

く……ッ!

きゃあっ!?お、お客さん!?

ボーッとしてんな新入り!タマとってこい!

タ、タマですね!?わかりましたーー!!

はぁ、ふぅ……タマ、とってきましたよ!

早いな!?瞬殺かよ!

外で遊んでた男の子たちからボール借りてきました♪

そのタマじゃねえよ!

クソッ……かわいすぎる……!

とっとと追いかけろォ!!



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story4 自警団のおしごと



(……寝坊しちゃった。どうせ遅刻だし、ゆっくりいこ……)

こらこらダメダメぇ~!もうお仕事始まってる時間じゃないのぉ~?

……誰。

おっちゃんも仕事クビんなってな、3年くらい前、新しい仕事探しにこの島に来たんだけどよぉ……

…………

おっちゃんの昔話、聞くかぁ?あの頃の時代はなぁ……今みてえに恵まれてなくてな……

おっ、元気元気~~!!


 ***


おはよう諸君!新たな仲間も加わり心機一転、すがすがしい朝だな!!

その新卒ちゃんが来てません……

よーし!!なかなかの大物のようだ!!


……

お、やっと来たな!?おはよう、リルテット!!

……んー。

こらこら、挨拶は大事だぞ!出勤したら、まずは元気な声でおはようございます!ハイ!!

……おはよ。

ン~……まあいいだろう!次はもっと大きな声でな!それで、遅刻の理由は!?

……じゃあ、腹痛。

(じゃあ……!?)

腹痛なら仕方なし!!新しい環境は体調を崩しやすい!無理はするなよ!!

わかった。じゃあ帰る……

ン~~~待て!そういうことじゃないからな!

なんなの……

リルテットにはまず、パトロールを任せよう!先輩たちに色々教えてもらえ!


 ***


ね、ねえリルテットちゃん!昨日リーダーをぶん投げたの、すごかったよね……!

別に……あれくらい普通だから。

こ、ここに来る前にも、なにかやってたの?格闘技とか……!?

……別に。

(気まずい……!)

今の音……銃声!?

じ、自警団さん!!向こうの宝石店に強盗が……!


 ***


ヘヘ……大量だな!

さっさとずらかろうぜ。テメエらもついてこい。

<ソルトホーン>です!!速やかに武器を捨てて、人質を放しなさい!!

うるせえ、フヌケの自警団が!力づくで止めてみな!!

きゃあ!?

ぼ、僕たちだけじゃ無理だ……応援を呼ばないと!

お前から死にてえみたいだな、クソガキ!!

――ふッ!!

<リルテットは露店に積まれたキャベツの山を蹴り上げた!>

ぐ、視界が――!?

<バンッ! バンッ! バンッ!!>

ぐぁあっ!?武器が……!

やった……!?

まだ終わってない。早く手伝って。



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story5 運命の再開!



ボス、西通りの宝石店で強盗っす!銃も持ってるとか。

え!?ご、強盗……!?

――オレがいく。あと4、5人、適当に集めろ。

新入り、テメエもこい。ドンパチだ。

今回は何もしなくていい。離れたトコから見てろ。

ど、どんぱち……それってつまり、誰かと戦うってこと……ですよね?

(うう……だ、大丈夫……!!この島を、たくさんの人を守るのがわたしの仕事なんだから……!)


 ***


……<ソルトホーン>の連中だと?

おお、ジェイクじゃないか。

おゥ。爺さん、この騒ぎ……あのフヌケどもが鎬めたのか?

ああ。とは言っても、いつもの連中は情けないもんだったがな。

実際やったのは、あの子ひとりのようなもんだ。

――えっ!?あの女の子……

……まだガキじゃねェか。初めて見る顔だな。

リルテットさーん!!

フェネッカ……だっけ?

この間ぶりですー!リルテットさんって、自警団の人だったんですね!!

いや……ていうかフェネッカ、その格好、もしかして――


「そいつから離れろ!!」

「その子に近づくな!!」


――レイモンド。ドンパチは部下任せで、ゆうゆうとご到着かい。

その言葉、貴様に返すぞジェイク。薄汚いギャングの親玉め。

貴様に確かめたいことがある。

答える義理なんざねェ。

いいや、答えてもらうぞ!宝石店を襲った強盗たちは、<シガーファング>の元構成員だ!

なんだと……?

……落とし前をつけさせる。ヤツらの身柄をよこせ。

ン~~?できんなぁ!というか、どうせ貴様の命令で動いていたのだろう?

<あの日>以来……貴様がボスの座を継いでから、組織は腐っていく一方だからな!

――言えた口か?<あの日>からテメエがリーダーになって、自警団は腰抜けの集団と化した……

テメエの責任だぜ……?弱虫レイモンド。

ム、ムゥウン!誰が弱虫だコノヤロー……!

ケ、ケンカはよくないですって!お、おちゅちゅいてください!!

フェネッカもね……


話は牢屋の中で聞いてやるぜ!いくぞ、みんなッ!!

……上等だ。今日こそケリつけてやる。


ケンカー!ダメー!ケンカー!ダメー!

……勝手にやらせとけばいいと思う。

――予定変更だ、新入り。そこのナマイキなガキに格の違い、見せてやれや。

へ……?

ヘイ、リルテット!その子を捕まえて、正しい道に引きずり戻してやれ!!

……え、私もやるの?

「「「ウォォォォオ!!!!」」」

はぅあ!?どどどどどうしましょう!?

えっと……リルテットさん?

悪いけど、仕事だから。……捕まりたくないなら、逃げて。

どぅえええええ!?


おっ、今日もやってるなぁ!どっちも元気元気ィ!


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story6 定時上がり新卒


ひえーっ!?当たったら死んじゃいますからぁ!

大丈夫。そんなに威力出ないし、当たっても痛いだけ……

痛いのもヤですよー!!――って、あいたー!?

……

……あ、あれ?わたしのこと、捕まえないんですか……?

……定時になった。今日は仕事終わり。

あ、いつの間に……!ウチも定時、すぎてました!


すみませーん!みなさーん!定時なので上がりまーす!お疲れ様でしたーー!!

「「……!?」」

私も帰る。……おつかれさま。

「「――!?」」


新卒の分際で――

定時上がりをキメる、だと……!?


 ***


(……疲れた。ハンバーガー買って早く帰ろ)

「あの~……リルテットさん!」

「フェネッカ?」

「エヘヘ、さっきぶりですー。さっきまで追いかけっこしてたのになんかちょっと、変な感じですね♪」

「そうだね。……なにか用?」

「もしよかったら、お茶していきませんかー♪」

「――は?」


 ***


「エへへ~♪わたし実は、ずっと憧れてたんですよ~!」

「憧れって……なにが?」

「お仕事帰りに、社会人仲間の人とおしゃれなカフェでお喋りするの♪大人の階段のぼっちゃいました~♪」

「……仲間って。私は別に――」

あら?フェネッカにリルテットじゃない!

あれ、キャトラちゃん!!それにみなさんも!

この間の……

そのカッコ……ふたりともお仕事帰りかしら?

はい♪わたしたち、ギャングと自警団なんです!

v珍しい取り合わせですね……!

ま、フェネッカは優しいお巡りさんって感じだし……リルテットはクールなギャングって感じで、イメージぴったりね。

あ、わたしがギャングで……

……私が自警団……

なんかゴメン……

やー……実はわたし、自警団志望だったのですが、履歴書が間違ってギャングさんに届いてしまったようでして!

私はギャングに入ろうとしてた。でも履歴書が、間違って自警団に配達されて……

――あれ?

もしかしてアンタたちの履歴書、あべこべになって配達されたんじゃないの!?

あははー。衝撃の事実ですねー♪

そうだね。

あの、そのままでいいんですか……?

わたしは平気です。場所よりも、そこで何ができるかが大切でしたので!

無理やり引きとめられたから、しかたなく。

でも、わたしの代わりに自警団に入ってくれたのがリルテットさんでよかったです。

あんな怖い人たちにも恐れずに立ち向かえるなんて、すごい勇気だと思います。尊敬しちゃいます!!

別に、慣れてるだけ。私の故郷、あんまり冶安よくなかったから。それより……

……やっぱいいや。別になんでもない。

(見ず知らずの人とかんたんに仲良くなれちゃう方が、すごいと思う……)

あ、いちおーアンタたちにも伝えておこうかしら。アタシたち、冒険家ギルドの依頼でちょっと探しものをしてるの。

<怨恨のルーン>といって、恨みの感情を力に変換する危険なルーンなんです。

ギルドで保管していたものが、持ち出されてしまったらしくて……

その犯人が最後に目撃されたのが、トシン島ってワケ。もし見つけたら教えてくれない?

わかりました!なにかあればすぐに報告します!

……覚えとくけど、期待はしないで。


あの新人――定時で上がったあげく――

仲良くお茶してる……!?




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