【白猫】スタートライン Story3
2019/04/11
目次
ギャング<シガーファング> | ||
---|---|---|
フェネッカ・クロッカ | ||
ジェイク | ||
自警団<ソルトホーン> | ||
リルテット・ミッケ | ||
レイモンド |
story13 ウラミツラミツマミ
「ボス。本当にこれでよかったんですかい。」
「――上司に逆らって、敵と馴れ合うような甘ちゃんを組織に置いておけるか。
アイツのクッキー――うめェな。」
***
「リ、リーダー!? リルテットちゃん、本当に出てっちゃいましたよ!?」
「追うなよ。リーダーに従えない異分子に用はない。」
「本当は……リルテットちゃんと友だちを争わせたくないから……ですよね?」
「……これが、オレの役割なんだ。」
***
「――フェネッカ?」
「リルテットさん…………わたし、お仕事、クビになっちゃいました。」
「……奇遇だね。私もさっき、クビになった。」
「エヘヘ……おそろいですね。これからお茶でも……って、お店閉まっちゃってますよね……」
「露店で飲み物買ってきた。……おごってあげる。」
「……わたし、社会人ってもっと夢があふれてるって思ってました。
なんの取り柄もないわたしでも、いつかすごい自分になって、大事な人たちを守れるようになれるかもって……」
「……父親が昔、言ってた。
組織が重んじるのは、夢じゃなくて結果と面子だって。個人の感情を差し挟む余地なんて、組織にはないんだって。」
「――だけど。それでもっ!
わたし、どうにかしたいです!<シガーファング>と。<ソルトホーン>のこと……!クビになったって……!!」
「それは、私だって……でも私たちだけじゃ――」
お~っと、どうしたの~?ふたりとも元気ないねェ~!?
元気元気おじさん……
元気元気おじさんってなに!?
聞こえちゃったよぉ~?お仕事、クビになっちゃったんだってぇ?
……あなたには関係ない。
ギャングと自警団のこと、どうにかしたいのぉ??
え?で、できるんですか!?
できるできるゥ~!おっちゃんについてこ~い!
(ちょっとフェネッカ……ただの酔っ払いだよ)
(でも、お話だけでも聞いてみようかなって。
それにあの人、いつも公園で鳩にエサあげてるんです。きっと優しい人です!)
(ただの暇人……)
***
こんなところに、地下室が隠されてたんですね……
――なんなの、このデカイの。
おっちゃん、昔はそこそこの工学者でさあ……費用と設備さえあれば、このくらいお茶の子さいさいよぉ。
つ、強そうですね!……でも、なんのためにこんなおっきなロボを……?
そんなん<シガーファング>と<ソルトホーン>を、ブッつぶすためだよぉ~。
!?
やつらを恨んでる連中はこの島に山程いるからさあ……資金にゃあ事欠かなかったし、動力源のやべえルーンだって、横流ししてもらったさぁ。
どうしてそんなこと……!
おっちゃん昔、ちっとお酒とギャンブルにハマっちゃって……職場の金、勝手に使ったら追い出されちゃってなあ。
それは当然なのでは……?
ワルだろ~?まあそんで、借金取りから逃げて、三年くらい前、この島に流れ着いたわけよぉ。
で、食っていくためにさぁ、中途採用で<シガーファング>に入ったわけよぉ。
――だがあのクソギャング、おれのことぉ速攻クビにしやがってさぁ……!
そのあと入った<ソルトホーン>もおんなじさぁ……やる気ねえやつはいらねえって、速攻お払い箱にされてよぉ……
……クビになった理由は?
仕事中にちょっと抜け出して酒飲んだだけで、あんなに怒るこたあねえよなぁ~……
三年前、両方のボスを同時に始末したときゃあ、胸がスッとしたなぁ~……
――え?
バーのマスターのガキさらって、ちょいと脅かしてよぉ、酒にクスリ盛ってよぅ……
眠っちまったあいつらを、まとめてイチコロよお。すげぇだろぉ~?
……じゃあ<ソルトホーン>と<シガーファング>の前のリーダーは殺し合ったんじゃなくて……
あなたが……殺したんですかッ!?
勘違いして、いがみ合ってるギャングと自警団の連中を眺めながら飲む酒が、またウメーのなんのって!
嬢ちゃんたちだって、ウラみ溜まってんだろぉ!? 弱体化したあいつらを、一緒にブッつぶそうぜぇ?
しませんよ――そんなこと!!
!? さっき、ギャングと自警団のこと『どうにかしたい』って言ってたよぉ!?
そういう意味じゃない!
あちゃ~……勘逃いかぁ~……
――んじゃ、死のっか。
!!
起動にゃあちょうどいい! いくぜぇ――中途合体ィ!!
フェネッカ――逃げるよ!
で、でも……! わたし……あの人のこと……!
この施設には、仲間も魔物も大勢いるぞぉ。元気元気ィ~~~!!
story14 元気元気おじさんの狂気
リルテットさんっ!!?
つぅ――逃げて……フェネッカ。
……でも…………だけど……!
まずは自警団の子からぁ……あばよっと!!
ぐ――ううううううう……!
え……? フェネッカの、ルーンが……
わたしだって――いつか――! お父さん――みたいに――!
ちょこざい~~~!!
!!
あ……フェネッカ……フェネッカ!?……なんで、私なんか庇って……
だって……約束しました……あなたは、わたしが……死んでも、守るって……
――ばか……
……リルテットさんの……ルーン……光ってる?
なんなのよこの騒ぎ!!っていうか、あのロボなに!?
装甲の隙間から漏れてるまがまがしい光……<怨恨のルーン>だわ……!
って、あそこに倒れてるの――フェネッカとリルテット!?
三年前を思い出すなぁ~……おめえらのボスもこーやって、なにもできずおっちゃんに殺されてったなぁ~。
ダメ……間に合わない!!
あの世でも元気元気~~~!!!
!!
……ジェイク、さん……?
――レイモンド?
ウチの大事な新卒にィイイ――
――なにしてくれてンだゴラァァァアアアアアア!!!
ど、どうしてここに……
テメエが着たままの服……回収しにきただけだ。
ジェイ”グざぁあああん……
レイモンド……だいじょぶ?
なに、この程度の傷などォ――仲間のためならなんのその、だ!!
……仲間……
いいとこで邪魔してくれやがってぇ~……元気出す覚悟できてんだろうな~?
――その声、パラヨイだなテメエ。
――聞いたぞ。三年前、リーダーを殺ったのは貴様だったのか。
……あちゃ~!や~っちまったなぁ~!
覚悟はできてるなー?
い~い機会だチクショーー! まとめてつぶしてやろうじゃねえかぁぁあああ……!!
ヘイ、みんな聞け!作戦目的は巨大ロボットの破壊!そしてリルテット、および――その友人の保護!!
悪しきを貫く一本角にかけて、これ以上、ふたりに傷一つつけさせるなァア!!
「「「――了解ッッッ!!!」」」
テメエら、ガキふたりがこんだけカラダ張ったんだ――あとはオレらの出番だよなァア?
誇りあるこの牙にかけて――あんなテツクズ野郎なんざ粉々に噛み砕いてやれェッ!
「「「ウォォォオオオオー!!!!」」」
リルテットさん、立てますか?
……余裕。
ふたりともケガしています!じっとしていないと……!
大丈夫です、アイリスさん。さっきからなんか、どんどん力が湧いてくるんです……!
私も。これなら――戦える。
エモノに仕込んだ<大志のルーン>が――!
この激しい光は――まるで――!
わたしはもう、弱虫なんかじゃない……!
<シガーファング>の牙にかけて、オトシマエ――つけさせます!
……仲間って呼ばれた。なら……私も戦う。
<ソルトホーン>の一員として、――あなたを逮捕する!!
最終話 輝け☆新卒の星!
ちっくしょうぉぉお!元気すぎだろぉお……!
崩れたわ!!
スキありですっ!!
……終わらせる。
――いけ。
君たちは――
新卒の星だァァアアアア!!!
どりゃああああああああああああああああああああ!!!
***
ブタ箱にブチ込まれても元気元気~~~!!
やったぁ!
***
…………
はいはい!おふたりとも仲直りの時間ですよー♪
あァ?誰が今さら――
だ、だがなあ、しかし……
はい、握手!お互いにごめんなさいしましょう♪ せーの、ハイ!
……ッ! ……ッ!
フッ! フッ!
アンタたちねぇ……
みなさんのおかげで、<怨恨のルーン>も無事に回収できました。
♪
……リルテットさん。ありがとうございました。
なにが?
さっき、リルテットさんを守らなきゃって思ったとき、生まれて初めて……本当の勇気を出せた気がするんです。
そしたら<大志のルーン>が光って、力がわいてきて……
……そっか。でもそれ、きっとお互い様。
フェネッカが守ってくれたとき――私も、成長しなきゃって思った。
だからアイツをやっつけたら、ずっと伝えたかったこと、ちゃんと言葉にして伝えようって思った……
わたしに伝えたいこと、ですか?
……うん。あのね、フェネッカ……
――私と友だちに……なって……!
――えーと。なに言ってるんですか……?
え……
どぅええ!? だってわたしたち、とっくに友だちじゃないですかぁー!? えー!?
……なんかゴメン。
――新入り、今日はもう帰れ。明日からはまた忙しく――
あ、それなんですけどー……わたし、転職しようかと♪
!!
若いうちにもっと色んな経験を積んでみたいんです!やっぱりちょっと、ギャングってなんか違う気がしますし~……
いや、待て、テメ――
……じゃあ、私もやめよ。初任給もらったらやめるつもりだったし……
持て待て待て待て!!ヘイ落ち着け、冷静にだ!
ちょっとボス!! いいんですかァ!? オレたちの癒やしが!!
リーダー!? 早く止めてくださいよ!! その筋肉は飾りですか!?
――やめないでくれェ!!!
(――なんちゃって♪ クビだ、なんて言われた仕返しです♪)
(……冗談なのに、みんな焦りすぎ)
エピローグ
「――そういえば、リルテットさん。」
「なに、フェネッカ?」
「こないだから、わたしなりにずっと考えてたんです。リルテットさんがギャングを志望した、本当の理由……
わざと悪い子になって、刑事のお父さんに心配してほしかったから……じゃありませんか?
リルテットさんの姿を見てて、ずっと思ってました。この人、根っからの正義の味方なんだなって。
リルテットさんのお父さんもきっとこんなカッコイイ人だったんだろうなって。」
「……それ、は……ちがくて……」
「それに、お父さんのことを話してるときのリルテットさん……寂しそうな目、してました。」
「べ、別にそんなこと……」
「別に、はもう禁止ですよ? 気持ちに素直に――です!」
「…………
……こ、今度……――パパに手紙書くの、手伝って……」
「はいっ♪ それではさっそく――明日、定時で上がったら!」
「――ん。約束。」
スタートライン -END-