【白猫】エレノア・王冠の試練 Story
登場人物
ということで、さいごは――
エレノア。お願いしていい?
はい、わかりました。
……これは、ある大切な人と交わした、約束の話です。
エレノアの試練
(ふう……ギルドの依頼は、これで全部かな)
では、私はこれで。
本当に助かりました。お礼といってはなんですが、一緒に夕食でもいかがですか?
ありがとうございます。お誘いはありがたいのですが、私の帰りを待ってくれている人がいまして。
***
……はやく帰って、夕食の準備を手伝わなくちゃ。
君がエレノアだね。
はい、そうですが……
君に用があって来た。少しばかり、話を聞いてもらえないだろうか。
話?いいですけど……
…………
……
……とまあ、そういうわけだ。
つまり、この王冠は……
(白の王国……アイリスさんが、作ったもの……?)
……なんだ?
いえ、なんでも。
王冠に認められるには、試練を克服しなければならない。
選んでおいて何だそれは、と言いたいだろうがね。
……アイシャさんは、どうしたんですか?
私か?喜んで受け入れたよ。
難問なら常に歓迎だ。とはいえ、中々大変だったがね。
……あの、聞いてもいいですか?
私の試練が何か、だろう?
……知能を奪われてしまってね。
?
子どもに戻ってしまったということだ。
!
それは……確かに大変ですね。
だが、どんな問題にも、必ず答えはある。
…………
聞くのは無意味だが……どうする?
……やってみます。
よければ、理由を聞かせてくれ。
力が欲しいとかじゃないんです。ただ……
その王冠に選ばれたということは、私にとって、なにか大きな意味がある気がしました。
……そうか。ならば、受け取れ。
君が答えを導き出せるよう、願っている。
あ、でも、少し待ってもらっていいですか?飛行島のみなさんに――
story2 帰還
…………?
ここは……どこ……?
あれ……私……なにをしてたんだっけ?
……きれい……
おかえりなさい。
エレノア。
…………
アイリス……様?
ずっと、会いたかったわ。
ど……どうして……?
よく、帰ってきたわね。
……帰っ……て……?
……混乱してるみたいね。こっちへ来る前のこと、なにか覚えてる?
さっきまで、誰かと話して……なにかを……やるって……
……それで……ここに来た……?
まさか……ここは……
……そうよ。ここは、私たちの世界。
あなたは、未来へと戻ってきたの。
そんな、だって、ことって……私はまだ、なにも……
そ、それに、アイリス様はどうして……!
私が……どうかしたの?
わ……私、見たんです!あなたは……この世界の……
……いのちの、すべてとなって……
……私は、ちゃんと、ここにいるわ。
あ……
落ち着いて、深呼吸して。……あなたは、帰ってきたのよ。
<エレノアの表情から、困惑の色が薄れていく。>
(そっか……私……やっと……)
もう一度、いわせて。
……おかえりなさい、エレノア。
……ただいま。
…………
……
すごい……すごいです、アイリス様!
ふふ、エレノア、子どもみたいね。
だって……うれしいんですもの!
あんなに荒れ果てていた世界が、いまは、こんなに……!
光と闇。ふたつが重なりあって、新たないのちが芽吹いていったのよ。
……闇……
ふたつは、表裏一体……日が差せぼ、影ができるのと同じ。ともになくてはならないものなの。
あそこに見える洞窟も、そう。中は、闇の領域よ。
……なにか、いるのですか……?
…………
そういえば、私の言葉に驚いていたけど、どうして?
あ……それはですね。もとの世界のアイリスさんも、同じことをいっていたので……
(……そうだ、アイリスさん。キャトラちゃんに、主人公さん……
……グラハムさん。私、みんなに、何もいわずに……)
ふふ、それはそうよ。どちらも私なんだもの。
(……でも、なんだろう……いまは、ただ……)
ねえエレノア。案内したい場所があるの。
(アイリス様と、一緒に……)
……エレノア?
……はい!連れていってください、アイリス様!
story3 しあわせな時間
わあ、すごい……!
ここはね、私のお気に入りの場所なの。
最初は、たった一輪しか咲いていなかったのよ。
……もしかして、アイリス様が?
ええ、そうよ。……あ、そうだわ。ちょっと、待っててくれる?
はい、できた。
あ……はい、できた。
ふふ、とっても似合ってるわ。
……ありがとうございます、アイリス様……
「花輪です。これ、作るの得意だったんです。グラハムさんにあげますね」
「エレノア様……」
…………
……
……次は、ここ。
……わかりました!アイリス様!
ここは……山菜がたくさん採れるんですね!?
えっ!?どうしてわかったの?
ふふ、私だって成長するんですよ。……ほら!あそこにコゴミが!
……やるわね、エレノア。
飛行島のみなさんに鍛えてもらいましたから。
「主人公もタラノメを見つけたって」
「アタシはフキノトウを見つけたわよ!」
「ふふっ♪」
…………
今夜は山菜鍋よ。楽しみにしててね。
…………
……
……そうしたら、グラハムさんの肩にキャトラちゃんがピョンって飛び乗って、『ぎにゃー!』って。
私、思わず笑っちゃいました。
ふふ、キャトラも相変わらずね。
アイリスさんもこらえされずに吹きだしちゃって……それが……とても……
…………
……エレノア?
……本当に、いいのでしょうか……
……?
……私、とてもしあわせです。願っていた世界に、帰ることができた……
<エレノアは花の冠に触れる。>
また、アイリス様と会えた。……これ以上のしあわせは、ありません。でも……
でも?
あの世界で、やり残したことが……言わなければならないことが、たくさんあるような気がして。
それだけが、気がかりで……
……戻れるなら、戻りたいと思う?
……わかりません。
道は、あるわ。
!
あなたがそう願うならね。
……どういうことですか……?
……今日はもう休みましょう。おやすみ、エレノア……
(……私は……)
story4 エレノアの答え
おはよう、エレノア。
……おはようございます。
……あまり、眠れなかったみたいね。
……私は、どうすればいいのでしょうか……
…………
アイリス様は……どうしてほしいですか……?
……エレノア。私からは、なにもいえないわ。
でも……アイリス様の考えも……
冷たいようだけど……これは、あなたの問題なのよ。
答えは、あなたの中にしかない。
…………
……でも。散歩ぐらいなら、いいわよね。
え……
***
この橋はね、私が作ったの。見た目のわりに、けっこう頑丈なのよ。
ほら、むこうに湧水があるでしょ?とってもおいしいの。この辺の鹿たちも、橋を渡って飲みに行くのよ。
……鹿……?
そのお礼なのか、たまに木の実が置いてあるの。みんな、いい子たちよ。
ここは、小鳥たちの居場所。私がくると肩にとまって、きれいな鳴き声を聴かせてくれる。
…………
山に行けば、オオワシが道案内をしてくれるし、海に出れば、イルカが私と遊んでくれる……
みんな、私の大切な友だち。……動物だけじゃない。草も、木も、花も、すべて――
私にとって、あなたと同じぐらい、かけがえのない存在なのよ。
ずっと、守っていきたいと思うわ。
…………
…………
……
さあ、朝食を作りましょう。あなたも手伝って。
……私は……
……?
この世界で、生きていきたいと思っています……
……そう。それが、あなたの――
でも、それは……いまじゃない気がするんです……
…………
どうして、そう思うの?
……私を、待ってくれている人たちがいるから……
……私の、大切な友だち……
彼らからは、たくさんのものをもらいました。……その恩は、返さねばなりません。
私の願いをかなえるとするなら、きっと、それからのはずなんです。
いまのままでは、かけがえのないつながりを、自分勝手に断ち切ってしまったことになる……
……あなたと同じぐらい、かけがえのない存在を。
…………
……だから、私は…………私は……
……もとの世界へ、帰ります。
そう……わかった。
ごめんなさい、アイリス様……
謝る必要なんてないわ。勇気を出していってくれて、私はうれしい。
……さあ、ついてきて。
…………
……
ここは……前にアイリス様がいってた……
もとの世界へ戻るには、この洞窟を抜けなければならないの。
なにがいるか、と聞いたわね。――ロイド・イングラムよ。
!
私が運んだ魔幻獣の闇の一部には、彼の意識がわずかに残っていた……
まさか……その闇が、ここに……?
彼を、倒さなくてはならないわ。
……ロイドを……
私は一緒には行けない。非情かもしれないけれど、これは、あなたの問題だから。
……はい。
思念体とはいえ、その力は強力よ。そしてあなたはすでに、光の王としての力を失っている……
……帰れず、ここで死んでしまうかもしれない。
そのときは、そのときです。
!
私は、自分の決めたことに、後悔はしません。
……頑張って、エレノア。
……まさか、もう一度戦うことになるなんて……
……ロイド・イングラム!
r …………
みなさん……待っていてください!
story5
はあぁぁぁ――!
……勝った……
おめでとう、エレノア。
アイリス様……!
……お別れよ。
!
短い間だったけれど、あなたと再び会うことができて、本当に、うれしかった。
……本当に…………ごめんなさい……
……エレノア。あなたが、自分の意志で帰ると決めたように――
いつだって、心のままに進んで。……約束してくれる?
……はい、約束します……
……ありがとうございます、アイリス様……!
さあ、行って。決して、振り返らないで。
いってきます――
こ、ここは……?私は……
落ち着いて深呼吸をしたまえ。……私がわかるかね?
……アイシャ、さん。
君はいま、幻の世界から帰還したのだよ。
まぼ、ろし……
答えは、出たようだね。
…………
よほどつらい試練だったと見える。……平気か?
……少しだけ、泣いてもいいですか?
幻の世界でしたが……私は、確かに、約束しました。
心のままに進むと。……いま、私の中にある確かなつながりを、守り抜いていくと。
……難しい選択を迫られたものだな、君も。
でも、アイシャさんのいうとおりでした。……確かに、答えはあった。
……おめでとう、エレノア。
k……ま、よく頑張ったな。サバイバル女。
s素直におめでとうっていえばいいのに……
s私はすなおにいうよ!おめでとう、エレノアちゃん!
ありがとうございます、みなさん。
E……その大切な人について、くわしくは聞かないほうがいいんだろうな。
すみません。……とても、複雑な話なんです。
エレノア殿。
グラハムさん……
これからも、よろしくお願いいたします。……ひとりの、友として。
……はい!こちらこそ!
私たちからは、ひとことだけ。
……アイリスさん。
おかえりなさい。
!
ただいま。