【白猫】ガルガ・王冠の試練 Story
登場人物
俺の試練は、己の恐怖と向きあうことだった――
story
お前が討伐対象か。体躯は立派だが――
グォォォォォッ!
のろいな。
おみごと!
誰だ。
いきなりごめんね。私の名前はシエラ。で、こっちの竜がフレイヤ。
私の紹介は不要です。
あなたがガルガね?
そうだが……俺に何か用か。
なんだその王冠は。……強い力が秘められているな?
勘がいいのね。この王冠には、精霊が宿ってるの。
雷の化現、ライダス……あなたは、彼に選ばれたのよ。
選ばれたたと?
精霊があなたに力を与えてくれるの。ただし、精霊が課す試練を克服できたらの話だけど。
降ってわいたような話だな。
私も試練を乗り越えて、力を得た。次はあなたの番ってわけ。
断る。
……ま、やっぱりそう言うわよね。
他を当たるんだな。
はい、キャーーーッチ!
断るといったはずだ……
自分を見つめ直す、いい機会になるわ。
……俺の何を試したいというんだ。
いまにわかる。
悪いが、いまは依頼仕事中だ。お前の戯れ事に付き合っている暇はない。
……じゃあな。
かつて私が言われたことを、あなたにも伝えとく。
あなたが背負ってるものは、あなただけのものよ。
…………
……頑張ってね、ガルガ。
ガルガの試練
あ、ガルガ!おかえりなさい。ドラゴン、強かったですか?
大したことはなかった。お前のほうはどうだ?
フェイねーちゃん、もっと遊ぼうよー。
もうすっかり仲良しです♪
子守りまでしてもらって、すまんのう。
いいんですよ!私も楽しんでますし。
にしても、あのドラゴンを倒してしまうとは。おぬしに来てもらってよかったわい。
!
どうしたの?
魚が……
<魚の死骸が、水面に浮いている。>
最近、流れ着くことが多くてな。
……原因は?
わからんから困っとる。
水質が悪くなったとか?
そんな話は聞かないがのう……
…………
story2 異変
お前は来なくてもよかったんじゃないのか。
子どもたち、お昼寝しちゃいましたし。私も手伝いますよ。
えっと、次の討伐対象は、ミノタウロスとゴーレムですね。
…………
……!
……どうしました?
……動悸が激しい。
え?
俺は……緊張しているのか?
……大丈夫ですか?
ああ、問題ない……
ガルガ、手が震えてますよ……?
なんだ、これは――
……クソ、動悸が……!
ちょ、ちょっと……すごい汗ですよ!
はあ、はあ、はあ……
……あっ、いた!ガルガ、ここは私が――
うわあぁぁぁぁぁ!
あぁぁぁっ!来るなぁっ!
ガ、ガルガ!?
ガオォォォッ!
あぁ……
<意識を失う>
えぇぇっ!?
ガァッ!
!
……ヤ、ヤツはどこだ!?
もう倒しましたよ!
ああ、そうか……はあ、はあ……
一体どうしちゃったんですか……?
…………
……
……村だ……村に、戻ってきた……
ここなら、安全だ……
俺は……何を考えているんだ……
……ガルガ。少しの間、村で休ませてもらいましょう。
きっと、働きすぎなんですよ。このところ、忙しかったですし……
……まさか……
ガルガ?
……フェイ。確かめたいことがある……
…………
……
うわあぁぁぁ!
よせ、やめろ!こっちへ来るな!
た……助けてくれ、フェイ!
<――>
お……俺はいま、何と言った……?
本当に大丈夫ですか、ガルガ!
はあ、はあ……馬鹿な……こんなことは、あり得ない……
……ガルガ。帰って休みましょう。顔色が、ひどいです。
こんな仕打ちが……あってたまるか……
俺から……すべてを……奪う……など……
story3 再来する獣
ガルガ君の様子は?
……日に日にひどくなっています。
あ、星たぬきだー!迷いこんじゃったのかな?
キュッキュー!
おい、危ないから離れろ!
なんで?こんなに人なつっこいのに。
引っかかれたら怪我をしてしまう!早く離れるんだ!
ひっかかないよ。ねー?
キュキュー!
うわっ!こっちへ来るな!
……まるで、別人です。
<地鳴り>
うわあぁぁっ!なんだ!?
……地震か?
……違う……
……なにか来る!
<海面から、突如として――
異形の獣が出現した。>
メ……命滅獣(メギド)だあぁぁぁぁ!
ウソでしょ……!?なんで!?
いけない!村長さん、みんなを避難させてください!
ここはすぐに、瘴気に汚染されます……!危険です、早く!
わ、わかった……!
お、俺たちも逃げるぞ、フェイ!
なにをいってるんです!命滅獣は、あなたの敵でしょう!
いま、あいつを倒せるのは、あなただけです!
俺が?あいつを!?無理に決まってる!
……いいですか。どうしてあなたが臆病になってしまったのかはわかりませんが……
ここで勇気を出して戦わないと、この島は瘴気に汚染され、多くの命が奪われます。
それでもいいんですか!?
……絶対に無理だ。勝てるわけがない!
……大丈夫だ。きっと、他の誰かが助けに来てくれるはず。そいつに任せよう!
……本当に、別の人みたい……
さあ、一緒に逃げるぞ、フェイ!
……っ!
あなたは<討滅士>でしょう!
……お願い。自分の生きてきた道を、否定しないで。
…………
戦うのよ、ガルガ――!
い、いやだ!俺は死にたくない!
来るんだ、フェイ!
story4 器の在り処
……命滅獣の様子は?
三つめの村に到達しました。
……なら、次はここか……また、……逃げないとな……
……いつまで逃げ続けるつもりですか?
助けが来るまで……
……島のほとんどは、汚染されてしまいました。
もう、逃げ場はありません。島の人たちに被害が出るのも、時間の問題です。
……大丈夫だ……大丈夫……きっと、もうすぐ……誰かが…………
……いい加減にしてよ……
私たちが戦わないと、みんな死んじゃうのよ!
どうしてそれがわからないの!
――
あぁぁっ!来た、来やがった……!逃げるぞ、フェイ!
…………
何をしている……!?
どこまでやれるかわからないけど……何もしないで死ぬのだけはごめんだから。
戦う気か!?やめろ!倒せる相手じゃない!
……死んだ兄さんがあなたの姿を見たら、さぞ悲しむでしょうね。
……!
待て、行くなフェイ!
……クソ、どうする!?このままでは、フェイが……!
恐い、恐い、恐い、恐い……!
死にたくない、死にたくない、死にたくない……!
……フェイ……!
……クソッ!
…………
……
フェイ……どこだ、フェイ……!
……ガル……ガ……
……来てくれると……思ってた……
大丈夫か、しっかりしろ!
うわあぁぁぁぁ!
お願い……
がふっ!
お願いガルガ……戦って……!
うぐ……
(ああ……俺は……死ぬのか……
死とは……なんと恐ろしいものか……
…………
(――違う。真の恐怖は……死ぬことではない……
俺は……それを知っているはずだ!
俺が……心の底から恐れたのは……!)
「自分を決めつけるな、ガルガ。お前には器がある。」
失ってしまったことだ……
「人の想いを汲み上げる器だ。使い方を間違えるな。」
ラルフ――!
……
同じ目に……あってたまるか!
友よ。いま再び、俺は立ち上がろう。
ガルガ……
我は、討滅の器なり!
汝を、滅する――!
story5
うおぉぉぉぉぉっ!
…………
おめでとう。
……俺は……
試練を乗り越えたのよ。
試練……
あなたはいままで、幻を見ていたの。
……そうだったのか……
……怒ってる?断わったのに、って……
……いや、むしろ逆だ。妙に、清々しい。
そっか……
あ、ガルガ!おかえりなさい。ドラゴン、強かったですか?
…………
ガルガ?
海が、綺麗だな。
…………
……
俺は、真の恐怖が何かを知った。いや、再確認したというべきか。
……友を、失うこと……
獣となった親友を、俺は倒した。
ラルフはフェイの兄だ。こいつにとっても、つらかっただろう。
…………
あの恐怖を、俺たちは忘れるわけにはいかない。
それを再認識させるための試練だったのだろう。
……あらためて、おめでとう。ガルガ。
世話になったな、シエラ。
ううん、私はなにも。
にしても、臆病者になっちまうだなんて……大変だったんスね。
ガルガさんからしたら、全てを奪われるのと同義だものな。
でも、星たぬきに怯えるガルガ、ちょっと見てみたかったわね。
あの鳴き声さえも恐ろしいと感じていた……本当だ。
……幻の中の私も、かなり大変な目にあってたんですね。
まさか、ガルガのお守り役なんて。
俺がラルフのことを思い出せたのは、お前のおかげだ。
お前という存在がなかったら、試練を克服することはできなかっただろう。
そ、そこまでいわれると、ちょっと照れちゃいますね……